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「P506iC」開発者インタビュー
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進化したフレックススタイルでマルチで便利な存在に
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P506iC
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7月10日に販売が開始されたNTTドコモの「P506iC」は、先代モデル「P505iS」と同じく回転2軸機構のヒンジによる“フレックススタイル”を採用したiモード端末だ。195万画素のカメラを搭載し、ストロボ機能を備えるほか、携帯電話としてさまざまな利便性向上が図られている。
今回は、国内初の非接触ICチップ搭載端末でもある「P506iC」について、パナソニック モバイルコミュニケーションズで端末開発に携わった方々に話を聞いた。
■ マルチな機能をアピールするフレックススタイル
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左から商品企画グループ 商品企画チーム主事の周防 利克氏、デバイス開発チーム モバイルEC開発チーム チームリーダーの丹藤 克彦氏、商務・販売助成グループ 販売助成チーム 主事の浅川 亮氏
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インタビューに応じてくれたのは、商品企画グループ 商品企画チーム主事の周防 利克氏、デバイス開発チーム モバイルEC開発チーム チームリーダーの丹藤 克彦氏、商務・販売助成グループ 販売助成チーム 主事の浅川 亮氏の3人だ。
――開発着手は、いつ頃だったのでしょう?
周防氏
「昨年の春頃でしょうか。その時点から、フレックススタイルというデザインで行こうという方向性は定まっていました」
――「P505i」までは薄型化を目指すという方向でしたが、「P506iC」では「P505iS」に続いてフレックススタイルが採用されました。これはどういった理由なのでしょうか?
周防氏
「やはり携帯電話がさまざまな用途に使われているという現状が大きなポイントでしょう。電話やメールなどが中心であれば、2つ折りで良いのでしょうが、カメラやFeliCaなどの機能も使いこなしたいという方には、フレックススタイルが良いと判断しました」
■ ユニークな発想のヒンジ
――フレックススタイルを実現しているヒンジですが、P505iSよりも小さくなっています。
周防氏
「スマートなデザインと感じていただけるよう、ヒンジ部を小さく見せる工夫をしました。ヒンジと言えばディスプレイ側のボディに挟み込まれている部分だけを示すと思われるでしょうが、実際は挟み込んでいる部分も含みます。P506iCのヒンジは機構としてはP505iSと同等の物ですが、部材の形状を変更し、回転部を小さくしています」
――ヒンジ関連では、360度回転が実現されています。P505iSのヒンジは180度回転だったのですが、どのような工夫が施されているのでしょう?
周防氏
「実はP506iCも180度回転なのです。これは発想の転換と言えるもので、P506iCのヒンジは片方に180度、もう片方にマイナス180度ひねっていると言えば理解していただけるでしょうか。配線は紙のような薄いものから、紐状のものに変更されており、左右どちらの方向にも180度しか動いていないのです」
■ 女性を意識したカメラ機能
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有効画素数195万画素のCCDカメラ。ストロボを備える
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――「P505iS」ではオートフォーカス機能がありましたが、「P506iC」では用意されていません。
周防氏
「オートフォーカス機能は、風景や人物、QRコードなど多様な距離での撮影を頻繁に使い分ける際には便利な機能と考えています。P505iSでは男性ユーザーをメインターゲットにしており、メカとしての魅力を感じていただけるように仕上げていました。
しかし今回のP506iCは、“女性層にもフレックススタイルを広めたい”という狙いもありました。女性ユーザーでは、携帯電話のカメラを自分撮りや友人を撮影するシーンが多いだろうと考え、カバンからさっと取り出してさっと撮影できる形にしようということになりました。
私の周囲にも、デジタルカメラのオートフォーカス機能でピントをあわせるという概念がなく、焦点が合う前に撮影してしまう方がいました。そういう方には“このカメラはいつも手ぶれする”“ちゃんと撮影できない”といった不満が出てきます。誰でも手軽に撮影できることをコンセプトにパンフォーカス機能を採用しました」
――ライトではなく、ストロボを採用した理由というと?
周防氏
「P506iCでは、動画に比べて静止画撮影のほうが圧倒的に多いと想定しています。動画であれば、ずっと照らし続けるライトは有効ですが、静止画であればストロボのほうが輝度が高く、暗いところでもしっかり撮影できますのでメリットがあるだろうと判断しました」
■ ソフトウェア面での工夫
――「P506iC」では、ディスプレイを回転させて折りたたむという“クイックスタイル”にすると、画面に表示される待受画像がクイックスタイルでの操作法を案内するガイダンスになっています。こういった工夫点、新たに追加された機能はどのようなものがあるのでしょうか。
周防氏
「フレックススタイルを踏襲することが決まったときに、ヒンジを小さくするといったハードウェア面での進化のほかに、ソフトウェア面での改善も重要と考えました。P505iSでは液晶を露出してたたむと、カメラと撮影画像の閲覧しかできませんでした。今回はiモードやiアプリなど使える機能を増やしました。またカメラを起動したときの画面表示ですが、ボタンの位置にあわせた機能表示をするようにしました。
1つわかりやすい例としては、撮影した画像を閲覧する時でしょうか。データフォルダを選択して、見たい画像を探すとします。従来通り、サムネイル画像の一覧を表示できますが、その場合はサブメニューを開くという手順が必要です。しかしP506iCでは、クイックスタイルでデータフォルダ内の画像を見る時、リスト一覧から任意の画像を選択するとリストの右に選択中のサムネイル画像が表示されます
使い勝手とは異なる点ですが、iアプリでもユニークなものを用意しました。たとえばiモードサイトの『P-SQUARE』では、ギャラクシアンやマッピーなど著名なゲームのiアプリ版を期間限定で無償配信しています。またプリセットされている『スクリーンPlus』は、画面を回転させて使用する待受アプリですが、他のiアプリを起動できるランチャー機能や時事ニュースを表示する機能などを詰め込んだものです」
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クイックスタイルで撮影画像を見る場合、データフォルダを開くとリストとともにサムネイル画像が表示される
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これはプリセットされる「スクリーンPlus」。ニュースや天気予報などを手軽にチェックできる待受アプリだ
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■ カラーリング
――「P506iC」のボディカラーは、ブルーマルガリータ、ブラックトルネード、シルバーマティーニという3色のラインナップです。女性ユーザーをメインターゲットにしているとのことですが、カラーリングやボディデザインはどのような考えに基づいているのでしょう?
周防氏
「基本的な考えとして、カラーリングには役割が2つあると思っています。1つは広くユーザーに受け入れられるような色で、ブラックトルネード、シルバーマティーニがこれにあたります。また店頭で陳列するときに目を惹くようなカラーが必要です。ブルーマルガリータは少し赤が入った紫っぽい色味で、我々からの提案です」
――女性向けであれば、本体サイズの小型化を進めるというのは1つの選択肢だったと思うのですが。
周防氏
「確かに小さくなればなるほど良いとは思いますが、P506iCのサイズは充分受け入れられると判断しました。P505iSに近いサイズで、195万画素カメラやFeliCaなどの新機能が追加されたということのほうが喜ばれるのではないでしょうか」
――スペック上はP505iSより5g重くなっていますが、手にしたときの印象は軽く感じられます。
周防氏
「そういった印象についてはこだわっています。ツートンカラーやヒンジ部のすぐ側にあるパーツの採用によって、見た目がコンパクトになるように工夫しています」
■ 2つの面で苦労したFeliCaの実装
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左は丹藤氏、右は浅川氏
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――国内初のFeliCa対応端末となったわけですが、商品化にあたってはどういった苦労があったのでしょうか。
丹藤氏
「端末搭載へ向けた技術面での取り組みはもちろんのこと、実際にユーザーが利用するシーンを考えて、iモード FeliCaにおけるサービス面での検討も必要でした。後者はドコモさんやサービス事業者さんと協力して取り組みました。
前者の技術面では、やはりアンテナの配置に悩みました。基本的にアンテナは、ループ状のものを使用しますが、アンテナの面積が大きければ大きいほど、安定した通信性能が確保できます。
FeliCaチップを内蔵したカードでは、カード全体の縁に沿って、アンテナが配置されています。同じサイズでは携帯電話には内蔵できませんので、P506iCではカメラとバッテリーの間のスペースに納めています。面積としては小さくなりますが、カード型と同等の性能を得るために苦労しました。
開発中は、リーダー・ライターとの接続試験などを数多く行ない、試行錯誤の上で今回の形になりました」
――携帯電話向けのFeliCaチップとはいえ、それを単純に搭載するという形ではないと思うのですが、どのような過程を経て実装されたのでしょう?
丹藤氏
「かなり以前から携帯電話への搭載に向けて開発を開始しており、プロトタイプを制作して、さまざまな要素技術を研究してきました。ドコモさんもプレビューサービスを実施されましたし、そういったステップを踏んで、作り上げられたと言えます」
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カメラ周辺のパーツと、先端に近い盛り上がった部分は、「エラストマー」という素材が用いられている
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――iモード FeliCaでは、携帯電話をかざすというスタイルがアピールされています。しかし実際の利用シーンではリーダー・ライターと携帯電話をカチッと接触させることが多いと思うのですが、P506iCのカメラ周辺部分は盛り上がった形状になっています。
周防氏
「カメラ周辺部分と、もう1カ所出っ張っている部分には、ゴムとプラスチックの中間のような素材である“エラストマー”を採用しています。これで耐衝撃性を得ているわけです。もちろん内部のデバイスについても衝撃に耐えうる設計にしています。
他のデジタル製品であれば、“落とせば壊れる”ということが理解されているのですが、携帯電話では“落として壊れる”ということが許されません。これまで我々が培ってきた技術、ノウハウは、FeliCaチップを搭載することにも活かされていると思います」
――FeliCa関連のセキュリティはいかがでしょう? 特にP506iCでは強調されていないようですが。
周防氏
「iモード経由で、新たにバリューをチャージする場合は、4桁のパスワードによって保護されています。既に端末内にチャージされているバリューについては、今後の商品で、セキュリティ機能の充実を考えていきます。たとえば机の上に充電しながら置く状況では、より簡単にロックできるようにするなど、いろいろと使い勝手の良い機能を実現していきたいと思います」
――ありがとうございました。
■ URL
パナソニック モバイルコミュニケーションズ
http://panasonic.co.jp/pmc/
P506iC 商品情報(パナソニック)
http://panasonic.jp/mobile/p506ic/
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(関口 聖)
2004/07/30 16:23
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