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「SH906i」開発者インタビュー
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タッチパネルディスプレイ搭載の意図とは
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SH906i
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シャープ製のFOMA夏モデル「SH906i」は、一見すると普通の2軸デザインケータイだが、実はディスプレイ部が全面タッチパネルとなっている。なぜタッチパネルなのか、タッチパネルで何ができるのか、気になる点は多い。今回はタッチパネルなどUI進化の意図について、開発を担当したシャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部の木戸 貴之氏と安田 一則氏に話を聞いた。
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シャープの安田氏(左)と木戸氏(右)
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閉じたときは横画面操作となる
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――まずはSH906iのコンセプトについてお聞かせください。
安田氏
昨今、ワンセグなど横画面で楽しむAVコンテンツが増えています。一方で横画面の世界であるパソコンのインターネットがケータイに取り込まれつつあります。こうした流れを踏まえ、ワイド画面・横画面へのアプローチが今後のケータイでは重視される、と考えました。
ケータイの横画面スタイルには、シャープとしてはいろいろなスタイルでアプローチしています。フルキーボード搭載のインターネットマシンことソフトバンク「922SH」や「SH706i」などのフルスライド、そしてAQUOSケータイのサイクロイドスタイルなどがあります。
今回のSH906iはスイベル(2軸ヒンジ)デザインとなります。折りたたんだとき、ビューアーとして横画面で使えます。シャープとしては906iシリーズへはサイクロイド(SH906iTV)とスイベルの両タイプを提供することになります。
もちろん、「横画面のアプローチが重要」といっても、縦画面・ワンハンドのスピーディーなオペレーションは日本のケータイ文化とは切り離せません。横画面へアプローチしつつも、片手で使うことを無視しないことが重要です。たとえばフルスライドではテンキーが使えるとか、サイクロイドでは縦でも横でも同様にワンハンドで使える、などです。そしてスイベルタイプは、普通に開けば縦画面で、画面を裏返して折りたためば横画面になります。シャープとしては、こうした横画面と縦画面共存がいまの商品開発における重要なテーマであると考えています。
今まではケータイは、機能とかデバイス、サービスを軸に、「付加価値」の足し算で進化してきました。当然、その流れは今後もありますが、それとは別の視点として、使い勝手も重視しなければいけません。ケータイというツールと使い手である人間のコミュニケーション部分、ヒューマンインターフェイス部分をもう一度見直そう、というのが今回のコンセプトの1つです。
SH906iでは縦画面向けに光TOUCH CRUISER、横画面向けにタッチパネルディスプレイを採用しました。タッチ操作自体はすでに様々なデバイスで採用されていますが、これをケータイに載せるからには「楽しさ」とか「気持ちよさ」をポイントに置く必要があると考えました。今回は「haptic」(触覚の)をキーワードにして、触ることで気持ちが良い、というところを目指しています。GUIのデザインモチーフを"水滴"としたのも、つい触ってしまいたくなるものとして考え、タッチしたら水滴が弾けるというエフェクトもその意図からです。これからはこういう"感性"面もデザインの要素として取り組んでいきます。
――タッチパネルではどういった操作ができるのでしょうか。
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横画面型のメニュー
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画像の切り替わりエフェクト
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安田氏
主に画面を裏返して折りたたんだとき、つまり横画面のビューアースタイルにしたときに使えます。今回は6つの横画面に適した機能に注力してデザインしました。「フルブラウザ」「ワンセグ」「カメラ」「メール」「マンガ・ブックリーダー」「データBOX」の6つの機能です。まずは基本的な操作画面をご紹介します。
画面を裏返して折りたたむと、メニューが起動します。今まではカメラやワンセグが起動していましたが、今回はメニューが表示されます。メニューはアイコンが並んでいるのですが、キーがないので、ユーザーが触りたくなるようにデザインしました。画面を触ると音とバイブレーションで、「何かある」とユーザーにフィードバックします。もちろん、画面もアニメーションすることで、触覚や聴覚だけでなく視覚の部分でもフィードバックします。
メニュー画面のデザインは、指でタッチしやすいようなアイコンやサムネイルタイプになっています。たとえば画像ビューアーでは指をこするようにスライドさせると、画像がめくられるようなアニメーションで切り替わります。こういったアニメーションも、操作内容と結びついた意味のあるものにしています。タッチ操作は、横画面を成立させるためのインターフェイスとして搭載していますが、単にタッチ操作できるというだけではなく、操作の1つ1つに意味を持たせています。何ができるか、次に何が起こるか、そういった期待感を持たせる、感性を追求したインターフェイスとしています。
木戸氏
最近は、タッチ操作の位置付けが変わり、ただのアイコン操作というだけでなく、タッチ操作の意味やタッチ操作の楽しさが必要になってきました。ページをめくる操作など、次を期待させるような演出をセットにして初めて、ケータイのタッチUIは成立すると考えています。エフェクト集になるだけでは内蔵する意味がありません。
――タッチパネルで使える6つの機能にはどんな特徴があるのでしょうか。
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フルブラウザ
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メール表示
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アイ・オー・データ機器製のBluetoothキーボード「CPKB/BT」(別売り)
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安田氏
まずカメラです。カメラは5.2メガピクセルで、今回は画角が広角になっています。ケータイは被写体と近い距離で撮ることが多いので、近い距離から広く取れる広角カメラにしました。ケータイでは人物撮影が多いので、顔検出機能も搭載しました。
横画面時のタッチパネル操作では、フォーカス位置選択も画面タッチで行なえます。ズーム操作や各種設定もタッチで行なえます。ジェスチャー操作だと大変なので、わかりやすいアイコンデザインのコントロールボタンを表示しています。
次にフルブラウザです。ブラウザ自体も刷新し、タッチでも使いやすくなっています。ブックマークもサムネイル表示で、各種メニューもアイコンのコントロールボタンを用意し、タッチしやすくしました。
ワンセグもタッチで操作できます。画面を素早くスライドさせると次のチャンネルに映ったりします。あとワンセグを見るとき、目的の番組がない場合はチャンネルを一通り回してみる、というスタイルだと思いますが、今回はエリア内で映るチャンネルの映像を一通り取得し、サムネイル表示する「チャンネルビュー機能」を搭載しました。
メールもあえて6つの機能の中に入れています。メールでより多くの感情や情報を伝えるには、横画面の方が伝えやすいのでは、と考えました。たとえばビジネス系の長い文章でも、改行が少なく見ることができます。
こうなると横画面でメールを作りたくなります。そういうとき、横画面のビューアーポジションではキーが足りない、ということで、今回はBluetoothのキーボードに対応させました。標準的なHIDプロファイルのBluetoothキーボードが使えますが、アイ・オー・データ機器から動作確認済みのキーボードが発売されています。
――タッチパネルは主に横画面のときにしか使えないのでしょうか。
安田氏
縦画面でもタッチパネルを使ったらどうか、という検討もしましたが、縦はやはり従来のようなワンハンドでの迅速なオペレーションが不可欠ということで、このスタイルが現段階でのベストアンサーだと考えています。もちろん、縦画面での操作性を進化させないわけではなく、タッチクルーザーを光学式にしてブラッシュアップしました。縦画面・横画面ともにブラッシュアップ、がメインコンセプトの1つです。
木戸氏
いろいろな解がありますが、ケータイのUIには横画面でアイコン化するべき部分と、引き続き縦画面・リスト型であるべき部分があります。たとえば設定画面とかはリストのままの方が使いやすいでしょう。SH906iは、そうしたアイコンとリストの両方を使いこなせるデザインとなっています。
――TOUCH CRUISERも変わったようですが。
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決定キーに光学センサが隠されている
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安田氏
TOUCH CRUISERは光学式に変えています。以前は静電容量式でしたが、静電容量式は手の角度や個人差で誤差が出やすいという欠点がありました。しかし光学式ではそういった欠点はありません。また、以前のTOUCH CRUISERはカーソルキーの上にあり、TOUCH CRUISERでの操作後に決定キーを押すには、指を大きく動かす必要がありました。今回は決定キーにセンサーを仕込んでいるので、TOUCH CRUISERの操作から決定キーを押すまでの動作が少なく見ます。こうしたワンハンドでの操作も進化させよう、ということで、光TOUCH CRUISERを搭載しました。
――このほかに従来機種に比べて強化されたポイントはありますか。
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検索や辞書のランチャー「クイック検索」
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安田氏
さまざまな基本機能の改善も行なっています。ケータイの販売方式が変わり、ユーザーがケータイを選ぶ視点も変わってきています。当然、新しい機能に対するニーズもありますが、基本機能をさらに強化していくことも重要です。ここが崩れてしまうと、たとえ新しい端末でも、長く使ってもらえません。
基本機能の改善としては、まず操作レスポンスもパワーアップしました。メニューの遷移スピードも高速化を心がけ、SH905iより1.8倍の速度を実現しました。ワンセグやカメラ、フルブラウザなどの起動速度も高速化しています。
覗き見防止機能として新ベールビューも搭載しました。これまでのベールビューでは左右からの覗き見カットを重視していましたが、今回は全方位からの覗き見をカットできます。ベールビュー時のブロックパターンも8種類から選べます。これは、プライベートシールを貼ってしまうと液晶の色味が変わってしまったり、タッチパネルが操作しにくくなるのでは、という懸念に答えるような機能でもあります。
待ち受けメモ機能や検索や辞書をまとめたランチャー機能なども搭載しています。
木戸氏
レスポンス速度はSH905iでも十分だったと思いますが、SH906iでは更に高速化しました。メニューの高速化はメニューデザインと表示エンジンの両方から改良を加えています。
これまではケータイの付加価値ばかり注目され、操作レスポンス部分は目立ちませんでしたが、最近は逆に付加価値が当たり前で目立たなくなり、レスポンスなどの基礎的なところに目を向けられるようになってきました。これがここ数機種の開発におけるテーマです。UIもその1つですし、カメラ画質なども強化ポイントです。ハードスペックばかり追求するのではなく、基礎部分も強化して女性にも使ってもらおう、と広げています。基礎部分の強化は、徹底的に取り組みました。
――今回も盛りだくさんですね。本日はありがとうございました。
■ URL
製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/906i/sh906i/
製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/sh906i/
■ 関連記事
・ 光学式センサーの操作機能やタッチパネル対応の「SH906i」
・ SH906i(ホワイト)
(白根 雅彦)
2008/06/26 15:15
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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