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W-ZERO3
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ウィルコム、シャープ、マイクロソフトの3社は10月20日、Windows Mobile 5.0 for Pocket PCに対応した新端末「W-ZERO3」を発表した。「第3のコミュニケーション」とする同端末は、スライド式のフルキーボード、無線LAN機能、133万画素カメラなどPDAライクな機能を搭載したWILLCOM SIM STYLEの端末。イベントでは、端末のタッチ&トライコーナーに長蛇の列ができるなど、12月14日の発売までに大きな注目を集めている。
そこで今回、話題のW-ZERO3を企画したウィルコムの営業開発部 企画マーケティンググループ 課長補佐の須永康弘氏に詳細を聞いた。
■ W-ZERO3はケータイの進化の延長
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ウィルコム 営業開発部 企画マーケティンググループ 課長補佐の須永康弘氏
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「WPC EXPO 2005」では、W-ZERO3を巡って大混雑に
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――イベントで長蛇の列ができるなど、発表時からかなり注目を集めていますが、この要因をどうお考えですか?
本当にありがたい限りです。私たちの想像以上に、ケータイよりもっとリッチに、モバイルでいろいろ使いたいというニーズがあったんだなと思いました。ケータイは基本的に閉じられた世界で、セキュリティがしっかりしている反面、ユーザー自身がケータイをカスタマイズすることが難しいところがあります。W-ZERO3は、ユーザーの使い方やスタイルに合わせて中身をカスマイズできるので、そこが予想以上に受けたのかなと思っています。
――W-ZERO3はケータイ? それともスマートフォンやPDAになるのでしょうか?
キャッチコピーでは、ケータイでもパソコンでもない第3のコミュニケーションとしていますが、我々は、あくまでケータイの延長にありたいと考えています。ユーザーは、電話というものに期待をかけてくれています。ケータイの進化の背景に、ユーザーがケータイの進化を望んだ面があり、我々は、それに応える意味でもケータイの進化の延長線と考えています。
――音声端末の料金プランを採用されたのも、そういうお考えからですか? 新たな料金プランを用意することも考えられますよね?
そうですね。我々は、現在の料金コースがかなり究極に近い形だと思っており、本当のところ、これ以上料金コースを増やす必要がないと考えました。実際、「ウィルコム定額プラン」2,900円と「データ定額」1,050円の合計3,950円で使えて、どんなに使っても6,700円までとなると、決して高い商品ではないと思います。八剱(ウィルコム代表取締役社長の八剱洋一郎氏)はよく、「ユーザーにとってわかりにくい料金はダメだ」と言います。W-ZERO3であれば、もう少し高くてもいいのかもしれませんが、無条件で「これいいよね」と思っていただける料金にしました。
無線LANについては、かなりお得ではないでしょうか。2006年5月までホットスポットが無料で利用できますが、かなり思い切りました。
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端末コンセプト
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基本機能
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――通信モジュール内蔵ではなく、WILLCOM SIM STYLEとした理由は?
弊社は、通信モジュール内蔵型のパソコンを出していますが、その最大の弱点は、我々のネットワークが高度化していく中で、内蔵型だと通信の向上に対応できないためです。今後、W-SIMが高速化していく予定で、その部分だけ替えられるようにすれば、端末に支払ったお金も無駄にならないと考えました。
――開発はいつ頃から始まったのでしょう?
実質の開発は1年弱前からです。今回はW-SIMを採用したのでメーカー(シャープ)にとっては無線部分の開発負荷が軽減され、短期間に開発が可能となりました。
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W-SIMを採用
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シャープは、W-SIMで通信部の開発負担を軽減
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■ Windows Mobileで自由なカスタマイズを
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W-ZERO3発表会。ウィルコム、シャープ、マイクロソフト3社の代表が集結した
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――Windows Mobileを搭載した理由は?
1つにはカスタマイズのしやすさからです。パソコンといえばたいていの人がWindowsを使われているかと思います。Windowsでは、ユーザーが欲しいものを取り込むスタイルが浸透しているので、一番親和性の高いものを提供したいと考えました。
また、W-ZERO3の、ターゲットはビジネスコンシューマーです。企業では、Windowsプラットフォームがほとんどで、下支えしていただけるSIベンダーがたくさんいます。このメリットは、他のOSと比較すると圧倒的で、そうしたことも含めて採用に至りました。
――Windows Mobileのスマートフォン版ではなく、Pocket PC版を採用したのはなぜですか? 日本語対応のスマートフォン版の登場を待ってからでも良かったのでは?
マイクロソフトから提案もいただいたのですが、W-ZERO3はどうしても年内に発売したかったのです。年内に提供する上で、機能面は譲りたくありませんでした。そこで、マイクロソフト、シャープと共に、最もリスクが少なく年内に提供できるものを選びました。ただ、どのエディションであれ、年内に出すことはリスキーではありましたが(笑)。
――マイクロソフト側も日本のケータイ市場に参入したかったのではないでしょうか?
そうですね。やはり日本のケータイ市場は魅力的のようです。正直、日本の携帯電話はすごいと思います。我々も年末に提供する端末で、携帯電話に肩を並べられるものを提供できたと思っていますが、ハイエンドの携帯電話は、機能面でそのさらに上をいっています。ほかのデバイスとは比較できないスピードで進化している市場ですからね。
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Windows OSらしいインターフェイス(画像は発表会時)
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モバイル版のIEも搭載(画像は発表会時)
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■ Windows Mobileの拡大に向けてアプリポータルも検討
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WILLCOM SIM STYLEのポータルサイトを開設。このほか、ユーザーが開発したアプリのポータルも検討中
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――ユーザーが作ったアプリケーションなども動作するのでしょうか?
是非作っていただきたいと思っています。我々が今回考えたユーザーインターフェイスが決して完璧だとは考えていません。マイクロソフトとも相談していますが、本当の広がりは、ユーザーがこうしたいと思ったことを実現できる環境が整うことです。そのために、開発環境や開発者を支援するプログラムを展開したいと考えています。
――Windowsだとウィルスなどの心配もあるかと思いますが、何か対策を考えていますか?
セキュリティ機能として、2006年3月より「マカフィー・ウィルススキャン・モバイル」を有償提供する予定です。
――ウィルス対策ソフトをプリセットされないのはなぜでしょう?
Windows Mobileはパソコンとは異なります。ソフトを入れれば、その分負荷がかかるので、そこはユーザーの判断にお任せしようと思います。というのも、実はわからない部分が多いのです。現時点ではWindows Mobileに対するウィルスはありません。起きてから対処したのでは遅いのため手は打ちますが、現在起きていない以上、そのためにCPUパワーを使うのを、我々が強制すべきではないと判断しました。ただし、これから半年後にWindows Mobileの製品が増えてくれば、ウィルスも増えてくることが想像されるので、プリセットについては、そのときにまた判断する必要が出てくるかもしれません。
――対応するアプリケーションを取りまとめるようなポータルサイトを用意する予定は?
実はまだ構想段階ですが、マイクロソフト側でもWindows Mobileの拡大に向けて検討されているようです。マイクロソフトとシナジー効果が出せるのであれば、お互いにやるべきだと思いますし、バラバラになってしまうのであれば、いっしょにやっていきたいと話し合っています。
ケータイの延長線上と考えているので、もちろん着メロや壁紙といったケータイならではの文化については、ウィルコムが公式コンテンツとして責任を持って提供します。
■ フルキーボードはマストだった
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スライド式のハードウェアキーボード
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フルキーボードの必要性を語る須永氏
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――今回、ハードウェアキーボードも大きな特長ですよね。搭載されたのはなぜですか?
音声端末がブレイクする前、我々はAIR-EDGEを展開してきました。通信カードを使うにはパソコンが必要で、合計すると20万円ぐらいの出費になります。AIR-EDGEとノートパソコンの組み合わせは、月に1回の出張のときには確かに便利ですが、ユーザーから20万円は高いと言われました。これまでのAIR-EDGEユーザーは、モバイルを利用するベネフィットがわかるユーザーでした。しかし、利用していない方の中には、そこまで判断が至らないユーザーさんがたくさんいます。モバイルを使ってみたいというニーズは確実にあり、そこをW-ZERO3で獲得したいとなると、数字キーではなくキーボードを搭載すべきだと考えました。
――国内のケータイユーザーは、メールなどで数字キーの操作にかなり慣れている印象がありますが、どうしてフルキーボードだったのですか?
そこは、パソコン寄りにしました。Webサイトを見るにしても、WordやExcelなどを確認するにしても、パソコンの画面が横長なので画面は横長の方がスムーズです。その横長を前提に考えると、キーボードがテンキーでは不自然です。今回のW-ZERO3において、QWERTY配列のキーボードはマストだったと考えています。
欧米のスマートフォンでは、お飾り的なキーボードの場合がありますが、それは絶対にダメだと思いました。長文も苦にならないと言っていただけるものでなくては意味がないと考え、シャープさんに大変がんばっていただきました。イベントなどの評価でも、キーボードについてはかなり苦労が報われたのではないかと思います。
――電子辞書タイプの折りたたみ型端末ではなく、スライド式とした理由は?
それについては、ケータイの延長線上であることを意識したからです。ケータイとして考えた場合、電子辞書のスタイルは考えられず、パソコンとケータイの両面を意識して、スライド式フルキーボードとなりました。入力のしやすさなど、実用を考えてこのサイズとなっています。
片手で持てる端末を想定しましたが、手の小さい方は片手では厳しいかもしれません。その部分をある程度覚悟した上で、ビジネスで幅広く使っていただけるサイズになりました。また、長時間利用することを考えて、液晶ディスプレイも大型にしました。
――法人市場向けに、カスタマイズされた端末を提供することは考えていますか?
実は、そうした声を企業様からかなりいただいています。どういう形で展開するかは未定ですが、豊富な開発ベンダーもいらっしゃるので、相談しているところです。
――この端末だけでプレゼンができそうですが、出力機能はありますか?
今のところありません。出力機能は現在検討中です。おそらく、サードパーティといっしょに展開することになるのではないでしょうか。我々としても、プレゼンについては、どんな形でもできるようにしたいと考えています。
■ ウィルコム、拡大路線でユーザー獲得を狙う
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「今後、070は定額のウィルコムだというメリットも出せる」と須永氏
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W-ZERO3の潜在市場規模は約440万(ウィルコム調べ、発表会時)
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――39,800円のハードウェアで、料金プランも全て定額に収まるとなると、ウィルコムが儲ける部分が少ないのではありませんか?
会社の方針として、今は早期400万加入達成に向けて全力で取り組んでます。また、W-ZERO3もあくまでケータイとしての獲得数を追求していきたいと思ってますので、ハードの価格もサービス料金もユーザーに喜んでもらえる料金にしました(笑)。
我々のユーザーには、コミッションなどについても考えてくださる方もいます(笑)。我々が苦しかった時期に、そういった方々に使い続けて頂いたこともあり、今回の商品はそういう方にも是非見ていただきたいですね。
――初年度10万台という目標は、ウィルコムとしては冒険ですか? それとも10万台は軽く越えると?
正直、当初の反応を見てみないと何とも言えないですね。企業からテスト導入したいという声もあり、すぐに導入とはいかないまでも、法人需要もしばらくしてから成果が見えてくるのではないでしょうか。
また、発表前の我々のシミュレーションよりかなり反響が大きいので、見当が付けにくいこともあります。これはマイクロソフトも同じだったようで、シャープのハードウェアの出来もさることながら、Windowsのインパクトが大きかったのかもしれません。
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W-ZERO3は、WX300/310シリーズでは届かない多機能派にリーチ
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――冬商戦のウィルコムの端末は、非常にユーザーを悩ませるラインナップですね。
まあ、これまでウィルコムユーザーは悩むこともなかなかできなかったですから(笑)。拡大路線で展開する上で、ユーザーの選択肢を増やすために、今回は端末をまとめて提供することになりました。
――既存のケータイユーザーがウィルコムに乗り換えようと思うと、番号を変えなければなりません。W-ZERO3は、メイン端末とサブ端末のどちらになるとお考えですか?
ウィルコム定額プランを提供したときからそうですが、基本的には1台目として使っていただけるパフォーマンスだと考えています。しかし、これまで使っていたケータイをその場で解約できるかというと、なかなか難しいと思います。一部の方は、070の番号にネガティブなイメージを持たれていたり、エリアが狭いという誤解を持たれている方もいます。使っていただいて体感していただくしかないので、料金を下げて対応することになります。我々は、番号ポータビリティに参加していないため、今後、070は定額のウィルコムだというメリットも出せると思います。
――ズバリ、どういう方におすすめですか?
もう少しモバイルを活用したいが、ノートパソコンを持ち歩くまでじゃない方たちにはまる商品だと思います。もちろん、ITリテラシーの高い方が、用途に応じて今日はノートパソコン、明日はW-ZERO3と使い分けできるのも魅力ではないでしょうか。
――本日はお忙しい中ありがとうございました。
■ URL
製品情報(ウィルコム)
http://www.willcom-inc.com/ja/lineup/ws/003sh/
製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/ws/
ニュースリリース(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/051020-a.html
ニュースリリース(マイクロソフト)
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2450
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(津田 啓夢)
2005/12/05 12:51
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