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「W41CA」開発者インタビュー
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WINスタンダードモデルで最高の完成度を目指す
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「W41CA」は、2軸ヒンジにワイド液晶を搭載したカシオ製WIN端末。ハイエンドモデルとしてラインナップされていた従来モデルの特徴を引き継ぎながら、薄型・コンパクト化を図り、総合的な使いやすさを追求した端末に仕上げられている。
W21CAから始まったカシオ製WIN端末のひとつの到達点ともいえるW41CAについて、カシオ計算機、カシオ日立モバイルコミュニケーションズの開発担当者に聞いた。
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フィエスタオレンジ
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フィヨルドブラック
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ノルディックホワイト
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左から、城氏、井戸氏、本間氏
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――最初に、W41CAの開発のコンセプトを教えていただけますか?
本間 敦氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム)
プロジェクトが始まる前、通常は開発ナンバーで呼ばれるのですが、このモデルは「WINスタンダード」という名前で呼ばれていました。2006年のWINスタンダード機種として最強のモデルを目指す、というところに主眼を置いて開発しています。
2004年12月にワイド液晶と2軸ヒンジを搭載したW21CAを発売し、非常に好評を得ました。次に続くポイントは何かというところで、商品企画、デザイン、マーケティングを含めて2006年春モデルの商品像を模索しました。
そして「WINスタンダード」として何を目指すのかとなったときに、W21CA、W31CAではやや大きかった「ボディとデザイン」や、「トレンド機能とパフォーマンス性能」、「販売される価格帯」、それに「カシオの得意とする画面デザインと使い勝手」の4つのポイントで、最高の完成度を目指して作り込みました。
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それぞれ左がスタディモデル
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――今回のモデルは、サイズとデザインに特に力が入っているように感じられます。
井戸 透記氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室 室長)
W21CA、W31CAは機能的にハイスペックモデルですが、少しボディが大きかったんですね。大きいとそれだけで高そうで立派に見えてしまう、という側面もありました。カシオとしてワイド液晶を普及させたいという思いがあったので、ワイド液晶を使ったスタンダードモデルはどのような姿であるべきか、デザイナー側で開発に先行してスタディモデルを製作しました。
持ちやすいこと、開きやすいこと、表示が見やすく、キーが押しやすいこと、といった携帯電話としてごく当たり前の要素を全部押さえた上で、トレンドと高機能を採り入れ、さりげなく使ってもらえるようなコンセプトでデザインしました。
スタディモデルは搭載される詳細なデバイスまで考えていない段階でしたので、全てのデバイスは入らないだろうなと思いながら製作したのですが、最終的な製品は少し縦の長さが伸びただけで、ほぼ同じイメージでできあがりました。ヒンジ部はデザイン的美しさで寸法を決めたのですが、実際の商品でもほとんど変わっていません。
スタディモデルはデザイン的な期待を込めたものですから、ここまで同程度に再現できるとは正直思っていませんでした。すべての機能を盛り込むと15%くらい大きくなるイメージでしたが、数パーセントの増加に収まったのは、設計や開発に非常に苦労していただいたおかげです。
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トレンドと高機能をさりげなく使えるようにデザインされたW41CA
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デザイン面で、最近はスクウェアでフラットなデザインの端末が増えています。ノートパソコンと同じで実装効率やレイアウトの面で一番コンパクトにまとまるからだと思うのですが、開けにくかったり、持ったときに手が痛かったりというのを我々はよしとしません。基本的な構成は他社の端末とも似ていますが、カシオらしさとして使いやすさにはこだわりました。
特徴的なのはキーでしょうか。全体は基本的にコンサバなデザインだと思っていますので、その中でのポイントとして階段状になっているキーがW41CAの特徴になっています。メールの打ちやすさなどを考えると十分なキーピッチが必要で、横は3つのキーだけなので問題ないのですが、縦は単純にタイル状のキーを並べただけでは指の縦移動に迷いが生じて押しにくいと思います。そこを明確にするために縦方向は階段状にして打ちやすさに配慮しました。
キーのバックライトにもこだわり、ノルディックホワイトはキー面照光、フィエスタオレンジとフィヨルドブラックは文字照光ですし、照光色はそれぞれ違います。
そのほかの各部のデザインや塗装もいつものようにこだわっていますが、この端末の売りのひとつは大きな液晶ですから、その中の世界も新しいことをやりたいと思っていました。
A5512CAで始めた画面の中の世界観を、少し大人寄りに広げた形でもう一度やりたいという思いがあり、城が中心となってコンセプトを考えました。ケースのデザインと変わらない労力を画面デザインにも割いていると思います。
――確かに、開いたときの画面イメージはW31CAよりA5512CAに近い印象です。
城 聡子氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室)
A5512CAから続けて考えていることですが、携帯電話は、ただなんとなく見たり、ふと着信を確認したり、電車の中で目的もなくメールを見るといったように、常に身近にある製品だと思います。A5512CAの、開けるたびに和めるような画面デザインや世界観を引き続き大事にしようと思いました。
ただ、W41CAは高機能な端末ですので、テイストも若干大人寄りに仕上げました。カラーコンセプトはヨーロッパのニュアンスのあるカラーで、旅行に行った際に手にした、冊子やチケットといった日常的でさりげないけれどもグッドなグラフィック類を参考にしました。静かに生活に溶け込んでいる物のデザインが優れていることに豊かさを感じ、このケータイもそういうものでありたいと思いました。
おサイフケータイでモバイルSuicaにも対応したということで、買い物や食事、鉄道といった隠れたテーマも設定しました。路線図やショッピングバッグ、お皿をモチーフにした画面もあり、街中でおサイフケータイを楽しく使ってもらいたい、という思いをデザインにも盛り込みました。
プリセットの待受画面にもなっているペンギンのシリーズは、登場する画面の種類もランダムですが、動きのタイミングや展開もランダムにし、有機性を持たせています。時間帯に同期するものはA5512CA以上に動きを盛り込んでいますし、例えば台から飛び込むペンギンは飛び込み方にもバリエーションを持たせています。
楽しく、発見があるようなものを作りたいと思い、動きやランダム要素などのバリエーションをかなり盛り込んだので、製作や仕様の方には多大なご協力をいただきながらの開発となりました。
カシオのスタンダード端末として、ケータイと人との距離感を縮める、親しみやすいものを作っていけたらと思っているので、この方向性はもう少し育てていければと思っています。
井戸氏
サイバーなイメージのものなど、ほかのテイストの画面はダウンロードできたりするので、我々がプリセットするのは、端末のデザイン、カラーと一体感のあるものが必要だと思っています。そういう意味で、画面デザインなどはかなり作り込んでいますね。A5512CAのユーザーから寄せられた声を多いに参考にし、W41CAに反映させたつもりです。
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左から、須能氏、川中氏、永峯氏
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――スタディモデルとほぼ同じサイズでできあがったということは、設計や開発段階で相当苦労されたのではないでしょうか?
川中 健二氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ハード設計グループ 第1ハードチーム リーダー)
当初の開発がスタンダードモデルとして始まったこともあり、au ICカードのソケットやIrDA、FeliCaといったデバイスの搭載は考えられていませんでした。それらを搭載することになった上で大きかったのは、カメラの小型化です。W21CAではカメラのサイズの都合上、カメラの両脇にステレオスピーカーを搭載できなかったのですが、W41CAではカメラを小型化し、ステレオスピーカーを両脇に並べることができました。電池パックも薄型にするなど、さまざまな部分を改良して最終的な製品のサイズに至っています。
2軸ヒンジも従来より薄くしなければいけないということで、通常はフレキ(フレキシブルケーブル)を通すところをケーブルにしたりといった工夫をしました。
永峯 健司氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 機構設計グループ)
W41CAの2軸ヒンジについては、W21CA、W31CAよりもヒンジの径を小さくしています。従来のモデルはフレキを折り曲げて通しているのですが、耐久度などの問題からどうしても最低限の径が決まってしまいます。そこで今後のことも考え、W41CAで新たに採用したのが細線同軸ケーブルです。カシオとして初めての採用だったので、耐久性などの評価でも時間がかかりました。
小型化という意味では、2軸ヒンジや各種デバイスが小さくできたことに加え、ディスプレイ側は最低限のデバイスに留めた構造で大半をキー側ボディに搭載するという、W21CAから続くデバイスのレイアウトが最も効率よく発揮できた結果ではないでしょうか。キー側ボディはかなりデバイスを詰め込んでいますが、回路設計の担当者とも連携を取りながら上手くできたのではないかと思います。
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左の2つが光造形によるモック。徐々に薄型化されていく過程がうかがえる
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本間氏
女性の手でも持ちやすいサイズやデザイン、という点を、企画や設計でも意識合わせができていたと思います。幅は50mmを切る49mm、厚さは22mmという寸法を最優先にして開発をスタートしました。必要なデバイスを搭載した上で技術的に可能なサイズを光造形(3次元設計図から製作する樹脂製のモックアップ)で製作し、当初は49×103×23.5mm(幅×縦×厚)というサイズでしたが、ハード設計、機構設計が検討を重ねて目標サイズの薄さ22mmが実現できました。
このサイズを実現できた際のブレイクスルーは、須能と川中が提案した、miniSDのスロットをカメラの裏側に組み込むという方法です。これで厚さ22mmという目処が立ったと思います。
井戸氏
W21CAなど、これまではヒンジやカメラなど、特長的な機構やデバイスを主張するデザインでした。ハイエンドモデルでは機能をあえて前面に出すデザインも許されますが、今回のW41CAのようなスタンダードを目指すモデルでは、カメラやヒンジが目立つデザインでは違和感につながりますし、プリミティブな機構が目立つのは極力抑えたいわけです。W41CAは単純に2軸ヒンジの径が小さくなったということもありますが、ディスプレイと一体となったような設計の工夫が見た目にも効いていますね。
――マイクの位置が方向キーの脇に変更されていますが、この理由は?
須能 裕司氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ハード設計グループ 主任技師)
ビュースタイルで通話できるようにという要望に応えるため、ビュースタイルでも口に近く性能を確保できる位置、ということで方向キーの脇にマイクを配置しました。
――従来のマイクの位置にある溝は何でしょうか?
須能氏
デザイン的表現ですね。一般的に筐体を小さくすると放熱の問題がネックになるので、放熱の予備対策として従来のマイクの位置に溝をデザインしてもらったのですが、結果的に今回のレイアウトではそのままでも放熱性能が問題にならず、従来のマイクの位置にあるのはダミーの溝になっています。
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W41CAで4代目となるワイド液晶搭載モデル。「ワイドはカシオ」を訴求していく
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――カメラは、W31CAから数字的には一歩引いた形になっていますが、それ以外の機能拡充が興味深いです。
本間氏
カメラ性能ですが、小型化するということで一から設計を施しました。画像解析、パフォーマンスの見直しも行なっていますし、前の機種と比べてパフォーマンスに妥協はない仕上がりになっていると思います。
カメラの新機能として、当社のデジタルカメラ「EXILIM」にも搭載している「ビジネスショット」機能を搭載しました。携帯電話に搭載することで、携帯カメラの次の方向性を示す機能なのではないかと考えています。
2006年はLISMOをはじめとする音楽機能も重視されていますし、パッケージに付属するUSBクレードル充電台でパソコンとの親和性も考慮しています。W41CAが小型化するにあたって接点の部分を改良し、USBクレードル機能を省かずに引き続き搭載しています。
リモコンは付属していませんが、液晶側にもサイドキーを装備して、液晶を前面にして閉じるビュースタイルでの操作性を向上させています。
「au Music Port」ではスケジュールなどもクレードルに装着して手軽に更新できますし、端末側のスケジュール登録件数はこれまで最大100件のところ、最大300件に拡大しています。またアドレス帳も500件から700件に拡大しました。データフォルダ容量も約70MBですから、64MBのminiSDカードが最初から付いているような感覚です。
――「au Music Player」以外に、SD-Audioもプレーヤーも搭載していますね。
本間氏
カシオとしてSD-Audioプレーヤーの搭載は初めてですが、ユーザーの資産の活用を考える上で搭載しました。音源チップに新しくヤマハのMA-7iを搭載し、イコライジング機能はSD-Audioプレーヤーでも利用できます。
――音楽機能などが充実してくると電池の持ち時間も気になりますが、G'zOneで搭載されている予備電力を残す対策(エクステンションモード)は搭載されたのでしょうか?
須能氏
搭載しています。電池残量が少なくなり通話ができなくなっても、10時間ぐらいはFeliCaとしての動作ができるようになっています。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
ニュースリリース(KDDI)
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2006/0207/sanko.html
ニュースリリース(カシオ計算機)
http://www.casio.co.jp/release/2006/w41ca.html
製品情報(KDDI)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/w41ca/
製品情報(カシオ計算機)
http://www.casio.co.jp/k-tai/w41ca/
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(太田 亮三)
2006/02/08 11:22
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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