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「F905i」開発者インタビュー
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使いやすさを追求したフルワイド+ヨコモーション
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F903iから採用されてきたヨコモーション機構をフルワイドVGA化することで進化させた「F905i」。開発した富士通のモバイルフォン事業本部 第一プロダクトマーケティング部の高橋知彦氏と松島美雪氏に同端末へのこだわりを聞いた。
――最初にF905iのここが魅力、というポイントについて教えていただけますでしょうか。
高橋氏
一番のポイントは、やはりフルワイド+ヨコモーションへの進化を遂げたディスプレイです。F903i企画当初より、「これからは横画面と相性の良いコンテンツへのニーズが絶対に高まる」と予想してきましたが、F903i、F903iX、F904iを経て今回のF905iへ、その潜在ニーズが顕在化しはじめ、当社が横画面コンテンツとの相性が最適だと考える「ヨコモーション形状」が市民権を得始めたように思えます。やりたかったことの多くをF905iでできた、という気持ちです。フルブラウザをはじめとする横画面の利用とニーズはこれからさらに、高まるでしょう。
――VGA液晶については、ドコモでは905iシリーズで標準的な仕様になりました。“横へのこだわり”はF903iの時から持っていたとのことですが、このスペックを活かせるだけの、コンテンツとスピードがようやく市場に出始める段階になりましたね。
高橋氏
F903iシリーズを企画していた頃には各社で、折りたたみ型やスライド型、二軸ヒンジなど、横画面へ向けての形状が提案されていました。ところが、いずれの形状も横画面にすると、キー操作が全く変わってしまうというデメリットが発生するんです。サイドキーしか使えないとなれば、利用できるアプリケーションにも制限がかかりますし、アプリケーションを無理に増やすと今度はアプリごとに、サイドキーの操作を全部バラバラに割り当てる必要が出てくるなど、使い勝手という点ではまったくよろしくないということになってしまいます。
ユーザーの視点に立って考えてみれば、常に変わらないキー操作というのはとても大切なことだと考えています。そんなに複雑な操作方法をいくつも記憶できないですから。今回のF905iはF904iからあまり変化してないよね、という声も聞かれますが、従来機種から培ってきた「いつも同じキー操作」という大原則は押さえており、いい仕上がりになったのではないかと思っています。
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高橋知彦氏
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――いつもの慣れた操作感を横画面でもそのままに、というのは重要なところですね。
高橋氏
ものすごく重要です(笑)。高精細のフルワイド画面ともなれば、ゲームやら何やら試したいコンテンツが出てきますよね。そんな時にキー操作が大幅に変わると、ユーザーさんというのはそれだけで面倒に感じて、あまり触らなくなってしまうものです。F905iの魅力をそのまま受け止めてもらうために、この形状には大変な自信を持っています。
――フルワイドVGA(480×864)化したことで、どのような点を気をつけたのでしょうか?
松島氏
見やすい、読みやすいということにも気を配り、新たなフォントも採用しました。他社端末のわりとはっきりしたフォントに慣れた方がご覧になっても、にじんで見づらいということもないはずです。VGA液晶搭載が決定した時点でフォントにはトコトンこだわると決めましたから、文字のクリアさには、ぜひ注目していただきたいですね。
また、ヨコモーション+VGAだからこそできることという視点で、さまざまな工夫をこらしてあります。まず、VGA化するというのは一体どういうことなのか? という点についてはだいぶ社内で話し合いました。単純に「VGA化されて画面が綺麗ですよ」では、正直当たり前すぎて面白くないでしょう。VGAにはマルチメディア以外の部分にも、ユーザーにメリットがあるはずだと考えました。
実は恥ずかしながら「2タッチ機能」に弊社でもようやく対応しまして、メールを頻繁に使う方に便利なのはもちろんですが、不慣れな初心者向けのサポートとして、2タッチ入力用のガイダンスを表示できます。これはVGAだからこそ小さくても見やすくできるポイントですね。さらにカレンダーを閲覧する際、確認したい日はもちろん、1週間まとめての拡大表示が可能になりました。従来の縦画面でも1日だけのスケジュールなら見られましたが、F905iなら1週間をぶち抜きで拡大した上に、入力した複数の予定もほとんどそのまま読めます。これもVGAだからこそできることです。
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松島美雪氏
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――確かに来週の予定を軽くチェックしたい、というときにこれは便利な機能ですね。
松島氏
マルチメディア以外でVGAを活かすという点では小さなことなのですが、デコメール用のテンプレート一覧をいちいち読み込まなくても、全てサムネイルでチェックできるようになりました。
――これも地味ですけど、便利な機能ではありますね。
松島氏
入力済みの本文に対して、テンプレートを差し替えて選べるようにもなりましたので、デコメールを使いこなす層にはもちろんですが、テンプレートを簡単に選べる、後から変えられることで、今まで使ったことのないユーザーに試していただきたい機能です。
――ワンセグ周りで、何かこだわりなどがありましたらお願いします。
松島氏
そうですね、フルブラウザとワンセグの切り替えをTVキーのワンタッチで行なえる点は、実際の利用シーンを考えると重要な機能かなと思います。自分の家でテレビを見ながらパソコンでネットサーフィンという使い方は、よくある光景ですよね。これもワイドでヨコモーションだからこそ、利便性を損なうことなく実現できたことの1つです。
また、今回は録画機能に対応したのですが、実際に他社さんの録画機能を使ってみて、録画中には、録画画面が消えてたほうがいいよね、という話があがりました。就業中にアレコレを録画しているのを、知られたり見られたりするのって、あまりいい気分じゃないですよね(笑)。ちょっと地味な機能ではありますが、F905iではバックグラウンドでの録画対応が可能になりました。
――現在のワンセグの仕様では、低い解像度のデータをVGAサイズに無理やり引き伸ばすことになるため、各社でいかに綺麗なデータ処理を行なうかという技術競争がまた始まっていると思われます。御社ではそのあたり何か工夫されていますか。
松島氏
単純にQVGA用のデータを引き伸ばすと荒く見えてしまうのは、おっしゃるとおりです。荒さとかジャギー感をいかに減らすかという工夫に加えて、色味のチューニングも気を使いました。肌色や空、自然の緑もすべてバランスよく、美しく再現できるようになりました。ワンセグ全画面だけでなく、今回はフルワイドVGA化した点を十分に堪能いただくために、フルブラウザとワンセグのマルチウィンドウ表示を試すことをお勧めします。私自身、初めてみたときは、かなり感動しましたし、実際、相当、重宝しています(笑)。
――御社製品のこだわりとしてセキュリティ強化というのが挙げられます。「プライバシーモード」ついてもF905iでは何か進化してるのでしょうか。
高橋氏
念願の、というとおかしいですが(笑)、F505iやF506iの時代に搭載していた「マイピクチャ」や動画フォルダへの非表示対応に加えて、今回はなんと、ブックマークも非表示にできます。
本人は全く後ろめたくない仕事関連のメールでも、知らない人が見たら何だろう? と疑ってしまうようなタイトルで届くことがあるでしょう。プライバシーモードの強化は、あなたと周囲の人に無用な争いを持ち込まないため、という一種の優しさなんです(笑)。
――開発陣の実体験がだいぶ織り交ぜられてる気もします(笑)。
高橋氏
開閉ロックのように一目見て「ロックがかかってる」と分かるものは、逆に見られて困るものがあるの? という疑いを招きますが、プライバシーモードは設定した本人以外には、ロックされてることすら分かりません。ブックマークの非表示については、履歴も全て隠せます。かなりがんばって作りこんでいますので、ぜひ使ってみてください(笑)。
――御社には「らくらくホン」というヒット商品が既にありますが、やはりシニア向けというイメージが強く、若年層へのアピールは弱いと思われます。F905iは充実した機能とデザイン性でありながら、初心者ユーザーへのケアも欠かさない配慮も見えますね。
高橋氏
らくらくホンであれ、90Xi/70Xiであれ、当社としては、「スーパーはっきりボイス」や「はっきりマイク」「ゆっくりボイス」の実装に代表される「話す」「聞く」といった、携帯電話の基本をしっかりおさえながら、いかに機能をカンタンに使っていただくか、という視点で開発を心がけています。イヤホンマイク端子部分をスライドカバーにした点も、ユーザビリティ向上の一環です。現在のUI(ユーザーインターフェイス)や機能等の各種実装が完成品だと言うつもりは全くありませんが、お客様の視点でものを作りましょう、という基本姿勢をしっかり守り、地味で小さい部分でも取り扱い説明書をわざわざ読まなくても直感で理解できる、というところまでもっていけるよう、改善はこれから重ねていきます。
――最後にデザインについてですが、薄型ボディが主流となる中ではわりとスタンダードな発展をとげていますが、苦労された部分があれば、教えてください。
高橋氏
デザインで特にこだわったのはイルミネーションです。白色LED4つとRGBを1つ配置することで、ごく自然に流れるような光の帯を再現しました。店頭でぜひ試していただきたいのですが、これは単純にLEDを並べただけではできないんですよ。
――なんだか「ナイトライダー」みたいですね(笑)。
高橋氏
社内でもその名前は出ましたよ(笑)。ボディの薄さよりもキー部分に注目して欲しいですね、以前は文字入力の際に濁点と「テレビキー」を誤操作しやすいという意見がありまして、そのあたりも改善しました。
――ちなみにメインカラーは「ブルー」ですか? 「マゼンタ」以外はどれも、男性/女性を問わないはずれのないカラーバリエーションを揃えましたね。
高橋氏
男性はホワイト、ブルー、ブラックの3色から選ぶでしょう。女性はマゼンタかホワイトのどちらでもいいですね。
――最後に読者にコメントを一言お願いします。
高橋氏
F905iはヨコモーションの完成形といってもいい仕上がりになりました。もちろん、これから改善していくべきところは多々ありますが、画面を横にしてもキー操作を変えることなく、使いやすさを維持したのは他社製品にはないメリットです。
――本日は長時間ありがとうございました。
■ URL
製品情報(富士通)
http://www.fmworld.net/product/phone/f905i/
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(編集部, 麻生 ちはや)
2007/11/26 18:22
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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