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第273回:IPX7 とは
大和 哲 大和 哲
1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)


電気機器が「一時的潜水」可能であることを示すIPX7

IPX7等級の防水仕様をもつ「SO902iWP+」

IPX7等級の防水仕様をもつ「SO902iWP+」
 最近、「お風呂で使える液晶TV」や「防水デジタルカメラ」など、防水性能を持つ電気製品のカタログを見ると、防水性能の指標として「IPX6」「IPX7」という記号が書かれていることがあります。携帯電話でも、最近発表になったドコモのFOMA SO902iWP+には防水性能があり、「IPX7」相当の防水性能を持つとされています。

 このIPX7とは、JIS/IECで定められた保護等級を示すもので、それぞれ「暴噴流に対する防水性能」「一時的な潜水に対する防水性能」を示すものです。具体的な規格としてはJIS C 0920(IEC 60529)でこの規格は定められています。

 JISは、日本工業規格と言い、日本の工業標準化法に基づき制定されている工業品の標準を定める国家規格です。一方、IECは国際電気標準会議で定めている国際的な標準規格で、国際標準を定義するISOの電気・電子部門に関する標準です。つまり、IPX7は、国際的に定められた標準に則った防水性能を示す指標だと考えていいでしょう。

 IPX7に相当する防水性能を持つ電気機器では、外殻で内部の電気機器を保護していますが、これは、ある条件下で機器の水に対する保護試験を行ない、問題なかった場合のみ名乗ることができます。

 具体的な条件としては、

  • 温度範囲:15~35℃
  • 相対温度:25~75%
  • 大気圧:86~106kPa

という条件下で、IPX7の場合、以下のような一時的潜水試験条件を満たす必要があります。

  • 高さが850mmに満たない外殻の場合、最下端が水面から1メートルの潜水
  • 高さが850mm以上の外殻の場合、最上端が水面から150mmの潜水
  • 試験時間:30分
  • 水温と外殻の温度差が5℃以上あってはならない

 IPX6の場合、弱点となるような部分も含め、水がかかる可能性がある全ての方向から以下のような条件で放水し、テストに合格しないと名乗ることができません。

  • ノズル先端:2.5メートルの位置で直径約120mmとなる水流
  • 放水率:毎分100リットル
  • 表面面積1平方メートルあたり放水時間 1分間
  • 最低試験時間:3分間


 逆に言うと、これらの条件にあてはまらない環境における防水性能は保証されていないことに気をつけておいたほうがいいでしょう。たとえば、実際の利用環境では急激に温度が変わる場合があります。たとえば、もともと機械が熱を発していたところに冷水を浴びて、想定外の温度まで下がった場合などは浸水する可能性も否定できません。これは、機械の構造によっては、外殻内部の温度が下がると内部の空気の圧力が急激に下がってしまい、スピーカーの穴などから水を吸い込んでしまう、と考えればわかりやすいでしょう。


IPコードとは

 IPX7を含むIPコードは、もともとJISでは「防塵、浸水の保護等級」の分類を規定したもので、防水性能に関しては、以前のJIS保護等級とほぼ同様の指標となっています。ちなみにIPコードとは国際的な保護に関する規格であることを意味する、Internatinal Protection codeのことです。

 IPコードは、「IP」に続く4文字で、その製品がどれだけの防じん防水性能を持つかを表わします。最初の1文字目は、機器にスピーカーのような穴がある場合、塵などの固形物の侵入に対する保護等級を示していています。

0:保護なし
1:こぶしが危険な箇所へ接近しないように保護している
2:指での危険な箇所への接近に対して保護している
3:工具での危険な箇所への接近に対して保護している
4:針金での危険な箇所への接近に対して保護している
5:4と同様である程度まで塵埃の侵入を許容する
6:塵埃の侵入を許容しない


 2文字目は、水の浸入に対する保護等級です。

0:保護なし
1:鉛直に落下する水滴に対して保護する
2:15度以内で傾斜しても鉛直に落下する水滴に対しても保護する
3:散水に対して保護する
4:水の飛まつに対して保護する
5:噴流に対して保護する
6:暴噴流に対して保護する
7:水に浸しても影響がないように保護する
8:潜水状態での使用に対して保護する


 3文字目は、危険箇所への近接に対する保護等級です。

A:こぶしによる接近に対して保護する
B:指による接近に対して保護する
C:工具による接近に対して保護する
D:針金による接近に対して保護する


 4文字目は2文字目(防水)関連の補助情報を示す文字です。

H:高圧機器
M:回転機のロータなどのような電気機器の稼動部分を動作させた状態において、水の浸入による有害な影響について試験したもの
S:回転機のロータなどのような電気機器の稼動部分を停止させた状態において、水の浸入による有害な影響について試験したもの
W:所定の気象条件の下での使用可能であり、付加的な保護構造または、処理を施したもの


IPコードの記載方法。4文字の情報からなり、それぞれどのような保護が標準に沿っているかが示されている。たとえば、2文字目の防水性能のみ標準に沿ったものであれば1文字目を「X」として、IPX6、IPX7というように表示する
IPコードの記載方法。4文字の情報からなり、それぞれどのような保護が標準に沿っているかが示されている。たとえば、2文字目の防水性能のみ標準に沿ったものであれば1文字目を「X」として、IPX6、IPX7というように表示する

 たとえば2文字目が示す「防水」に関してのみ機能があり、1文字目に関して規定がない場合、その箇所には、Xを記入することになっています。なお、3文字目と4文字目はオプションとなっており、該当しない場合は省略されます。

 つまり「IPX7」という4文字のコードは、IPコードのうち、1文字目が「X」で2文字目は「7」となっており、塵や埃の侵入に対する規格は含まれず、防水能力の規格(レベル7)を満たしている、という意味になります。

 なお、機械によって、外殻が「多用途形」となっていて、その形状によって保護性能が変わる場合、IPX6/IPX7というように/で区切って複数の保護性能を示す場合もあります。



URL
  日本工業標準調査会
  http://www.jisc.go.jp

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(大和 哲)
2006/05/17 12:32

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