ケータイ Watch
インタビューバックナンバー

「SH-06A NERV」企画者インタビュー
“初号機”に込められたこだわりを聞く
[2009/06/23]



「P-08A」開発者インタビュー
“P”らしく進化させたスライドケータイ
[2009/06/23]



「P-09A」開発者インタビュー
基本機能が充実、ハイエンド志向の薄型ケータイ
[2009/06/19]



シャープにソフトバンク向け夏モデルを聞く
新規デバイス搭載で個性的なラインナップを実現
[2009/06/18]



「N-08A」「N-09A」開発者インタビュー
携帯デザインをエモーショナルに、μシリーズの進化の形
[2009/06/17]



「P-10A」開発者インタビュー
“防水Wオープン”の難しさと開発の狙い
[2009/06/12]



「K002」開発者インタビュー
10.9mmに実用性とデザイン性を備えた大人の携帯
[2009/06/03]



「T-01A」開発者インタビュー
「Snapdragon」を搭載した東芝製スマートフォンの魅力
[2009/05/27]



「N-06A」開発者インタビュー
無線LANでケータイの使い方を変えるNEC
[2009/05/22]



「832P」開発者インタビュー
デザイン・機能のバランスを追求、頼りになる薄型ケータイ
[2009/05/22]



「P-07A」開発者インタビュー
“トリニティ”になったWオープンの進化を聞く
[2009/05/22]



「S001」開発者インタビュー
ケータイらしさを取り込んだ新Cyber-shotケータイ
[2009/04/09]



「モバイルウィジェット」企画者インタビュー
オープンと待受常駐を武器にウィジェット市場を切り開く
[2009/04/01]



「WX340K」「BAUM」開発者インタビュー
PHSシングルユーザーを満足させる2モデル
[2009/03/17]



「930P」開発者インタビュー
ゲームやネットとの親和性を追求したWオープンケータイ
[2009/03/11]



「P001」開発者インタビュー
パナソニック初のKCP+ケータイ、開発背景や新液晶の特徴を聞く
[2009/03/05]



「NSシリーズ」開発者インタビュー
auが未来に継承したいと考える新しいチャレンジ
[2009/03/03]



「K001」開発者インタビュー
子供が持ちたくなるようなケータイを目指す
[2009/03/02]



「830N」開発者インタビュー
若者の直感に訴えかけるNEC的スライド端末
[2009/02/27]



「SH001」開発者インタビュー
8メガCCDを搭載したスタイリッシュな高感度カメラケータイ
[2009/02/23]



「930CA」開発者インタビュー
すぐに撮れることにこだわった高速起動とスライドデザイン
[2009/02/19]



「Walkman Phone, Premier3」開発者インタビュー
“ケータイで音楽”をさらに広げる普遍的なWalkman Phone
[2009/02/18]



「831SH」「932SH」開発者インタビュー
ダブルワンセグのAQUOSケータイとワンランク上のスタンダードモデル
[2009/02/16]



「CA001」開発者インタビュー
タッチパネルを搭載したカシオのスタンダード端末
[2009/02/12]



「H001」開発者インタビュー
3D液晶搭載の4代目Woooケータイの狙い
[2009/02/06]



「F-01A」「F-03A」開発者インタビュー
「ヒトに合わせる」を考えチャレンジを続けるFシリーズ
[2009/02/06]



「SH-04A」開発者インタビュー
タッチとフルキーで携帯の新しい流れを提案
[2009/02/05]



「P-04A/P-05A」開発者インタビュー
薄さ9.8mmにこだわりながらGSMに対応
[2009/02/03]



「N-04A」開発者インタビュー
amadanaとのコラボで生まれたNEC初のスライド端末
[2009/01/28]



「P-02A」開発者インタビュー
“D”の遺伝子を受け継ぐ「継承と進化」のスライドケータイ
[2009/01/27]



ケータイユーザーの“本音”
教師側から見たケータイ文化
[2009/04/17]



ケータイユーザーの“本音”
女子高生に聞いた10代後半のケータイ事情
[2009/03/04]



気になる携帯関連イベント
“ケータイソムリエ”を養成する「モバイル実務検定」
[2009/01/22]



キーパーソンインタビュー
Huawei担当者が語るデータ通信端末戦略
[2009/04/23]



キーパーソンインタビュー
UQ WiMAXに聞く、WiMAXがもたらすインパクト
[2009/02/26]



キーパーソンインタビュー
マイクロソフト越川氏に「Windows Phone」戦略を聞く
[2009/02/25]



キーパーソンインタビュー
オープンOSとフルタッチの台頭――ドコモ辻村氏が語る今後のケータイ
[2009/02/19]



キーパーソンインタビュー
イー・モバイル 阿部副社長が語る2009年の目標
[2009/01/13]



気になる携帯関連技術
技術とコンテンツの融合を目指すプライムワークス
[2009/02/13]



気になる携帯関連技術
UIに新たな可能性をもたらす音声認識
[2009/01/16]



【キーパーソン・インタビュー】
請負から提案へ、東芝の目指すモバイルインターネットの世界
[2009/06/09]



【キーパーソン・インタビュー】
KDDI高橋誠氏に聞く、夏モデルから始まるauの反転攻勢
[2009/05/27]


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「N703iD」担当者インタビュー
“変わらないデザインの難しさ”とは

 NECとアートディレクターの佐藤可士和氏が協力して作り上げたFOMA端末「N703iD」が1月26日に発売された。おサイフケータイに対応するなど多機能化が図られつつも、ボディサイズは約20%縮小したが、その外観は、1年前にリリースされた「N702iD」と変わりないように見える。しかし、モバイルターミナル事業部 商品企画部の有田行男氏と藤村裕子氏は、「長い議論を経て、あえてこの形にした」と語る。


デザイン踏襲の理由とは

N703iD(左)は、N702iD(右)の約80%程度という大きさになった

N703iD(左)は、N702iD(右)の約80%程度という大きさになった
――なぜ「N702iD」のデザインを踏襲したのでしょうか?

有田氏
 まず、新しいNECブランドをいかに作るか、という点が大きなテーマになっていることが挙げられます。N90Xiシリーズに代表される当社のデザインを受け入れてくれるユーザー層がある一方、新しいユーザーの獲得という部分に対して少し弱い面がありました。しかし、先代モデルの「N702iD」は、発売から今も売れ続けており、これまで届かなかったユーザー層をかなり取り込むことができました。これまでにない新しい世代に、当社の新たなメッセージを届けられたのです。

 その「N702iD」の特徴は、四角いボディに黒い帯というものです。この象徴的な部分をいかに次の世代に繋げていくのか。それが「N703iD」の開発スタート時に、議論の焦点になりました。可士和さんとも長く議論を続け、最終的に「四角いボディ・黒い帯」というアイコンを残しながらブラッシュアップさせていくことにしました。


NEC藤村氏(左手前)と、有田氏(右手奥)

NEC藤村氏(左手前)と、有田氏(右手奥)
 これは、デザインする上で非常に難しいテーマです。新商品を作る上で、既存製品にはない新しさをアピールするには外観を変更するのが1つのやり方です。しかし、同じデザインであれば、新しさを象徴するものとしてデザインには頼れません。世の中の商品で、同じデザインを踏襲するというスタイルがあまり見受けられないのは、そのためだと思います。その難しさを踏まえて行くということを、社内に理解してもらうことからスタートしました。

 技術陣もこの考えをよく受け止めてくれました。デザインを活かしながら、ボディサイズの小型化に挑み、N702iDの約80%というサイズに仕上がりました。おサイフケータイや着うたフルに対応しながら、待受時間は700時間に達しました。小型化は、「N703iD」開発で最大の成果だと感じています。

 一見すると、デザインしていないように見えるかもしれませんが、これは困難なデザインであり、そこに可士和さんと取り組みました。最終的に、完成度が高まったと思います。

――「N703iD」は、先代モデルから1年での登場となりましたが……。

有田氏
 1年が短いか長いかというところではあまり悩みませんでした。それよりも、「N702iD」は今も販売されており、「N703iD」の発売と重なる時期がある、という点ですね。そこでどう新しさを出していくか、ということが課題でした。そこで、今回は、おサイフケータイなどの機能を搭載し、サイズもコンパクトにして、新たなボディカラーを採用するということになり、商品として投入できるようになったわけです。

――他の形状が候補になることはなかったのでしょうか?

有田氏
 どこまで形を追い求めるか、という議論になりますが、具体的な形状を出し合っての議論ではなく、方向性という面で議論はありました。変化を求める余り、最初のデザインの良さがそぎ落とされることもありえますが、そこをいかにベストな解に持っていくか。「N702iD」の特徴は、ある程度完成されたアイコンであり、デザインとして良い物作りをしようという結論に落ち着きました。

 海外では、そのような製品作りが比較的多く見られますが、日本ではあまり例がありません。その理由は、日本のユーザーが新製品という点を優先的に捉えているからでしょう。そこで、デザインを変えるというのは、定石と言える手法です。「N703iD」は、先代モデルのマイナーチェンジに見えるかもしれませんが、実際は新たな回路も設計しなおしていますし、多機能化を図るなど、中身はフルモデルチェンジなのです。

――同じように見える、ということで不安に思いませんか?

有田氏
 当初、そういう不安がある中で社内での意識を統一してきました。実際に開発が進むと、プロモーションのプランも作られていき、「N702iD」とは全く異なる新しさが出せると思いました。


同時に発表されたN703iμ

同時に発表されたN703iμ
――同時に「N703iμ」が発表されました。薄型端末は、携帯電話の1つの根強いトレンドになっていますが、「N702iD」の薄型化という考えはありませんでしたか?

有田氏
 四角いボディという形状は、作り上げるのが非常に難しいデザインです。四角いボディの中には、余分な空間が出てきてしまい、実装効率はあまりよくありません。しかし、可士和さんとのコラボレーションでは、「N702iD」のアイコンを活かすデザインとしては、このサイズがベストだと考えました。確かに、薄型化という流れはありますが、それは「N703iμ」で行ない、「N703iD」でコンパクトという異なる路線をNECとして打ちだすべきと判断しました。


内蔵コンテンツにも注力

藤村氏
 「N703iD」では、閉じるたびに背面液晶上で時刻や日付をアニメーションで表示したりしますし、メインディスプレイでは待受Flashが開けるたびにランダムでアニメーション再生されたりします。不在着信などがあると、「N702iD」の背面液晶には、日本語表記で表示されていましたが、「N703iD」では英字表記にして、外観のイメージと統一しています。

 また、「N702iD」ユーザー対象の調査結果では、プリセットのコンテンツを利用し続ける方は、他の機種と比べて、約3倍ほど多いという傾向がありました。これは、プリセットコンテンツが端末デザインにマッチしたものとして評価されたと思っています。


外観にあわせたコンテンツがプリセットされる
外観にあわせたコンテンツがプリセットされる

有田氏
 N702iDでは、静止画の待受コンテンツでしたが、N703iDはFlash対応で、さらに魅力を感じてもらえると思います。ちなみに瀧本幹也氏という写真家の画像コンテンツも入れています。彼の作品は、自然の写真を絵画のように見せることが特徴です。また、「N703iD」は着うたフル対応ということで、ジャズシンガーのakikoが歌う着うたフルがプリセットされています。この曲は、「N703iD」のために書き下ろされたもので、レコーディングを経て収録されたものです。ここまでこだわる機種は、他にないのではないか、と思います。

藤村氏
 機能面を見ると、VGA液晶やGPSの有無、カメラスペックといった点で異なったり、メガiアプリやきせかえツールもサポートしていませんが、N903iとほぼ同等です。予測変換やデコメ絵文字に対応していますし、新バージョンのFeliCaチップを搭載しているのでICカードロックも利用できます。特に音楽再生機能に注力していて、側面に「音楽再生キー」を搭載したほか、再生画面のスキンも変更できるようにしました。すぐに楽しんでもらえるように、着うたフル専用領域として、64MBのメモリを内蔵しています。


ヒンジ部にも手が加えられた

ヒンジ部にも手が加えられた
――ヒンジ部の形状が「N702iD」と異なったものになりました。

有田氏
 そもそも、クレジットカードが「N702iD」の最初のコンセプトでしたが、当時N702iDのサイズでは、FeliCa関連機能の搭載という点が実現できませんでした。また、「よりシンプルに見せるため、ブロックのような形にする」ということも完全には実現できませんでした。当時はできなかったことが、今回「N703iD」では、ヒンジを変えたことで、2つのブロックが重なっているイメージをより強く印象づけられるようになりました。

――フォトライトはあると便利だと思うのですが、今回は搭載していませんね。

藤村氏
 その点はかなり議論しました。「N703iD」では、デザイン性と利便性を考えた結果、フォトライトを搭載しないことにしました。これは、「N702iD」よりも高感度なカメラセンサーを採用したことで、暗がりでの撮影では同等の機能が実現できたこと、そして手元の灯りとしてはメイン液晶のバックライトが代替になると判断したためです。

――700時間という待受時間は、どうやって実現できたのでしょう?

有田氏
 今回はNECエレクトロニクスが開発した「M1」というチップセットを採用しています。実装面積が小さく、省電力に注力したチップで、これが一番大きな要素ですね。


プリセットコンテンツだけでCM映像

「変わらないこと」は困難なテーマだったと語る有田氏と藤村氏

「変わらないこと」は困難なテーマだったと語る有田氏と藤村氏
――ボディカラーは、YELLOW、WHITE、NAVY、PINKの4色ですが、携帯電話としては珍しいカラーですね。

有田氏
 色でも新しさを見せていきたいと考えていました。「N702iD」では、赤・黒・白・シルバーという4色でしたが、白はトレンドとして外せないところです。また黒とシルバーという落ち着いたカラーは、今回NAVY1色に置き換えました。目を惹くカラーとして、前回の赤と入れ替わりに、YELLOWとPINKを採用したことになります。

 このうち、YELLOWは鮮やかな色味となりましたが、これまでに同様のカラーを採用した製品はあまりありません。これは、需要そのものが少なかったこと、そして技術的にここまでの鮮やかさは実現しづらかったためでしょう。

 しかし、こういったカラーを求める層は広がっていますし、技術的な面でも解決しましたので、「N703iD」で採用することにしました。YELLOWを選択するような、“格好良く携帯電話を持ちたい”という方は必ずいらっしゃると思います。

――なるほど。

有田氏
 裾野を広げる、メジャーにするというのは「N703iD」のテーマでもあります。今後のプロモーションでは、4色並べたポスターや広告を展開していく予定です。発売後の2月中旬には、渋谷駅前をジャックする形での告知を行ないます。

藤村氏
 駅前の大型街頭ビジョンで、「N703iD」のプロモーション映像を放映するのですが、その映像を構成するグラフィックや音楽といった要素は、全て「N703iD」のプリセットコンテンツと同じものです。高いクオリティの映像に仕上がっていると自負しているのですが、そんな映像を作り出せるコンテンツを内包する「N703iD」もまた、完成度が高い端末だと思います。

――ありがとうございました。



URL
  製品情報(NEC)
  http://www.n-keitai2.com/pickup/n703id/

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(関口 聖)
2007/01/26 16:28

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