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「812SH」開発者インタビュー
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幅広い層を満足させるスタンダード端末
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シャープの812SHは、カラーバリエーションが20種類という多色展開が注目を集めているが、実はそれだけがセールスポイントの端末ではない。スペックを見てみれば、おサイフケータイやBluetoothといった標準機能をしっかりと搭載しており、一方で重さは昨年のヒット商品「705SH SLIMIA」並を実現しているなど、バランス良くデザインされている。春モデル発表会でソフトバンクの孫社長は、この812SHを、春商戦の主力商品として紹介している。
バランス良い機能と大きさ、さらに20色展開。幅広い層にリーチする812SHがいかにして作られたか、開発を担当したシャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 部長の山本 信介氏、同事業部 商品企画部の黒田 真未氏、同事業部 デザインセンター 副参事の黒川 誠二氏に話を聞いた。
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シャープの黒田氏(右)と黒川氏(左)
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――まずは開発の背景やコンセプトについてお聞かせください。
黒田氏
812SHは、昨年の夏モデルである705SHの後継モデルとして開発がスタートしました。705SHは薄型スタンダードモデルとしてご好評を頂いており、薄型モデルの先駆けとなりましたが、スタンダードモデルとして「お客様が求めているもの」を考えると、薄型化だけを追求し、機能や使い易さを犠牲にしてはいけない、というところにたどり着きました。812SHは薄さのみを追求するのではなく、薄い上で使いやすさ、機能、デザインの各ポイントをバランス良く、すべてのポイントで満足させる端末にするべく、開発をスタートさせました。
最初にぶつかった壁は、機能と薄さの両立です。これがいちばん難しかったところです。しかし、「薄くても使い易い」を実現するため812SHは形ありきで始まっています。まず手に収まりやすい形状、このラウンドフォルムをデザインセンターで考えてもらいました。そして、その形とサイズを守るように開発を進めました。
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立体形状の数字ボタン。左右のボタンと中央のボタンで形状が異なり、緩やかなU字を描く
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――数字ボタンは完全なフレームレスタイプではありませんが、立体形状になっています。このあたりも力を入れられているポイントでしょうか?
黒田氏
使いやすいと感じてもらうのに重要なポイントであるボタンの操作性も、812SHのポイントです。ボタンはとくに力を入れています。爪の長い女性などはフラットなキーでは押しにくく、不便な思いをされているという声も挙がっておりましたので調査と検討を重ね、今回のキー形状を作りました。「アークリッジキー」と呼んでいますが、数字ボタンの立体形状が、U字を描くようになっています。
こうした形というのも、簡単にできたものではなく、まずどんなボタンが使いやすいと感じるか、ということで、いろいろな端末を触りながら調査やアンケートを行ないました。また、爪の長い女性でも使いやすいモノを、ということで、私自身がネイルサロンでつけ爪をつけてもらって、研究しました。
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つけ爪をつけた状態では、このように親指を横にしてボタンを押すようになる
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つけ爪をつけてみるとわかるのですが、爪が長い状態で親指を縦(爪がディスプレイ側に向く方向)にすると、爪がほかのボタンやボディに当たってしまいます。親指を横(爪が側面に向く方向)にするとちゃんと押せますが、ボタン面がフラットだと、指がどのボタンを押さえているかがわかりにくくなってしまいます。そこで、キーを押すときの指の傾きや指の膨らみを考えてボタンに凹凸をつけるとともに、カーソルキーとセンターボタン、メールキーなどもそれぞれ押しやすくわかりやすいようにデザインしました。
――705SHの後継モデルとして開発されたということですが、705SHに比べると、おサイフケータイなど機能面では充実している印象を受けます。
黒田氏
機能面ではサイズとトレードオフになることもあるのですが、812SHはスタンダードモデルとして、購入した段階でお客様が使いたいと思われる機能をきちんと載せておきたい、ということで開発しました。FeliCaや海外ローミング、赤外線、ちかチャット、フルブラウザ、ドキュメントビューアも搭載しています。
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812SHの20色と813SHやホークスケータイなど派生機種、合計24種
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――812SHというと、やはりPANTONEとのコラボレーションによる20色展開のインパクトが大きいですが。
黒田氏
今回、PANTONEとの20色展開が目立っていますが、20色展開が前提にあって開発された、というわけではありません。元々は「ラウンドフォルムで使いやすく」、というコンセプトがベースにあり、その中で、ユーザー自身のイメージと重ねてあわせて持ってもらうにはどうすればよいか、ということを考えたとき、20色というアイディアが出てきました。そのインパクトを強くするために、PANTONEとのコラボに結びついた、という感じです。
――カラーごとにサブディスプレイ部分のパネルが違いますね。
黒川氏
2種類あります。ボディのベースがメタリックなカラーでは、その部分のパネルのメタリックさを抑えています。本体とパネルの質感を対比させ、メリハリをつけるようにしています。
――20色も展開すると、需要にあわせた生産や流通が大変だと思うのですが。どのようにコントロールされているのでしょうか。
山本氏
ひとつは生産側で工夫しています。色の表現は20色で別々の塗装コーティングをしていますが、ベースのキャビネットは4色と、共通化を図っています。これは生産を効率化する上で有効です。
流通の面でもソフトバンクさんのご協力をいただきながら、新しい仕組みを作って進めています。
――売れ筋としては、どの色が売れているのでしょうか。
山本氏
発売からほぼ1カ月の売れ筋としては、1番がゴールドで、ホワイトが続き、あとはパールピンクやメタルブルーあたりです。黄色もベスト10に入っていますね。
――グレーなど、ケータイとしては珍しいカラーまで取り入れられたのはどうしてなのでしょうか。
黒川氏
従来のような4色くらいの展開と違い、20色も展開するのであれば、売れ筋の似たような色を並べるのではなく、グレーなど幅広い色もあるべきではないか、と考えました。また、単体だけでなく、20色並べた状態での美しさや楽しさも考慮した色の選択になっています。
――予想外に売れたカラーもあったのでしょうか。
山本氏
ビビッドピンクですね。流行している色でしたが、上戸彩さん効果もあったかもしれません。予想よりも売れています(ソフトバンクの発表会に登場した上戸彩が、お気に入りの色を聞かれた際、ビビッドピンクと答えた)。
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ホークスケータイは、ボディにロゴが入っているほか、内蔵コンテンツも通常の812SHと異なる
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――追加色が登場する可能性もあるのでしょうか。
山本氏
今回はちょっと難しいかもしれません。元々20色の展開も2段ロケット・3段ロケット方式で端末色を増やすという話もあったのですが、結局、一気に出そうということになりました。
限定色モデル追加というのはあるかもしれません。その一環として、今回はホークスケータイも登場しています。プレミア性を出す上では、新しい取り組みですね。
――ビジネス向けモデルというのもありますね。
山本氏
ビジネス向けモデルとしての813SHという派生モデルがあります。カメラ無しのモデルです。さらにビジネス向け機能を進めて、データ書き出し制限を設けたfor Bizというモデルもあります。こちらは法人営業がハンドリングされるモデルです。
――本日はお忙しいところありがとうございました。
■ URL
製品情報(ソフトバンク)
http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/812sh/
製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/sb812sh/index.html
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(白根 雅彦)
2007/04/03 15:20
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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