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【キーパーソン・インタビュー】
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新体制になったWindows Mobile、その方向性は?
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マイクロソフトが組織体制を変更し、Windows Mobileも新たな体制へと変わった。これまでよりもコンシューマー寄りに舵をきるWindows Mobileについて、同社コンシューマー&オンライン マーケティング統括本部 モバイルコミュニケーション本部 本部長の越川慎司氏に話を聞いた。
■ 組織変更
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マイクロソフトの越川氏
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――7月に事業部の体制が変わったそうですね。
はい、全世界的にマイクロソフトの組織体制に変更がありました。これまでよりもコンシューマーにフォーカスしたメッセージを伝えていこうというわけで、コンシューマー&オンライン インターナショナル(COI/コイ)という組織が立ち上がりました、事業責任者には、3月まで日本の社長だったダレン・ヒューストンが就任しました。日本ではコンシューマー&オンライン事業部が立ち上がり、EMIミュージック・ジャパン(旧東芝EMI)の堂山(堂山昌司氏/マイクロソフト代表執行役 副社長/元EMIミュージック・ジャパンの代表取締役社長兼CEO)をトップに迎えました。
COIによって大きく変わった点は、これまでのWindowsクライアントのコンシューマーマーケティング部門と、MSNやWindows Liveをやっていたオンラインサービスグループ、そして我々のモバイルコミュニケーション部門が統合されたことです。モバイル事業は、これまでモバイル&エンベデッドデバイス本部となっていましたが、今回からモバイルとエンベデッドを切り分け、モバイルに特化した体制となりました。
――6月に発表されたWindows Mobile 6.1(以下WM6.1)では、法人利用での機能強化が明らかにされましたが、Windows Mobileの今後の方向性が変わっていくということでしょうか?
COIに統合されたことで、ビジネス向けをやらないというわけではありません。あくまでもこれまでのビジネスで得たベースをもとに、よりコンシューマー向けに拡大していくというようなイメージで捉えていただければと思います。WM6.1でもサービスやコンテンツなど、コンシューマー向けに十分訴求できると思っています。
――なるほど。それでは、MSNやWindows Liveとの統合はどういった意味があるのでしょう。
我々は、Windows Mobileの価値の1つがサービスの統合だと思っています。それには3つの柱があり、その1つはWindows LiveやMSNとの統合になると思います。インスタントメッセージやサーチ機能など、既存の資産を統合するということです。
2つめに、Windows Liveではないグループについてもサービス化の流れがあり、その分野との統合があります。具体的にいうと、Exchangeなどとの統合ですね。よりメッセージングエリアを拡張していきたいと思っています。米国ではBlackBerryがかなり話題を集めていますが、企業向けメールの分野は我々もさらに拡充していかなければならないでしょう。
最後の柱は、本社および全世界にあるモバイルコミュニケーションビジネス本部からもサービスを展開していくということです。具体的にはまだ話せませんが、例えば、メッセージングを拡張するものであったり、Windows Mobileの持つ情報をクラウド上でシンクするようなサービスというものを検討しています。
――3つの柱は、いずれもOSの進化を待たずに提供できるようなものでしょうか。
その通りです。モバイルでなくてもUMPCでもWindows Liveに接続できますし、通信事業者の通常の携帯電話でも統合はできると思います。しかし、WM6.1だからこそできる機能やユーザビリティもあるので、Windows Mobileではよりリッチなエクスペリエンスを実現しようと思っています。
――国内の携帯電話市場は基本的に、キャリア主導でサービスが展開されています。3つの柱はキャリアにアプローチして展開するのでしょうか?
おっしゃる通り、日本では通信事業者の力が強い状況ですよね。しかし我々は「いっしょにやりませんか」と提案するのではなく、事業者といっしょにどういったサービスを作り上げていくべきかを検討しています。日本独自のものが提供できる可能性も高く、年内にはリリースしたいと思っています。
――OSに囚われなければ、日本独自の展開もしやすいと?
そうですね。やはり日本はかなり特殊な携帯市場ですから。しかし、日本独自で開発されたものが世界で一歩も二歩も進んだサービスとして受け取られる可能性があります。また、日本独自のものを提供していかなければ、マーケットには受け入れられない部分もあります。そこは通信事業者とOEMメーカー、我々OSベンダーとで最適なサービスをタイムリーに出していかなければならないでしょう。
■ iPhoneについて
――iPhone 3Gが登場したことで、今年の夏はメディアを含めて、iPhoneに非常に強い関心が集まりました。こうした状況をどう見ていますか?
個人的にもかなり興味があり、実際に触ってみました。作りもしっかりしていてプロフェッショナルなデバイスだと思っています。マイクロソフトの立場としてはiPhoneは競合になりますが、スマートフォンの知名度が低い日本市場の状況にあって、かなり知名度を高めるために貢献していただいたと思っています。スマートフォンの選択肢として、我々Windows Mobile端末も受け入れられやすい状況ができたのではないでしょうか。
――iPhone 3Gは一目惚れしやすいというか、キャッチーな印象があります。これに対しWindows Mobileは何でもできる印象がある反面、難しそうなイメージも同時に感じます。
そうですね。携帯電話の操作とWindows Mobileの操作は確かに流れが違います。この点を解消するためにも、ユーザーインターフェイス(UI)を含めて、日本で受け入れられるものをメーカーといっしょに考えていきたいと思っています。
ただその一方で、Windows Mobileの操作性は、使い慣れているWindowsパソコンの操作とよく似ているところがあります。パソコンやキーボードを使い慣れた層や、シニアでパソコンに触る方にとっては、むしろWindows Mobileの方が使いやすいと感じられるようです。
おそらくiPhoneを企業ユースで使うのは難しい面があると思います。よりコンシューマー寄りでエッジのきいた若い方々に響いた商品ではないでしょうか。我々のユーザーはビジネスで利用されている方が中心です。ビジネスで活用されているユーザーをいかに、コンシューマー寄りに半歩、一歩と拡大していくのか、我々はそういった戦略を考えています。ビジネスでも使えて、さらにプライベートでも使えるというような方向を目指していきたいです。
――メーカーの独自UIというところでは、HTCのTouchFLO、OMNIAの「TOUCHWIZ」といった独自のスキンで新しい操作性が提供されています。マイクロソフトでは、メーカーのこうした展開を歓迎しますか?
そうですね。WM6.1に固執しているわけではありませんから。海外で受け入れられていて、日本でも受けそうなものは積極的にやっていきたいですね。
夏はiPhoneが話題をさらいましたが、我々も口をあけてみているわけではありません。年末商戦に投入すべく、いくつかの端末にユーザーシナリオを追加していきたいと思っています。我々がどういった方向性を考えているかについては、今後のイベントで示していく予定です。
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TouchFLO搭載の「EMONSTER lite」
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OMNIA
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■ Windowsのリブランディング
――少しを視点を変えて質問します。普段からパソコンを利用しているビジネス層にとって、Windowsとの親和性の高さは強いアピールポイントになると思います。しかし、一般的な携帯電話を使っているユーザーは、携帯OSで端末を選ぶ人は少なく、若い世代になればパソコンをあまり使わない層も多いようです。Windows Mobileはそういったユーザー層にどうやって訴求し、取り込んでいくのでしょう?
実は、COIを立ち上げた1つの理由に、Windowsのリブランディングがあります。これまでのWindowsの位置付けはビジネス寄りでした。今年の秋からは、もう一度Windowsとは何か? ということを全世界的にリブランディングを図っていく予定です。
Windowsがライフスタイルの中に入っていくことで、どういう風にユーザーに変化をもたらすか、それを具体的なシナリオとして見せていくつもりです。その中でパソコンが活躍するシーンもあれば、モバイルが活躍するシーンもあるでしょう。モバイルとVistaを繋げるものとして、サービスが登場するなど、もう一度Windows全体をアピールしていきます。
Winodws自体へのとらえ方も世界各国でかなり違いがあるのですが、日本では独自のキャンペーンも実施する予定です。モバイルだけでアピールするのではなく、パソコンのOSとサービスを絡めることで、モバイルの価値も高まっていくと考えています。
我々はコンシューマーに対して、共有つまりシェアリングのシナリオを訴求していきたいと思っています。例えばグーグルやiPhoneは、どちらかといえば個人が使う端末としてダウンロードが優れており、使いたいものをダウンロードして使えるという一方向のシナリオが用意されています。我々のソフトウェアサービスというのは、両方向を考えており、アップロードの強化も考えています。Windows Mobileを起点に、写真や動画を家族や友人と共有するなど、仲間との共有によって何かが起きるようなものを提供していきたいと思っています。
――最後に、読者に対して何かメッセージはありますか?
Windows Mobileの認知度はかなり高まったと思っています。今後はさらに、価値を理解していただくためのさまざまなデバイスやサービスを提供していこうと思っています。iPhoneやAndroidに対してどうするか? ではなく、マイクロソフトでしかできないことがまだまだたくさんあります。ユーザーの心をゆさぶるような化学反応を起こしていきたいですね。個人的には、Windows Mobileの堅いイメージをもう少し柔らかくできたらいいなと考えています。
――ありがとうございました。
■ URL
マイクロソフト
http://www.microsoft.com/ja/jp/
Windows Mobileについて
http://www.microsoft.com/Japan/windowsmobile/
(津田 啓夢)
2008/09/05 16:54
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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