NTTドコモから「N702iS」と「N902iX HIGH-SPEED」の2機種のNEC製FOMA端末が発売された。N702iSはデザイン性を重視したコンセプト端末、一方のN902iXは新通信方式に対応する初のFOMA端末だ。いずれもこれまでのNEC端末のイメージとは少し違った個性的なケータイだ。
N702iSとN902iXがいかにして生まれてきたのか、N702iS開発担当のモバイルターミナル事業本部 モバイルターミナル事業部 商品企画部 主任の児玉早苗氏と、N902iX開発担当のモバイルターミナル事業本部 モバイルターミナル事業部 商品企画部 主任の藤原望氏に聞いた。
■ スペックに出ない部分を重視した「N702iS」
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N702iSを担当した児玉早苗氏
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――まずはN702iSのコンセプトについて教えてください。N702iSは独創的なデザインをしていますが、どういったコンセプトでデザインされているのでしょうか?
児玉氏
「着せ替え」や「ライフスタイル重視」といった、大まかなコンセプトや方向性をデザイナーさんに渡したところ、コップやグラスをキーワードとした、デザインのアイディアをいただきました。外観から中身まで、すべてのところでコンセプトワークを出してもらって、それをNECでかみ砕いて作りました。デザイナーの佐藤オオキさんは、スペックではなくエモーショナルな部分、遊び心や余白を大切にしたいと考えられました。
――具体的にはどのような遊び心があるのでしょうか?
児玉氏
たとえば外観が丸みを帯びているので、基板など中身の部品は位置的には、デッドスペースが多くなっています。待受画面が本体の傾きに連動しても、実用面では得をしません。そうしたスペックではメリットとならないところよりも、心に響いたり、持ちやすいといった部分にプライオリティをおいています。
――デザイン的には、NECらしくない、という印象も受けます。
児玉氏
NEC端末には「定番」とか「面白みがない」、「安心」といったイメージがあるようですが、「NECはこういう端末も作れるよ」ということをユーザーにお見せしよう、と考えました。また、デザイナーの佐藤可士和氏にお願いした前モデルのN702iDは、スクウェアなデザインでしたので、セカンドとして出すN702iSは、その対極を行くものをイメージしました。
――ボディカラーもケータイとしては珍しい、淡い色となっています。これはどういった狙いでしょうか?
児玉氏
いくつかポイントがあります。まずは着せ替えパネルがあるので、着せ替えしてもなじみやすい色を本体カラーに選びました。あとはグラスに入った飲み物を想起させるのが狙いだったので、美味しそうな色や食器のような色、人が口に入れるものをコンセプトに、抵抗感のない色を選びました。
――充電台も変わったデザインをされていますね。これもデザイナーさんがデザインされたのですか?
児玉氏
充電台は、NECのデザインです。デザイナー側からは、コップに乗せるコースターというアイディアがありました。しかし平型だと縦に置くのは難しいので、グラスを重ねるスタッキングのようなものをイメージしてデザインしました。あとはインテリアとの親和性を考え、ケータイに見えないものにしました。
――デザインは女性向けの印象を受けますが、やはり女性層をターゲットにしているのでしょうか?
児玉氏
最初に作ったモデルは、白い「Mineral Water」でした。デザイン家電で、白くて丸い空気清浄機などがありますが、N702iSもそのようなイメージで、基本的にはユニセックスなものとしてデザインしています。ただ、ラウンド感のあるデザインや、色のラインナップから、やはり女性の方に響いているようなので、広告なども女性にフォーカスして展開しています。
――加速度センサーを搭載し、本体の傾きを検知できますが、どういった狙いで加速度センサーを搭載したのでしょうか?
児玉氏
これは最初のコンセプトありき、です。コンセプトとして「グラスに入った液体」があったので、加速度センサーを搭載しました。さらにボタン操作の代わりに使えるようにも、応用してみました。
――中身の部分では、以前の端末と大きく変わったポイントはあるのでしょうか?
児玉氏
大きな変更はありません。しかし、NEC端末の弱点だった「画面の見せ方」については、細かい部分で改良を加えています。たとえばアイコンなどを変更しました。スケジューラーのアイコンには、いままでは「釣り」や「ゴルフ」などがありましたが、こういう部分に手を加えて、「サークル」や「レジャー」などのアイコンを増やしました。このほかには、日本語変換エンジンの「Mogic Engine」なども、新しいポイントです。
■ 初のHSDPA対応、ハイスピードFOMAの「N902iX」
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N902iXを担当した藤原望氏
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――続いて、N902iX HIGH-SPEEDについてお聞かせください。こちらのコンセプトを教えてください。
藤原氏
N702iSとは対極にあるモデルですね。スペックに重きを置かないN702iSに対して、N902iXは最新のHSDPA初号機です。外観も、ラウンド感のあるN702iSに対して、N902iXは機能に見合った未来的なデザインを採用しています。
――デザインも独特で、ちまたではスターウォーズ風とかいわれていますが。
藤原氏
特にこれといったモチーフがあるわけではありません。いろいろなイメージで受け取っていただきたいと思います。コンセプトとしては、宇宙船、未来感をキーワードとして、内部のデザイナーがデザインしました。実在の航空機や車のイメージからふくらませています。
――充電台のデザインまでは未来的にしなかったのでしょうか?
藤原氏
実は充電台もある意味、こだわっています。型番を見られるとわかるのですが、N901iSやN902iと同じものが使えるようになっています。男性は充電台を使う方が多いので、N902iからの乗り換え時にメリットになると考えています。
――背面はN902iと同じデザインなのですか?
藤原氏
コネクタカバーの形状など、ちょっとずつ変えると、まったく同じにするのは難しかったのですが、なんとかなりました。同じように見えますが、ハイスピード対応で、チップやメモリも大きくなりました。ボタン側のボディは厚さが出ましたが、液晶側の厚さを抑えることで、全体の厚さはN902iと同じになりました。この点はだいぶ苦労しました。こうした部分にこだわりがあったりします。
――他にどのようなこだわりがあるのでしょうか?
藤原氏
これはN902iXだけの話ではありませんが、たとえばmova時代に搭載されていて、FOMAになって消えた機能として、音声で時刻を通知する「ボイスクロック」という機能があります。これもN902iから復活させました。N902iXだけの機能としては、音楽ケータイとして使いこなすなら、メモリカードは1GBでは足りないだろう、ということで、2GBにも対応させています。このような細かい部分をいろいろと手を加えています。
――N902iXのターゲットはやはり、ハイエンド指向の男性なのでしょうか?
藤原氏
位置づけとしては9シリーズのさらに上位をイメージしています。9シリーズの機能を包含しつつ、HSDPAに対応する。音楽機能がメインというのも、ドコモとNECで合致したポイントです。
――HSDPA対応により注力されているポイントは、音楽機能だけなのでしょうか?
藤原氏
人気のあるコンテンツから検討して、そこからまず「ミュージックチャネル」が出てきました。そのほかにも、iモーションも強化しています。従来500KBまでだった容量が5MBとなり、クオリティも向上しました。データ量の大きな音声データなどを配信できるようになったこともあり、iアプリのゲームでも、声優によるボイスの入ったゲームなども登場しています。
――HSDPA対応のために、処理能力を向上させたりしているのでしょうか?
藤原氏
実は前のN902iなどから、ハードウェアは大きく変えていません。しかし、チューニングすることでスピードが速くなっています。たとえばダウンロードが速くなったのにあわせて、画面表示が速く見えるようにチューニングを加えました。HSDPAのエリア外で、通常のFOMAと同じ通信速度になっても、速く感じられるようにチューニングされています。
――N902iXはN902iSと近い時期に登場しましたが、同時に開発されていたということですよね。N902iSにあってN902iXに搭載されていない機能、というのも存在するのでしょうか?
藤原氏
N902iSはカメラ機能を重視して、6軸手ぶれ補正機能が搭載されていますが、N902iXは音楽機能に注力しているため、N902iと同等の2軸手ぶれ補正機能となっています。このほかにも、無線周りや開発タイミングの関係で、海外ローミング(海外の3Gネットワークを利用するWORLD WING。N902iSは対応している)や1.7GHz対応、電話帳預かりサービスにもN902iXは対応していません。
――N702iS、N902iX、N902iSと3機種が店頭に新機種として並んでいますが、それぞれの端末がまったく異なる方向性を持っていますね。
児玉氏
それぞれの端末で、狙っているところが違うので、力の入れ方もまったく異なっていますね。
藤原氏
バリエーションを広くすることで、さまざまなお客様に手にとってもらえるようにしています。さまざまなニーズがあるわけですが、そのニーズを満たすケータイとして一番になれるものを、ということに気を遣っています。どの機能にも平均的な機種というのは、逆に言うと誰にも選ばれないと言うことになってしまいますから。良い意味で「Nらしくないね」と言われるのは、うれしいことです。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
N702iSの製品情報(NEC)
http://www.n-keitai.com/n702is/
N902iXの製品情報(NEC)
http://www.n-keitai.com/n902ix/
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(白根 雅彦)
2006/10/02 15:23
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