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「W41SH」開発者インタビュー
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au初号機ではシャープらしさを追求
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W41SH
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これまでNTTドコモ、ボーダフォン、ウィルコムの3社に対して端末を供給してきたシャープだが、いよいよauユーザーも同社の端末を利用できるようになる。国内シェアでトップを争うメーカーが作り上げた「W41SH」のコンセプトについて、企画担当者であるシャープ 通信システム事業本部パーソナル通信第四事業部 商品企画部主事の中田尋経氏に聞いた。
■ auユーザーにシャープらしさを届けたい
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シャープ中田氏
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W41SHではシャープらしさを追求したという
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――シャープ初のau端末、ということで「いよいよ登場」と期待する声があります。
W41SHを開発していくにあたって、KDDIさんとの会話のなかで、「エンドユーザーやショップから『シャープの携帯電話がないのか』という声があった」ということがわかりました。シャープからすれば、事業拡大という面もありますが、我々の携帯電話をできるだけ幅広く使っていただきたいと考えてしました。auユーザーに届けたいという思いがあったわけです。
W41SHが8月28日に発表された後、「もっとハイスペックなものを期待していた」という反響がありました。開発時には、そういった選択肢ももちろんありましたが、ワンセグやFeliCaといった機能は、搭載すべき理由、裏付ける意味がなければ、浮いた存在になってしまいます。そういった製品は、ポジションを固めてから、きっちりと構想を固めた上で取り組んでいくことになるでしょう。
我々はスペック感だけではなく、見やすいディスプレイや使いやすさ、デザインに対するチャレンジなどのシャープらしさ、シャープのDNAを盛り込んだ形で、より幅広い層に向けた製品を作ることにしました。もちろん、今後もau向け端末のラインナップを展開していきますが、まず一号機として、広くシャープのメッセージを伝えたいという考え方に基づいてコンセプトを作り上げたというわけです。
サイズ的にも、機能面だけではなく、サイズ感としても、使いやすく扱いやすい、持ちやすいという形にしています。
――夏モデルではなく、MNPに向けた秋冬モデルとして登場した形になりますが、ドコモやボーダフォンからauへ乗り換える人にはピッタリと言えるタイミングです。
この時期にリリースすることになったのは偶然です。MNPに向けて、というわけではありません。企画担当としては、純粋に「auユーザーにシャープの携帯電話を提供したい」という考えで進めてきました。MNPは携帯電話業界にとって大きなイベントですが、「W41SHをドコモやボーダフォンのユーザーさんに向けて開発した」というわけではないのです。
――au端末のプラットフォームは、他キャリアと異なるわけですが、どのような苦労があったのでしょうか。
たとえばメール機能の場合、ケータイShoinを搭載し、アドレス帳のインクリメンタルサーチ(1文字入力するたびに自動検索する機能)ができたりするなど、既に好評を得ている機能を、au向け端末でも実現させるには、それなりの苦労がありました。
――auでは、メールやアドレス帳といった部分を共通化する形を採用していますが、シャープが初めてau端末を開発していく中で、KDDIが進めるプラットフォームの共通化という流れはどう影響したのでしょうか。
確かにau端末では、一部機能がパッケージで提供されるような形になっていますが、「それをくっつけて終わり」という単純なものではありません。各アプリケーションを繋げるAPIのような部分ではかなり苦労しました。我々としては、ゼロから作り上げたという形ですね。共通化という流れは、au端末の開発経験がある他社さんからすれば、こなれたものかもしれませんが、途中から入った我々にとっては本当に初めてのことばかりですので、開発陣にとっては厳しかったと思います。
■ シャープらしい機能とは
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メインディスプレイは、約2.6インチ、240×400ドットのワイドQVGA
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覗き見を防止できるベールビュー機能を搭載
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――W41SHの特徴は、どういった点になるのでしょうか。
W41SHでは、「auユーザーはどういう携帯電話を求めているのか」という検討から始めました。他キャリアと比べた場合、auの特徴はサービスやエンターテイメント性が大きく前面に出ており、「このサービスがあるから、auを使ってみたい」というニーズがありました。そこで“生活に密着させ、いつも使いたいと思ってもらえる携帯電話”を追求することにしました。最初にボディサイズについて、シャープユーザーの場合、男女比がほぼ半々ですので、性別を問わずに利用されるサイズを目指しました。利用頻度が高い機能はメールですので、一日中メールしていても疲れないサイズ、形を大前提にすることにしました。
そのボディにシャープ独自の機能を実現すべく、まず2.6インチ液晶ディスプレイの搭載を決めました。さらに、ベールビュー機能もサポートすることにしました。
サブディスプレイについても、現在は1行表示あるいは2行表示といったコンパクトなサイズが主流ですが、「本当にそれが使いやすいのか」と検討すると、大きい方が良いという声がありましたので、メインだけではなくサブディスプレイにもモバイルASV液晶を採用しています。大きなサブディスプレイならではの機能として、端末を閉じたまま操作できる機能も用意しています。
たとえば、受信したメールをサブディスプレイで読めるだけではなく、シンプルな定型文の返信メールが作成・送信できます。サブディスプレイだけでメール、という機能は、周囲に気づかれないようにこっそりとメールしたい時にも、さりげなく利用していただけるのではないでしょうか。
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受信メールをサブディスプレイで閲覧
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定型文で返信することもできる
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――外部メモリカードはminiSDカード対応となっています。
microSDカード対応機種が増えていますが、現状は、miniSDカードからmicroSDカードへの過渡期だと思います。いずれmicroSDカードにシフトしていくと見ていますが、現時点では、これまでの資産を利用できるという点がメリットになるのではないでしょうか。
また、miniSDカード対応ですが、SD-Audioは利用できません。当社の携帯電話としてはレアなケースですが、そもそもW41SHの企画立案を行なっている時期は、LISMOの発表を控え、音楽再生機能が今後どうなっていくか、不透明な時期でもありましたので、今回はSD-Audioの採用を見送った形になります。
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体験版の電子書籍コンテンツがプリセットされる
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――メニュー関連などでは、どのような特徴が?
メニューアイコンについても一工夫しています。通常、メニューアイコンの配置はメーカーによって異なりますが、W41SHではアイコンの配置をカスタマイズできます。デフォルトでは、画面中央にデータフォルダのアイコンを配していますが、カメラ機能を呼び出すアイコンを中央に置くこともできます。使いやすい環境にアレンジできるというわけです。
一番下にTaskキーを配していますが、メール作成中にアドレスを調べたい、あるいは電卓を使いたい場合、またはBGM再生中の音楽のボリュームを変更したいという場合に押せば、メニューアイコンが表示されます。今の状態をキープしながら、次のアプリケーションを起動できるという、マルチタスクに近い機能をサポートしています。ちなみに、待受時にTaskキーを押すと、電子書籍の「サポートブック」が表示されます。説明書に近い内容の電子書籍ですね。またau端末としては初めて、体験版の電子書籍コンテンツをプリセットしています。
また、カメラ機能では、メールボタンを押すと撮影画像のサイズなどの各種設定が行なえるメニューが表示されます。数字キーの1番~9番にそれぞれの設定が割り当てられていて、カメラ撮影時にショートカットとして呼び出せます。設定した内容は、最大5種類まで登録できます。ブログ用の写真はこの設定で、プリント用写真は別の設定で、という使い分けが可能です。
このほか、新サービスである「EZケータイアレンジ」に対応しています。これはボーダフォン向けの「カスタモ」の技術とは異なるものです。ユーザーが好きな画面設定、テーマとしてまとめて変更できるようにしており、各ボディカラーにあわせたデータをプリセットするほか、当社のEZwebサイト「SH@ez」でもアレンジ用データを配布していきます。
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カメラ機能で、設定を手軽に変更できる「カンタン設定」
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撮影画像サイズやホワイトバランスなどの設定は最大5つまで保存可能。写真の使い道によって、設定をすぐ変更して撮影できる
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■ ファブリック調のボディ
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ファブリック調の加工が施されている
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W41SHのボディには、ファブリック調の表面加工を施しています。今までにない仕上げであることから、社内でも冒険と言われることもありましたね。この素材感、高級感を出すためにエッチング技術を用いています。いくつも試作を繰り返して、汚れが溜まりにくく手に馴染むもの、それでいて布のような滑らかさを追い求めました。ブランド物のバッグの横にあってもマッチするデザインになっていると思います。
――デザインを一目見たとき、「オトナのケータイ」を狙ったのか、という印象を持ちました。これまでのauのラインナップにはあまりない仕上がりです。
ターゲットとしては、男女ともに20代のハイセンスな方というイメージですが、「大人の女性が使うにふさわしいケータイ」という考え方は最初からありました。カラーの打ち出し方を含めて、auは全体的に若年層寄りという面はあると思いますが、シャープでは違いを出すということに加えて、落ち着いた雰囲気を演出することは意識していましたね。
デザインのモチーフは、女性が持つようなバッグの布地、そして金属感です。両方の調和がとれるようにして、光の当たる角度が変わったときの輝き方など、大人の女性というターゲットを念頭に置いていた部分はありますね。
――ありがとうございました。
■ URL
シャープ au向けラインナップ案内ページ
http://k-tai.sharp.co.jp/lineup/a/
■ 関連記事
・ シャープ初のau端末「W41SH」
(湯野 康隆, 関口 聖)
2006/09/27 14:46
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