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「F703i」担当者インタビュー
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富士通初の防水ケータイ、その仕組みは?
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NTTドコモの703iシリーズとして登場した富士通製「F703i」は、IPX7とIPX5という2種類の防水性能を満たした携帯電話だ。しかしその外観は、“防水”という機能を感じさせない仕上がりだ。同社セールスプロモーション部の坂本秀幸氏に開発コンセプトや、防水機能の仕組みを聞いた。
■ 3年がかりで開発
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富士通の坂本氏
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――富士通の防水製品は、今回初めてなのでしょうか?
そうですね、防水性能を備えた個人ユーザー向け製品は、F703iが初めてです。防水と言っても、突然できたわけではありません。基礎研究とでも言いますか、実は3年ほど前から技術開発を進めてきました。
「防水」という特長を打ちだしたのは、ニーズがある、と判断したためです。商品企画の策定段階で、防水携帯電話のニーズを調べたところ、求める声が非常に多いことがわかったのです。
その一方で、これまでの防水ケータイは、「いかにも防水」という外観のものが多く、デザイン面でのニーズを満たしていないとも考えました。防水機能は欲しいけれど、おしゃれな携帯電話が欲しいということですね。防水というスペックと、おしゃれな外観という2つは、相反するところがあります。その実現のために、3年間かけて技術開発したというわけです。
――ニーズが高いというと、どの程度のものなのでしょう?
防水性能を備える携帯電話について、当社の調査では、「欲しい」「興味がある」と答えたユーザーは全体の約8割でした。また、「欲しくない」と答えたユーザーが挙げた理由は、ほとんどがデザイン性についての不満でした。このことから、「デザイン性に優れた防水ケータイがあれば、多くの人が欲しいと思っている」と考えました。
――F703iでは、おしゃれな外観というニーズを満たしつつ、防水に対応したわけですね。
見た目もシンプルで、厚みは20mmを切っています。7セグメントの背面イルミネーション(フローティングサイン)など演出面でも洒落た仕上がりになっています。ただ、この外観では防水対応であることがわかりにくいかもしれません。店頭展示では「防水」というシールを貼ってアピールしています。
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IPX7、IPX5に準拠した防水性能を備える
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バッテリーカバーにはロック機構
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――IPX7・IPX5という2種類の防水仕様をサポートしています。
IPX7はこれまでもありましたが、IPX5対応の携帯電話は他にないのではないかと思います。少なくともIPX5対応としては最薄の端末になるでしょう。
――IPX7は「水深1mに30分間放置しても本体内部に浸水しない性能」で、IPX5は「全方向から噴流水を受けても本体内部に浸水しない性能」とされています。F703iでは、どのような仕組みで実現したのでしょうか?
携帯電話で防水を実現するためには、折りたたみ型の場合、ヒンジ部が一番難しいポイントです。そこで、当社ではヒンジ内の配線とパッキンを一体化する部材を開発しました。現在、特許を申請中なのですが、この技術は薄型化を支える部分の1つです。このあたりは、技術陣が一番苦労したところで、何回もトライアルを繰り返しました。
またF703iでは、正確には「内部に全く水が入らない」というわけではありません。ただし、「絶対に浸水してはいけない部分は確実にカバーする」という形になっています。たとえば、バッテリーカバーは、ロック機構を備えた表蓋と、パッキン付きで金属製の裏蓋という二重構造です。表蓋は、裏蓋が外れないように押さえつける役割を果たしており、表蓋と裏蓋の間は浸水します。しかし、表蓋が圧力をかけることで、裏蓋の内側には水が入らないようにしています。
もちろん、表蓋を外して、裏蓋だけでもバッテリー部に浸水はしません。しかし、裏蓋を押さえつける圧力がないことになりますので、ちょっとでも裏蓋が外れれば浸水します。表蓋の有無で、浸水の危険性は大幅に異なるわけです。
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バッテリーカバーは二重蓋構造
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ヒンジ内の配線とパッキンを一体化した部材
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マイクとスピーカーにはゴアテックスを用いているという
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――他社の防水ケータイでは、バッテリーカバーをロックする仕組みにしているものが多いですが……。
その場合は、どうしてもバッテリーが取り外しにくくなります。また、F703iの場合、バッテリーの内側にmicroSDカードスロットが配されていますので、容易に開けられる構造を目指したのです。2重構造だからこそ、薄型にできたとも言えます。
このほか、マイクとスピーカーには、ゴアテックスという素材を採用することで、防水を実現しています。
――ゴアテックスというと、靴などで用いられている素材ですね。
アパレル系の商品でよく利用されていますが、その特徴は「水は弾くが、空気は通す」ということになります。つまり、防水でありながら音は伝わるということです。
――側面の外部接続端子やイヤホンジャックのカバーを見ると、F703iが防水ケータイだとわかりますね。
実はこのあたりも工夫したところです。全体的にフラットな仕上げなのですが、そのおかげで側面の場合、コネクタがきちんと閉じられているかどうか判別しやすくなっています。また閉めた場合は、その感触がきちんと伝わるようにしています。
電源ON時には、画面上にコネクタがきちんと閉じられているか、注意喚起する画像を表示させます。またF703iでは、充電用の卓上ホルダを同梱していますが、これは外部接続端子の開閉をできるだけ減らすためです。ソフトとハードの両方で工夫したことで、安心して使ってもらえると思います。
――富士通と言えば、指紋認証を思い浮かべますが、F703iではサポートされていません。これは商品コンセプトによるものでしょうか? それとも技術的にまだ難しいということなのでしょうか?
そうですね、やはり指紋認証と防水という2つの両立は、まだ難しいところです。とは言え、当社製の70Xiシリーズでは指紋認証をサポートしたものもあります。90Xiシリーズだけに限定する機能ではありません。
■ ハイエンドに近づけた
――70Xiシリーズですが、90Xiシリーズに近いスペックになっていますね。
おサイフケータイやWMA形式の再生、メガiアプリに対応しています。今回はデザイン面に注力しながら、できるだけハイスペックに仕上げました。
――リラックスモードプラスなどの機能を見ると、女性向けなのかな、とも思えますが……。
確かにリラックスモードプラスは、女性向け機能と言えるかもしれませんが、端末そのものは性別を意識していません。ただ、リンパマッサージのやり方を案内するiアプリをプリセットしていたり、電話がかかってきたように見せかけられる「イミテーションコール」などの機能は、女性にお勧めしたい、F703i独自の機能として搭載しています。
――リラックスモードプラスの“プラス”とは何でしょう?
F703iでは、音感検知センサーが搭載されており、リラックスモードプラスで活用しています。これまで同様のセンサーでは、音が鳴っているかどうか、ONかOFFかだけを検知していました。
しかし、今回のセンサーは、鳴っている音が拍手の音か、息を吹きかけた音なのか、音の種類を判別できます。それを活かして、ろうそくのアニメが再生されている最中に息をふきかけると炎が消えたり、猫が登場したときにコツコツと叩くと猫が怒ったりするなど、インタラクティブな遊び方ができるのです。
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電話がかかってきたフリができる「イミテーションコール」
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――イミテーションコールはユニークな機能ですが、搭載した理由は?
本当に使うシーンがあるかどうかはともかく、安心機能の1つとして搭載することにしました。F703iの商品企画チームには女性が多く、F703iに搭載されている独自機能は、女性からの提案を多く取り入れていますね。
イミテーションコールでは、着信メロディが鳴って、応答すると他愛ない質問の音声ガイダンスが再生されるのですが、その質問内容はランダムに変化します。何回か使ったとしても、その都度、自然な受け答えができるようにしています。
――なるほど。
携帯電話は日常生活に密着しています。肌身離さず持ち運ぶ人が増えている中で、F703iは防水にすることで、お風呂などの水回りや雨天などでも普段通りの使い方で、どこでも持って行ける携帯電話を目指したのです。
――ありがとうございました。
■ URL
製品情報
http://www.fmworld.net/product/phone/f703i/
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・ 防水性能を備えたスリムボディの「F703i」
(関口 聖)
2007/02/15 11:50
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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