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新生DDIポケットインタビュー
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IP化でリーズナブルな定額通信サービスを
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DDIポケットの執行役員 経営企画本部長の喜久川 政樹氏
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DDIポケットは10月14日、2005年2月1日より社名を「株式会社ウィルコム」に変更すると発表した。ネットワークのIP化を進める中で、KDDIグループから袂を分かち新会社となる新生DDIポケットの執行役員 経営企画本部長の喜久川 政樹氏に今後の事業展開などについて聞いた。
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DDIポケットは「WILLCOM」へ
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――「WILLCOM(ウィルコム)」という社名は社内公募で決定されたそうですが。
喜久川氏
外部のコンサルにも入ってもらったのですが、社員自らの新たな会社への参画意識を高めてもらうためにも、公募をやったほうがいいと考えました。Wireless IP Local Loopというネットワークイメージや、強い意志・未来といった言葉を連想させるWILLという言葉が非常にマッチしたので、この社名にしました。
――新しく変わることでユーザーが最もメリットを感じる点はどこですか?
喜久川氏
やはりこれまで以上に積極的にサービス向上に取り組めるようになるのは事実です。これまでは、我々がやりたいと思ってもKDDIグループ戦略の中では実現できない部分がありました。たとえば高速化をもっとドラスティックにやるとか。多くのユーザーの満足に応えるためには若干時間はかかるかと思いますが、サービス性は良くなるようにします。
――従来のpdx.ne.jpというドメインでのメールサービスは継続されるのでしょうか?
喜久川氏
そうですね。ユーザーの利便性を優先し、お客様が混乱しないようにしようと思います。変えることによるメリットはあまりなく、むしろユーザーに手間をとらせてしまいます。私自身、変えられたら困ります(笑)。
――他のPHS事業者を見ていると、無線LANなどを意識されているところもありますが、先日の発表会では、あくまでもWILLCOMではPHSのネットワークをベースにサービスを強化していくという印象ですが。
喜久川氏
無線LANは全く違うメディアだと考えています。モバイル通信として無線LANがワイヤレスの広範囲のサービスを提供することは難しいと考えています。無線LANが成功するなら、PHSは初期段階で成功しているはずなんです。我々も初期段階はホットスポットのようなものだったんですから(笑)。無線LANを補完的に使うことは考えられますが、無線LAN単体でのサービスは難しいと思います。
というのは、ユーザーは使いたいときに使えるからワイヤレスを選ぶのであって、あそこで使えるから使って下さいというものではないんです。それではユーザーがストレスを感じてしまう。どこでも使えるワイドエリア性が絶対必要で、我々がエリアカバー率100%を目指しているのは、究極の形としてユーザーに伝えるためには100%という数字が必要だからです。
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基地局を増強し、チャンネル数を増加
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IP化への投資は5年間で700億円
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――その中で、IPを導入することでコストダウンを図りたいと?
喜久川氏
そうですね。IPは広く使われていますが、よく言われるのはIP音声電話サービスをやらないのかという話です。しかし我々は先日の発表会で基地局を増強し、チャンネル数を増加させると発表しました。端末と基地局間の無線部をわざわざIP化する必要性は今のところないと考えています。今よりもチャンネル数を4倍以上に増やせるので、そこで無理する必要はないでしょう。一方、有線部のネットワークについては、NTTへの回線使用料の負担を削減できるということや、IP網のコストが大幅に下がってきていることなどから、IP化をさらに進めていく予定です。これにより、今後、データも音声もさらにリーズナブルな料金で提供することも検討できるようになります。
――バックボーンのIP化に700億円投資するということなんですが、この投資額は大きいとお考えですか?
喜久川氏
3Gのキャリアや、今後新たに参入を目指している会社からすれば、かなり安い水準だと思うのではないでしょうか。通常5,000億~1兆円といわれていますが、それだけ投資しても我々のような定額サービスが提供できるかというと決してそういうものではないと思います。
安い水準に抑えられるのは、既存のネットワークと共用できるものを導入するからです。トラフィックが高く、ニーズが高いところから導入していきます。基地局自体の大きさには大きな差はないです。新しいタイプはアンテナが8本(従来は4本)なので目立つと言えば目立ちますが、携帯電話と比較すると圧倒的に小さいです。設置しやすさもそのままです。
中国などのアジア諸国でPHSの普及が進んでいますが、それが基地局のコストダウンにつながるというメリットも出始めています。
――国際ローミングの展開はどうお考えですか?
喜久川氏
現状、台湾とタイでのローミングが可能ですが、課題は中国だと思います。中国内でも北京と上海でローミングできないなど問題があり、現時点では、日本とのローミングはできませんが、我々としては是非とも実現したいと考えています。
――台湾で三洋電機がPHS/GSMのデュアル端末を投入していますが、こうしたものを国内で展開する予定はありますか?
喜久川氏
国内でニーズがあればといったところです。PHSとGSMデュアル端末を出してビジネスに見合えば提供したいです。
――先日の発表会では、来年度を目処に音声端末を提供するとされていましたが、今年度の音声端末の提供はないということですか?
喜久川氏
いえ、多少マイナーチェンジしたモデルや目新しいものも投入します。しかし、みなさんご期待の128kbps対応でOperaブラウザ搭載といったようなものは来年度になるでしょう。
まずは1年間でネットワークをきちんと良くしていき、音声端末もこれまでのPHSというイメージを払拭するようなきちんとしたもの出したいと考えています。やはり中身が伴わないとユーザーにブランドを浸透させることもできませんので。
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音声端末の今後の展開
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データ通信端末の展開
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屋内型小型基地局「ナノセル」
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――法人展開はどうでしょう? 最近は他の事業者も積極的なようですが。
喜久川氏
まず、記者会見でも展示させていただいた屋内型の小さな基地局「ナノセル」があります。これは、AirH"も音声も利用可能です。社内で利用する場合に、音声・データの両方をどんどん使って頂いても周波数を無駄遣いしないため、定額制を導入しやすいものだと思います。
我々の独自性は、マイクロセルの特長を活かした「たくさん使っても安い」というサービス性だと考えています。1加入者あたりの料金を安くすることも可能ですが、最も大変なのは「たくさん使っても安い」ということです。これを無線の世界で実現することは本来ものすごくハードルが高いことなのです。
――マイクロセル方式の基地局をたくさん設置しなければならない点が弱みでもあり強みだということですか?
喜久川氏
そうですね。エリアを広げていくために10年かかりましたが、マイクロセルは基地局を設置してしまえば強いんです。新しい基地局は都内や政令指定都市から提供していきたいと思います。
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マイクロセル方式とマクロセル方式の比較
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新ネットワークへの移行スケジュール
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――実際に速くなった環境を体験できるのはいつ頃ですか?
喜久川氏
新たな圧縮技術や無線機の複数化などを導入して今年度中に体感1Mbpsレベルのサービスを開始する予定です。そして来年度以降、基地局を増強した上で、64kbpsを8つ束ねて圧縮をかけることで、さらに高速のサービスを展開していこうと思います。音声端末については、フルブラウザを搭載したAirH"PHONEで128kbpsにスピードアップしたものも来年度に発表したいと思っています。
――通信速度が速くなることで料金プランが変更されるという可能性はありますか?
喜久川氏
定額プランと準定額プランを用意しようと考えています。「定額利用が可能なAirH"」というイメージが浸透していると思いますが、それを壊そうとは思っていません。具体的な料金体系はまだ決めていませんが、通信速度が倍になったからといって、利用料を倍にするようなことはしません。やはりリーズナブルである必要があります。
――本日はありがとうございました。
■ URL
DDIポケット
http://www.ddipocket.co.jp/
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(津田 啓夢)
2004/10/21 11:41
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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