|
au My Page開発担当者インタビュー
|
|
「auユーザーのスタイルにあわせた、ベストなサービスを」
|
|
|
|
KDDIの江幡氏(右)と大谷氏(左)
|
MNP(携帯電話の番号ポータビリティ制度)スタート直前の10月23日、KDDIはストレージやアドレス帳バックアップ、Webメールなどの機能を備えた新サービス「au My Page」の提供を開始した。
開発を担当した、KDDIメディア本部ポータルビジネス部の江幡智広氏と大谷宏氏に、機能の詳細や開発の背景を聞いた。
■ ユニークな機能
|
Myサイトでは、コンテンツプロバイダから情報配信できる
|
――au My Pageで提供される機能はずいぶん多岐に渡ります。
江幡氏
既存のサービスで例えると、ヤフーさんの「My Yahoo!」が近いと思います。従来のEZwebのトップページが、より多くのユーザー層、つまりマス向けとすれば、au My Pageはパーソナルな形にカスタマイズされたポータルです。
ただ単に個人の趣味にあわせたコンテンツを表示するだけではありません。それを示す特徴的な機能としては「Myサイト」という機能があります。これは、利用している有料情報サイトを参照できる機能ですが、利用しているサイトを確認することに加え、「このサイトの利用者は、ほかにこんなサイトも使っている」というリコメンド情報を表示できます。
また、コンテンツプロバイダが自社運営サイトに関連した情報を「Myサイト」で配信できます。たとえば、キャンペーンの実施や新ゲームの配信をお知らせできるのです。公式コンテンツを扱うRSSのようなもので、コンテンツプロバイダを支援する面があるとも言えるでしょうか。
■ EZニュースフラッシュの活用
|
EZニュースフラッシュで更新情報が通知される
|
――EZニュースフラッシュで更新情報が表示されるとのことですが。
江幡氏
お気に入りのブログが更新された場合、あるいは自分のブログにコメントが書き込まれた場合などに、一日一回、更新情報がEZニュースフラッシュのティッカーで通知されます。当初は更新のたびにメールで通知することも考えましたが、ブログやオークション、SNSなどは頻繁に更新されますので、それでは煩わしく感じるのではと思い、回数を限定しました。
大谷氏
ただし、EZニュースフラッシュ非対応機種の方には、現在のところ一日一回、更新情報をメールで通知しています。
――ティッカー通知であれば、更新頻度がもう少し多くても問題ない気がします。
江幡氏
確かにそうかもしれません。これで最終形というわけではなく、今後もいろいろと考えていきたいと思います。
――そもそも、なぜEZニュースフラッシュを活用することに? EZニュースフラッシュを見ることだけで終わってしまい、au My Pageへアクセスしないかも、という心配はありませんでしたか?
江幡氏
「EZニュースフラッシュだけで終わる」という点については、au My Pageに限らず、EZニュースフラッシュ自体の導入時に「EZwebのニュースページへアクセスしなくなるのではないか」と議論したことがあります。しかし、EZニュースフラッシュは、ユーザーが携帯電話と接触する機会を増やしていくと考えています。
FMラジオの時も、ワンセグの時も「FMラジオやワンセグを使うと、コンテンツ利用が減るのではないか」と似たような指摘があったと思います。しかし、実際はFMラジオがきっかけで着うたが購入され、テレビ番組で紹介されたワードが検索されるなど、トリガーとしての機能を果たしています。
EZニュースフラッシュも、実際に開始してみると、ユーザーはそれをきっかけにして、EZweb上のニュースページへアクセスしていますし、au My Pageにもアクセスしています。
■ スケジュールアプリ
|
EZナビウォークとの連携もできるスケジュール機能
|
江幡氏
また、スケジュールアプリは面白い機能です。スケジュールデータのバックアップが可能ですし、位置情報と連携して「明日行く場所はココだ」と記録したりできます。また、コンテンツプロバイダにも活用してもらえるようになっており、「あの人気アーティストの曲が○日配信」など、ユーザーが興味を持つコンテンツに対して情報を提供できるのです。
この機能はスタートしたばかりのものですが、今後はテレビやFMラジオと連携すると、お気に入りの俳優の番組をチェックするという使い方も可能になります。そうなると、ユーザーにとってスケジュールが1つのメディアになる可能性も出てくると思いますね。将来的には広告的な活用も考えられるでしょうし、急遽、シークレットライブを開催する時などにも、有効な告知手段になるのではないでしょうか。
また、EZナビウォークとの連携機能も用意しています。これは、任意の地点を登録しておくと、スケジュールとして用件や時間に加えて、場所情報を登録できます。これにより、スケジュールデータから乗換検索、徒歩ナビが利用できます。
大谷氏
場所と時間というデータは“携帯電話ならでは”の有益な情報です。その活用によって、コンテンツに誘うきっかけになります。
江幡氏
さまざまなところにコンテンツへの導線を作っていますが、そうすることで、「コンテンツを使っているという感覚がないまま(コンテンツを)使ってもらえる」と考えて開発してきましたね。
■ 「人によって使い方が異なるかもしれない」
――開始から1カ月以上経過しましたが、利用傾向は?
江幡氏
具体的なデータはまだチェックできていません。ただ、ブログだけ、あるいはアルバムとストレージだけ、というように気に入っている機能だけ利用しているという印象ですね。全ての機能をマスター的に使いこなすという傾向はまだ見えていません。
今後は、シンプルな利用シーンを提案していく必要があると考えています。1つ1つの機能のマニュアルはカタログのような部分でサポートする一方、「こんな使い方ができる」「こう使うと便利」という形で、音楽などauならではのサービスを軸にして、分かりやすく伝えていきたいですね。
|
両氏はau My Pageの開発経緯を紹介してくれた
|
大谷氏
au My Pageのユーザーは携帯電話で受信したメールを自動的にサーバーに保存できます。このサービスではWebメール機能も提供しているのですが、「よく受信するリスト」というデータをWebメール側から見ると、メールアドレスだけ表示されるため、誰からのメールかよくわかりません。しかし、携帯電話内のアドレス帳もバックアップしておけば、サーバー側でバックアップされているアドレス帳とメールデータを照合しますので、Webメールでも誰からのメールかわかりやすくなります。これは細かい点ですが、利便性を高めている点の1つですね。
江幡氏
また、スケジュール関連では、日付ごとのメールを参照できたり、アルバムに投稿していればスケジュールから当日に投稿したアルバムをチェックしたりできます。日付から、その日のメールや写真がリンクしているというわけです。
――性別や年齢層などでの利用傾向は、今後、明確に異なってくるのでしょうか?
江幡氏
女性ユーザーはコミュニティ系の利用が増えたり、年齢層によってはストレージを利用する頻度が高くなったり、というように、もしかしたら人によって全く異なってくるのかもしれません。
大谷氏
「au My Page」開発に繋がる最初の発想は、EZwebのトップ画面が情報で満たされるに従って、携帯電話の限られたディスプレイ上で効率的に情報を伝えたい、効率的なインターフェイスが欲しいと考えたことでした。そのスタートラインから見ると、個々人によって利用スタイルが異なるというのは、当然の帰結と言えるかもしれません。
ちなみに開発当初は、スタッフ1人1人の1日の行動を調査しました。起床して何をしたか、次に何をしたか……ということですね。この部分はまだ実装しきれていませんが、「au My Page」は、サービス単位での提供というよりも、利用者のスタイルや生活にあわせて利用できるというコンセプトなのです。
■ 「auユーザーにとって一番のサービス」
|
自分好みにカスタマイズできるau My Page
|
――auの携帯電話を見ると、オークションなど各種サービスへ直接アクセスできるメニュー項目が設けられています。これは他キャリアと異なる点と感じるのですが……。
大谷氏
それぞれ個々のサービスとして提供されてきましたが、「auの携帯電話、auのユーザーにとって一番使いやすい見せ方は何だろう」という考えがありました。使いやすさを意識すると、より携帯電話にくっついたインターフェイスに、ということで、端末のメニュー群に入れてきました。
――au My Pageでも「一番使いやすいサービスとは?」という考えがあったのでしょうか? また、ストレージやブログなどは既に提供されていたサービスですが、au My Pageとしてリニューアルした理由は?
江幡氏
「一番使いやすいサービス」という点は、KDDIがau My Pageを提供する理由の1つになります。最初はストレージだけ提供するという話もありましたが、データ保存はアドレス帳も画像もさほど頻繁に利用するものではありません。自らサービスを提供していくなかで、一番良い物を提供したいと考えていました。
ここ2年ほどで、いろいなサービスがしっかりと立ち上がってきましたが、ユーザーには横の繋がりを意識する方も出てきました。これまではEZメモリーポケットやDUOBLOGなどがありましたが、ブログで画像をアップしてもEZメモリーポケットにはその画像は登録されません。このあたりは「au My Page」では解決しています。「au My Page」は、各種サービスを“横並びで繋げるプラットフォーム”として作り上げたということになります。
■ スタートが遅れた理由
――秋冬モデルと同時に発表された「au My Page」ですが、スタートが遅れ、10月24日から利用できるようになりました。開始時期が遅れた理由は?
江幡氏
データベースの移行で一部不整合が生じたためです。これまでブログやストレージなどをそれぞれ個別のサービスとして提供してきましたが、au My Pageでは1人のユーザーのデータとして、集める必要があります。そこが一番苦しんだところですね。
DUOBLOGとEZメモリーポケットを使っているユーザーのデータを、au My Pageという1つのプラットフォームでまとめる際にミスがあれば、自分のデータを見に行ったのに他人の写真が見えるということになってしまいます。中途半端な状態でリリースできませんでしたし、念には念を入れて確認を行ないました。
――「過去のデータは継承せず、完全な新サービスで」という考えはなかったと?
江幡氏
確かにそうすれば、よりスムーズにサービスインできたでしょう。ただ、ユーザーの立場からすれば、同じKDDIが提供するサービスとして、ブログAとブログBがあるとわかりにくいですよね。これは避けたかったポイントですし、“横で繋がるプラットフォーム”として各サービスを集約できれば、最終的に安心感も提供できると考えていました。
■ 今後の展開は?
|
au My Pageが、CtoCとBtoCのコンテンツを仲介する役割を担う可能性についても触れた
|
――たとえばGmailとの連携はあり得るのでしょうか?
江幡氏
たとえば容量という面を見ると、au My Pageは100MB利用できます。すぐには容量について不満が高まることはないでしょうが、Rev.Aが導入されるなど、今後大容量データをアップロードしやすい環境が整ってくると思います。そうなると、100MBでは足りなくなるだろうと。進化させる必要はあると思います。
Gmailかどうかはともかく、大容量で、進化したメールサービスにはしていかなければならないと思います。ただ、ユーザーによって利用意向が異なる部分があると思います。「ezweb.ne.jp」というドメインでWebメールを使いたいという方がいれば、その一方で携帯メールとWebメールは別々にしたいという方もいます。どうするのが一番良いのか、検討していく必要があるでしょう。グーグルさんとは、最初から「検索以外でも連携できれば」という話はしていますので、良い形で何らかの連携ができればと考えています。
――先日、EZ GREEがスタートしました。選択肢としてはau My Pageの機能の1つとすることもできたと思うのですが、SNSと個人ポータルは別の路線を歩むものなのでしょうか?
江幡氏
両者は少し異なる存在だと思います。SNS自体はユーザーが作り上げていくメディアではないでしょうか。au My PageやEZwebのトップメニューで提供する情報は、ニュースや広告などでBtoCなコンテンツです。
ただし、仮にゲーム好きな人のコミュニティをイメージした場合、EZwebにもゲーム情報が配信されていますので、ユーザーとしてはSNSとEZwebを行き来してゲーム情報を取得できます。そしてプレイした後の評価をする場として、SNSやブログが利用されるのでしょう。
大谷氏
SNSの「EZ GREE」はCtoCで、ポータルのEZwebの公式コンテンツはBtoCです。今は情報提供の形態で分割した見せ方になっていますが、“ゲーム情報を知りたい”という方にとって、「au My Page」がSNSとポータルの間に立って、うまく仲介する存在になるのかなと思います。
江幡氏
将来的には、SNS内に公式コンテンツのゲームに関するコミュニティができるかもしれません。そうすると、コンテンツプロバイダが提供する情報と、ユーザー同士で語り合った内容を同時に見せられるのは、au My Pageになるのかもしれませんね。
――ありがとうございました。
■ URL
サービス概要
http://www.au.kddi.com/ezweb/service/au_my_page/
■ 関連記事
・ KDDIとグリー、11月から携帯向けSNS「EZ GREE」開始
・ 「au My Page」「アドレス帳預けて安心サービス」開始
・ パソコンからも利用できる個人ポータル「au My Page」
(関口 聖)
2006/12/13 11:18
|
ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
|
|
|
|
|
|