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「P703iμ」担当者インタビュー
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パナソニックが示す“薄さの進化”とは
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W-CDMA端末として世界最薄という、パナソニック モバイルコミュニケーションズ製FOMA端末「P703iμ」が登場した。薄さを特徴の1つとしてきたパナソニックは、「P703iμ」の開発にあたって、どこにこだわったのか。プロジェクトマネージャーの林 貴博氏、商品企画担当の富澤 美玲氏、設計担当の宮島 由典氏と萱森 学氏に話を聞いた。
■ 薄く、格好よく
![上質な印象を与える外観。別売の卓上ホルダはスピーカーに配慮した設計](/cda/static/image/2007/02/09/p06s.jpg)
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上質な印象を与える外観。別売の卓上ホルダはスピーカーに配慮した設計
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――薄さ11.4mmというボディサイズのP703iμですが、どんな風に開発をスタートしたのでしょう?
林氏
当社は、軽く薄くコンパクトという特徴で業界をリードしてきましたが、今回は、2005年に登場したprosolid IIの次モデルを検討する形で開発がスタートしました。国内外の携帯電話のトレンドとして、薄型が前面に出てきましたが、形状としてはスライドタイプやストレートなどさまざまです。それぞれ特徴はありますが、主流である折りたたみ型として、一番薄い端末を目指してきました。
また、これまでの薄型の携帯電話では、どうしても外観の質感は今一つになりがちでした。技術の粋を集めただけの製品ではユーザーに受け入れてもらえません。実際に、普段使っている手帳や時計といった身の回りの製品は、高級感を備えるものの評価が高いと思います。
――薄さに加えて高級感を演出した、ということでしょうか。しかし「高級感」として金属のテイストを採用したのはなぜでしょう?
![プロジェクトマネージャーの林氏(左)と、設計担当の宮島氏(右)](/cda/static/image/2007/02/09/p00.jpg)
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プロジェクトマネージャーの林氏(左)と、設計担当の宮島氏(右)
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林氏
1つは必然だったから、という理由になります。つまり、11.4mmという薄さになったことで強度、信頼性といった点をカバーする必要がありました。今回、外装にステンレス合金を採用していますが、これで外からの圧力に耐える能力が備わっています。金属をボディ素材に採用したこともあり、全体の演出として金属感を打ちだした形になります。
富澤氏
P703iμでは、スタンダードな部分と上質さを両立させました。一般に、携帯電話を薄くすると各種デバイスの配置が難しくなります。しかしP703iμは、当社の90Xiシリーズと同じ位置にカメラやサブ液晶があります。薄さを実現しながら、パナソニック端末としてのスタンダードなビジュアルを崩さず、テクノロジーとデザインを両立させています。
――薄さ11.4mmという数値は、同時発表の「N703iμ」も実現していますが、何か関連はあるのでしょうか?
林氏
いえ、全く関わりはありません。高さ・幅・奥行きと全て同じ数値で、「デザインが異なるだけで中身が同じ」と思われるかもしれませんが、カメラの場所も異なりますし、それは誤解です。現時点での薄型携帯電話を開発する上で、同じ数値にたどり着いたメーカーが2社あった、ということです。質感や使い勝手を顧みずに、薄さだけを追求すると、もう少し薄くできたと思います。
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2001年のFOMA初号機「P2101V」から6年、薄さは1/3に
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左からP703iμ、P702iD、prosolid II、P902i
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■ シートキーを採用
![P703iμではシートキーを採用](/cda/static/image/2007/02/09/p05s.jpg)
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P703iμではシートキーを採用
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――パナソニックとして、シートキーの採用は、今回が初めてでしょうか?
富澤氏
いえ、国内では「705P」で採用しています。また、その前に海外モデルで最初に採用していました。P703iμでは、真ん中の縦一列(クリアキーや2、5、8、0の各キー)がその左右にあるキーよりも少し上に配置されています。これは、親指で操作する場合、その動きが車のワイパーのように円を描くものだからです。真ん中の列は、親指の先端が一番先にくるあたりに配されたことになります。
――バックライトでは有機ELを用いているとのことですが、採用理由は?
宮島氏
まずELでは面全体で光りますので、キー全体が均等に光ります。
林氏
今までのキーと比べると、綺麗に光ります。これはスペース効率や消費電力、高級感といった3点を両立させるために選んだ素材ですね。コスト面ではちょっとマイナスかな、といったところですが、コンセプトに見合ったデバイスと言えます。P703iμのテレビCMは、夜をイメージしたものなのですが、デザイナーや技術陣がコンセプト実現のために有機ELを採用したのです。
■ ワンプッシュオープンボタンについて
![P703iμのヒンジは四角い](/cda/static/image/2007/02/09/p09s.jpg)
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P703iμのヒンジは四角い
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――ヒンジの形状が四角というのも珍しいですね。
林氏
携帯電話を開けるとき、ヒンジは丸く、回転するように動きますので、四角いヒンジはデッドスペースが増えます。そのため、世の中の携帯電話は全て丸いヒンジですが、P703iμのヒンジはデザイナーが一番こだわったところで、デザインと技術のせめぎ合いがありました。
富澤氏
過去の携帯電話の中には、キー側ボディとディスプレイ側ボディを繋ぐヒンジが蝶番のようになっていましたが、P703iμの四角いヒンジは、見た目でも安心感が伝えられるでしょう。
宮島氏
ヒンジが四角になると、丸いものと比べ、その分、ヒンジの径が長く大きくなります。その分、部品の配し方なども新たに検討しなければなりませんでしたし、デザイナーの意図をいかに実現させていくか、苦労しました。
――パナソニック製の携帯電話でお馴染みの、ワンプッシュオープンボタンがないことが気にかかります。
富澤氏
P703iμでは、「薄くて格好良いもの」というコンセプトを掲げて開発しており、最優先事項は「フラット感」でした。だからといって、開けやすさを軽視しているわけではありません。P703iμを折りたたんだとき、指が入りやすいように側面に丸みを付けています。デザイン性や薄さを保ちながら開けやすさも実現できています。
林氏
ワンプッシュオープンボタンを装備していませんが、「パナソニックのアイデンティティを捨てたのか」というわけではありません。ただ、我々が一番目指すところは、軽薄短小、軽く薄くコンパクトな端末です。今回、P703iμではまず軽薄短小という一番のアイデンティティの実現を目指しました。
――「ワンプッシュオープンボタンじゃないと……」と考える既存ユーザーも多そうですが。
林氏
たしかに、ワンプッシュオープンボタンには、一度使うともう手放せないという便利さがあります。その一方で、他社製の携帯電話を使っている方がP703iμを手にとると、「開けやすい」と評価してくれます。既存のPユーザーには、少々申し訳ないとも思いますが、それ以上のものがP703iμで提供できると考えています。
■ 強度補強
![商品企画担当の富澤氏(左)と、設計担当の萱森氏(右)](/cda/static/image/2007/02/09/p01.jpg)
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商品企画担当の富澤氏(左)と、設計担当の萱森氏(右)
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――強度向上でステンレス合金を外観に用いたとのことですが、内部構造も工夫しているそうですね。
宮島氏
通常の携帯電話では、キー側ボディに主な電気回路を実装していますが、P703iμではディスプレイ側ボディ内にメイン回路を配しています。また基板そのものを樹脂と一体化させています。
林氏
「ボードモールド」と名付けた技術になります。ただ、製造工程や樹脂の素材など、詳しいことはお話できません。
萱森氏
技術面からすると、ディスプレイ側ボディに、メイン・サブのディスプレイモジュールとメイン回路、カメラモジュールが入っていることが一番のポイントだと考えています。これをいかに実現するか設計上の一番の課題で、苦心しました。
宮島氏
なおかつ、メイン回路の片面に部品を集約したり、新たな方法を採用してコネクタレスを実現したりしています。部品レイアウトもかなりシミュレーションしました。これらが薄型化に寄与したポイントですね。
林氏
部品の集約化・小型化にも注力していますが、そういった部品をどうやってコンパクトに収めるか。この辺りは、もっとも鍵となったところです。実は、ソフトバンクモバイル向けの「705P」で同じ技術を採用していますが、あれから半年を経て、さらに進化を遂げたということになります。
――樹脂と回路の一体化は、強度面でどの程度の効果が?
林氏
P703iμは、P902iのほぼ半分の薄さなのです。ということは、その分弱くなるはずですが、工夫の結果、同程度の強度が実現できています。
――薄型端末として登場した「prosolid II」では、今回と異なる仕組みで強度を確保していましたね。
富澤氏
prosolid IIでは、バスタブ構造とマグネシウムのシャーシを入れ、さらにヘアライン加工したアルミパネルを採用しています。
林氏
P703iμでは、そういった構造物を入れるスペースがなかった、とも言えます。prosolid IIはしっかりした背骨を備えた端末であり、P703iμは堅牢な筋肉質のボディと言えるでしょう。
■ ニーズを満たすスペック
![左のprosolid IIと異なり、P703iμ(右)のバッテリカバーはステンレス合金。また主要回路はディスプレイ側ボディに搭載する](/cda/static/image/2007/02/09/p04s.jpg)
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左のprosolid IIと異なり、P703iμ(右)のバッテリカバーはステンレス合金。また主要回路はディスプレイ側ボディに搭載する
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――薄くしていくという観点から、microSDカードスロットなどの搭載を見送るという選択肢はなかったのでしょうか?
宮島氏
設計からすると、なければ楽になるものはあります。ただ、ユーザーにとって最低限の機能は実装すべきと考えていました。サブ液晶についても同じことが言えると思います。
林氏
ユーザーを中心に据えた考え方すると、カメラやデータのやり取りといった利用シーンがあるでしょうから、搭載すべきものですね。
富澤氏
これまでの流れを振り返ると、廉価版として70Xiシリーズは、その後、デザイナーズモデルと言える機種など多彩なラインナップになりました。その中でヒットした機種には、メモリカードやサブ液晶といったベーシックな機能が必ず搭載されているのです。
林氏
サブ液晶の実装は、最後まで苦労したところです。見やすさや文字サイズ、表示する情報量などのバランスを考えて、使いやすい形を追求しました。着信時には電話番号などもきちんと表示させていますし、輝度を高くして、夜はかなり綺麗に見えます。
萱森氏
主要回路がディスプレイ側ボディに内蔵されたことで、ディスプレイなどの部品に影響がありましたが、最終的には薄さを実現しながら基本性能を確保できました。ユーザーにも満足してもらえると思います。
![機種名は底面に。シンプルな外観のため、目立たせない形に仕上げられた](/cda/static/image/2007/02/09/p08s.jpg)
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機種名は底面に。シンプルな外観のため、目立たせない形に仕上げられた
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――機能面では、先に発売された「P703i」よりもシンプルになっていますね。
林氏
P703iμでサポートしている機能は、現時点で求められる機能のうち、必須とされるものです。将来的には、流行しだししたワンセグやFeliCa、Bleutooth、GPSなどが最低限求められる機能になったりするかもしれませんが、その時々に必要なものを入れていくことになるのでしょう。
富澤氏
いわゆる「新しいモノ好き」な方は、新サービスや新機能に興味を持つ方と、新しいデザインに惹かれる方がいると思います。今回のP703iμは、どちらかと言えば後者に向けた製品になります。
――SD-Audio対応と、音楽再生機能をサポートしていますが、音楽に対するニーズは根強いということでしょうか?
富澤氏
そうですね。今や、音楽再生機能は携帯電話にあって当然と見なされていると思います。多機能になった携帯電話で、音楽再生機能そのものは使わない方でも、対応していなければお得感がないということでしょう。
林氏
microSDカード対応となって、単にデータを格納するだけでは、という面もありますね。使い勝手の向上という面から音楽再生をサポートしたというわけです。また、当社製の携帯電話の全てでSD-Audioを対応していることもあります。
――tomatoのコンテンツを内蔵した、というのもユニークな点ですね。
富澤氏
デザインに注力した携帯電話として、外側と内側の両面を意識したからこそ、tomatoさんのコンテンツを搭載しようということになりました。彼らの存在は、あまり一般に知られてないかもしれませんが、テレビ局などのコーポレートアイデンティティなどを手掛けており、(tomatoを知らない人でも)作品を目にしたことがあるでしょう。
林氏
当社によるメニューデザインも、端末デザインにあわせた形で搭載しています。tomatoさんのコンテンツが加わったことで、当社のデザイナーにも刺激があり、良い仕上がりになったと思います。
――発表から約3週間、いよいよ発売されました。
富澤氏
3色での展開ですが、「どの色にしよう」と悩ませる端末にすることが目標の1つでした。
林氏
11.4mmというW-CDMA端末として最も薄い端末として「P703iμ」が世界で初めて登場します。テレビCMでもアピールしているのですが、「薄さを進化させるのはパナソニック」というところです。当社が開発した以上は、安っぽい製品は提供できません。これだけの薄さに仕上がったことで、どんなケースに入れようか、という楽しみも出てくると思います。
――ありがとうございました。
■ URL
P703iμ 製品情報(パナソニック)
http://panasonic.jp/mobile/p703imyu/
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(関口 聖)
2007/02/09 11:26
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