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「A5512CA」開発者インタビュー
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親近感のあるグラフィック、道具を越えた「パートナー」のように
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auより発売された「A5512CA」は、コンパクトなボディや背面の待受時計、作り込まれた画面デザインが特徴のカシオ製CDMA 1X端末。メガピクセルカメラやQVGA液晶といったスペックを一通り備え、特徴的な背面の待受時計はアラームやストップウォッチといった機能も利用できる。
便利な機能が搭載される一方で、各種画面デザインにはFlashを利用したこだわりのグラフィックが用意され、端末を開けるたびに表情を変える待受画像など、ユーザーを楽しませる工夫が随所に盛り込まれている。
これまでのハイエンド端末に絞った戦略から一転、今夏はバラエティに富んだ3端末をラインナップするカシオ。その同社初というエントリーモデルに位置づけられた「A5512CA」は、女性や子供、その親といった、これまでとは違ったユーザー層をターゲットにしている。カシオ日立モバイルコミュニケーションズ、カシオ計算機の開発担当者にお話を伺った。
■ 初のエントリーモデル、時計機能にもフォーカス
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左から、城 聡子氏、西尾 豊一氏
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――まず、開発にあたってどこに注力されたのでしょうか?
石田 伸二郎氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム)
A5512CAは、カシオ初のエントリーモデルとして、初めての方でもauの便利な3Gサービスを利用できるように「いかに敷居を下げるか?」に注力しました。
これまでのカシオの端末は高機能なハイエンドモデルが中心で、ユーザーもある程度使いこなせる方を想定していましたが、反面、自分の親や子供に勧めにくい一面がありました。スマートモードや設定メニューなどを分かりやすくし、誰にでも勧められて、勧められた方も簡単に使えて、しかも愛着を持っていただける、そんな仕上がりを目指して開発をスタートしました。
西尾 豊一氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ)
ユーザーのニーズを考えた場合、メガピクセルカメラは当たり前になってきていますので、カメラ機能でメガピクセル以上を実現しながら、いかに小さくて使いやすい端末を作るか、というところが一番大きな開発目標になっています。
ターゲットとして想定しているユーザー層は主に女性で、母親と子供といったように幅広い層を含めて設定しています。そういった意味で、子供に持たせる場合に母親が安心できるような機能も搭載しています。
一般的なユーザーが携帯電話でよく使う機能は「メール」「通話」「時計」の3つという意見もあり、最近では目覚まし代わりに使っているユーザーも多いと思います。そういった時計機能をいかに使いやすくするかという部分で、時計メーカーでもあるカシオのノウハウを活かして開発しました。実際の仕上がりはデザイナーがかなりブラッシュアップして、便利で楽しいものになったと思います。
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小山 仁久氏
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――ソフトウェアなど、中身にかなり注力されているようですが。
小山 仁久氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ソフト設計グループ リーダー)
中身のデザインは、見かけ上かなり作り込まれたという印象を受けると思いますし、スマートモードなどは触れてもらえれば簡単に使えるということが体感できると思います。
最近“安心”というキーワードが注目されていますが、今回、ホットキー機能として従来のカシオ製端末に搭載の「ホットダイヤル」に加え、大きな音を鳴らすことで、周囲に対して自分の方に注意を向けてもらう「ホットブザー」機能を新たに搭載しました。
もう一つ、これはデザインとも大きく関係してくることですが、背面のサブ液晶の機能も挙げられると思います。側面にあるモードキーを利用して、端末を閉じている状態でいかに楽しく便利な機能を使ってもらえるか、というところで、ストップウォッチやカウントダウンタイマー、アラーム設定が簡単に閉じた状態から操作できるようになっています。
このように、端末のデザインとあわせて、随所に見やすく、使いやすく、といった工夫をしています。
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[0]キーに割り当てられたホットキー機能
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新たにホットブザー機能が追加
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■ 見ているだけでも楽しい画面デザインを
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井戸 透記氏
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左半分の3台がA5512CA、右半分の3台がコンセプトモデル。ほとんど変わらない状態で商品化されている
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――実際に触ってみると、全体を通して便利さと同時に楽しさも伝わってきます。コンセプト段階から“楽しさ”にポイントをおいていたのでしょうか?
井戸 透記氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室 室長)
デザインで心掛けたのは、実用的で一通りのスペックがバランスよく搭載されている端末なので、持ちやすさやボタンの押しやすさなどを“真面目”に考えてデザインしたことです。ただ、それだけではつまらないので、カラーリングや、日常的に一番目にする画面デザインにもこだわりました。画面デザインは他社の携帯電話ではおざなりにされがちだと感じていたので、今回の端末では特に力を入れました。
実は、社内で先行してコンセプトモデルを制作していました。時計にフォーカスしたエントリーモデルを開発するという企画が出てきた時、我々(デザインセンター)も時計をモチーフにしたコンセプトモデルを作っていたんです。これがA5512CAのスタート地点になっていて、“丸い時計”というモチーフもそのままですし、シルエットもコンセプトモデルとほぼ同じです。背面の丸みを維持するため、カメラはコンセプトモデルではテンキー側ボディへの搭載を想定していたのですが、設計や技術陣の頑張りで実際には液晶側ボディの背面に搭載できました。
コンセプトモデルの社内での評価が非常に高かったので、このボディに中身を入れていく、という方法で開発を進めました。かなりコンセプトモデルに近い形で商品化できましたし、モノの作り方、流れとしていい循環が確立されてきたのかなと感じています。
画面デザインに関しては、形状やカラーリングができ上がっていく過程で徐々にテーマが固まっていきました。エントリーモデルというたくさんのユーザーに使ってもらえる可能性のある端末ということで、城から、これまでの携帯の画面デザインとは違った風を吹き込みたいという思いを伝えられました。商品化されたものの画面デザインは、城の発案で始めたものです。
城 聡子氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室)
従来の携帯電話の画面デザインでは、とかくサイバーなグラフィックや当たり障りのない風景写真が端末コンセプトに関わりなく暗黙の了解のように入っていたり、一方、女性を意識した商品には、そこを極端に強調し逆に特殊な方向に向かっているようなものが多かったように感じられました。そういった「ケータイ画面グラフィック特有の常識」的なものは一切排除して、この端末を選んで下さるユーザーの方々の普段の生活の中における、親近感のある等身大感覚のグラフィックを作っていきたい、というのがまず最初にありました。
資料として多く見たものは、メインターゲットとしている若い女性が行くような雑貨屋で見かけるグラフィック類です。中でも注目したものはそういったお店にある洋書の絵本です。見ているだけで楽しかったり和めたり、パラパラめくるだけで気持ちよくなれるような、そういった要素を日常的に使う携帯電話の画面に盛り込められたらなと思いました。絵やタッチはアナログで親しみやすいものにしていますし、表示を開くたびに楽しめる、和める、ケータイをそういう存在にしたい、というのが画面デザインの一番の趣旨です。
具体的には、起動画面は今までのマシンの電源オンといったイメージではなく、飛び出す絵本やポップアップのカードをイメージして作りました。アイコンメニュー画面は4種類のうち2つはシンプルで使いやすさを意識し、残りの2つは触るだけでも楽しいようなアイコンを意識して作りました。Flashを利用して、とても凝ったつくりになっているものもあります。
顔の壁紙は一見同じ絵のようですが、30種類以上のパターンの絵が携帯を開けるたびにランダムに出るようになっています。中には、朝の「おはよう」や夜の「おやすみ」といったイメージの絵が時間に同期して出る仕掛けもありますし、電池残量が少なくなってきたことを知らせる絵もあります。また、1つの絵から簡単なストーリーの展開が始まり、さらに途中でランダムに分岐していくという仕組みもあります。他の壁紙や時計表示もランダム性を採り入れて楽しめる作りにしています。
ここでやりたかったことは、携帯電話そのものにユーザーを楽しませようとする意志があるかのようなキャラクター性を与えられないか、ということです。各種機能アニメーションも「この機能を短いお話に仕立てたらどんな風になるだろう?」と考えました。そこには、ちょっとした動作中の待ち時間も楽しんで頂けたら、という思いがあります。携帯電話という今私達にとって最も身近なプロダクトだからこそ、「道具」を越えた「パートナー」になれたら、と作る側のホスピタリティーのようなものをふんだんに込めたつもりです。
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Flashを使った待受画像の一例
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開けるたびに違うグラフィックが現れる
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――これまでのカシオ製の端末は、高機能・ハイテクなイメージでしたが、A5512CAはアナログで、ユーザーに近い場所に降りてきた、というイメージですね。
井戸氏
日常で使うシーンを大事にしようと思っていましたし、肌合いや温度感といったものが携帯という端末にも必要なのではないかと思っています。本体のカラーも最初は陶器の質感や色むらをイメージしていましたし、偶然やアナログといったキーワードがコンセプトデザイン段階からのテーマになっていたと思います。
こだわりという意味でG'zOneが注目されますが、デザインする立場からすればコンセプトや手法が違うだけでA5512CAも同じだけのこだわりで作っています。デザインでも商品企画でも、とことんこだわるのがカシオのカラーかなと思っているので、あるひとつのこだわりの格好としてA5512CAもやりきれているのかなと思っています。
もともとカシオの携帯の仕様・ユーザーインターフェイスは使いやすいとの評判をいただいていましたが、黒子的で注目されにくい部分でもあります。画面のデザインが入り口となって、実はカシオって使いやすいよね、と仕様面でのユーザーフレンドリーへのこだわりも感じていただければ、非常にいいことだと思います。
■ 「安心ナビ」へは仕様策定段階から参加
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左から、荒巻 龍男氏、江口 剛氏
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――「安心ナビ」への対応は、ターゲットとする母親と子供、といったと部分とも重なってきます。
荒巻 龍男氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ソフト設計グループ)
“安心”をポイントにしたコンセプトがあるわけですが、BREWで何ができるのかという部分で、位置確認情報を他の用途に使うという企画が出てきまして、KDDIで作成されることになっていた安心ナビがコンセプトに合うということで、仕様策定の段階から参画し、搭載することになりました。本機能は、通常モードのメニューからだけでなく、スマートモード、ティーンズモードのメニューからもアクセスできるようにしています。
楽しい、という意味では「live earth」というアプリも搭載しています。待受に設定して自転する世界時計としても使えますし、雲画像も更新できます。
――メガピクセルカメラを搭載して、他の機能を落とさずに小型化されていますが、設計などで苦労した点はどのあたりでしょうか?
江口 剛氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 機構設計グループ)
この端末のデザインモックを初めて目にしたとき、どうしようかなと頭を悩ませましたが、端末のコンセプトを理解したうえで、持ちやすさや部品のレイアウトを試行錯誤して商品化に至りました。
井戸氏
デザイナー側からの要求にもすごく応えてもらえましたし、予想以上にスムーズに開発が進んだと思います。過去にやりたかった、ヒンジを左右対称にしたり、充電台に固定する切り欠きを無くしたり、開きすぎを防止するストッパーを無くしたりといった、デザイン的に余分な要素を無くすことが全部実現できていますね。
――各々のこだわり具合に、企画をまとめる方は大変だったのではないでしょうか?
西尾氏
任せている部分もありますが、コンセプト段階で話し合って決めていた内容ですから、お互いの理解度が高い中で目標とするところも一致していたのかなと思います。日程から考えると開発がスタートしたのはそれほど早い時期ではないのですが、レベルの高さを維持しながら開発が終えられたのは、社内的なことながら凄いと感じました。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
ニュースリリース(KDDI)
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2005/0707a/
ニュースリリース(カシオ)
http://www.casio.co.jp/release/2005/a5512ca.html
製品情報(KDDI)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/a5512ca/
製品情報(カシオ)
http://www.casio.co.jp/k-tai/a5512ca/
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(太田 亮三)
2005/07/08 11:07
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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