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「SH903i」開発者インタビュー
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「液晶・デザイン・UI」3つの特徴を聞く
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NTTドコモのハイエンド端末・903iシリーズの第1弾として、シャープ製「SH903i」が登場した。どのような考えを背景に開発が進められたのか。シャープ 通信システム事業本部パーソナル通信第一事業部 商品企画部の木戸貴之氏と宮田 雄介氏、オンリーワン商品企画推進本部 総合デザインセンター ソフトデザイン室の福田江貴氏に聞いた。

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SH903i(サファイアブルー)
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――SH903iのコンセプトを教えて下さい。
木戸氏
2006年は、ワンセグやHSDPAの開始、そしてMNP(携帯電話の番号ポータビリティ)など、大きな変化があります。こういう時にこそ、基本を強化し、基本に忠実であろうと考えました。テーマとしては、液晶を中心とした「エキサイティングクオリティ」を提供したいと考えました。
当社の携帯電話では、機能面とデザインとユーザーインターフェイス(UI)という3点のバランスに重きを置いています。SH903iの機能面では液晶ディスプレイ、デザインでは高級感の訴求としてジュエルカットデザイン、UIではVivid UIという描画エンジンの活用ということになります。
■ 液晶ディスプレイの特徴とは

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シャープ木戸氏
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――2.8インチ、240×400ドットという大サイズの液晶ディスプレイですね。
木戸氏
液晶ディスプレイでは、2つ新しいことにチャレンジしています。1つは6色フィルターの採用です。バックライトで見えるRGBの3色フィルターに加えて、太陽光の反射光でも色再現性の高い3色フィルターを設けています。
また、Super Vividエンジンという新しい回路を搭載していますが、これは色の彩度を高め、エッジを強調することで鮮明に見えるようにしています。この2点で従来の液晶ディスプレイよりも鮮やかさが向上しています。このほか、液晶の明るさもSH903iでは最大約270カンデラを実現しました。明るさセンサーを搭載し、周囲の明るさに応じてバックライドの輝度や、数字キーのバックライトのON/OFFを自動調整しており、さらに従来よりも効率が良い部材を採用することなどで、消費電力は従来品よりも少なくしています。
また回転2軸ヒンジを採用していますが、くるっと回した場合はカメラのファインダーとして機能することに特化しています。ほかの使い方も可能ですが、過去の機種での利用スタイルを調査すると、カメラのファインダーという使い方が多いですね。また、画面を露出したまま操作できることを増やすと、その分サイドキーが増えますので、今回はそれを控えた形になります。
また、プライベートフィルターという視野角制御機能を備えています。これまではベールビュー液晶とを搭載してきましたが、今回は薄型化を狙ったこともあり、ソフトウェア処理のほうがボディサイズに影響を及ぼさないため、今回はこういう形にしました。
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回転2軸ヒンジを採用
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プライベートフィルタを動作させたところ
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■ 高級感を演出したデザイン

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ジュエルカットデザインを採用
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――外観は宝石のような「ジュエルカットデザイン」を採用したそうですが、その狙いは?
木戸氏
デザイン面からこれまでの端末を振り返ると、SH900iでは三層コーティングの塗装で光沢感、ツヤのあるデザインをアピールしました。SH901iSではアルミを使った仕上げ、DOLCEでは革を用いました。SH902i/902iSやDOLCE SLでも同じく素材を活かした高級感の演出を目指しました。
SH903iでは、ジュエルカットデザインを採用しました。ダブルインモールド工法で深みのある透明感の中に、輝きのある金属感を持たせています。宝石のようなカット面を見せて、7色に光る3つのLEDを埋め込み、金属の中から光るような形にしています。
携帯電話のトレンドとしては、スリム・コンパクトというキーワードが挙げられますが、SH903iでは、蒸着で金属のような縁取りにして、スリムな印象を与える効果を狙っていますし、側面は本体側とわずかに異なる色合いになるよう塗装しています。
4色それぞれ表面の処理が少し異なっています。ブルーとブラックは表面にパターンを設けており、ホワイトとレッドは裏からパターンを刻んでいます。これは、濃いボディカラーのほうがより指紋が目立ってしまうことがあるため、パターンを表に出すことで、指紋を目立ちにくくすることも狙いの1つです。また、中央にあるLEDも、ブルーとレッドは点で光るのですが、ホワイトとブラックは面で光るようになっています。
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4色用意される
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角度によっては点に見える
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■ 動画対応のUI

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シャープ福田氏
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ブルーのメニューは水と光をイメージ
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――903iシリーズでは、「きせかえツール」が採用されましたが、SH903iの特徴は?
「きせかえツール」は903iシリーズの機能ですが、SH903iの設定可能な箇所はかなり多いと自負しています。
――きせかえツールは「データBOX」からアクセスして設定する形ですね。
木戸氏
全体の設定については、「ユーザーのデータは“データBOX”にある」ということから、今回はその流れになっています。ただ、今後はメニューアイコン表示時のサブメニューから設定できることも検討したいですね。
――ブラックとホワイトでは背後に実写動画が流れますね。
木戸氏
はい、SH903iではVivid UIを採用したことで動画が利用できるようになっています。
福田氏
外観が「光」「きらめき」「輝き」といったワードを掲げていますので、UIについても光を全体的なイメージにしています。Vivid UIという特徴もあわせて、映像の魅力で個性を演出するようにしています。
ホワイトのトップメニューは、9つのメニューアイコンにあわせて9つの実写が流れ
ます。これは、各機能のイメージをダイナミックに表わしています。またブラックのメニュー背景は、全画面の実写動画が流れます。ダイナミックな臨場感を与えられますし、黒だからこそのコントラストも魅力です。
ブルーは、海や空といった健康的なイメージがしやすいカラーで、透明感のある青だからこそ重なる光をテーマにしました。レッドは、光が織りなす様子、重なり合う様子を見せています。それぞれボディカラーにあわせて展開したもので、それぞれに個性的で、わかりやすいものに仕上がったと自負しています。
木戸氏
最近Flash Liteを使ったUIが増えています。Flash Liteでも映像は扱えますが、実写となると、動作速度に影響があると思います。Vivid UIという専用エンジンを用いることで軽快な動作が楽しめますね。そのあたりはソフトデザイン室も苦労しました。
――動画再生によって、従来よりも消費電力が上がることはないのでしょうか? また自作できない理由は?
木戸氏
背後の映像は2回繰り返して止まりますので、従来とほぼ同じです。このメニュー画面については非常に苦労した点で、実装するかどうか悩んだこともありました。一方で、大きな特徴になることは明らかでしたので、なんとか形にしました。
Vivid UIで動画再生できるようにしていますが、圧縮率の高い独自フォーマットの映像を扱っていおり、チューニングが必要なため、今回はユーザーの方に自作していただくことはできませんが、将来的には自作できるよう、検討していきたいですね。
■ GPS機能対応
――903iシリーズとして、GPS機能がサポートされました。
木戸氏
MULTIキーの長押しでも現在地測位が可能ですが、待受状態で数字キーの「1」を長押ししてもプリセットの「NAVITIME for SH」が起動するようになっています。
――ナビタイムジャパンのアプリをプリセットした理由は?
木戸氏
1つは既に実績がある、ということですね。ただ、最も重視したのは、実用面です。携帯電話での利用を踏まえ、GPSが使えない場合も想定した場合、道路上のナビゲーションだけではなく、鉄道の経路検索も可能な点などを考え、利便性が高いアプリと判断したのです。
■ 音楽再生について

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木戸氏によれば、SDオーディオとWMAの認証の違いが再生時間に影響しているという
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――音楽再生機能について教えてください。
木戸氏
SDオーディオ(SD-Audio)に加えて、WMA、着うたフルに対応しています。最大再生時間はSDオーディオで50時間、WMAで約34時間となっています。結果的にSDオーディオ・WMAの両方に対応しているのは、903iシリーズではSH903iだけとなっています。
プレイリストでSDオーディオ、WMA、着うたフルの全てに対応しています。閉じた状態であれば、シャッターボタンの長押しで音楽再生機能が起動し、サイドキーで巻き戻し・早送りといった操作ができます。
――SDオーディオとWMAで再生時間が異なる理由は?
木戸氏
どちらも再生専用LSIを使っていますが、認証方式の違いから再生時間に差が出ています。SDオーディオはLSIだけで処理しますが、WMAの再生処理はLSI側ですが、認証はアプリCPUへアクセスするというイメージでしょうか。
■ SH903iの細部を聞く

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シャープ宮田氏
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――FeliCaチップが変わったことによる影響は?
宮田氏
リーダーライター機能も備えたことで、感度の向上には苦労しましたね。最終的には従来と同等の性能を実現しました。アンテナは、カメラ横のマーク周辺にあります。
――リーダーライター機能ということで、PaSoRiのような使い方もできますか?
木戸氏
そういう機能を実現するiアプリが登場すれば、その可能性はあると思います。
――従来機種と比べ、SH903iで異なる点は?
木戸氏
AIの予測変換も賢くなっていますし、ワイドQVGAになって変換候補がこれまで最大8個でしたが、12個表示できるようになりました。その分、操作性を向上させるため、変換候補に数字キーを割り当ててダイレクトに選択できるようにしています。文字種の切り替えなどはソフトキーに割り当てて、利用しやすいようにしています。

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「1」「2」「3」の長押しがショートカットになっている
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また数字キーの「1」「2」「3」には、ショートカットとしての役割がありまして、デフォルト設定では「1」でGPSアプリが、「2」でバーコードリーダーが、「3」で赤外線受信が起動します。これは、ショートカットメニューと呼応した形になります。
IrSimpleも引き続き搭載しています。家庭で楽しんでいただくという使い道もありますが、今後、搭載機器が増えてくれば、携帯電話と大きなディスプレイを使ってプレゼンテーションできるなど、ビジネス面でも活躍できると思います。
――microSDカード対応となっていますが、その理由は? 内蔵型ではなくスロットにした理由は?
木戸氏
結果的に他社の903iシリーズでも採用されていますが、SH903iでは薄さやコンパクトさを考えた結果、microSDカードを採用しています。ただ音楽などでの利用シーンを考えると、脱着するシーンはそれなりにあると思います。
このほか、業界初のポイントとしては、H.264形式の長時間動画撮影が可能です。これまでは再生に対応していますが、今回、初めてH.264で撮影できるということになります。
――ありがとうございました。
■ URL
製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/sh903i/
■ 関連記事
・ SH903i(サファイアブルー)
・ SDオーディオ&WMA対応の「SH903i」
(湯野 康隆, 関口 聖)
2006/10/31 19:21
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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