NTTドコモの春モデルとして登場したLG電子製の「L705i」と「L705iX」の2機種。それぞれ異なるアプローチで日本市場でのシェア拡大を狙うLG。同社マーケティング企画の尾花圭介氏と広報の金東建氏に開発コンセプトを聞いた。
■ 使いやすさにこだわった「L705i」
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LG電子 広報の金東建氏(左)とマーケティング企画の尾花圭介氏
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――まず、L705iの開発コンセプトを教えていただけますか。
尾花氏
L705iは、使いやすさとデザインを両立させようという基本コンセプトのもとに開発が行なわれた製品です。ご存知の通り、「らくらくホン」というシニア層をターゲットとしたジャンルが、既に別の国内メーカーさんによって開拓されています。でも、現在の携帯電話の主戦場となっている90Xi系、70Xi系というのは20代~30代を中心に、40代ぐらいまでを購買層としていて、シニア層と呼ぶには早すぎる中間の世代、つまり50代のユーザーにちょうどいい携帯電話とは何だろう? という話が持ち上がったんです。
そこで、ドコモさんに弊社の海外向け端末のモックアップをいくつか見ていただいたところ、L705iのベースとなったモデルが「ボタンが大きくて使いやすい」ということで採用されました。しかし、ボタンが大きいだけでは、それこそ既存のらくらくホンと差別化が図れませんので、デザイン性という付加価値をつけようと考えたわけです。
最初からターゲット層ありきで開発された製品ですので、製品コンセプトも最初から非常に明確でした。
――特にこだわって作りこんだ部分というのはありますか。
尾花氏
ボタンの大きさというのは、そこまで他の機種と違うわけではありませんが、「ドームキー」と名付けたこの形状、キー中央の盛り上がりがポイントです。実は原型となった海外向け端末と比べて、日本向けバージョンでは若干盛り上がりが強調されているんです。その他にも視認性を上げるためのチューニングが施されています。液晶ディスプレイの下には、よく連絡する相手を登録できるワンタッチキーも搭載しました。文字を通常の1.5倍で表示できる「拡大機能」も搭載しています。
――海外の携帯電話はどんどん小さくなるのがトレンドで、キーを指先で押すような感覚になっています。日本とは受け入れられるデザインがそもそも違うんでしょうか?
尾花氏
欧米人は日本人より手が大きいのに、大丈夫なのかと思うぐらい小さいですね。おっしゃる通り、海外では市場全体のトレンドが“コンパクトなケータイ”になっていますので、今あえてそこから外れた製品を出す必要がないのでしょう。日本はどうしても画面を大きくしたい、というニーズがありますので、筐体も自然に大きくならざる得ません。
金氏
欧州では携帯電話を文字通り、手軽に携帯できる道具としてとらえているので、ホルダー(折りたたみ)よりスライドやバー(ストレート)タイプが主流になっていっています。一方、日本のユーザーが大きなディスプレイやボタンを好むのは、長文メールを打つ文化があるからでしょう。電車の中でも皆さん本当によく携帯を出して、メールを書いたりゲームをプレイしたりされています。さらにワンセグを見たい、ワンセグの録画機能が欲しい、ということになれば、本体サイズはどうしても大きくなってしまいます。より単純に、より小さくという世界のトレンドとは、まるで逆をいっているのが日本市場というわけです。
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L705i
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――50代以上、シニア層向けという市場が存在するのも日本市場の特徴かもしれません。逆にこういった独特な製品を海外で販売するという考えはないのでしょうか?
尾花氏
携帯電話に限らず日本独自の文化から生まれた商品は数多く存在しますが、それを海外に持ち込んで成功したケースがあまりないような気がします。
金氏
家電製品で考えてもらうと分かりやすいかもしれません。電子レンジ一つをとっても、ただ温めるだけでなくスチームで調理できたりと、驚くほど多機能というか、変化球というか、日本では実に独特の市場が既にできあがっています。新製品を出すときには既存製品を上回る付加価値をつけないと、目新しさを打ち出せず、日本のメーカーは自らハードルを高くしているようにすら見えます。携帯電話も同じことが言えます。日本は1億3千人という一つの国としては非常に大きなマーケットを持ちながら、日本独自の通信規格や文化で成り立ったマーケットで、海外メーカーが参入しにくいと同時に、日本の商品が世界に出て行きにくいのです。
――L705iの場合、海外で発売された製品をそのまま持ってきている「chocolate」(L704i)のようなモデルとはアプローチの仕方が違いますよね。
金氏
chocolateはスタイリッシュだけれど、メールを日常的に使う人にはなかなかお勧めしにくかったところもあります。L705iは自社製品というひいき目を抜きにしても、誰にでも自信を持って勧められる携帯電話です。
尾花氏
日本ではこれまで数機種発売してきましたが、ユーザーからはやはり、海外の携帯は何かどうも違うという声が聞かれました。ユーザーが感じていたその違和感を我々が理解できず、デザインが優れているから、スタイリッシュだから大丈夫とばかりにとりあえず発売してしまったんです。ところがフタを開けてみれば、ユーザーが求めていたものと、我々が過信していた部分には深い溝がありました。さきほど金も申しましたとおり、頻繁に長文メールを打つ日本のユーザーには、海外の携帯はボタン配置などに対して不満が出やすかったんですね。L705iはそこを改善すべく意見を取り入れ、操作性と機能性に注力してチューニングしました。
――少し話がそれますが、韓国ではあまり長文メールを打つ人はいないんでしょうか。
金氏
用件だけの短いメールが普通ですよ。長々とメールを打つぐらいなら電話したほうが早いですから、韓国でブロードバンドの普及が早かったのも、みんな待つのが嫌いだからです(笑)。
――機能面で言うと、ワンセグやおサイフケータイ機能がありませんが。
金氏
弊社はSIMPUREシリーズからドコモさんとのお付き合いが始まりました。日本に参入したばかりの当時は、まだノウハウも少なく、おサイフケータイのような日本独自の機能の必要性も感じていなかったんです。ようやく70Xiシリーズまで展開できるようになり、これから日本のユーザーが求めている機能を搭載できればと考えています。
尾花氏
ワンセグについては「L705iX」でサポートしました。L705iは、あくまでシンプルだけれども使いやすい、というところを着地点にしています。
■ “Shine”で知られる7.2Mbps対応の「L705iX」
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L705iX
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――では、続いてL705iXについても教えてください。
尾花氏
L705iXのベースは、既に海外で展開している「Shine」というグローバルモデルです。オリジナルのShineが持つデザインイメージはそのままに、日本ではちょっと受けないだろうと思われる部分や機能をカスタマイズしたのが、L705iXになります。
chocolateもそうでしたが、高級感を打ち出した「ブラックラベル」シリーズに含まれますから、特にデザインを重視しています。日本向けにアレンジしたのは本体をスライドさせたときに、海外向けの場合はキー下部に突起というか、アゴといいますか、小さい出っ張りが残るデザインになっています。これは日本では好まれないということで、完全フラットになるよう変えました。
chocolateを発売した当時は、タッチパネルが今までにない新しいポイントになっていましたが、今回のL705iXでも何か新しいものを、ということで、マルチファンクションスクロールキー(いわゆるジョグダイヤル)が採用されています。また、海外ではボディカラーがシルバーのみで、その後徐々にカラー展開をしていきましたが、日本の場合、発売時に1色のみではインパクトが弱くなるため、最初から3色を用意しました。
――外見の特徴もありますが、7.2Mbpsの高速通信をサポートしているのもL705iXの魅力ですよね。
尾花氏
高速通信については弊社が得意とする技術ですし、1台の携帯電話を2年以上使う傾向が強まる中で、やるなら他社に先駆けて、という考えはありましたね。
――しかし、chocolateにしても、Shineにしても、オリジナルの開発コンセプトを壊さないように、日本向けのチューニングを行なうのは、コストがかかりませんか?
尾花氏
正直、コストはかかってますね。今は海外である程度形になった製品をベースに扱っていますが、どうしても筐体サイズによるディスプレイサイズ、搭載可能な機能に制限が出てきます。将来的には完全に日本独自の製品を手がけなければと思っています。コストについては勉強代ということで(笑)。
金氏
日本では、まだまだLG電子の端末だから購入を決意するというところまで認知度があるとは言いがたい状況です。海外でやっているように最先端の技術を投入することは可能なのですが、少し尖った商品をいきなり出して、なんか変なものばかり出すメーカーという印象を持たれても困りますから(笑)、バランスが難しいですね。弊社は携帯電話での日本市場に参入してからまだ日が浅いので、まずは日本のユーザーからLG電子というメーカーへの信頼を得るのが先決だと考えています。
――最後に読者にコメントをお願いいたします。
尾花氏
我々の技術力は既に世界で証明済みですから、今までにないものをという発想で、これからもLG電子は日本市場で勝負していくつもりですので、よろしくお願いいたします。
――本日はありがとうございました。
■ URL
LG電子
http://jp.lge.com/
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(麻生 ちはや)
2008/03/12 11:31
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