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「SH905iTV」「SH705i」開発者インタビュー
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最新AQUOSケータイと充実機能のスリムワンセグ
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左からシャープの河内氏、宮田氏、ドルビーのエンゲル氏、鬼沢氏
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NTTドコモから発売されたシャープ製のFOMA端末「SH905iTV」は、ドコモのAQUOSケータイ第2弾となるワンセグ対応端末だ。画面を横にできるサイクロイド機構を継承し、タッチパッド機能の「TOUCH CRUISER」を装備するなど、テレビ機能に留まらない内容になっている。また、音響面では「SH905i」で対応したドルビー・モバイルを搭載し、画質・音質の両面から進化が図られている。
一方、「SH705i」は、705iシリーズの中でも機能や使い勝手の面で充実した機能を備えた端末に仕上がっている。ドコモからの発売は2月中になる予定だ。
「SH905iTV」「SH705i」について、開発メーカーであるシャープの担当者に話を伺った。また、「SH905iTV」に搭載のドルビー・モバイルについては、同席したドルビーの担当者に解説していただいた。
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アルミ素材のパネルの製造工程。左から右の順で、ポリッシュ仕上げの後、ヘアライン加工、塗装が行なわれていく
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――最初に、「SH905iTV」の開発のコンセプトを教えて下さい。
宮田 雄介氏(シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 主事)
NTTドコモ向けのAQUOSケータイ第1弾として、約1年前に高画質や美しい液晶を特徴とした「SH903iTV」を発売しました。発売後に傾向を分析してみると、ハイスペックな端末を求めるユーザーには受け入れられていましたが、幅広い層の方に買っていただけたといえば、十分ではありませんでした。
今回、幅広い層の方に使っていただけるよう、3つの方向を目指しました。ひとつは、大画面を実現しながら、携帯電話としての薄型化、コンパクト化です。もうひとつは、高画質と高音質を軸としたワンセグの進化です。最後は、処理速度の向上や高速ダウンロード、横画面などを組み合わせた、パソコンライクな進化の方向性です。フルブラウザ搭載端末や、パソコンのコンテンツを利用するユーザーも増えてきましたので、横画面のサイクロイドスタイルを生かすということですね。
細かい点では、ユーザーの声を反映させて、ワンセグの履歴画面から録画した画面へアクセスできるようにしたりしました。ケータイとしての進化、テレビとしての進化、サイクロイドを生かしたコンテンツの進化の3つを開発目標にして新世代AQUOSケータイを目指しました。
デザイン面では、スモールボディ、コーナーカットシェイプ、フルメタルボディがテーマです。コンパクト化の流れの中で、狭額縁で大画面を強調するデザインを採用しました。少しでも小さく見えるようにコーナーをカットしています。また、薄型化にも貢献していますが、液晶背面のサイクロイド機構を収める部分にはアルミ素材を採用し高級感を演出しています。それ以外の部分は金属素材ではないのですが、統一感のある塗装に仕上げています。色は、金属調の質感を生かせる色を選びました。
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液晶パネルの違いが分かる試作機。中央部のみリフレクトバリアパネルで、周辺は従来のパネルとなっている
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河内 厳氏(シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 部長)
「SH905i」がすでに発売されている中で、「SH905i」をベースにどのようにAQUOSケータイとして進化させていくのかがポイントでした。映像と音に特に注力していこうということで、当社の最新の液晶部構造であるリフレクトバリアパネルを採用しました。リフレクトバリアパネルは、液晶と表面の保護パネルの間にあった空気の層を無くすことで、より鮮やかな表示を実現しています。さらには、高演色バックライトを搭載してNTSC比120%の高い色再現率も実現しています。
音については、ドルビーの技術を搭載することで、携帯電話でここまでいい音が出せるのか、というくらいの音質が実現できたと考えています。携帯電話では本体のスピーカーは小さいものしか搭載できませんが、FMトランスミッター機能でオーディオから鳴らすこともできます。そういった音に関する部分もAQUOSケータイとして特徴にしていきたい部分ですね。
「TOUCH CRUISER」は、「SH904i」では初めて搭載したということもあり、賛否両論いただいていましたが、「SH905i」で進化したものを搭載し、横画面が可能な今回の「SH905iTV」ではフルブラウザとの親和性も高くなっています。横画面に対するユーザーインターフェイスも、コンテンツがそろったことで良くなった部分だと思います。横画面のワイドコミックも対応し集英社のドラゴンボールの1話をプリインストールしています。
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ドルビー・モバイルにより広がりのある音響効果などが楽しめる
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――「SH905i」にも搭載されている「ドルビー・モバイル」について、特徴などを伺いたいと思います。
鬼沢 和広氏(Dolby Japan マーケティング部 移動体市場担当 マーケティング・マネージャー)
今回、AQUOSケータイに採用されるということで、いい音に仕上げるというのは前提となりますが、“いい音”という定義はあいまいですし、人によっても違ったりします。そこでドルビーとして目指したのは、聞き疲れしない音、というものです。
「ドルビー・モバイル」とは、ドルビーの携帯電話向け技術の総称です。今回、ドルビー・モバイルの中に5種類のサウンド効果を搭載しました。「SH905i」「SH905iTV」に搭載するにあたって、さまざまなジャンルの音を聞き、日本、オーストラリア、アメリカのサンフランシスコの本社の3カ所で点数を付け、その平均点に基づいて5種類のサウンド効果のパラメータ調整を行ないました。
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ドルビー・モバイルではワンセグのジャンルとも連動した設定が可能
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動画再生は、ドルビーの社屋の機材を使ってのデモを体験できた
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ニック・エンゲル氏(Dolby Australia Audio Software Enginering Manager)
大きな目標は、携帯電話で聞いても、リビングのスピーカーで聞いているような効果が得られれば、というものです。モデルとなった部屋があるのですが、その部屋を再現するような調整を行ないました。各効果で想定する部屋の大きさを7段階のパラメータで用意して、サウンド効果を設定すると自動的に連動するようになっています。
「サウンドスペース for ヘッドホン」では、ヘッドホンやイヤホンで聞いたときに、広がりを持たせた聞こえ方になるものです。
端末内蔵スピーカー用のサウンド効果として用意したのが「サウンド スペース エクスパンダー」です。「SH905i」と「SH905iTV」ではスピーカー搭載位置などが違いますので調整し直しています。
「ナチュラル ベース」は、よくあるような単純な低域の強調ではなく、内蔵スピーカーなどの能力を考慮に入れ、音が破綻しない範囲で最も効率よく低域が出るように調整しています。ヘッドホン出力でも同じような調整が行なわれます。
「サウンドレベル コントローラ」は、地味ながら便利な機能です。コンテンツの平均的なボリュームをチェックしており、ワンセグや音楽再生機能、ジャンルや曲による音量の違いを調整します。
「モノラル→ステレオ クリエイター」は、名前の通りモノラル音声をステレオにする機能です。ワンセグは、左右の音が分かれたステレオで送っている番組もあれば、左右で全く同じ音が出ている番組もあります。「モノラル→ステレオ クリエイター」では、通常のモノラルに加えて、ステレオのように思えてモノラル2本で送っている音声についても、モノラルと判断して自動的にステレオに変換します。後段では、前述の「サウンドスペース for ヘッドホン」などが利用できます。
――ドルビー・モバイルはワンセグや音楽機能で使われていますが、音声通話やテレビ電話に応用するといった方針はありますか?
河内氏
音声通話の高音質化については、また別の技術になると思います。いまのところ、ドルビー・モバイルを適用するのは音楽や映像系などが中心と考えています。
――ドルビーとして、モノラルスピーカーを搭載した携帯電話向けの機能は、検討されているのでしょうか?
エンゲル氏
ナチュラルベースなどは不可能ではありませんが、広がりのある音など、基本的に2つ以上のスピーカーが対象になります。
――シャープとして、ワンセグやAQUOSケータイの次の展開をどのように考えていますか。
河内氏
北京オリンピックに向けては、音と映像が良い商品という部分に引き続きこだわらなければいけないでしょう。もうひとつはiモーションで、よりリッチ化されて動画系、音楽系コンテンツも音にこだわってくる流れがあるのではないでしょうか。短いコンテンツでも、音のクオリティの高いものが出てくるかもしれません。そういった流れになった時、リッチコンテンツを再生する機種としてシャープの端末がオススメの端末になっていれば良いですね。
テレビ機能に特化する形でAQUOSケータイとして「SH905iTV」まできましたが、今後は高いクオリティを維持しながら、次の展開を行う必要があると思います。「SH905iTV」の発売後の経過を見ながら、方向性が正しいかどうか見ていきたいと思います。
■ SH705i
――「SH705i」についても教えていただけますか。
河内氏
この機種についてどう考えているかというと、「2年間安心して使えるモデル」というところを目指しました。
サイズはコンパクトでも、やはりテレビは見られるようにしたいということで、ワンセグに対応しました。カメラもいいものをということで、3.2メガでオートフォーカス対応のカメラを付けています。普通の方が普通に気にする機能を揃え、これなら長期でも使える、と思ってもらえる内容に仕上げています。
液晶も2.8インチのワイド液晶で、このサイズの端末としては大型ですし、テレビ専用ボタンを用意してワンセグはワンタッチでフル画面モードにできます。ユーザーインターフェイスも見直して使いやすくしています。
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ワンセグに対応
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――ボディカラーは鮮やかな色が揃っていますね。
河内氏
ボディカラーだけは少し冒険した色かもしれません。新製品を買ったときの元気なイメージで、若いユーザー層をイメージしています。デコメールでは手書きの絵をデコメに取り込める機能も付けました。
カメラもテレビも付いていますが、全体として普通にまとめ、押さえどころをしっかりと押さえた商品です。サブディスプレイも最近は隠す傾向のデザインが多いですが、「SH705i」は付いていることが分かる安心感のあるデザインです。
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立体的なディテールを持つ「ファブリックデザイン」
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――「ファブリックデザイン」は立体的で見た目も面白いですね。
宮田氏
繊維の型を取って、それを転写する技術です。中に本当に繊維を入れるという話もありましたが、型を取って布地のような質感を出しています。
――テンキーは、最近は珍しいかもしれない独立したタイプです。
河内氏
独立したキーは、押しやすくて楽ですね。
端末全体としても、狙い通りに仕上がっていると思います。最近スクウェアなデザインが多かったのですが、「SH705i」は若干レトロな感じですし、安心感といったものにもつながるのではないでしょうか。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
SH905iTV 製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/905i/sh905itv/
SH905iTV 製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/sh905itv/
SH705i 製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/705i/sh705i/
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(太田 亮三)
2008/02/07 20:51
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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