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「W52P」開発者インタビュー
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アルミパネルと重ね着で楽しむケータイ
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W52P
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5年ぶりのau向け端末として2月に発売された「W51P」は、20代の女性をメインターゲットにした携帯電話だった。続いて、夏モデルとして発表された「W52P」は、“W51Pが狙った層よりも大人”なユーザーを意識して開発されたという。
商品企画担当の大西恵加氏、デザイン担当の田中洋平氏、ユーザーインターフェイス担当の大坪一道氏と宮形春花氏、プロジェクトマネージャーの戸村美香氏に、開発の背景などを聞いた。
■ W52Pのターゲット層
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商品企画担当の大西氏(左)とデザイン担当の田中氏(右)
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――あらためてW52Pの特徴を教えて下さい。
大西氏(商品企画担当)
今回は、「W51P」とはイメージを替えて、より上品で大人の方をイメージにしながら開発してきました。ポイントは、「Exterior×Interior」をコンセプトにしながら、外側と内側の質感の表現にこだわったデザイン、もう1つは「+Panel(プラスパネル)」です。そして当社のアイデンティティを示す“ワンプッシュオープンボタン”、従来より表現力などの向上を図ったスクリーンデザインなども特徴です。
――大人のユーザーに向けた携帯電話にした理由は?
大西氏
そういった層はまだまだ狙っていける部分と言うか、今の携帯電話に満足していない方がいると思います。ターゲット層にあたる方々に話を聞いたところ、服飾品や自動車などは上質な製品を所有していますが、携帯電話は「古いから」という理由で、恥ずかしがって見せてくれない。
よくよく聞いていくと、欲しい物や自分にあったものがないと言う理由で新機種に買い替えていないのです。自己主張がある一方で、責任を持って仕事をする立場でもあり、TPOを意識して生活するような方々ですね。たとえば女性向けの携帯電話は存在していますが、大人の方にとっては可愛らし過ぎるのも困ります。このあたりの感性は、男女を問わず、共通したものではないでしょうか。
――そのコンセプトは、最初から最後までぶれることはなかったのでしょうか。
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左からジュエルゴールド、プラチナホワイト、インディゴシルバー
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田中氏(デザイン担当)
(ターゲットユーザーの具体的な姿を)着地点として共有していく流れの中で、従来と比べるとより明快だったと思いますね。各メンバーともにぶれなかったと思います。
大坪氏(ユーザーインターフェイス担当)
いいものが最初の段階で出てきて、ユーザー層が明確になっていました。その雰囲気を1つの感覚として、開発中には“空気感”という言葉で表現して、『こういう姿があるんじゃないか』と議論しました。W51Pという製品もありましたから、それとどう違うか、という点も意識しましたね。あえて言えば、W51Pユーザーが憧れるような製品というか。
大西氏
難しいのは、私自身を含めて、ターゲット層にあてはまる人が周囲にいなかったことでしょうか。ただ、宮形とも当時話していたことですが、W51Pでカバーしきれなかった層、ニーズはあるだろうと。やってみる価値があると判断しました。
――W51Pが女性向けと来ると、次は男性向けという形を明確に打ちだすこともあり得たのかなと思います。
大西氏
いわゆる「大人の方」という層は普段からカバーしきれていない、と感じていた層だったというのが理由の1つです。そして、auと言えば若い人に受け入れられていますが、KDDIさんは、より成熟したユーザー層を狙っていきたいのではないかと我々は理解していました。auが取りたいところと、我々が取れる部分をあわせて市場を狙っていく――そのターゲットを具体的に描くと、「大人」というイメージになったのです。
■ 金属に色を染みこませる
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アルミパネルを特殊な処理で染色している
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――質感をアピールするということで、アルミパネルを採用していますね。
田中氏
今回は、アルミパネルを染色するという技法を採用しています。ジュエルゴールド、プラチナホワイト、インディゴシルバーというラインナップですが、ジュエルゴールドとインディゴシルバーは金属の質感を活かす仕上がりで、プラチナホワイトはマットな仕上がりで、ホワイトが持つ世界観を活かした染色・塗装という合わせ技になっています。
――「金属を染色する」技法とは?
田中氏
デジタルカメラなどではよく使われる技法ですが、簡単に言うと、アルミの表面上の膜に塗料を封じ込めるという技法です。染料を浸した槽にアルミパネルを入れ、膜の表面に特殊な処理を施すと、色が膜の中に染み込みます。特性としては、色が落ちにくいということが挙げられますね。表面が傷ついても塗料だけ剥がれることはありません。さすがに深い傷ですと、塗装と同じように金属の地の色が露わになりますが。
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ホワイトは少し異なる質感に
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――ホワイトは異なる仕上げなのでしょうか?
田中氏
金属の質感を残して白くするというのは非常に難しいのです。金属を白くする方法はあまりなく、他の手法も試したのですが、ホワイトの世界観と金属の質感、特にヘアラインの質感を保つ表現としてホワイトのみ異なる仕上げになっています。
――携帯電話の筐体に金属を用いるのは難しいところがあるそうですが。
大西氏
そうですね、金属を使っても、例えばアンテナの特性などに影響が出ないようにかなり気を使いました。ただ、プラスチックに金属風の塗装を行なうよりも、本物でなければ出せない風合いがあります。今回のターゲット層の心を掴むには、フェイクではなく本物でなければならないと感じました。たとえば光の反射具合が金属と、金属風塗装ではまったく異なります。手に取ったときも、少し重たく、少し冷たさがあって、そのあたりが本当に良いんだと感じてもらえるのではないしょうか。
■ 「+Panel」は重ね着感覚
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重ね着感覚の「+Panel」
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――パナソニックの携帯電話でお馴染みのパネルですが、今回はクリアパネルをベースにしていますね。
戸村氏(プロジェクトマネージャー)
金属の質感をベースに幅を広げるものとして、パネルをとして採用しました。着せ替えではなく、アルミパネルの質感を活かすものですね。
大西氏
オプションの「+Panel」は、洋服の生地を題材にしたデザインになっています。薄さという観点からすると、+Panelを装着すると厚くなりますが、薄さを求める人とカスタマイズ性を求める人は、そもそも異なる層だと考えています。それでいて、W52Pでは、それぞれの価値観にマッチできる。つまり、+Panelによって幅を広げたと言えます。ビスにもこだっていて、さまざまな形状のものを検討しましたし、プラチナホワイトのビスは表面が白いものになっています。
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ユーザーインターフェイス担当の宮形氏(左)とプロジェクトマネージャーの戸村氏
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実際に重ねてみると、金属の上に模様が乗る形になりますが、パネルのデザインによって見え方がかなり変化します。他の手法ではできない演出でしょう。
――左右非対称という形になっていますが、W51Pのデザインを継承したことになるのでしょうか?
田中氏
いえ、結果的に姉妹のようになったということですね。「本物へのこだわり」ということでアルミパネルを採用しましたが、全面ミラー仕上げなど、単一の形であれば多少うるさく感じると思います。W51Pを意識したことはありますが、素材の質感とサブディスプレイのバランスなどを考えた結果、「最終的に左右非対称になった」というほうが強いですね。また、細かい点ですが、ワンプッシュオープンボタンの周辺や、スピーカー内部など、小さなディテールの部分で開いた時のボディカラーの色をチラッと見せています。普段使っている中で気づくと、満足感が高まるのではないでしょうか。
■ スクリーンデザイン
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ユーザーインターフェイスにも注力
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デザイン担当の田中氏(左)と、ユーザーインターフェイス担当の大坪氏(右)
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――スクリーンデザインも特徴の1つということですが、どういった仕上がりなのでしょう?
大坪氏
W51Pでもプリセットのテーマを4種類搭載していましたが、それをさらに発展させたことになります。外観デザインが進められる一方、同時進行でユーザーインターフェイスも詰めていきました。開発中には、意見交換して、ヒントを与え合うこともありましたね。
宮形氏
カラーごとに初期設定されている待受画面やメインメニューなどの画面デザインは異なっています。また「EZケータイアレンジ」を使うと、+Panelのデザインにマッチした待受画面やメニュー画面などをダウンロードできます。Flashで制作したコンテンツは、日時や季節にあわせて、クリスマスやハロウィンなど、さまざまなイベントが発生します。全て計算するとパターンは1,845種類ほどあって、それらのイベントが発生する出現率も設定しています。同じW52Pでも、その日に出現するイベントは個別に異なるのです。
大坪氏
時間に連動するイベントは、検証作業が大変ですね。その日付で発生するかどうかという点に加えて、意図していないタイミングで出現してしまうことがないかという検証も必要ですから。画面が切り替わる際には、ワイプ効果で演出するという仕組みも取り入れています。また、ストリアと名付けたデザインでは、線の動きだけでメニューアイコンのフォーカスを表現しており、その曲線から連想できる遊び心を表しています。
携帯電話は、ツールであると同時に嗜好品としての面があります。今回のユーザーインターフェイスは、その嗜好品という部分を追求しました。とにかく使いやすく、そして楽しめるものにしようと考えました。ユーザーインターフェイスを考える上で、どれが正解とは言えないと思いますが、今回の形を楽しんでもらえればと思いますね。
■ 質感追求のシートキー
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シートキーを採用
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――テンキー周辺はシート状のパーツになっています。
大西氏
薄さをキープしながら、外側と内側の違いを出しています。どんどん携帯電話が薄さを追求する中で、採用できるキー用部品の種類は限られていますが、今回は、インテリアをデザインするようなイメージで、シート状のパーツを採用しました。
田中氏
通常のキーでは、見た目が分割されているように見えますが、シートキーにしたことで一体感を演出できるようになりました。これまでシートキーを採用する携帯電話は、薄さを追求する観点から採用してきたと思いますが、今回はインテリアとしての一体感・質感を追求しました。実際に手に取り、触っていただくと、このキーの心地良さを実感してもらえると思います。
戸村氏
薄さとデザイン両方の観点からキーシートを採用しました。従来のシートキーよりも盛り上がった形状で、他に例を見ない形になっていると思います。デザインと素材など、全てが合致したかなと思います。
――ありがとうございました。
■ URL
製品情報(パナソニック)
http://panasonic.jp/mobile/w52p/
■ 関連記事
・ アルミパネル採用でクリアパネルを装着できる「W52P」
(関口 聖)
2007/06/06 11:11
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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