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「823P」開発者インタビュー
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パナソニック初の防水ケータイ、そのコンセプトを聞く
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「823P」は、ソフトバンクのラインナップ中で2機種目、そしてパナソニックにとって初めての防水ケータイだ。どのような経緯を経て開発されたのか、プロジェクトマネージャーの高橋哲氏、商品企画の井端勇介氏、デザイン担当の藤田 弘志氏、コンテンツ担当のケルステイン・ボンガード氏、機構設計担当の粂信吾氏、製造担当の政本亨氏、吉本仁氏、近藤明博氏、取扱説明書担当の塚本麻理氏に聞いた。
■ デザインコンセプトは「お風呂の石鹸」
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823Pの開発・製造担当者
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――パナソニック初の防水ケータイですが、市場としては後発組になると思います。最初に防水仕様を採用した経緯から教えてください。
井端氏
もともとは、市場の動向もあって、パナソニックとして手掛けなければいけない部分と考えていました。ソフトバンクさんとの議論も踏まえて、取り組みはじめましたが、ユーザーのニーズをどう考えるかというところで、メールやWebブラウジングに加えて、ワンセグアンテナの内蔵技術によって、ワンセグ機能をミドルクラスまで持って行ける見通しが立ち、防水とのコンセプトが合致するのではないかと考えました。
高橋氏
防水ケータイの必要性は以前から議論していました。キャリアさんとのラインナップの中で、ちょうど良いタイミングになったということでしょうか。一方で、防水だけでは購入してもらえないという側面もあります。プラスアルファとして何をするか、
後発ではありますが、満を持して投入することになりました。
――TROPICALという愛称が付いて、カラーバリエーションが豊富ですが、デザインコンセプトも最初から夏をイメージしたものだったのでしょうか?
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商品企画担当の井端氏
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デザイン担当の藤田氏
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充電台もお風呂の石鹸をモチーフに
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藤田氏
いえ、デザイナーとしては防水という機能を感じさせないことを意識していました。しかし、防水という機能があることは伝えなければいけません。そこで、「水の雰囲気を出すにはどうしたらよいか」ということを考えていました。水の表現ということで、ここは一番苦労したところです。その結果、防水ケータイを使いたい場所ということから、お風呂場のイメージを導き出しました。「823P」のデザインは、石鹸をベースに創りだしたのです。
井端氏
形状に関しては、技術的にも苦労している部分です。従来のパナソニック製端末は四角形に近いボディ形状でワンプッシュオープンを採用して薄くしていくという形ですが、「823P」はヒンジの形状も異なりますし、全体のシルエットは丸みを帯びたものです。比較的コンパクトサイズになっていますが、防水ですから、内部機構は通常の携帯電話よりも一回り小さくしなければいけませんでした。
高橋氏
ボディ素材は、透明な樹脂の下にボディカラーの樹脂を重ねた、二色成型となっています。最近の携帯電話は、光沢感を追求した金属テイストのデザインが多いのですが、あえて透明感やシンプルさを追求しました。823Pのデザインは最初のコンセプトモックを踏襲したものです。
――防水というと外での利用をつい想像してしまいますが、お風呂が中心的なイメージだったのですね。
井端氏
デザイン案としては、もっとかっちりした形状の候補もありましたが、新しさをアピールしていく必要がありますから、ゴテゴテした形状は採用しない方向でした。その中で、デザイナーから提案されたお風呂の石鹸というイメージが、商品企画として考えていた方向と合致していたのです。
高橋氏
823Pは折りたたみ型ですが、閉じた時は液晶側ボディとキー側ボディがピッタリくっつきます。通常の折りたたみ型であれば、指をひっかけやすくして開けやすさに繋げなければいけませんが、当社にはワンプッシュオープンがあります。パナソニックの特徴がデザイン面にも活かされたというわけです。
■ 「防水らしさ」を意識させないコンテンツ
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プリセットのメニューデザインの1つ。これはフルーツをあしらったもの
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――お風呂の利用というと、どういったユーザー層を意識していたのでしょう?
高橋氏
防水ケータイの企画を立ち上げたときから、どういったニーズが存在するか検討してきました。実際に市場調査を行ってみるとお風呂で携帯電話を使いたいという声が多かった。そのユーザー層は、女性が多いのです。「823P」を開発する上で、女性だけをターゲットにしているわけではありませんが、ポップでカラフルなボディカラーやプリセットの待受画像などは、女性ユーザーに支持されることを目指した結果です。
ボンガード氏
「823P」のデザインコンセプトは、防水そのものではなく、より普通の携帯電話らしさを目指すものでした。従って、プリセットコンテンツでも「TROPICAL」という愛称に合ったものを目指しました。たとえばメニューデザインは、ボディカラーにあわせて5種類プリセットしています。
水を意識したメニューやコンテンツを採用するとすれば、それはストレートすぎると考えたのです。TROPICALという言葉は、海だけをイメージさせるものではなく、たとえばフルーツをイメージさせる言葉でもあります。そういった考え方をコンテンツに反映させました。
塚本氏
“ゴツゴツした防水らしいデザイン”は、女性ユーザーからすると、多少なりとも手に取りにくい部分があると思います。ビビッドなボディカラーで、丸みを帯びた形状は、女性のファッションにあわせやすいということです。
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プリセットコンテンツを担当したボンガード氏
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取説担当の塚本氏
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■ 防水を量産する苦労
粂氏
さきほど井端が「防水だから内部は一回り小さく」と述べましたが、そのサイズにするには、たとえば液晶のサイズを小さくするという道もあります。しかし、2008年の夏に登場するミドルクラスの端末としてアピールするには、3インチディスプレイは必須でした。機構設計としては、量産する上で実現するには難しい課題がいくつかありましたが、そこを妥協するとデザイナーの藤田からは「それじゃ石鹸じゃない」と言われるわけです(笑)。従来の携帯電話で使ってきた金型構造ではなく、セオリーをとっぱらって、やりなおしたと言えるレベルで設計に取り組みましたね。
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機構設計担当の粂氏とプロジェクトマネージャーの高橋氏
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――バッテリーカバーにはパッキンが施されていますが、実際に触ってみるとずいぶんシンプルな構造という印象を受けました。
粂氏
そう思ってもらえれば、「狙い通り」というところです(笑)。防水ケータイのバッテリーカバーは、ロック機構が採用されていたり、特殊な組み方を採用していたりすることがありますが、防水によって新たな作法を強いることがないようにしようと考えていました。バッテリー下にmicroSDカードスロットを設けていますが、ボディ外側に面した蓋を少なくすることで閉め忘れなどのミスを少なくしています。ユーザーの負担を減らすことを目指したわけですが、その分、製造時のチェック体制は通常の携帯電話よりも増していると言えます。
政本氏
製造時には、1台1台、全て検査して出荷しています。水を用いて検査するのではなく、それに代わる方法で全数試験しています。もともと品質管理には注力していますが、防水ではそのレベルが非常にシビアになります。
高橋氏
通常の携帯電話を生産するときには、どちらかと言えば設計段階で品質を確保して、あとは大量製造する、という形です。しかし防水ケータイでは、設計だけで品質を維持するのではなく、生産段階での精度向上も必要なのです。
――スピーカーなどはどういった工夫で防水しているのでしょう?
粂氏
そのあたりは多孔質膜と呼ばれる素材を使っています。水は通さないが、空気は通すという素材です。一般に、多孔質膜を使うとスピーカーの音量が小さくなるなどの影響が出てきますが、「823P」ではそのあたりも工夫しています。防水でありながら、ワンセグを搭載していますから、テレビ視聴時の利便性向上に繋げています。
高橋氏
設計・製造など、全ての面で「823P」には絶対の自信を持っています。こういった機種を開発する際には、何かしら機能面で犠牲にせざるを得ないこともありますが、今回はワンセグ、おサイフケータイにも対応しました。また画面サイズも3インチとミドルクラスの機種では最大級です。このあたりはユーザーに伝えたい部分ですね。
――ありがとうございました。
■ URL
823P 製品情報(パナソニック)
http://panasonic.jp/mobile/softbank/823p/
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(関口 聖)
2008/07/17 11:13
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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