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EZ FeliCa開発スタッフに聞く
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「使いやすいFeliCaを提供したい」
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9月より開始されるauの新サービス「EZ FeliCa」は、非接触ICチップのFeliCaを内蔵した携帯電話を使って、店舗などに設置されているリーダーライターにかざすだけで、買い物できたり、会員証代わりになったりするというものだ。
使い方や仕組みは、NTTドコモの「iモード FeliCa」と大きな違いはなく、auも「おサイフケータイ」という愛称でEZ FeliCaをアピールしていく構えだが、その一方で、au独自の工夫も凝らされているという。KDDI FeliCa推進室 FeliCa開発グループ 次長の小柳 琢磨氏と、同グループ課長補佐の久保田 信也氏に話を聞いた。
■ 数年前から暖めてきたアイデア
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KDDI FeliCa推進室 FeliCa開発グループ 次長の小柳 琢磨氏(右)と、同グループ課長補佐の久保田 信也氏(左)
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――9月中に開始されるという「EZ FeliCa」ですが、いつから検討されてきたのでしょう?
小柳氏
数年前から非接触ICの搭載は検討してきました。きっかけは、当時、ソニーからチップの話がもたらされると同時に、カードとしてJR東日本がSuicaを開始したことです。FeliCaのほかにも非接触IC技術は存在しますが、市場動向を見て、FeliCaを採用することにしました。我々が担当したわけではないのですが、「EZ FeliCa」という名称は他の候補と競うようなこともなく、すんなり決まったと聞いています。ちなみに搭載されるFeliCaチップの容量は、他事業者と同じく、5KBです。
久保田氏
非接触IC技術をどう携帯に取り込んでいくか、技術開発面でも検討を進めてきましたが、「EZ FeliCa」に向けて体制を含めて、検討を開始したのは、フェリカネットワークスが設立された後、2004年の春頃になります。
――「EZ FeliCa」という正式な形で発表される前から、KDDIでは、JR東日本さんのSuicaに対応していくという姿勢を明らかにしていました。
久保田氏
以前は電子チケットなどが具体的なサービスとしてイメージされていたことが多かったと思いますが、我々は「生活に伴うもの、密着したものと言えば定期券などになるのではないか」と考えていました。さまざまなところで言及されていますが、それまでカードだったものが、携帯に乗れば残金確認したり、オンラインチャージしたりできるという面が便利ではないかということです。
小柳氏
かねてよりKDDIでは「携帯電話をパーソナルゲートウェイにしていく」という考えを示してきました。「EZ FeliCa」は、そのデバイスの1つであり、FeliCaで実現できる世界において、定期券は象徴的なサービスの1つと言えるのではないでしょうか。
■ ポイントは、使ってもらうための「導線」
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「夏休みを返上して準備を進めている」と笑顔で語った小柳氏
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――9月に端末が発売され、サービスが開始されますが、どのようにアピールしていくのでしょうか?
小柳氏
私どもとしては、「auでもおサイフケータイはじめました」という全社的なプロモーションを実施し、広く周知していきたいですね。
9月の端末発売後、順次19社のサービスが提供されることになりますが、前提としてそういった企業が存在しなければなりません。携帯電話は全国で発売されるものですから、「各地で使える場面がなければいけない」というのは1つのポイントであり、目標です。まずは、全国規模で展開されているチェーン店や航空会社などと協力していく形で準備を進めてきました。モバイルSuicaは、JR東日本のサービスですが、他地域でも同様のサービスが採用されていくのではないでしょうか。
久保田氏
使ってもらうためには、FeliCaという市場で実際に利用されているサービスが必要になるだろうということで、「Edy」と「モバイルSuica」に対応すると最初に発表しました。開始当初にラインナップされるEZ FeliCa向けサービスは、いずれも既にドコモさん向けサービスとして実績があるものが中心となっています。
また、「携帯を買ってもらった後にどう使ってもらうようにするか」という点にも注力する必要があります。その1つとして、ユーザビリティ面のアプローチとして端末内にFeliCa専用メニューを設け、集約化することで、使いやすくすることを目指しました。
ポータルサイトも提供しますが、これは「EZ FeliCaに関する情報はそこに行けばわかる」というもので、ユーザーに使ってもらうため、あるいは導くものとして工夫した部分と言えます。
モバイルSuicaは、キラーアプリというよりも、「使ってもらうためのきっかけ、起爆剤」です。同じようにきっかけ、起爆剤になるサービスは、他地域でも登場すると考えています。
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メインメニューに「EZ FeliCa」専用メニューが設けられる
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EZwebでも、「EZ FeliCa」専用サイトがオープンする
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■ 「使いやすさ」でドコモと差別化
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「使いやすさに注力した」という久保田氏
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久保田氏
使ってもらうためには「ユーザーの導線をいかに確保するか」「いかにダウンロードしてもらうか」が重要だと思っています。
先行して登場したドコモさんの携帯電話を見て、学んだ面もあります。FeliCaのアプリはどういうもので、どういう使い方があるのか、携帯電話から周知を図るという点が必要と考え、ポータルサイトに情報を集約することにしました。今後は、EZチャンネルで、使い方を案内するコンテンツを配信するかもしれません。
我々の強みは「メディアに強い」ことだと捉えています。生活ツールであるEZ FeliCaと、これまで注力してきたメディア化という2点をいかに融合させるか、今後はそこをメインに考えていきたいですね。その1つがポータルサイトの立ち上げであり、将来的にはEZチャンネルやGPS機能との連携なども考えています。
小柳氏
基本的なサービスは、エンドユーザーから見ればドコモさんと変わりはないでしょう。しかし、「auならでは」という特色を打ち出すために、既存のサービスといかに連携させていくか。そこで差別化を図りたいですね。
久保田氏
ドコモさんの動きを見ていると、インフラ整備に注力されているようですが、我々としては、利用者の立場に立って「使いやすい」という点に注力していきたいです。
■ EZ FeliCaでのBREWアプリ
――BREWアプリで動作するという点は、メリット・デメリットがあると思いますが、どのように考えていますか?
小柳氏
導入・発展というフェーズのニーズには応えていけると考えていますが、認証などで使いたいというニーズが出てくれば、共通領域を使ったサービスが提供できるようにしていくかどうか、検討していくことになるでしょう。
久保田氏
FeliCaの普及は、「どれだけ自分の生活する地域で使えるか」という点にかかってくるでしょう。1つの解決策として、ASP型サービスの提供事業者との提携にあるのではないでしょうか。1つ1つのアプリで、というよりも、会員証やポイントなどをまとめて1つのアプリにしていったほうが、エンドユーザーからすればわかりやすいと思います。
小柳氏
基本的に、そういったASP型サービス事業者が中小規模の店舗などを取り込んでいく形になるのではないでしょうか。
■ EZ FeliCa対応として登場する2機種
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W32H
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W32S
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――EZ FeliCa対応機種として「W32S」「W32H」の2機種が投入されますね。
小柳氏
当初より複数の機種を出したいと思っていました。W32Sは女性に、W32Hは音楽を存分に楽しみたいという方に評判が良いと聞いています。メニュー構成やセキュリティ機能などはKDDI側から端末メーカーにリクエストしたものです。
久保田氏
着うたなど、これまでにない新しい機能やサービスが導入される際、auでは、ほぼ1機種だけの投入でスタートし、徐々に機種を増やしていくという形が多かったと思います。今回2機種となったのは、1機種だけリリースして「企画端末」と認識されると、インフラ展開で影響があるのではないかと懸念し、2機種登場することになりました。
小柳氏
ユーザーがどこに懸念や不安を持っているか調査したところ、やはりセキュリティに関する部分が挙げられました。そこで「遠隔ロック」「FeliCaロック」「クイック解除」という3つの機能を用意しました。今後新たなセキュリティ機能を追加することがあれば、標準搭載ということで、機種ごとのばらつきがないようにしていきたいですね。
久保田氏
機種によってセキュリティ機能が異なると混乱を招きかねませんので標準機能として各種セキュリティ機能を搭載することになりました。FeliCaチップそのものはユーザーの資産になり、「セキュリティはサービスではなく、ユーザーを守るための機能」として入れているという位置付けです。より良い機能、強固な機能をどんどん入れていくことはベストに思えますが、コスト増に繋がりかねません。現段階でちょうど良いバランスがとれている機能を採用したのです。
――2機種ともに、従来のau端末と異なり、「au ICカード」が採用されています。機種変更時などに何らかの形で活用できるのでしょうか?
小柳氏
技術的には脱着式の非接触ICの開発を進めていたこともありますが、au ICカードとEZ FeliCaは全く関連がありません。機種変更時には、各サービスに対してユーザー自身が手続きを行なう必要があります。
久保田氏
EZ FeliCa向けサービスは、その内容が各社によってまちまちで、保証の度合いも変わってきます。一律であれば、当社で対応できるかもしれませんが、実際は混在しています。各サービスは我々の管理下になく、一括管理する権限がないというのも(手続きを個別に行なわなければならない)理由の1つです。また、auだけの手続き方法を採用すれば、ドコモさんと異なることになりますから、ユーザーとサービス事業者両方に対して、混乱を招く可能性もあります。
もちろん将来的に「それだけでやっていけるのか」という話が出ることもあるでしょう。脱着式の非接触ICなどを求める声が強くなり、技術的革新が進むことで、解決されることになるかもしれません。
小柳氏
将来的には、機種変更時にau ICカードを活用するというのは、1つの選択肢になるかもしれませんね。
――将来的に、EZ FeliCa対応機種の投入スパンはどの程度の期間にしたいと考えているのでしょうか?
小柳氏
今回の2機種は、秋冬モデルとして投入しました。次は春モデルで出せればと考えています。突発的な企画モデルではなく、従来の端末リリースのタイミングで、対応機種を増やしていきたいですね。
FeliCaというプラットフォーム上にどういったサービスがあるのか、選択のしやすさやサービスの見つけやすさに一工夫しているので、ユーザーさんには、生活に合ったサービスを見つけて、日常生活で使っていただければと思います。
久保田氏
ユーザーさんに対しては、「使いやすいFeliCa」としてアプローチしていきたいですね。
――ありがとうございました。
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
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2005/08/18 12:41
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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