「P906i」は、Wオープンスタイルを採用するパナソニック製のFOMA端末だ。ボディ形状や機能面で、さらに進化した“VIERAケータイ”について、プロジェクトマネージャーの松尾 学氏と片山 浩氏、商品企画担当の大平 秀曉氏、機構設計担当の南 賢治氏、電気設計担当の藤原 弘樹氏、ソフトウェア担当の小池 信之氏、コンテンツ担当の相澤 淳氏に聞いた。
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P906i開発陣。前列左から片山氏、松尾氏、藤原氏
後列左から相澤氏、大平氏、南氏、小池氏
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――P906iのコンセプトを教えてください。
松尾氏
「P906i」を一言で表わせば「VIERAケータイの進化系」になります。ポイントは、よりスタイリッシュなデザイン、綺麗で見やすいワンセグ、美しさを追求した510万画素カメラ、そして横画面での使いやすさ向上と、大きく4つになります。
まずスタイリッシュなデザインという点については、ボディサイズがP905iより1.1mm薄くなったほか、側面の出っ張っていた部分をすっきりさせ、ワンセグ用アンテナを内蔵することにしました。機構面の工夫で縦も横もフラットにして、スタイリッシュなデザインを実現したということです。
――P905iが登場して半年ですが、短期間で薄く、フラットにできた背景を教えてください。
藤原氏
ポイントは2つになります。1つは、ダイバーシティチューナーを採用して筐体アンテナでワンセグの受信感度を確保したこと。もう1つは横開きするときのヒンジをP905iも小さな直径サイズにしたことです。これまでも当社ではワンセグアンテナ内蔵型の携帯電話を提供していますが、P906iはWオープンスタイルで、縦開きと横開きという2つの形状になりますので、ボディ内部にアンテナを複数内蔵し感度向上を実現しています。
ヒンジの小型化についても、いろいろと試した結果、金属パーツを用いることにしました。金属にすることで、アンテナとして利用していますし、ノイズなどの影響を事前にきちんと確認した上で小型化を実現しています。
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P906i(左)とP905i(右)を比べたところ
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――P905iに続いてWオープンスタイルを採用したことは、開発当初からスムーズに決まったことなのでしょうか?
藤原氏
「もっとすっきりさせよう」というところから検討し、このスタイルに落ち着いたことになりますね。
大平氏
前機種の「P905i」は、折りたたみ型の使いやすさとワンセグなどの横画面を楽しめることを両立した、Wオープンスタイルで新しい携帯電話の提案を行なった機種でした。従って、P906iの開発当初は、まずWオープンスタイルを正常進化させるべきだと考えたのです。P905iでは新しい提案だったからこそできなかったこと、あるいは次の進化はどうすべきかという点を関係者で議論しました。その中で、Wオープンスタイルをさらにすっきり、格好良くさせようということで、小径ヒンジや内蔵アンテナなどの実現性に目処が立ち、コンセプトを固めていき、このような形になったのです。P905iであまりできていなかった、横画面での操作性を進化させるということも大きなテーマでした。
小池氏
P906iに向けて開発がスタートしたのは、ちょうど1年前で、P905iが登場する前のことです。ソフトウェア開発から見ると、もっと横開きという機構を活用できるように、横画面でのメニューを開発していきました。P905iの登場後、そういった点に対してユーザーの声がありました。
松尾氏
携帯電話の販売方法に割賦制度が取り入れられた結果、従来よりも(機種変更せずに)使う期間が長くなるとなれば、愛着を持ってもらえるような製品作りが欠かせません。そして携帯電話の新機種をリリースする際には、新しさや特徴となるポイントが必要です。P905iの良さを引き継ぎながら、新しさを出すことになります。かつての夏モデルでは、たとえば902iの後に902iSがリリースされ、その後の秋モデルで903iという形でした。夏モデルと言えば、かつては“iS”にあたる商品で変化点の少ないものでしたが、今回はメジャーバージョンアップとなる906iシリーズで、その分期待は高いと思います。良さを引き継ぎながら新しさを出すという点は、開発する上で重要視した点です。
――新鮮さを追求した結果の1つが横画面での操作ということですか。横画面のメニューは、ワンセグやiモーションなど、コンテンツを見るための項目だけになっていますね。
大平氏
縦と横でメニューの位置付けを分けており、ビューアーのような利用スタイルを目指した結果、ワンセグや動画、フルブラウザなど横画面に適したアプリケーションに対応しました。また、方向キーの大きさは、P905iより大型化していますが、これは縦横どちらでも操作しやすいよう考えた結果です。横画面でのメニューは、基本的に方向キーと決定キーだけで操作できるようにしています。
小池氏
縦画面でのメニュー体系は、きせかえツール対応の仕様ですが、横画面メニューはパナソニック独自の仕様になっています。
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ビューアーとしての用途をイメージした横画面メニュー
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キー配列
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■ 液晶表示、カメラ、ボディサイズで進化
――画面表示も進化したポイントということですが。
松尾氏
画面の進化ポイントは3つあります。1つは画面サイズが3.1インチになったことです。そしてモバイルWスピード(15fpsの映像を補完し30fps相当で再生)を搭載しました。また、コントラストはP905iで2000:1でしたが、今回は、P905iTVと同じく4000:1になっています。ワンセグなどの映像表示だけではなく、ゲームプレイ時にも活かされていますね。
――コントラストの数値がアップする、ということはどういうことでしょう。
藤原氏
そうですね、黒をより深みのある黒にすることで、表現力の高い、はっきりとした表示を作り出せます。今回の液晶ディスプレイは、P906i向けに新たに開発したデバイスです。動画系技術の「液晶AI」との組み合わせで、動画再生時に高いコントラストを実現しており、静止画表示でもその性能が活かされています。モバイルWスピードと、コントラスト比向上と、P905iTVの機能を全てP906iで搭載しています。
――P905iの時点でもカメラの画質に自信ありということでしたが、P906iでさらに進化したのでしょうか。
藤原氏
カメラデバイスそのものは同じものですが、大きな違いは顔認識による「顔オートフォーカス」の対応です。そして、オート露出という機能も用意しています。この2つが組み合わさることで、たとえば周囲は明るくても顔部分が暗く写ってしまう場面で撮影する場合、顔部分を認識した上でオート露出によって顔部分を明るくすると同時に、背景も白飛びしないように調整するのです。顔認識技術については、他社よりも秀でていると自信があります。たとえば顔が斜めになっているような場面でもきちんと検出できます。
――1.1mm薄くなったということですが、どう工夫したのでしょう?
南氏
たとえばより薄いバッテリーを採用したりして、キー側ボディを薄くしています。バッテリーのほかにも、スピーカーや内部構造処理にも手を入れていますね。もちろん、機構設計としてはもっと薄くすることを目指していましたが、デザインや使い勝手なども考えた結果、17.4mmというサイズに落ち着きました。
薄さだけではなく、重さも変化していて、P905iよりも14g軽くなっています。携帯電話ではボディサイズと重量は、バランスの取り方が難しいところなんですよ。
大平氏
「持ちやすい携帯電話のサイズ」については、ある程度具体的な数値も分かっていますが、機種によって搭載する機能が異なり、内部構造が変わってきますので、理想的なバランスに近づけるため、開発時には0.1mm単位までサイズ検討を行ないました。
■ コンテンツが充実、メールを使った学習履歴移行機能も
相澤氏
携帯電話向けのコンテンツは、仕様もメモリも、そして画面表示もある程度の制約がある中で開発しなければいけません。P905iでは、ハードウェアの性能をよく示すコンテンツとして「リッジレーサーズモバイル」を搭載していましたが、今回はさらにボリューム感を出すために、「レイトン教授と不思議な町」「GUNDAM U.C.0079」をプリセットしています。このうち「レイトン教授と不思議な町」は、携帯ゲーム機向けタイトルの移植版ですが、キャラクターのボイスも収録(利用時にダウンロードし、microSDカードに保存)していることに加えて、携帯電話向けに新たな問題を用意しています。また、「GUNDAM U.C.0079」は3D画面での戦闘を楽しめます。ゲームメーカーさんとは密にやり取りして、開発してきました。
――コンテンツに関連して、ハードウェアの仕様としてP905iと異なる点があるのですか?
相澤氏
そういう意味では、P906iはP905iと同等の仕様です。ただ、その分コンテンツ開発において、ボリュームを増やすためにはどうしても時間が必要ですから、このタイミングで登場するコンテンツは、相当の作り込み、チューニングが施されているということになります。
――日本語入力で学習履歴移行機能があるということですが。
小池氏
これは、オムロンさんの文字変換エンジンを利用したものです。手持ちの携帯電話からP906iに乗り換えてメールデータなどをコピーしてから、「学習履歴作成」という機能を実行すると、送信メールの内容を解析して学習するというわけです。前の機種に搭載されている学習履歴のデータベースそのものを移行したくても、日本語変換ソフトは機種によって異なりますから、送信メールの解析という手法にしています。これで、他キャリア・他メーカーさんの携帯電話から乗り換えた場合でも学習できるというのはメリットの1つになると思います。
――本日はありがとうございました。
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人気ゲーム「レイトン教授」のiアプリ版が用意される
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Bluetooth対応のイヤホンマイクがドコモ純正オプションとして登場。携帯とイヤホンマイクを同時充電できるケーブルも同梱される
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■ URL
P906i(パナソニック)
http://panasonic.jp/mobile/docomo/p906i/
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(関口 聖)
2008/05/30 10:52
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