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「P704i」開発者インタビュー
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カメラに注力した薄型スライド端末、そのコンセプトを聞く
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P704i
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パナソニック モバイルコミュニケーションズ製「P704i」は、ドコモ向けの同社製端末として初めてスライド形状を採用し、充実したカメラ機能などを備えるFOMA端末だ。プロジェクトマネージャーの長瀬 幸一氏、商品企画担当の富澤美玲氏、機構設計担当の宮下 誠司氏に話を聞いた。
■ パナソニックらしい704iを
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左から富澤氏、長瀬氏、宮下氏
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――スライド機構などが目を惹く「P704i」ですが、どのようなコンセプトを元にしているのでしょうか?
富澤氏
まず折りたたみ型の携帯電話が数多く登場していたことを受け、「新たな形状を」という考えがありました。スライド型も他社製端末で登場していますが、他社以上の製品を作りたいということで取りかかりました。
当社の70Xiシリーズとして、P704iμなども同時期に開発しており、薄型シリーズとして「P704i」を開発することになりました。その前にP703iμなどもあったわけですが、同じ形を連続して提供するのではなく、異なった形状で幅広いラインナップにするということですね。
――ストレート型という選択肢を選ばなかった理由は?
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商品企画担当の富澤氏
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富澤氏
確かにストレート型の可能性はゼロではありません。ただし、ユーザーからのニーズを考慮した結果という面もあります。それと、やはりコンパクトさを追求したかったという理由が大きいですね。
長瀬氏
パナソニックのアイデンティティである「軽薄短小」を追求したいと考えていましたから、そこでコンパクトな形状を重視することになりました。スライド型とは言え、開いた状態では2つのボディの段差が少ない構造(フラットスライド)を採用しており、ストレート型を好むユーザーにも満足していただける仕上がりだと考えています。
富澤氏
もちろん、スライド型に対しては「段差があってテンキーが使いづらい」などの評価がありましたが、そこは技術陣が実現したこの構造でクリアできる目処が立ち、スライド型を進めることになりました。
宮下氏
機構設計を行なっていく際には、どの機能を搭載するのか、どういった部品が必要なのかを積み重ねていくわけですが、たとえばP904i開発時にキーの薄型化が進んでいましたし、ナビゲーション周辺のキーも薄くできることが判明し、スライド形状での薄型化も目処が立ったということになります。
■ スライド機構の特徴
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押しやすさを追求したテンキー
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プロジェクトマネージャーの長瀬氏
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宮下氏
スライド機構を採用したP704iは、スライドする距離が短い形になっています。キーの薄型化により、より小さな面積で配置できるようになったのですが、それでいて押しやすさを実現するため、キートップは少し山なりする形状にしました。
――たとえばP703iは、盛り上がった大きめサイズのフレームレスキーで、P704iμなどはシートキーを採用していましたが……。
宮下氏
P704iのキーは、実はP703iの縮小版とも言えるものです。端末のサイズはだいぶ異なりますが、考え方としては同じもので、キートップに丸みを付けて押しやすくしているのです。P703iではより丸く、P704iは角っぽい仕上げにしています。
長瀬氏
このあたりはコンパクトさとのせめぎ合いですね。P704iは、押しやすさと小型化を攻めた端末と言えます。テンキー全てが占める面積が小さくなっていますので、その分、指が動く範囲が狭まり、クイックな操作に繋がっていると思います。また、シートキーを採用しなかったのは、スライド形状のP704iでは「ボタンは、よりボタンらしくある」と考えたためです。
富澤氏
スライド型は液晶画面とナビゲーションボタン部が表面デザインの大部分を占めるので、特にナビゲーションボタン部分のグラフィック的な特徴について、深く検討を重ねました。スライド型端末にとっては、ディスプレイとナビゲーションボタン部が「商品の顔」になりますから。他社製品を含め、P704iとして差別化できることを目指しました。外観では、側面のデザインにもこだわりました。横から見ると、2つのボディしかなく、薄さをシンプルに表現しています。側面にあえて「P704i」という型番を入れることで、サイドビューの美しさを強調しました。
――ディスプレイの下、方向決定キーのすぐ上に樹脂系の素材が配置されていますね。
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樹脂系素材の「スライドバー」
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富澤氏
これは「スライドバー」という部品です。実は開発途中で独自調査を行なったところ、「どうやってオープンしたらいいかわからない」という声が上がってきました。そこで、上下ボディの長さを変え、ディスプレイ側ボディを少し短くするとともに、この樹脂系素材を配置することで、右手でも左手でも開けやすく、閉じやすいように配慮しました。
当社の携帯電話の特徴の1つとして、折りたたみ型端末でのワンプッシュオープンボタンがあります。しかし、スライド型端末でワンプッシュオープンボタンを装備すると、簡単に開けられる反面、閉める際に力がいりますので、採用を見送りました。
■ 810Pとの関連
――パナソニック製のスライド端末としては、ソフトバンク向けの「810P」が先に登場していますが、どういった関連があるのでしょうか?
富澤氏
基本構造として共通の部分はあります。ただし、P704iには、FeliCaをサポートしたり、カメラ関連でフラッシュを搭載したりしているなど異なる部分があります。ユーザーさんからの視点と、作り手の考え方は違うと思います。最終的な見た目が似たようなもの、と感じられるかもしれませんし、構造的に近い部分はありますが、その中身、味付けはそれぞれ異なる製品として開発したことになります。
当社の携帯電話で、着せかえやワンプッシュオープンボタンを特徴として、各キャリア向け端末でサポートしていることがありますが、スライド機構もそれらと同じような位置付けと言えます。発売時期は810Pの方が先でしたが、これはどちらかのキャリアに肩入れしたものではありません。
■ 特徴は“カメラ”
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背面にカメラ
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機構設計担当の宮下氏
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――P704iの最も特徴的な機能は?
富澤氏
やはりカメラですね。携帯電話でのカメラは利用頻度が高い機能で、暗いところの撮影や手ぶれに対するニーズが強い。そこでP704iではオートフォーカスと6軸手ぶれ補正を搭載しています。新しい機能を提案するのではなく、多くのユーザーに使われるカメラ関連機能を強化したことになりますね。
スライド機構の良い点の1つは、画面が露出していることで、操作がクイックになるところです。カメラ機能でもそこを追求し、端末を横向きにしてすぐ撮影できるようにしています。画面を端末左側にしてデジタルカメラ風に使えることを目指しましたので、メニューはデジタルカメラ風にしています。
普段はカバン内に収納されているデジタルカメラと違い、携帯電話はポケットの中にあることが多く、撮影までのスピード、クイックな対応が特徴的なところですので、すぐカメラ機能が起動するなどの工夫を凝らしています。
――フラッシュ機能をサポートしていますが、バッテリーの持ちなどに影響しないのでしょうか?
長瀬氏
カメラのフラッシュと言えばキセノン管(希ガス入りで瞬間的に発光するランプ)が一般的ですが、P704iのフラッシュはLEDを使ったものです。瞬間的に光量が大きくなりますが、待受時間などに影響するほどではありません。
宮下氏
携帯電話開発では、全てのスペックが最初から決まっているわけではなく、ある程度固まった上で進めていきます。そういう意味で、フラッシュ機能は途中から搭載が決まったものでした。搭載するには機構設計で一工夫する必要がありましたし、電気関連の性能は机上の計算だけでは判別できないところがありますので、電気関連の技術スタッフが実験しながら検証を行ない、搭載にこぎ着けました。
――軽薄短小を目指したとのことですが、フラッシュの部品は大きめに見えます。それでも搭載したのはなぜでしょう?
長瀬氏
1つは、他製品との差別化ですね。他社の動向を推測しながらスペックを定めていくわけですが、薄型化できる部品を選定し、機構設計部隊が仕上げましたが、当社の知恵と言うか努力と言うか、そういったものでできたと思います。
――FOMA端末では一般的なサブカメラは、P704iでは搭載されていませんね。
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側面に型番のロゴを入れてサイドビューをアピール
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長瀬氏
軽薄短小な端末を目指すということで、内側のサブカメラは他よりも優先順位を低くしていましたので、今回はメインカメラの充実した機能。FeliCa搭載ということでサブカメラは見送りました。
富澤氏
デザイン的にも、メインディスプレイ側にサブカメラを搭載すると、どうしても目立ってしまいます。スライド型端末にとって、ディスプレイ周辺部は顔です。たとえばP704iの時計機能は表示位置を動かせるようにしていますが、これも“顔”を活かす機能の1つです。そういった点からもサブカメラの搭載を見送りました。もっとも、テレビ電話機能は利用できます。外側のメインカメラで写した映像を送信できますので、自分自身の現在地周辺を伝えたりすることもできますね。
――このほか、P704iの特徴は?
長瀬氏
通話終了後にアニメ再生する機能「Feel*Talk」では、映像に加えて音の再生が可能になっています。この機能は、通話内容を解析して、その雰囲気にあったアニメーションを再生するというものですが、音を追加することで、さらに表現力がアップしています。
富澤氏
ドコモユーザーのうち1,400万人は、PDCユーザーと言われています。そういったユーザーを意識し、アドレス帳やメール保存件数を拡充するといったこともしています。
――なるほど。本日はありがとうございました。
■ URL
製品情報
http://panasonic.jp/mobile/p704i/
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(関口 聖)
2007/08/31 12:34
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