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「W43CA」開発者インタビュー
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気長に付き合える道具としての携帯電話とは
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auより発売された「W43CA」は、秋冬モデルとしてEZチャンネルプラスやEZニュースフラッシュ、デコレーションメールなど最新サービスに対応しながら、持ちやすさ、使いやすさといった基本性能にこだわったカシオ計算機製のCDMA 1X WIN端末。CDMA 1X端末として発売された「A5512CA」のWIN端末版ともいえる内容で、基本性能を磨き、常に持ち・使う道具としての側面を掘り下げたこだわりの端末だ。
カシオ計算機、カシオ日立モバイルコミュニケーションズの担当者に話しを聞いた。
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井戸氏(左)と城氏(右)
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2005年7月に発売された「A5512CA」(左)と、今回発売された「W43CA」(右)
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――まず、コンセプトや位置付けなどを聞かせてもらえますか?
高木 健介氏(カシオ計算機 通信営業部 マーケティング課)
目玉となる機能は秋の新サービスに対応している部分ですが、使いやすさも追求した普及モデル、という位置付けです。定評のあるカシオの使いやすさをワード化し「ハートクラフト」という言葉としました。カシオケータイのモノ作り思想を表わす言葉として、ユーザー視点に立った使いやすさを訴求していきます。
――こだわりが感じられるデザイン面のポイントは、どのあたりでしょうか?
井戸 透記氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室 室長)
カシオとして、携帯電話の使い勝手や本質を追究したラインナップを持ち続けていたい、という思いがあります。高機能でトレンドのスペックを押さえ、2軸ヒンジなどのギミックを搭載したラインナップや、防水で耐衝撃性能を備えたG'zOneシリーズなどがありますが、もうひとつ、A5512CAのように持って使いやすく、携帯としてベーシックな機能を重視したラインナップがあります。今回のW43CAは、毎日たくさんメールをやりとりするような、携帯の基本性能を使い込むタイプのヘビーユーザーに向けたラインナップとして考えています。
ですから、持って開いて、使って、閉じて仕舞ってという一連の動作がスムーズに行なえるよう、そのためのデザインを一点一点、生真面目に作り込んでいったのがA5512CAであり、今回のW43CAです。
W43CAはトレンドの形状とは違いますが、一番使いやすい形、持ちやすい形、撮りやすいカメラの位置などを突き詰めた結果、今の形になりました。A5512CAの良い面は引き継いで、さらにキートップは使いやすい形状にしています。携帯のことを分かっている人にはこの良さが伝わると思います。
デザインで最大の特徴になるのはボディカラーを含めた全体の雰囲気や、使うときに目にする画面デザインではないでしょうか。A5512CAは画面デザインに特にこだわって作りましたが、我々の想像以上にユーザーに支持されました。一見地味でも、使った方には良さが分かってもらえて、買って良かったなと思ってもらえる。そういう携帯電話をWINでも作りたいと思いW43CAをデザインしました。
カシオがこだわってきた持ちやすさ、使いやすさを突き詰めるとどういう形になるのか、それをやってみたかった、という思いもありますね。
――W41CAの後継モデルというより、A5512CAの後継モデルという位置付けですね。想定しているターゲットは?
高木氏
A5512CAのユーザーが、そろそろ機種変更で端末を変え始めるタイミングと見ています。その層を中心に、カシオの折りたたみ型端末のユーザーを継続して獲得していくのと、MNPにおける他キャリアからの移行ユーザーを狙うモデルですね。
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ソリッドカラーを基本に質感を追求
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ボディ内側の塗装もすべて異なる色
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――ボディカラーはどのようにして決めたのでしょうか。
城 聡子氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室)
ネイビー以外のカラーには、実際にはわずかにパールが入っていますが、基本的にソリッドカラーに見えると思います。フェイクのパールやメタリック塗装でギラギラしただけのものには違和感を感じていたので、ソリッドカラーの塗装で表現できる質感で、できるだけ上質なものを作ろうとこだわりました。まるで焼き付け塗装されたような、密度のある色が再現できていると思います。表面を光沢仕上げにしているため、ネイビーなどは指紋が目立ってしまいますが、磨いたりする中でも愛着を感じてもらえたらと思います。
井戸氏
携帯のボディに使用できる顔料といっても限られているので、W43CAの「レッドポスト」のような一見ただの赤でもなかなか難しいのです。塗装を重ねたり特殊な配合を行なったりしましたし、携帯としては今までに無かった赤になっているのではないでしょうか。使う人の満足感や、使い込んで愛着が湧くようなボディカラーのラインナップだと思います。
城氏
ソリッドカラーの塗装は、明度・彩度・色相によってチープに見えてしまうことも多いので、とても気を遣いました。また「レッドポスト」と「ネイビーインク」のボディの内側はグレーになっていますが、メインのボディカラーとグレーの対比をベストにするため、各々専用のグレー塗料を起こしています。製造現場では部品管理の都合上、同系統の色で微妙な差をつけることは避けられる場合が多いのですが、どうしてもこだわるべき点と思い、外装設計の方をはじめ多くの方に協力をいただき実現できました。
また形の話になりますが、最近では、携帯電話以外の別の製品をモチーフにしたものが増えていると思います。多様化とはそういうことかもしれませんが、手に持つ道具としての使いやすさからあまりに離れたものには疑問を感じます。
道具には、用途に適した典型・普遍の形でありながら、審美性の高いデザインのものが数多く存在します。W43CAは「ケータイらしさの中に良さがある携帯」といった、正直でまっすぐな道具であることも目指してデザインしました。
井戸氏
象徴的なのは端末を開けた状態でしょうか。普通の電話機の受話器のようなイメージになりますし、持って話す姿の美しさを特に意識しました。
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「顔」のバリエーションの一部。すべてアニメーションで動きのある表情が楽しめる
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ペンギンも少しだけ登場する
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――画面デザインは、さらに注力されているようですね。
城氏
そうですね。Flashの容量が少し増えたので、今までよりも少し贅沢にしてみました。雰囲気はA5512CAに近いと思います。メニュー画面は、ベーシックなタイプから遊び要素の強いタイプまで、バリエーションのバランスを心がけました。アイコンを選択すると、それぞれの機能にまつわるショートストーリーが展開するメニューや、アイコンを選んだ時のアクションが楽しいオモチャ的なメニューもあります
待受画面の壁紙では、Flashを効果的・機能的に活用し、カレンダーと時計を表示するタイプを用意しました。カレンダーは端末のスケジュール機能とはリンクしないシンプルなものですが、時計は秒の表示まで取得させています。時間取得は、ほかの待受画面でもフル活用しています。昼と夜で表情の変わる街並みの壁紙は、携帯電話の中に、ひとつの小さな世界があるような有機性を感じてもらいたくて、様々なパーツやイベントを駆使して丁寧に作りました。
A5512CAから続く待受画面として、ランダムにいろいろなパターンが登場する「顔」も採用しました。A5512CAと比べて倍以上のパターンが入っています。従来同様、時間帯に合わせて出現するパターンのほか、さらに今回は、曜日と時間帯を掛け合わせたようなパターンもあり、週末は夜更かしをしていたり、土曜なら自炊してブランチ、日曜には外食をしていたりします。
季節の概念も新たに取り入れて、春なら花粉症、夏だと蚊を叩いたり、秋はキノコ狩りもしますね。ちなみに大晦日は、徹夜で年賀状を書いたり……。こういった、季節で楽しめるものもたくさん入っていますので、気長につき合ってもらえたら嬉しいです。
井戸氏
A5512CAでは、この「顔」が特に評判が良かったんですね。癒される、和めるといった声をもらいましたし、赤ちゃんに見せたら赤ちゃんが泣き止んだ、というエピソードもありました。人の気持ちの部分に対して、本質的な面白さを提供できたからこそ多くのユーザーに支持されたのでは、と考えています。
城氏
あと、「ケンカ最中のカップルが、画面を見てふと休戦した」というエピソードもありました。そういうエピソードを聞いた時は、作った側としては本当にじーんとなってしまいます。
――ケータイの中にキャラクターが住んでいるのではなく、ケータイが生きている、という印象ですね。
井戸氏
城から、「ケータイに人格を持たせたい」という提案はありましたね。ユーザーが、この人はどういう人なんだろうと想像するような、そういう造りになっていると思います。
城氏
待受画面などで用意しているものは、キャラクターとして前面に出したい、という意図は無く、あくまで「カシオの、この携帯の中に住む住人達」という、一心同体の存在であることにこだわっています。
待受画面はユーザーの好みでどんなものにも変更できます。本心を言えば、例えばペットやお子さんの写真といった、ユーザーそれぞれに「可愛い」と思えるものの方がよほど可愛いはずです。それらには到底かなわないですが、プリセットで入るものに何を用意すべきか? と考えると、やはりその携帯のコンセプトや外観、様々な機能と手を取り合って初めて存在出来るようなものでなければ意義がありません。
W41CAで待受画面のFlashに登場したペンギンも、やはりカシオのベーシックジャンルの携帯にだけ、住む生き物なんですね。W43CAにも、少しですがペンギンが登場する画面があります。仲間の動物が増えているのですが、仕切り役みたいな役割で登場しますよ。
井戸氏
実は、ペンギンは2軸の端末に住んでいるという設定なので、今回は少しだけの登場です。
城氏
サブディスプレイは4パターンの時計表示を入れました。A5512CAではサイドキーを押すとランダムにアニメーションが表示されましたが、W43CAでは1時間に1回、突発的なアニメーションが起こるようになっています。アニメーションは計10種類で、朝、昼、夜の限定で出てくるバリエーションもあります。
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有機ELを採用したサブディスプレイ
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――サブディスプレイですが、有機ELが採用されていますね。
井戸氏
液晶にするか有機ELにするかで議論がありましたが、有機ELを採用した方がわずかに薄く作ることができて、新しさや高級感が出しやすいという面からも、有機ELディスプレイを採用することになりました。
常時表示タイプの液晶のほうが利便性は高いといえますが、今の液晶では、ドット数が多く解像度が高いものは、どうしても思ったような白色とコントラストが出ないということもあります。
本間 敦氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム)
今回、新サービスのEZニュースフラッシュのテロップがサブディスプレイでも表示できますが、流れていく文字は有機ELのほうが残像が少なく向いているという判断もありました。
――端末の機能などについて、苦労された部分は?
本間氏
W43CAでは使いやすいケータイを作るというコンセプトを掲げ、ユーザーが慣れしたんだ折りたたみ型に、画面デザイン、カメラ機能、音楽機能などトレンドスペックにこだわった機能を搭載しました。
一番苦労したのは、カシオの折りたたみ型端末として初めて液晶側ボディの先端にカメラを配置したことです。使い勝手という面では、指がカメラに重なりにくいという意味でもA5512CAより進化した部分だと思います。
受話口と送話口は凹凸になっていて、閉じると重なるようになっていますが、ここもコンマ何mmというレベルで調整を重ねた部分です。
井戸氏
受話口の凸部分には背面にあるカメラモジュールが収まっていたりもしますが、声が出る・入るというイメージから、ふくらみとくぼみをデザインしています。
ワイド液晶を採用し、その先端にカメラを搭載しているので、ボディが“長い”と感じられるかもしれません。デザイン的なベストバランスよりは少しだけ長くなっていますから、液晶周辺をうまく収めることは今後の課題ですね。
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本間氏(左)と石田氏(右)
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通信端子とmicroSDスロットは2段重ねに
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電池カバーはボタンを押して外すタイプに
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――容量のタイプや発売メーカーが少ない中、microSDカードを採用したのはどういう意図ですか?
石田 伸二郎氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム)
今後薄さの競争が激化してくる中で、microSDカードが主流になるだろうと考えました。市場の製品も今年の秋までには2GBぐらいまでには容量が上がると聞いていますので、どこかのタイミングで各社microSDを採用することになります。前機種がminiSDのユーザーにはデータの移行に負担をかけてしまいますが、USBクレードル対応なので、カードの出し入れの頻度は少なく、実使用上の不便は最小限にできるのではないかと考えました。
――microSDスロットは通信端子と2段重ねになっていますね。
本間氏
ケータイを開いた時の美しいラインを実現する為に、省スペース化を図った結果、今の場所になりました。
――電池カバーはボタン式で開ける仕組みですが、これは何故ですか?
本間氏
W43CAでは、FeliCaのアンテナを電池カバーの裏に実装しています。そのため、電池カバーには本体と接続する端子も設けられています。デザインや実装場所の問題というよりは、FeliCaのアンテナ性能を上げるという点で、この実装方法を採用しました。電池カバーを無くしてしまうとFeliCaの機能が利用できなくなるので、外れにくいようにボタンを押しながらカバーを外す仕組みにしています。
――機能面で、ほかにW41CAやW42CAから進化した部分はありますか?
本間氏
W41CAからの進化では、最新サービスのEZニュースフラッシュやEZチャンネルプラスに対応しているところですね。カメラ機能ではノイズリダクションのチップを搭載し手ブレ軽減機能を搭載しています。室内の動きの速い被写体でも、従来比で約4倍のシャッタースピードで撮影できますので、手ブレ、被写体ブレの両方を軽減できる性能に仕上がっています。
音楽機能では、W41CAでは約6.5時間、W42CAで約15時間の連続再生が可能でしたが、W43CAでは18時間の連続再生が可能になっています。また、使用頻度の高いユーザーから要望の多かった「電池の持ちに対する改善」も合わせて行ない、連続待受時間は300時間、連続通話時間は220分に伸ばしました。
――USBクレードル充電台は、WIN端末ではW41CAまで採用された横置きタイプではありませんね。
井戸氏
置き方はデザインとして決めたのではなく、企画担当と相談しながら決めました。2軸ヒンジではビュースタイルで横置きでしたし、A5512CAやG'zOneの卓上ホルダはサブディスプレイが常時表示だったので置き時計っぽく見せる縦置きでした。W43CAはサブディスプレイが常時表示ではないので、抜き差しがしやすい平置きを採用しています。
――USBクレードル充電台はカシオのこだわり、ということでしょうか。
本間氏
W41CAからはLISMOに対応し、サービスを引き立てるという意味でも外せないツールだと考えました。
石田氏
この秋冬モデルでは、唯一のUSBクレードル対応になっていますが、カシオではA5403CAからUSBクレードル充電台を採用し、徐々にユーザーからの評価が上がってきています。特に、LISMOを頻繁に利用するユーザーからは、「一度つかったら手放せない」との声をいただいています。LISMOの機能には、音楽だけでなく、写真、電話帳、メールのバックアップ機能も付属しており、クレードルに乗せるだけでバックアップできるのは大変便利な機能だと思っています。ユーザーからの評価が高いものは続けていきたいですし、続けることでカシオのファンになってもらえると考えています。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(KDDI)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/w43ca/
製品情報(カシオ計算機)
http://w43ca.jp/
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(太田 亮三)
2006/09/26 14:54
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
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