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auのおサイフケータイは何が違う?
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auは8月2日、おサイフケータイ「EZ FeliCa」のサービスを発表し、対応端末として、ソニー・エリクソン製「W32S」、日立製作所製「W32H」の2機種を合わせて発表した。FeliCaを利用したサービスとしては、すでにNTTドコモが1年前からサービスを開始し、対応端末も販売されているが、2006年1月のモバイルSuica開始を控え、いよいよauもFeliCaサービスで追随することになった。サービスの詳細については発表会レポートの記事を読んでいただくとして、記者発表で触れた実機の印象などをまじえながら、その内容を見てみよう。
■ auの「おサイフケータイ」
7月11日にJR東日本と共に、すでにEZ FeliCaサービスとモバイルSuicaへの対応を発表していたauだが、今回、正式に2機種の対応端末とともに、非接触ICカード「FeliCa(フェリカ)」を利用した「おサイフケータイ EZ FeliCa」のサービス内容を発表した。おサイフケータイはNTTドコモの商標だが、すでに報じられているように、NTTドコモとの話し合いの結果、「おサイフケータイ」を一般名称として定着させることを考慮し、auでも同じ名称を採用することにしたという。
では、EZ FeliCaはiモード FeliCaとどこが違うのだろうか。結論を先に言ってしまえば、しくみなどの基本的な部分は何も変わらない。端末に非接触ICカード「FeliCa」を搭載し、FeliCa対応アプリケーションを動作させることにより、電子マネーや会員証、モバイルSuicaでは定期券や電子マネーとして利用できるようにする。つまり、auは対応端末を提供することでプラットフォームを提供し、さまざまなサービスプロバイダがそのプラットフォーム上でサービスを提供することになる。
ただ、細かいところを見てみると、EZ FeliCaは後発のサービスということもあり、iモード FeliCaと異なる点がある。まず、EZ FeliCaでは端末のメニュー内にFeliCa対応サービスを利用するための専用メニューが用意されている。iモード FeliCaでは各サービスプロバイダのサイトからiアプリをダウンロードする形になっているが、EZ FeliCaではEZ FeliCaのメニュー内にあるサービス一覧からEZ FeliCa対応アプリをダウンロードしたり、キャンペーンなどの情報を閲覧することができる。ちょうどiアプリが各コンテンツプロバイダのサイトで入手するようになっているのに対し、EZアプリ(BREW)が端末のアプリキーで表示されるEZアプリ(BREW)メニュー内のカタログからダウンロードできるようになっているのと同じ位置付けと考えれば、わかりやすい。
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EZ FeliCaのセキュリティ
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また、セキュリティ面についても違いがある。FeliCa搭載端末のセキュリティとしては、特定の電話番号から設定した回数、着信させてロックする「遠隔ロック」、FeliCaの機能を停止させる「FeliCaロック」(通常はロック状態で携帯し、利用時のみ解除)などがあるが、iモード FeliCaでは当初、遠隔FeliCaロックのみが標準で搭載され、FeliCaロックについてはF900iCのみがサポート。901iシリーズでもF901iCのみがサポートし、ようやく901iSシリーズになって、標準機能として搭載されている。
これに対し、EZ FeliCaでは後発サービスの強みを活かし、遠隔FeliCaロック(遠隔オートロック)とFeliCaロックが当初から標準で搭載され、さらにFeliCaロック中に一時的に解除しても一定時間経過後、自動的にロック状態に戻る「クイック解除」もサポートされている。関係者によれば、開発当初からユーザーに納得してもらえるセキュリティ対策を考え、こうした機能を検討しており、標準搭載を決めたという。ちなみに、モバイルSuicaの発表時に、コールセンター経由でFeliCa対応端末の利用を停止するというサービスがプレゼンテーション資料で明示されたが、これはJR東日本がモバイルSuicaで検討しているサービスであり、auとして提供する予定はないそうだ。また、KDDIでは落とした端末のデータをリモートで消去できる機能を法人向けサービス「ビジネス便利パック」を提供しているが、こうしたセキュリティ対策もコンシューマ向けには今のところ、提供する予定はないという。ただし、ユーザーからの要望があれば、随時、セキュリティの強化などを検討するそうだ。
EZ FeliCaをiモード FeliCaと比較する上で、ユーザーにはあまり直接、関係のないことだが、もうひとつ異なる点がある。それはiモード FeliCaはFeliCaを制御するアプリがJavaベースのiアプリであるのに対し、EZ FeliCaはBREWベースのEZアプリ(BREW)で提供される点だ。ユーザーはサービスプロバイダから提供されるアプリをダウンロードして利用するため、実質的な差はないが、iアプリはいわゆる勝手アプリを認めており、FeliCaを利用した勝手アプリも一応、開発できる環境が提供されている。しかし、EZアプリ(BREW)はauとコンテンツプロバイダとして契約しなければ、BREWアプリを開発できず、いわゆる勝手アプリは存在しない。FeliCaを利用した勝手アプリは、現状、ほとんどないと言われているが、EZ FeliCaでは一般ユーザーがそういったアプリを開発することすらできないわけだ。
仮に、個人が開発する勝手アプリにあまりニーズがなかったとしてもソニーが販売中のFeliCaリーダー・ライター搭載パソコン(VAIO Hシリーズ及びTシリーズの一部機種)のように、FeliCa搭載端末をちょっとした認証ツールとして使うこともできる。そういった場合にもauとコンテンツプロバイダと契約しなければならないのは、FeliCaに関連するサービスや機能を提供する企業としてもやや足かせになるかもしれない。FeliCaに限った話ではないが、そろそろauも勝手アプリに対する何らかの回答を出さなければならない時期に来ているのかもしれない。
一方、サービスについては、モバイルSuicaを提供するJR東日本を含む19社がEZ FeliCa対応を表明しており、端末にはビットワレットが提供する電子マネーサービス「Edy」がプリインストールされる。個々のサービスについての保証やセキュリティは、iモード FeliCa同様、各サービスプロバイダに委ねられており、au側で何らかの保証をするようなしくみはない。つまり、通常の端末からEZ FeliCa端末に乗り換え、各対応サービスを利用するときは、それぞれのサービスプロバイダの保証やセキュリティについて、十分に確認し、ユーザー自身も電子マネーや会員証などが入っているのだという意識を持つ必要があるだろう。FeliCaロックやクイック解除が標準で搭載されているため、初期のiモード FeliCaよりは安心して使えるが、ユーザー自身がしっかりと意識をする必要がある点は変わりない。
■ 対応端末はW32SとW32Hの2機種から
対応端末については、7月11日の発表時点で機種名のみが公表されていたが、今回の発表では実際に動作する2機種が公開された。ともに9月以降に発売される見込みだが、発表会の会場で利用した印象などをお伝えしよう。ただし、いずれも開発中(発売前)の端末なので、実際に販売される端末が異なる場合もあることをお断りしておきたい。
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W32S
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●W32S(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製)
「音楽ケータイ」を謳ったスライド式ボディのW31Sから大きく変わり、スタンダードな折りたたみデザインを採用したのがW32Sだ。FeliCaはボタン面の背面側ではなく、NTTドコモのSH506iCなどと同じように、メインディスプレイの裏側に装備される構造を採用している。特徴的なのはFeliCaの電波を受信したとき、ヒンジ部に装備されているアンテナ部分の内側が光る「FeliCaサイン」を搭載している点だ。FeliCaは非接触ICカードのため、実際にリーダーにかざしたとき、正しく動作しているのかどうかがわからないが、FeliCaサインがあれば、視覚的に判断することができる。側面に装備されたFeliCaキーも便利な機能で、サイドキーの特定操作(81通りの組み合わせ)でFeliCaロックをクイック解除するといったことができる。
実機はWIN端末のわりにコンパクトで持ちやすいというのが第一印象だ。FeliCaサインは光り方がやや淡く、周囲の明るさによって見え方が違うので、実際に点灯している状態を何らかの方法で一度、確認しておいた方がいいだろう。メニュー画面もW31Sで採用されていたクロスメニューだけでなく、マトリクス表示のアイコンメニューや変化する風景を組み合わせたドラマメニューなどを用意しており、他機種からの乗り換えにも配慮している。ボタンの基本レイアウトは従来モデルを踏襲しているが、開始ボタンと終了ボタンの位置に少し慣れが必要かもしれない。実際の利用で効果を発揮しそうなのは、データフォルダを拡大し、一般データとEZアプリ(BREW)のデータ領域をフレキシブル化した点だ。Style-Upパネルは素材感を重視したものだが、装着した状態でもEZ FeliCaを利用できるため、FeliCa部分の保護にも役立つというメリットを持ち合わせている。
ソニー・エリクソン製端末ファンのユーザーからは、W31Sのような音楽再生機能(パソコンで音楽CDから音楽データを取り込んで再生する機能)がないこと、ジョグダイヤルを搭載していないことなどに対する不満が聞こえてきそうだが、W32Sはどちらかと言えば、EZ FeliCaを自然に使いたいユーザー向けのスタンダードな端末として仕上げられている。Style-Upパネルの個性とともに、女性ユーザーにも受け入れられそうな端末と言えるだろう。
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W32H
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●W32H(日立製作所製)
同じくスタンダードな折りたたみデザインを採用しながら、音楽再生機能などを充実させたのが「W32H」だ。FeliCaについてはボタン面の背面側に内蔵されており、EZ FeliCaの標準機能であるFeliCaロックやクイック解除などが搭載されている。FeliCaロックの解除はパスワードを利用している。
ボディはW32Sほどではないものの、コンパクトにまとめられており、ボディ側面の合わせ部分に凹みを付けるなど、折りたたみボディの開きやすさにも配慮している。ステップタイルキーはフラットなデザインが魅力だが、キートップも大きくなかなか押しやすい。ただ、爪の長い女性は他のキーを押してしまいそうなので、少し慣れが必要かもしれない。
機能的には、W31CAなどにも搭載されているPCドキュメントビューアーとPCサイトビューアー、SD-Audioに対応した音楽再生機能などが特徴になる。PCドキュメントビューアーとPCサイトビューアーの仕様は基本的にW31CAなどと共通だが、W31CAのワイド液晶と違い、通常サイズのQVGA液晶を採用しているため、見た目のイメージは若干、異なる。
注目の音楽再生機能だが、パッケージにはパソコンで音楽CDから録音できるアプリケーション「SD-Jukebox」、パソコンと接続するUSBケーブルなどを含む「MUSIC START KIT」が同梱されている。他のSD-Audio対応端末では著作権保護機能付きリーダー・ライターが必要な場合があるが、W32HはUSBマスストレージモードでパソコンに接続すれば、端末本体のメモリーカードスロットが著作権保護機能付きリーダー・ライターになるため、パッケージのみですぐに音楽CDを録音することができる。
W32Sが女性ユーザーにも受け入れられる自然なスタンダード端末とするなら、W32Hはケータイをビジネスにも活用した男性ユーザーを中心に、実用性重視の幅広いユーザー向けの端末という印象だ。
■ au ICカードとEZ FeliCaの関係
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au ICカード
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EZ FeliCa対応端末とauのおサイフケータイのサービスは発表されたばかりだが、実は今回発表された2機種にはもうひとつ今までのau端末と異なる点がある。WIRELESS JAPAN 2005開催時に発表されたように、W32SとW32Hはauが新たに提供を開始する「au ICカード」を採用している。au ICカードはFOMAやVodafone 3GなどのUSIMカードとほぼ同じもので、顧客情報を記録し、端末に装着して利用する。au ICカードをGSM方式の対応端末に挿せば、国際ローミングサービス「GLOBAL EXPERT」を利用し、世界約160の国と地域で通話サービス利用することも可能になる。
ただ、au ICカードで注意が必要なのは、FOMAカードやVodafone 3GのUSIMカードと違い、1台の端末に対し、利用できるau ICカードは1つに限られているという点だ。たとえば、筆者がW32H、友だちがW32Sを持っていた場合、お互いのau ICカードを入れ替えても利用できない。まったく情報が書き込まれていない端末に、一度、特定のau ICカードを挿すと、そのau ICカードでしか端末は動作しないというしくみになっている。もし、端末の利用を中止し、他のau ICカードで利用したいときは、auショップなどで解約と同じ手続きを踏み、手数料を支払う必要があるとのことだ。KDDIによれば、利用できる端末を限定することで、端末に加味されている販売奨励金をより有効に活用したいためだそうだが、裏を返せば、au ICカードが採用された端末でも端末価格はそれほど割高にはならないということを意味する。
ところで、EZ FeliCa対応端末は9月からW32SとW32Hの2機種が販売されるが、ユーザーとしては今後、EZ FeliCa対応端末がどれだけ登場してくるのかも気になるところだ。KDDIでは順次、対応端末を増やしていくとしているが、必ずしもすべての端末がEZ FeliCa対応になるわけではないようだ。また、7月11日の記者会見ではCDMA 1XでのEZ FeliCa対応端末も要望があれば、検討したいというコメントも得られている。
しかし、筆者が独自に取材をした情報に寄れば、EZ FeliCa対応端末はiモード FeliCa対応端末のように、一気に増えることはないという印象を得た。確定的なことは言えないが、関係者から得られた情報などをまとめると、どうもEZ FeliCaとau ICカードは事実上、セットで実装することが前提になっており、しかもau ICカードの実装は開発にかなり手間が掛かるようなのだ。
au ICカードについては今後、WIN端末の標準機能になるとしているが、「しばらくはau ICカードに対応しないWIN端末が登場する」というコメントもあり、完全移行(WIN端末でのau ICカードの標準装備)には若干、含みを持たせている。つまり、しばらくの間は2005年夏モデルまでの端末とほぼ同じ仕様のWIN端末がいくつか登場し、2006年1月のモバイルSuicaサービスが開始された段階で、対応端末が完成していれば、au ICカード&EZ FeliCa対応端末が投入されることになりそうなのだ。モバイルSuicaのサービス開始時に利用できる対応端末は、もしかすると、今回発表された2機種しか選択肢がないかもしれない。モバイルSuicaのサービス開始をターゲットに開発されてきたEZ FeliCa対応端末だが、au ICカードというハードウェア的にも新しい取り組みが絡むことで、今後のauのラインアップ展開にも微妙な影響を与えることになりそうだ。ただし、これについてはあくまでも独自情報による推測なので、その点はご留意いただきたい。
また、EZ FeliCaはサービス全体で見た場合、FeliCaロックやクイック解除などのセキュリティ機能を標準仕様とした点は評価できるが、iモード FeliCaがそうであったように、ユーザーに対して、電子マネーなどを利用するうえでの意識改革、より使いやすい環境の提案、各サービスプロバイダごとのセキュリティ対策など、いろいろな面でのフォローが必要になってくる。あえて「おサイフケータイ」という名称を採用し、社会に浸透させたいという意気込みは買いたいが、本当に使えるサービスに進化させるためにはその他にも取り組まなければならないことがあるはずだ。これらの点に対し、auがどのように取り組んでいくのかもユーザーとして注意深く見守る必要がありそうだ。
■ URL
ニュースリリース
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2005/0802/
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(法林岳之)
2005/08/10 11:47
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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