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「W51CA」開発者インタビュー
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2軸ヒンジ+ワイド液晶の集大成モデル
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auから発売された「W51CA」は、2006年に発売され人気を博したWIN端末「W41CA」の後継モデル。薄型のボディデザインはそのままにワンセグに対応し、高画質化技術や大容量バッテリーの搭載など技術面でも着実な進化を遂げている。一方、好評な待受画面の演出はさらにボリュームアップし、この春のラインナップの中でもハード・ソフトの両面で注目の端末に仕上がっている。
「W51CA」を開発した、カシオ計算機、カシオ日立モバイルコミュニケーションズの開発担当者に話を聞いた。
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本間氏(左)と荒巻氏(右)
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――開発コンセプトや、ハードウェア面でのこだわりはどのあたりでしょうか?
石田 伸二郎氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム)
「W51CA」は、カシオが初めて手がけたWIN端末である「W21CA」から目指してきた方向性の一つの完成形です。「W21CA」ではPCサイトビューアーやナビゲーションスタイルを、「W31CA」ではデジタルカメラスタイルとPCドキュメントビューアーを、「W41CA」ではMUSICプレーヤースタイルを実現し、そして今回の「W51CA」でワンセグ視聴スタイルも可能になりました。こういったWIN端末のサービスを総合的に使いやすくしたのが「2軸ヒンジ+ワイド液晶」という組み合わせではないかと考え、この「W51CA」で到達したカタチを目指してきました。我々として集大成的な製品になっていると言えますね。
本間 敦氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム)
今回の「W51CA」は、2006年の春に発売された「W41CA」をベースに、2007春のワンセグの盛り上がりを意識し、「W41CA」のデザイン・機能のバランスにワンセグを載せた、というのが開発コンセプトです。
実際の開発では、「W41CA」と同じ22mmの厚さのボディにワンセグを搭載するという目標からスタートしました。最終的にはワンセグの機能に加えて、EZニュースフラッシュなどもあってサブ表示パネルも追加し、「W41CA」と同じ厚さの中に搭載しました。
また、「W41CA」では待受時間の長さに対する要望も市場の声としてありましたが、「W51CA」では電池パックの厚さを1mm厚くして、容量も740mAhから900mAhに容量アップを図りました。
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W41CAのバッテリー(右)との比較。1mm厚く、容量も900mAhにアップ
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――ワンセグの部分も、カシオ日立として開発している部分のノウハウが活かされているのでしょうか?
石田氏
そうですね。カシオ計算機の商品としてワンセグ端末は初めてですが、実はワンセグ端末の開発には、初期段階から画処理関係で日立製作所、無線関係でカシオ計算機が大きく関わっていましたので、カシオ、日立、カシオ日立モバイルの合作とも言える商品です。先に開発した経験を活かして「W51CA」では、現時点で業界トップクラスの視聴時間と業界トップクラスの高画質を実現しているのではないかと思っています。
――ワンセグはこの春のauのラインナップでも中心の機能ですが、他社と比較してのポイントはどこでしょうか?
本間氏
新しい画像処理エンジンを搭載したことによる低消費電力化、連続視聴時間の長時間化と、高画質エンジンの採用、録画予約機能の実現、の3つが中心になると思います。
――録画予約機能は、どういう利用のされ方を想定して搭載されたのでしょうか?
荒巻 龍男氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ソフト設計グループ)
録画予約機能は、予約で録画した番組を通勤途中などに視聴する、というシーンを想定していました。予約は手入力しなくてもいいようにEPG(電子番組表)に対応しています。
番組の予約は、EPGから1件予約すると、スケジュール機能でその予約を繰り返せるようにしました。これにより、毎週金曜日のある番組を録画予約する、ということもできます。録画の開始、終了もスケジュールから変更できるので、スケジュールに登録した後に番組の最初の30分だけを録画する設定に変更したりできます。こういったように、録画予約はスケジュール機能とセットで考えられる仕組みになっています。
――他社ではワンセグを見ながらメールが返信できるものもありますが、この機能は難しいのでしょうか?
石田氏
「W51CA」では「タスク切替機能」を搭載し、ワンセグ視聴中にメールの閲覧や返信を行なったり、メール作成中にスケジュールを確認できますが、本格的なマルチタスク機能は今後の課題だと認識しています。
――ワンセグでほかに、W43Hなどから進化した部分はありますか?
荒巻氏
イヤホンの抜き差しを自動で検出できる機能が追加されていますね。
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野尻氏
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――高画質エンジンも、さまざまな機能が搭載されています。
野尻 光一氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ハード設計グループ リーダー)
ハードウェア的に一番注力したのは、できるだけ長く視聴できるようにすることで、そこがハードウェア面から最も貢献できる部分と考えました。
長時間化に向けて低消費電力を狙う中で、レビューを重ねて要素を出していきましたが、そのなかの一つが高画質エンジンと、それを搭載するデバイスを変えた、という部分です。高画質エンジンは次世代プロセスを使ったチップで、これにより低消費電力化を実現しました。
本間氏
カタログの注釈などにも書いてありますが、連続視聴時間の5時間30分は、液晶ディスプレイの明るさを落とすのではなく通常の明るさ設定である「3」で実現しているところも大きなポイントだと思います。
――ちなみに、スピーカーで音を出した場合はどれぐらい持つのでしょうか?
野尻氏
連続視聴時間は約5時間くらいではないでしょうか。
――そのほかに、細かな注目ポイントなどがあれば。
荒巻氏
サブ表示パネルの表示やサイドキーの操作を改善しました。音楽再生中などは、これまでアプリを起動している状態でないとサブ表示やサイドキーの操作が行なえませんでしたが、「W51CA」ではBGM再生に移行しても待受け状態で端末を閉じればサブ表示パネルに曲が表示され、サイドキーでボリュームや選曲が行なえるようになりました。
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辻村氏(左)と井戸氏(右)
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――全体のデザインについて、簡単にコンセプトなどを教えてもらえますか?
井戸 透記氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室 室長)
「W51CA」は、「W41CA」の後継といえるデザインで、「W41CA」でやりきれなかった部分を一点一点リファインしました。また、ワンセグに対応したということで、横向きのビュースタイルでは完全な左右対称に見えるスッキリとしたデザインになるよう仕上げています。
細かなところでは、カメラ周りの質感を向上させていますし、ボディ全体でネジ穴のフタをなくす処理も施しました。テンキー側にある、ビュースタイル時に液晶を支えるゴム足も、カーソル左右のキーの間に配置して目立ちにくくしました。テンキーは「W41CA」の8mmのキーピッチを維持しながら全体的に広げて使いやすくしていますし、「W41CA」で要望があった改善点は全て盛り込んだつもりです。端子のカバーも汚れやすい樹脂表面部分をなくして全面塗装を施し、長く使っても綺麗な状態が維持できるようになっています。
「W41CA」から細かいリファインを重ねたデザインだからできる進化であり、良い点は継承しても良いと考えました。「W41CA」とデバイス構成とターゲットが大きく変わらない「W51CA」では、大幅にデザインを変更する必要がないと考えました。
――カラーのラインナップはこれまでと少し趣が異なりますね。
井戸氏
ボディカラーは、これまでのカシオでは珍しいラインナップになりました。白、黒、ピンクと、ある意味非常にコンサバな3色とも言えます。特にピンク(ブルームピンク)はこれまでカシオとしてほとんどラインナップしてこなかった色ですが、今回はラインナップに加えたいと思いました。3色のカラーそれぞれが狙っているターゲットはほとんど違いませんので、逆にテンキーフォントは今回3色とも同じです。カシオの商品は基本的にターゲットの年齢・性別により色を分けるという考え方はしていないので、この「W51CA」を気に入って下さったユーザーは購入色で非常に悩むのではないでしょうか。
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高木氏
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――デザイン面から想定しているターゲット層はどのあたりでしょうか。
井戸氏
想定しているのは20歳代中頃~後半のケータイ密着度の非常に高い方たち、といったところでしょうか。カラーラインナップではMNPの利用も考慮し、例えば他キャリアでピンクの端末を使っていたユーザーさんにも是非今回はカシオのピンクを試していただきたい、といった思いもあります。
高木 健介氏(カシオ計算機 通信営業部 マーケティング課)
「W41CA」は男性、女性、年代を問わず幅広いユーザー層に支持されましたので、「W41CA」からの買い替え層もターゲットになります。「W21CA」から2軸ワイドスタイルを続けていますが、着実に女性層が増えてきています。特に「W41CA」では顕著でした。こういった層も意識した3色のカラーバリエーションになっています。
――3色とも深みのある塗装が施されています。
井戸氏
「W43CA」では赤のみだった3コート塗装を今回はすべてのカラーで採用しています。「ブルームピンク」は下地がメタリックピンクで、その上にゴールドパールとトップコートを重ねました。光の加減によって、明るい部分がゴールドに輝くようになっています。是非、おしゃれな男性にも使っていただきたい色ですね。
「カシミアホワイト」は下地が高輝度のシルバーで、これにホワイトパールとトップコートを重ねました。こちらも光の加減で表情が変わり、シルバーが好きな人、ホワイトが好きな人どちらからも良いと言ってもらえる新しい色ではないでしょうか。
「サテンダーク」は下地が少し青いパールを含んだ黒系の塗装で、その上からパール粒子を覆うようにスモークブラックを重ねています。普段は濃紺ですが、強く光が当たった時だけ青パールのキラキラした光が見えます。黒はつやがあると指紋が目立つので、少しだけつやを抑えていますが、単純なつや消しだと質感が下がってしまいます。そこで、つやを抑えながら深みを出す、一部の漆塗りに使われる多層の仕上げ方法を再現しています。また、「サテンダーク」だけはUVトップコートに指紋が拭き取りやすい新しい処理を施しています。
――アンテナはデザイン的に苦労されたのでしょうか?
井戸氏
ロッドが内蔵なのでデザイン的に問題はありませんでした。アンテナロッドの色も各ケースカラーごとに変えているんですよ。
――「W41CA」と比べて、サブ液晶が追加されています。
井戸氏
ここが一番大きな変更点かもしれません。サブ液晶の周りには縁など付けずにあえてそのまま配置したデザインです。通常、画面を大きく見せたり縁取り印刷があるのですが、今回はシンプルに表示そのものを見せるよう苦労しました。「W41CA」を見慣れている人には多少違和感があるかもしれませんが、しばらくすると見慣れるデザインに仕上げたつもりです。
高木氏
情報表示という意味では評価も頂いています。時計やニュースなどが表示できますし、「W43CA」と比べて有機ELパネルの輝度も向上しています。
――波形のテンキーは他社でも採用され始めました。
井戸氏
そうですね。ただ波形はどうしてもデッドスペースが生まれますから、今後さらに薄型を追求する過程で、波形ではない違うタイプの押しやすいキーを考えていかなければいけないでしょう。
――今回は「W41CA」の後継ということで、待受画面などには「ペンギン」が再び登場しますね。
辻村 泰一郎氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室)
待受画面やメインメニューのほかに、今回はビュースタイルのアニメーションや時報アニメにもペンギンが登場しますし、サブ液晶の時報アニメにも登場します。
待受画面では、細かく分岐した場合を除いてもイベントの数は60種類以上になり、すべて「W51CA」用に新規で制作しました。ペンギンの性格にも若干の違いを出しています。「W41CA」に出てきたペンギンに比べ、今度のペンギンはもう少し人に近いキャラクターに設定し、等身大の身近さを感じてもらえると思います。スポーツをしたり、手紙を書いていたり、子供のようなことをして楽しんだりします。
技術的な面での改良点では、Flash Lite 2.0に対応したことで、アニメの輪郭などが「W41CA」より綺麗に表示できるようになっています。季節に同期できるようになり、特定の日しか出てこないパターンもありますね。長く使っても飽きのこない工夫をしました。
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アイコンメニューの例
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待受画面のバリエーション。すべて新しく作られている
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サブ表示パネルにもさまざまな表示タイプやアニメを用意
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井戸氏
今回は人間臭さが出ているかもしれませんね。体重計を見てショックを受けダイエットを始めたり(笑)。ちょっとした動きに、こだわり・味わいみたいな部分も追求しています。ケータイを開いて画面を見た時になごんでもらえたら、我々も嬉しいですね。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(KDDI)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/w51ca/
製品情報(カシオ)
http://casio.jp/k-tai/w51ca/
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(太田 亮三)
2007/02/02 13:05
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
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