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「SO902iWP+」開発者インタビュー
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FOMA初の防水ケータイが目指すもの
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SO902iWP+
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30日、FOMA端末としては初めて防水仕様を備える「SO902iWP+」が発売される。「ソニー・エリクソン」と「防水」の出会いについて、商品企画担当の西村氏と設計担当の今崎氏に聞いた。
■ 防水に対する根強いニーズ
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設計担当の今崎氏(左)と商品企画担当の西村氏(右)
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――防水性能を備えることになった理由を教えて下さい。
西村氏
「なぜソニー・エリクソンが防水を」という声はあるかもしれませんね。最初は我々も「防水ケータイと言えば、趣味性が強くニッチな商品」というイメージがありました。一方、メーカーとしてマーケティング調査を行なうと、防水機能を求める声やニーズはきわめて強く、常々寄せられていました。趣味性が強い分野にしては根強い意見があるのはなぜか、と考え、あらためて独自調査を行ないました。
その結果、のべ人数で3人に1人は、水による何らかの被害を経験していることがわかりました。特に女性の占める割合は大きいことが明らかになりましたね。ポケットが浅い、あるいはポケットがない服装が多かったり、主婦層ではキッチンなどで活動したりするという要素があるからかもしれません。防水と言えばアクティブなイメージですが、実際メリットがあるのは、日常的なシーン。端的にいえばケータイがないと生きていけないような人ほど、防水のメリットを享受できる、というわけです。ソニー・エリクソンらしい携帯電話を作り上げていく中で、90Xiシリーズを求めるユーザーに新しい価値をもたらすべく、開発したことになります。
当社のFOMA3号機として提供するにあたって、我々としてはハイクオリティなデザインと機能を融合させたケータイを作ろうと考えました。
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バッテリーカバーを閉じるネジ。回すとカバーを押し上げる機構となっている
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ケータイこそ防水のメリットを享受できる、と語る西村氏
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――生活防水レベルではなく、IPX7等級というレベルの防水性能を備えた理由は?
西村氏
我々としては、SO902iWP+で新しい使い方が拡大できると考えています。雨が降っているときでも連絡しなければいけないシーンがあるでしょうし、半身浴しながら携帯電話を使いたい時もあるでしょう。そんな場面で安心して使っていただけるように、IPX7という仕様を満たす必要があると判断しました。その上で、普通に使えて格好良くて、コンパクトなハイエンド端末を目指したわけです。消費者向け製品として、一家に一台というものは数多く存在しますが、携帯電話は一人一台というレベルまで普及しています。その中にはメールなどの“想い出”と言えるデータが詰まって、大事なコンテンツの量は日々増加しています。防水だからこそ(それらのデータを)守れるシーンがあると思いますね。
今崎氏
たとえば半身浴中の利用を考えると、IPX7等級を満たさなければいけませんね。生活のあらゆるシーンで水を気にせず携帯電話を利用するのであれば、必要な機能と言えるでしょう。
防水構造を採用することで、どうしてもボディサイズは大きくなってしまいます。SO902iをベースにすることで、「いかにも防水」という形は避けたかったところです。最初のモックアップはそれなりの大きさでした。
西村氏
当社にとって、SO902iWP+が初めての防水ケータイですので、ノウハウはありませんでした。カバーをつけるようなものなのでボディサイズはどうしても大きくなってしまうところです。開発をスタートした当初はびっくりするような大きさでした。ちなみに、一般的には開発を進めていくとボディサイズは大きくなってしまうのですが、SO902iWP+では徐々にボディサイズが小さくなっていきましたね。これはかなりレアなケースなんですが、デザイナーから設計まで、社内でコンセプトや狙いを共有できたからこそ、実現できたと考えています。
今崎氏
防水機構を設計する上では、ソニー・グループのノウハウも活かされています。防水対応のソニー製品が登場していますが、それらの工場を見学したり、設計者と話したりしました。
■ ハード面のポイント
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防水仕様の難しさを語った今崎氏
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――設計で困難だったところは?
西村氏
難しかった点は数多くあります。携帯電話は、防水のメリットが多く見込める一方で、防水することが非常に難しい製品でもあります。デジタルカメラであれば、シャッター部分や操作ボタンなどが防水すべきポイントになりますが、キーだけ見ても、携帯電話はその数が非常に多い。
今崎氏
たとえば着信メロディを鳴らすことを考えると、スピーカーを設けなければいけない、つまり穴を開けなければいけません。またボディの素材には、パッキンの圧力に対応できるよう従来よりも固い素材を採用しています。蓋になる部分は少ないほうがベターですので、外部接続端子のところにメモリースティックDuoスロットを同じ場所に配しています。
設計時には、デザイン担当から「充電用端子を見えないようにして欲しい」と言われたこともありましたが、さすがにそれでは充電できなくなります。最終的には、カメラ周辺と同じように円形に仕上げて、イメージの統一を演出するように仕上げています。
SO902iWP+は、見た目は普通の携帯電話だけど防水、という点を目指していました。そのためにコンパクトさを追求しましたが、そのため、SO902iと比べると、カメラの性能は130万画素(SO902iは300万画素)になっています。また、ボディの内側はダブルモールドを採用しており、樹脂とエラストマーを一体化した構造になっています。その上にボタンなどが付いているというイメージ、二層構造風の機構を採用しています。
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アクティブホルダーのストラップ部分もこだわったデザインに
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――パッケージには、アクティブホルダーが同梱されます。耐衝撃性は備えているのでしょうか?
西村氏
同梱のアクティブホルダーには耐衝撃性はありません。ディテールにこだわった端末で濡れても問題ないですから、装着することで、デザインを表に出して楽しんでもらえるということです。また全体の雰囲気ががらりと変わりますね。オンとオフの切り替えを楽しんでいただけるわけですが、同梱するからこそ従来のケースとは異なった価値観で使っていただけると思います。
今崎氏
最初からアクティブホルダーのアイデアはありました。付けたまま操作できるようにしていますし、顔を見せるキャリングケースはなかなか存在しないですよね。耐衝撃という点では、一般的な携帯電話としての性能は備えていますが、特別な性能は備えていません。
■ ディテールの積み重ね
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リーダーライターにかざすとLEDが光る「FeliCaサイン」
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――防水仕様でありながら、おサイフケータイに対応していますね。
西村氏
携帯電話を積極的に使う方に向けて「防水が新しい使い方をもたらす」というコンセプトで作り上げた端末ですので、おサイフケータイは必須と考えました。ハイエンド、ハイクオリティケータイとして必要なものはなにか。たとえばスピーカーを防水にしたからと言って音が悪くなる、というのは本末転倒ですから。
FeliCaサインも備えており、リーダーライターにかざしたときには、ディスプレイの上部にあるLEDが光ります。このLEDはFeliCaサイン専用のものです。直感的に安心して使っていただけるように搭載することにしました。
今崎氏
光だけではなく、バイブレーションも動作して、「今FeliCaを使っている」と伝えるようにしています。光り方にもこだわりが詰まっています。
西村氏
数字キーについても工夫を凝らしており、防水でありながらSO902iより押しやすくすることを狙いました。デザイン面でもシャープな印象を与える形状にしています。細かなことですが、随所にこだわりを詰め込んでいます。その1つは、バッテリーカバーを留めるネジはスクリューロックと呼んでいるパーツですが、樹脂製ではなく金属製パーツにしています。スピン目などは金属ならではの質感ですね。またマクロ切り替えスイッチの周辺もローレット加工しています。
ボディカラーを見ても、アクティブホワイトにはユニセックスなイメージを伝えるオレンジを入れて、側面はディンプル加工(点の凸状加工)しています。またシティダークはメッキ風の加工を施して、黒光りする高級車のようなイメージとマットな質感のコントラストを演出しています。こういった面はデザインとして採用した意味が大きいですね。防水に加えてハイクオリティなデザインを融合させることで、相乗効果での価値向上を目指しています。このほか別売のオプションですが、充電台も非常に注力した部分です。実際にセットした際に映えるようなデザインを目指しました。
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別売の充電台。デザインに注力したという
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SO902iWP+を置いたときのシルエットの美しさも追求した
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SO902iWP+(左)と、SO902i(右)
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SO902iWP+(左)と、SO902i(右)。厚みもさほど変わりない
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今崎氏
SO902iと比べると、SO902iWP+は少し大きなボディサイズですが、その分、全て防水機構に費やされています。その上でFeliCa用のアンテナを張り巡らし、携帯電話としての内部構造は(SO902iと)ほぼ同等に仕上げています。
またディスプレイやキー周辺のボディは、ヘアライン風の外観を採用しています。これは非常に苦労した点で、樹脂の箔を成形する際に印刷で定着させるような作りになっているのですが、これがなければのっぺりした印象になってしまいます。シルバーの色調整も何回も行なっています。
西村氏
時計アプリもプリセットしていますが、これもこだわりの1つです。デジタルのものですから、どのようなデザインも可能ですが、今回はクロノグラフの質感を強く打ちだしています。外観やメニュー画面を含めて、ディテールへのこだわりがデザインの鍵になっています。単に防水が付いただけではなく、そんなこだわりを含めて、新しい楽しみを感じて欲しいですね。
――今後もソニー・エリクソン製防水ケータイの登場に期待して良いでしょうか?
西村氏
SO902iWP+を開発していく上で、さまざまなノウハウを獲得できたと考えています。将来的には、SO902iWP+を超える機種を開発していきたいですね。
――ありがとうございました。
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クロノグラフをイメージしたプリセット時計アプリ
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バッテリーカバーを開けるためのオープナー。デザインはSO902iWP+本体にあわせている
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■ URL
製品情報
http://www.sonyericsson.co.jp/product/docomo/so902iwpplus/
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(関口 聖)
2006/06/29 13:11
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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