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「P900iV」開発者インタビュー
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ムービースタイルをさらに進化させた「MOVIE STYLE NEXT」
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6月19日、FOMA 900iシリーズの新モデルとして、パナソニック モバイルコミュニケーションズ製端末「P900iV」が発売された。P900iVは、P2102Vのムービースタイルを継承する2軸回転機構のヒンジを備え、動画の録画と再生にフォーカスした端末だ。P900iとは違ったアシンメトリーで力強いデザインを与えられ、動画の録画・再生能力に優れたこの端末はどのような経緯で開発されたのか。パナソニック モバイルコミュニケーションズ 商品企画グループ 商品企画第一チーム 主事の井端 勇介氏と、デザイングループ ハードデザインチーム 主任意匠技師の定別當 毅氏の両氏にインタビューを行なった。
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P900iV ブロンズオレンジ
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■ ムービースタイルをさらに進化
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商品企画グループ 商品企画第一チーム 主事 井端 勇介氏
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―今回発売された「P900iV」ですが、端末のコンセプトを教えて頂けますか?
井端氏
「このP900iVは、1年前にP2102Vという“ムービースタイル”の商品が出ていますので、その後継機種、というのが大きな位置付けになります。
P2102Vは当時初めての2軸(回転2軸機構のヒンジ)というスタイルが大きなインパクトを持った商品でしたが、実際使っていく中で煮詰め切れていない部分もありました。そういうところを改善していくという点、これは今回のキャッチフレーズ“MOVIE STYLE NEXT”というところにも表わされています。もう1つはP900iシリーズのフラッグシップ商品として出しても恥ずかしくないようにという点、これらを踏まえてP900iVを商品化しています。
使い勝手の面では、ムービースタイルをさらに進化させています。P2102Vでは“ムービースタイル”のポジションで液晶の回転が限られていましたが、今回はさらに回転させ液晶を表にして折りたたむ“ビューアスタイル”により使い勝手を向上させています」
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デザイングループ ハードデザインチーム 主任意匠技師 定別當 毅氏
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定別當氏
「デザインのテーマは、“ムービーらしさ”です。特徴であるムービースタイルを訴求するために、前機種のP2102Vに対して、P900iVはよりカメラ部を強調することでAV機器らしさを表現しました。カメラ部周辺のL字の塗り分け『ムービーライン』はよりスタイルを印象的に見えるよう仕上げ、またサブ液晶画面にはヘアラインの成形処理を行ないAV機器の持つ金属感、硬質感を取り入れて、デザインの特徴にしています。
2メガピクセルカメラのCCDが突起してしまうことに対し、非対称デザインを採用することで逆に特徴化しました。ムービースタイルのポジションではガングリップのように指掛かりとして造形し、使用性も考慮した“ムービーらしさ”を強調したデザインに仕上げています」
―閉じた状態で液晶を表に出したスタイルはP505iSで可能でしたが、iモードなどができませんでした。P900iVは閉じた状態でもiモードができますが、P505iSユーザーの声を参考にしたということはあるのでしょうか?
井端氏
「ビューアスタイルでの操作については社内でも大きく2つの意見がありました。画像などが見れるだけのわかりやすい状態にしよう、というものと、iモードやメールなど、いろいろな操作ができるようにしよう、という2点です。実際、液晶を表にして持ち歩いたりするユーザーがいたことや、P505iSユーザーの声を参考に、最終的にはP900iVのビューアスタイルではiモードなどができるようにしました」
―御社ではビデオカメラも作っていますが、ノウハウなどを引き継いだりした点はあるのでしょうか?
井端氏
「ヒンジ部分の剛性確保や、ムービースタイルで液晶部分がボディにぶつからないように動きを制限したりする点などは、ビデオカメラのノウハウを生かしています。ただ、携帯電話の使われ方はビデオカメラに比べて荒いので、剛性的にはビデオカメラの10倍以上の耐久力を確保しています」
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前モデルとなるP2102V
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―P2102VやP900iVは、カメラ部分の奥行きが確保できる構造に見えます。光学ズームなども期待してしまうのですが。
井端氏
「カメラ系、ムービーに付随するような機能なら取り入れていきたいと考えています」
―ムービーにフォーカスした端末ということで、動画の再生能力も優れていますね。miniSDカードを経由して、携帯で撮影したもの以外の動画の再生も視野に入れて開発されたのでしょうか?
井端氏
「『SD WORLD』という形でP2102V、P505iSのあたりから訴求していますが、今はDIGAやVIERAといった製品とのリンクで、パナソニック全体としてSDカードで繋がる『SD WORLD』を訴求していく、というふうに考えています。また、このP900iVを使われるユーザーは、どちらかというとパソコンなどに詳しい方が多いと考えていますので、そういった方にも満足して頂けるような高機能なものを盛り込んでいます」
■ QVGAの動画を横画面で無理なく再生
―ソフトウェア部分はNEC製の端末と共通化されている部分が多いわけですが、今回独自に力を入れた部分はどこでしょうか?
井端氏
「テレビ電話、カメラ関連、ビューア関連の大きく3つは完全にオリジナルです。また、1番違うのは横画面での閲覧に対応している点です。P900iVでは動画がQVGAの解像度に対応していますので、拡大や縮小することなく1番良い横画面の形で見ることができます。
また普通の折りたたみではなく2軸回転機構を採用していますので、ムービースタイルなどスタイルの変化に応じてアプリが起動する仕組みなど、アプリ間の連携には力を入れました」
―液晶を表にして閉じた時に、必ずしもビューアが起動しなくてもいいように感じたのですが、いろいろと議論はあったのでしょうか?
井端氏
「ありました。ビューアスタイルでは横画面の大画面ビューアを見て欲しい、というのが我々の意志ですが、それを強制するのではなく、ビューアスタイルでiモードやメールをしたい方もいると考えています。その場合は、通常のスタイルで先にiモードやメールを起動させた後にビューアスタイルに移れば、そのままiモードやメールが継続されます。また、設定で連動をオフにすることも可能です」
―今回、デコメールも若干変わっています。P900iユーザーの反応が鈍かったりしたのでしょうか?
井端氏
「デコメールはパレットに対応させて操作性を向上させました。全部サブメニューから操作するのは難しいといった点がありましたので、この商品から改善しています」
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端末を手にするのは国内マーケティング本部 商務・販売助成グループ 販売助成チームの野村 幸司氏
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―日本語入力の機能強化などは検討されているのでしょうか?
井端氏
「スタンダードモデルではそういうところも注視していかなければならないと思っています。今回のP900iVはスタンダードモデルからさらに画像やAVの部分を特化させたモデルなので、そちらを重点的に強化しています」
―P900iとP900iVでは本体内蔵のメモリ容量は変わっていますか?
井端氏
「変わっていません。P900iVで強化したAV部分は高画質になってきていますが、miniSDカードをパッケージに添付していることも含めて、大きな容量のデータはminiSDカードに保存して頂くということを想定しています。弊社として『SD WORLD』を意識していますし、miniSDカードで外にデータを出せた方がユーザーの使い勝手もいいと考えています。
動画を長く録画したいと考える方も多いと思いますが、携帯電話本体に内蔵のメモリは、大きなものでも10MB程度です。1番きれいな動画なら録画できるのは数分、といった世界ですから、長く録画したい人は大きい容量のminiSDカードを、といったようにユーザーが選んで利用して頂ければと思います」
―P900iは着せ替え可能なモデルでしたが、P900iVでこの発想はなかったのでしょうか?
定別當氏
「P900iはカスタムジャケットによるカスタマイズ環境の提供がテーマでした。これに対しP900iVは機能特化がテーマです。マルチプルな利用形態になってきた市場に対し、ムービー機能に特化した、最適な使いやすさを追及した使用スタイルとデザインを提供しています」
■ 今後はBluetoothでAVのサポートも視野に
―動画では絵だけでなく音も重要になってくるかと思いますが、P900iVでは内蔵スピーカーか、有線のイヤホンマイクで楽しむスタイルです。今後、Bluetoothなどをサポートすることは考えていますか?
井端氏
「当然、視野には入れています。今は、コード(有線)で聴くのがシンプルで安くて音がいいという面がありますが、コードがかさばるという点がどうしても否めません。ポータブルMDプレーヤーとかであれば本体にコードを巻くこともできますが、携帯電話でそれではかかってきた電話に出られません。現時点ではイヤホンマイクですが、将来的にはBluetoothなども考えています」
―国内では東芝と富士通の一部端末がBluetoothでの通話をサポートしていますが、AV系のサポートのニーズもあるかと思います。
井端氏
「P900iVの録画はモノラルですが、再生はステレオにも対応しています。モノラルスピーカーの端末ですが、イヤホンマイクでステレオのムービーをご覧になれば迫力がかなり違うことがおわかりいただけると思います。音は重視していきたいと思いますので、Bluetoothをサポートするのであれば、AVまでサポートしたい思います」
―P505iSではカメラモードなどで、テンキーを利用したショートカットが用意されていました。P2102VやP900iVのムービースタイルでは、テンキーによるショートカットに対応していないのがもったいない気がするのですが。
井端氏
「ムービースタイルでは、本体を握ったときにテンキーを押してしまうことがありますので、テンキー部分でのショートカットは無くしています。この状態では、何も考えずにギュッと握ってもらってシャッターを決めて頂くというシンプルな考えにしています」
■ P900iVは誰もが楽しめるデジタルギア
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卓上ホルダには、充電しながら動画などを楽しめるようスタンドが付けられている
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―P2102Vなどは子供がいる母親が使用する、ということもあったようなのですが、今回のP900iVは、ターゲットとしているユーザー層はどのあたりになるのでしょうか?
井端氏
「機器に詳しい方もそうですが、あくまで目指しているのはこういうデジタルギア的な端末を楽しんで使って頂けるユーザーです。そういう意味で、ライトユーザーの方にも使って頂きたいと思っています。
先ほど、パソコンなどに詳しい方に向けた端末、と言いましたが、基本的には多くの方に使って頂きたいと思っていますし、シンプルな操作性にしたいという考えがあります。例えば、デジタルカメラなどではモード変更ダイヤルが付いていますが、P900iVでは首(液晶)の動きをこのダイヤルに見立てており、スタイルに応じて、カメラやビューアを起動することができます。
この端末は使えば使うほど深みが出てきます。ライトユーザーの方は毎秒30フレームの滑らかな動画再生やAV出力機能で高機能ムービーケータイの価値を堪能して頂いて、詳しい方はさらにその先の部分まで楽しんでもらうというように、幅広い方に受け入れられる端末ではないかと思います」
―正直なところ、もう一回り小さければ買いやすいのかな、と思いますが。
定別當氏
「このボディでこだわりだったのは縦方向の短縮化です。2.4インチの液晶、2.0メガのCCDカメラはコンパクト化に対して幅と厚みに制約をもたらしましたが、縦方向の短縮化に集中し、コンパクト化を図りました。同時に縦方向が短い“ムービーらしい縦横比”を実現することでムービースタイルに対する親しみやすさを表現しました」
―最後に、ケータイ Watch読者に一言お願いします。
井端氏
「P900iVはスルメみたいな端末ですので、使えば使うほど新しい発見があるかと思います。携帯電話にあまり詳しくない方から詳しい方まで、使っておもしろい端末だと思いますので、ぜひ使ってみて下さい」
―本日はお忙しい中、ありがとうございました。
■ URL
ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/04/whatnew0601.html
ニュースリリース(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)
http://matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn040617-2/jn040617-2.html
製品情報(NTTドコモ)
http://900i.nttdocomo.co.jp/p900iv.html
製品情報(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)
http://panasonic.jp/mobile/p900iv/
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2004/07/08 15:45
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