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ケータイとカーナビの接点
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日産のカーウイングス開発者に聞く
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カーウイングス
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さまざまな機器と連携できるようになってきている携帯電話。今回は、カーナビと携帯電話の連携について、自動車メーカーがどのように考えているのか、日産自動車のプログラム・ダイレクターオフィスの野辺継男氏と石川太一氏に聞いた。
――日産では「カーウイングスナビ」という新しいナビゲーションを提供していますが、このカーナビの特徴はどういったところにあるのでしょう?
石川氏
一番のウリはオペレーターサービスです。これは、一度体験していただかないことには、なかなかその良さが分かりません。何ができるのかというと、「ディズニーランド」とか「富士サファリパークの近くにある温泉」とか、行き先をオペレーターに伝えるだけで目的地の設定が行なえます。利用者の約7割がこうした使い方をしています。
このほかにも、「渋滞情報を教えて欲しい」「○○に電話をかけたい」といった要望にも応えられるようにしてあります。携帯電話から104で電話番号を調べると、情報料だけで100円かかってしまいます。カーウイングスの場合、番号をお調べして、電話を繋ぐところまでを通話料のみでサポートしますから、それだけでもお得と言えるかもしれません。
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日産自動車
プログラム・ダイレクターオフィス
石川太一氏
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――最近のカーナビにはVICSによる渋滞回避機能なども搭載されていますが。
石川氏
VICSも大変便利なのですが、周辺の交通情報しか取得できません。カーウイングスのように通信機能が搭載されていると、出発地から目的地までの交通情報をトータルで考えてルート探索が行なえます。
また、現在の渋滞情報を元にルート設定をすると、数時間後に通過する場所で大渋滞、などということもあり得ます。そこで、カーウイングスのDVDには過去の渋滞情報も記録されており、混み具合を予測して渋滞を回避するような仕組みになっています。「最速ルート探索」という名称でこうしたサービスを提供しており、大変好評をいただいております。
――携帯電話との連携機能というと?
石川氏
現在地や目的地周辺の情報をメールで携帯電話に送信し、詳しい情報を得られる「送っとケータイ」というサービスがあります。現在地を携帯電話にメールで知らせる「ここです車メール」という機能もあります。このほか、Bluetooth対応の携帯電話と連携して、ハンズフリーで通話できる機能も提供しています。
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日産自動車
プログラム・ダイレクターオフィス
野辺継男氏
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――カーナビに通信モジュールを搭載するのではなく、普段持ち歩く携帯電話をそのままBluetooth接続して、ハンズフリー通話にもデータ通信にも使うという発想は面白いですね。
石川氏
通信モジュールを内蔵しなかったのには、当然、機器のハードウェアコストの問題に加え、ランニングコストがかかりすぎてしまうというところに配慮しました。週末しか乗らないのに、普段使っている携帯電話とは別に、カーナビ用にまた基本料を支払わないといけないというのはどうか、ということです。
もちろん通信モジュールを内蔵することで提供できるサービスもあります。例えば、車を盗まれてしまった場合に追跡する、といったようなセキュリティサービスです。ただ、今の日本では、それほどニーズが無いというようなデータが出ています。ニーズが高まってくれば、通信モジュールを内蔵する必要も出てくるかもしれません。
野辺氏
グローバル市場を見た場合、例えば、台湾などでは盗難率が日本の10倍程度で、そうした地域では車を買って1年くらいは大変心配なわけです。そうした地域では当然セキュリティに対するニーズも高く、日本よりも高いようなシステムがかなり売れていると聞きます。ところが、米国の盗難率は日本の5倍程度で、ちょうど日本と台湾の中間的なポジションにあると言えると思いますが、その米国ですら、そうしたシステムに対するニーズがそれほどではないというのが実状です。
――今後、こうして行きたいというようなことは何かありますか?
野辺氏
いろんなアイデアがあるのですが、開発できても市場性が無いなどの理由で投入を見送られることもありますから、「こうなる」とは明言できないところはあります。ただ、大まかなところでは、私自身、これまでさまざまな技術の開発に携わってきてまして、羅列すると、テレビ会議、ビデオオンデマンド、データ放送、セットトップボックス、PDA、デジタル放送、オンラインゲーム、セキュリティなど、ということになるのですが、それらをカーナビ上にうまく載せられれば、と考えています。
これらについては、カーナビにもケータイにも重なる部分が多いのではないでしょうか。ただし、現時点で全てケータイかというと、技術的な問題からそうも行きません。バッテリーやCPUパワー、画面の広さなど、まだケータイには荷が重い領域もあります。
自動車の場合、安全に走るということが第一条件になりますから一定の制約はあるのですが、その中で先ほど言ったようなものをうまく取り込んで行けたら、という風に考えています。
――お忙しい中、ありがとうございました。
■ カーウイングス体験レポート
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ボタンを2回押すだけで、ルート設定できる
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インタビューの後、両氏の案内の下、最速ルート探索に対応したカーウイングスを装備した「フーガ」に試乗してみた。通信にはBluetooth対応のFOMA端末「F900iT」を使用した。
インテリジェントブレーキアシスト機能など、ハイテクで固められたフーガだが、ステアリングの右側にそれらの機能を制御するスイッチ、左側にカーウイングスを操作するスイッチが搭載されている。さらに、センターコンソールに液晶ディスプレイと、さらにカーウイングスの各種操作が行なえるボタンが用意されている。
やはり一番面白いのはオペレーターサービスだ。「オペレータ」ボタンをワンプッシュすると、自動的に発信、オペレーターと通話できるようになる。ここで目的地などを伝えると、オペレーターが情報を検索した上で、いくつか候補を提示してくれる。それを確認した上で「じゃあ、○○で」と言うと、「目的地を○○に設定しました。決定ボタンを押してください」という風な流れとなる。決定ボタンを押すと、音声通話からデータ通信モードに切り替わり、ルート設定データのダウンロードが始まる。
ボタンを2回押すだけなので、運転中にアタフタすることもない。もっとも、対人でオペレーターと相談しながら設定していくことになるので、呼び出してから設定が完了するまでにはそれなりに時間がかかる。そのため、走りながら「近くの○○を教えて」などというリクエストをすると、設定が終わる頃には通り過ぎている、なんていうことにもなりかねない。車の運転そのものもそうだが、余裕を持って操作するようにしたい。安全上の理由もあるが、通信回線の安定性も確保できることから、静止した状態でオペレーターと通話するのがベターだろう。
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周辺の情報をメールで携帯電話に送信できる「送っとケータイ」機能。車を降りてからをサポート
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ネットを活用した情報サービスについては、携帯電話のそれと比較すると、ラインナップや情報量などの面で見劣りする部分も多い。これは、自動車を安全に運転することが第一の目的であるため、敢えて複雑にならないようにしているという側面もある。
ただ、ラジオを聴いていて、気になる曲があったら、曲名やアーティスト名が分かる機能や、さらに、その場で収録CDの通販の申込が行なえる機能など、車という空間で利用したいと思うようなサービスもいろいろとある。こうしたサービスは、auのFMケータイと着うたサービスの連携のように、携帯電話で成功した例もあるので、期待したいところだ。
また、現時点で発売されている携帯電話の全てがBluetoothに対応しているわけではない。Bluetooth非対応の端末もケーブル接続で利用できるが、やはりBluetoothをオンにして車内に持ち込むだけという対応端末を利用したほうが遙かにスマートだ。インタビューでも触れた通り、通信モジュールについては、トヨタのG-BOOKのように内蔵するという方法論もある。ランニングコストが問題になるというのであれば、例えば、ドコモがFOMAのデュアルネットワークサービスでやっているように、車内・車外で通信端末(モジュール)を切り替えて利用できるようにするのも手だ。この辺りは、通信事業者側の努力も必要なところだろう。
カーウイングスをはじめとする通信カーナビは、実際に利用してみないと便利さが分からない機器の一つだ。カーウイングスの場合、銀座にある日産本社のショールームなどで、オペレーターとの通話も含め、体験できるようになっている。気になる人は一度体験してみるといいだろう。
■ URL
カーウイングス
http://www.nissan-carwings.com/
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(湯野 康隆)
2005/04/27 11:21
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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