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ウィルコムに聞く
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2005年秋冬モデル、投入の意図とは
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音声通話定額プラン「ウィルコム定額プラン」の発表以降、順調にユーザー数を伸ばしているウィルコムが新機種を続々と投入する。
その背景にはどのような経緯、考えがあるのか。営業開発部長の太田 靖士氏とプロダクト統括部端末企画グループ課長補佐の安島 望氏に聞いた。
■ 好調なユーザー数増加が新機種ラッシュ決断に
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ウィルコム営業開発部長の太田 靖士氏(右)とプロダクト統括部端末企画グループ課長補佐の安島 望氏(左)
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18日発売の「WX300K(中央)」を皮切りに、WX310K(左)、WX310SA(右)も25日に登場する
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――11月以降、音声端末やW-SIM端末が続々と登場します。ここに来て、ラインナップを拡充された理由は何でしょうか?
太田氏
過去、当社はデータ通信サービスが中心となってきましたが、マーケットの規模として音声とデータを比べると、音声のほうが圧倒的に大きいと考えていました。データ通信でもインパクトのある端末、サービスを提供してきましたが、音声のほうはそれとは比べものにならないほどのインパクトがあります。音声という市場はキャリアとして無視できないものです。これが理由の1つですね。
もう1つは、やはり「ウィルコム定額プラン」が好調であることでしょう。まとめて投入したほうが、ユーザーさんから見れば選択の幅が広がりますし、個別のニーズに応えられる端末が出せると考えました。
安島氏
製品開発は1年以上かかるものです。メーカーさんと話し合って、この年末商戦を狙っていました。機種によって発売時期は異なりますが、メーカーさんには頑張っていただきました。ただ、開発部隊として、一度に多くの機種が投入されるというのは、なかなかないことでしたので、大変なことでもありました。
――そもそも、どのタイミングで「一気に投入しよう」と決断されたのでしょうか?
太田氏
「ウィルコム定額プラン」を発表し、ユーザー数が順調に増え始めた5月、6月頃でしょうか。それより前の時点では、2006年春でのリリースもあり得ると考えていました。
安島氏
端末の開発自体は、「ウィルコム定額プラン」が発表された時点で、既に進行していました。定額プランの好調を受けて、リリース時期を早めた部分もありますね。
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W-SIM対応機であるTT(右)とDD(左)。中央が通信モジュールであるW-SIM
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W-SIM対応の意欲的な新機種「W-ZERO3」
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■ WXシリーズについて
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ウィルコムへの乗り換えを促進したいという太田氏
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――WXシリーズはフルブラウザを全機種に搭載するといった特徴があります。これらはどういう考えから搭載に至ったのでしょうか?
太田氏
ユーザーさんからの声、そして我々自身の考えによるものです。ウィルコムの特徴の1つはデータ通信の定額プランです。データ通信を最大限に活用いただくためには、フルブラウザが必要です。いわゆる「京ぽん」で最も評価が高かったものがフルブラウザのOperaです。お客様は「定額」とフルブラウザを望んでいることがわかりましたので、全機種に搭載しました。
「ウィルコム定額プラン」の発表時には、携帯電話に次いで、2つ目の端末(ダブルホルダー)としてウィルコムを選んで欲しいというアピールをしましたが、やはりユーザーさんの立場からすれば1つにまとめたいのではないでしょうか。我々としては、当然ながら、今回の新機種でウィルコムだけを使っていただくことを目指しています。最後にウィルコムを選んでもらえるようなサービスと端末を出す。それが我々の使命と思っています。
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携帯と同じ土俵に立った、と自信を見せた安島氏
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――WXシリーズで搭載される機能で、ウィルコムから要望したのはどの部分になるのでしょう?
安島氏
ソフト面での機能では、フルブラウザのほかに、ファイルビューワーやJavaもユーザーからの声に応えるべく、我々からメーカーに提案したものになります。機種によって、Operaだったり、NetFrontだったりと異なるソフトウェアを搭載していますが、考え方として、1種類のソフトに絞り込むという方法もあり得るでしょう。しかし、複数のソフトが存在することで、競争が生まれるとも言えますし、1種類だけにすることによるリスクもあるのではないでしょうか。法人ユースにおいては、1機種をまとめて導入というケースが多いでしょうから、複数のソフトウェアが存在することによるリスクはさほど問題ではありませんね。
また、ハードウェア面での機能としては、メガピクセルカメラやminiSDカードなどのほか、フルブラウザを楽しんでいただくために2.4インチというサイズのディスプレイも我々からメーカーに要望したスペックです。
ちなみに日本無線製の「WX310J」には、指紋認証センサーが搭載されますが、センサー自体の搭載については、法人ユースを踏まえて、我々から提案したものです。指紋センサーで操作までできるようにした明確な時期は定かではないのですが、実用に耐えうるものとして、搭載されることになりました。
スペックとしては、携帯電話と同じ土俵に立った、あるいは近づいたかと思います。着うたやFeliCaなど、まだ携帯電話が上と言える部分については、現時点では何も決まっていませんが、当社でも取り込んでいく必要があると考えています。そういった機能をサポートする機種は、WXシリーズとW-ZERO3の間に位置するようなものになるでしょう。
――PHSと言えば、いわゆる自営モードも特徴の1つに挙げられると思いますが、屋内用の小型基地局であるナノセル導入もあって、今後はどうなっていくのでしょう?
安島氏
自営モードとナノセルは、利用スタイルとして重なる部分もあります。ただし、どちらかに絞るのではなく、今後も両方を手掛けていきたいですね。
■ W-SIMについて
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TTとW-SIM(発表会時)
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――W-SIM対応機種のうち、TTとDDはオンライン販売に注力されているようですね。
安島氏
発表会でも語られましたが、W-SIMという構想は、1機種のロットは少量でも、多くのバリエーションが展開できることが特徴です。TTとDDは、ベースとなる製品で、デザイン面でも特徴付けています。WXシリーズとは全く異なるため、出し方も異なるというわけです。
太田氏
当社としては、W-SIM(TT)のオンライン販売は「テスト販売」という意味が強いです。そのため、TTとDDの数量やマーケットを限定しているのです。ただし、W-ZERO3については、製品そのものへの自信もありますし、幅広い販路での取り扱いを行なってまいります。
今後のW-SIMについては、具体的な話はまだ明らかにできませんが、もちろん量販店での取り扱いが前提になっていくと思います。ただ、W-SIMにおいては、フォーラムに参加されるメーカーさんにできるだけ自由に動いていただくことを考えていますので、さまざまなルートが期待できると思っています。
――WXシリーズからW-ZERO3まで見渡すと、ほぼ全てのユーザー層、マーケットをカバーできているようにも見えますが、まだ狙うべき層はあるのでしょうか?
太田氏
確かに一般的な層については、ほぼカバーされたと思います。ただし、特殊な用途が求められるニッチな市場は数多く存在します。たとえば、PHSならではの低電磁波という特徴を活かし、病院向けに特化したものです。いかにも携帯電話風の外観の端末を看護士さんが使っていれば、患者さんから「なぜ院内で使っているのか」と指摘されるかもしれません。現状の端末でも病院で利用していただくことは可能ですが、特化する必要もあるかもしれません。
そういった市場は小さいものかもしれませんが、まだまだ数多く存在し、我々がやっていかねばならないルートだと考えています。携帯電話のキャリアさんはそこまでできないでしょう。端末としては、W-SIMで対応していくマーケットになるのではないでしょうか。
――移動体通信という業界に対しては、つい先日、新規参入事業者が決まりました。
太田氏
同じマーケットになるのであれば、将来的には競合することになるのでしょう。しかし、今は彼らを意識しているということはありません。
■ オンライン予約は「WX310K」が人気
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太田氏、安島氏ともに新機種群の手応えを感じているようだった
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――WX310K、WX310SA、WX300Kのオンライン予約が開始された当日は、予約ページがなかなか表示されないという状況でした。予約動向はどのような状況なのでしょうか?
太田氏
かなりのオーダーをいただき、嬉しい悲鳴といったところでしょうか。出足としては、WX310K、W310SA、WX300Kという人気順ですね。これはある程度、予想の範囲内でした。
というのも、実物を目にする前のスペックだけを見ると、わかりやすいのはWX310Kではないかと考えていたからです。我々の事前調査では、実際に触れたモニターさんの反応としては、WX310KとWX310SAの人気は五分五分といったところですが、触れる前の段階ではWX310Kの人気のほうが高かったですね。ウィルコムの京セラ端末と言えば、「京ぽん」と親しまれるほどブランド力がありますので、こういった結果になったとも言えるかもしれません。
量販店での予約も行ないましたが、まだ数値としてはまとめていません。ただ手応えとしては、オンライン予約と同じく、WX310Kのほうが上回っているようですが、量販店のほうがWX310SAの比率が高い、という印象ですね。
――ユーザーに向けて一言お願いします。
太田氏
新製品の自信はあります。我々は定額プランといったサービスとセットで製品を考えていますので。ぜひ一度手にとって、クリアな音質やフルブラウザをお試しください。今までのPHSのイメージが変わります。
――ありがとうございました。
■ URL
ウィルコム
http://www.willcom-inc.com/
(湯野 康隆, 関口 聖)
2005/11/18 18:34
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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