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N902iS開発者インタビュー
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メール・カメラの進化を目指したハイエンドモデル
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N902iS
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「N902iS」は、新たに6軸方向の手ぶれ補正を搭載するほか、日本語入力時には予測変換機能がサポートされるなど、機能強化が図られている。それらの機能が搭載されることになった経緯をNEC モバイルターミナル事業本部 商品企画部の杉原光明氏に聞いた。
■ 6軸手ぶれ補正のカメラ機能
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N902iSの撮影画面
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NEC杉原氏
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――6軸手ぶれ補正とはどういった機能なのでしょうか。
杉原氏
手ぶれ補正そのものは、N902iから搭載していましたが、これまでは縦と横に対しての手ぶれを補正するものでした。今回、N902iSでは、さらに奥行きとねじれという軸に対しても手ぶれを補正するようにしています。携帯電話でカメラ撮影する際、やはり手ぶれは発生しやすいでしょう。より簡単・きれいに携帯のカメラ機能ならではの楽しみを提供したいと考え、手ぶれ補正を強化することになりました。
技術そのものは、N902iと同じで、4枚の静止画を高速で連続撮影することで、ズレ幅を検出して、補正しています。奥行きのズレを捉えるというのは、被写体の大きさを見て、その差分を計算しているということになります。特に夜景撮影など、光量が限られた場所での撮影では効果が期待できるでしょう。もちろんあまりにも暗すぎるところでは、難しい部分もありますが、手で持って撮影するというシーンでは手ぶれ補正が機能すると思います。
カメラ機能に関連する部分として、N902iSでは端末を閉じたまま撮影することができるようになっています。キー側ボディの底面にカメラが配されることになったため、より手軽に撮影できることを目指しました。また、新たに「PictMagicII」という補正技術も搭載しています。たとえば、撮影モードを「ポートレート」にしている場合、顔写真を撮影すると、顔の位置を検出して、肌が美しく見えるように色補正したり、露出の補正を行なったりします。
撮影したものを見る、という観点から、液晶ディスプレイの機能も強化しています。コントラスト比はN902iでは1:650でしたが、N902iSでは1:1000にしています。また輝度は430カンデラで、よりきれいに見える液晶に進化させた形になります。
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カメラは、キー側ボディの背面に
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ピスタッシュグリーンにプリントされているのは、象のシルエット
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――カメラの場所はこれまで液晶ディスプレイ側ボディの背面でしたが、今回はキー側ボディの背面です。場所を変えた理由は?
杉原氏
カメラの位置は、バランスを考えた結果です。N902iSの重さは約114gで、N902iよりも約13g軽くなっていますが、カメラの場所を変えることで、より一層軽く感じられるようにしています。これは、カメラがディスプレイ側ボディにあると、トップヘビーな印象を与えてしまうかもしれませんので、メールでの文字入力などを考えて持った時のバランスを考慮して、カメラ位置を変えたということになります。軽量化したことを含め、「軽くなった」という感覚を大きく感じていただけるのではないでしょうか。
ちなみに、全体のデザインとしては、当社では「リンクフェイスデザイン」と呼んでいるのですが、フラットなデザインを採用しました。これは横の繋がり、面の繋がりを重要視したデザインを追求した結果と言えます。カメラ周辺はやや出っ張っていますが、全体として薄型化も追求しており、ホールド感などは満足していただるような形にしています。
デザインという面では、ピスタッシュグリーンは少しユニークな形に仕上げています。遠目に見ると、まだら模様のようですが、実は象を模したシルエットをプリントしています。象は、その外観からわかりやすいキャラクターですし、ファッショントレンドの候補としてグリーンがあって、そこからサファリをイメージしてみました。親しみやすいキャラクターとして象を採用し、ニューロポインターの画像も象にしています。グリーンは先端層に向けたデザインで、「やるならばとことん遊び心を入れよう」という姿勢で取り組みました。
N902iSの外観デザインの根底には、これは携帯が高機能化してきた中で、シンプルにスマートに見せたいという思いがありますね。
■ 文字入力も機能強化
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5タッチ入力時に予測変換
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3Dお知らせ
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――文字入力でのバランス、というお話がありましたが、メール関連での機能はどうなっているのでしょう?
杉原氏
これまでなかなか手を付けていなかった部分を強化しています。1つは文字入力時に予測変換機能を搭載したことです。他社の携帯電話では既に実現されているところではありますが、Mogic Engineという名称もつけて、5タッチ(従来のかな入力)入力で先読み・繋がり予測を実現しています。
T9についても、日本語入力時だけではなく、英語入力時にも機能するようになりました。たとえば「CUP」と入力する場合は、数字キーの「2」「8」「7」を1回ずつ押していただくだけで変換候補から選んでいただけます。
――これまでもNEC製の携帯電話にはT9方式がサポートされてきましたが、実際の利用動向はどう捉えていますか?
杉原氏
T9に親しんでいただいている方は、着実に増えているところでしょうが、全体としては5タッチ入力のほうが多いと見ています。やはり他機種からの乗り換えなど、5タッチに慣れている方がもともと多いという環境ですから。
――ドコモのメール、と言えばデコメールも特徴の1つですが、このあたりの操作は従来通りですか?
杉原氏
はい、N902iと同じように一発で変換する「おまかせ」機能も用意しています。今回、メール関連・文字入力関連は、根幹の部分に注力して、日本語入力機能の底上げを行ないました。予測変換機能のほかに、「モードレス入力」と呼ぶ機能もその1つでしょうか。たとえば連続で「1」「1」「3」「0」と入力した場合、画面には「いさわ」といった予測変換の候補が表示されます。さらに左ソフトキーにあたる部分には「英数」という表示もあります。ここで左ソフトキーを押すと、「1130」という数字を元に「11:30」あるいは「11/30」という表記を変換候補として出してくるのです。
――通常の予測変換候補として表示しても良い気がしますが?
杉原氏
実際の文字入力時では、「今入力されているのは数字か? それとも漢字か?」というのは、見極めにくいところです。「英数」というボタンを用意することで、ワンタッチで候補が出てくるほうが良いのではないかと考えました。そうすることで、漢字などの候補と切り分けて整理できるというわけです。
N902iSにおけるメール関連の特徴としては、「3Dお知らせ」も挙げられますね。メールが届くと、待受画面上に新着メールを示すアイコンが表示されるのですが、そこにニューロポインターを持っていくと、メールの内容がアニメーションとともに表示されるのです。
似たような機能として、902iSシリーズでは「着もじ」がサポートされていますが、N902iSではそれをアニメーション表示する「3D着もじ」となっています。どちらの機能も「受け取った時の嬉しさを表現したい」と考えて用意した機能です。
■ カメラ活用の生体認証、iアプリ
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独自技術による顔認証機能をサポート
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――902iSシリーズでは生体認証がサポートされていますが、N902iSでは顔認証ですね。
杉原氏
もともとNECでは、顔認証を用いる入退場システムを提供しており、既に香港の空港や東京電機大学で採用されています。これらのシステムで用いられている顔認証エンジン「NeoFace」の機能はそのままに、携帯電話用に小型化したものがN902iSには搭載されています。これは独自開発している技術ということになります。
――カメラ機能でポートレート撮影する場合に、顔部分を検出する「PictMagicII」の話がありました。
杉原氏
認証はNeoFace、ポートレート撮影はPictMagicIIと、それぞれ別の技術です。実際に利用してみると、その違いがよくわかるのですが、たとえば認証する場合は「撮影する」というよりも、「カメラに顔を見せる」という行為だけなのです。シャッターを切る、ボタンを押すという行為は必要ありません。認証にかかる時間は1秒以内で、撮影する手間がいらないというのも顔認証を行なう上でのポイントと思います。NeoFace自体の認証率は99%です。
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セキュリティに対する考え方は難しいと語る杉原氏
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――生体認証については、セキュリティを高める手段、あるいはよりスムーズに解除するための手段という考え方がありますね。
杉原氏
そういう意味では、N902iSでの顔認証はセキュリティ向上を目指したものということになります。顔認証時に暗証番号の入力も求めるというのは、そういった考えに基づいているためです。
セキュリティに対する考え方、バランスの取り方は非常に難しいところですね。面倒くさいと利用されませんし、シンプルな使い勝手だとセキュアさに欠けてしまう可能性があります。N902iSで生体認証をサポートするにはあたっては、初めてということもあって、「安心感」にフォーカスすべきと考えました。その中でも手軽に利用していただけるように、カメラを覗き込むだけで認証されるようにしました。顔認証だけ、という方法も考えられますが、それは今後、ユーザーからの声を踏まえて検討していきたいと思います。
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商品を撮影するだけで情報を得られる「カメラdeケンサク!ERサーチ」
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――カメラを使う機能としては、「カメラdeケンサク!ERサーチ」というiアプリが搭載されます。
杉原氏
商品を撮影すると、その商品に関する情報を参照できるというアプリになります。特徴的なポイントを抽出してサーバーに送信し、データベース上で合致する項目を見つけて参照する、という流れです。特徴点の抽出は、iアプリではなくネイティブアプリとして動作していますが、エンジンそのものはバンダイネットワークスさんから提供されていますので、他社の携帯電話でも対応できます。我々としては、結果的にエンドユーザーの利便性を高めることを目指していますので、普及するためにも他のメーカーに対応していただきたいところです。
たとえばQRコードですと、あらかじめ商品側に印刷しておく必要がありますが、「ERサーチ」では、既に発売されている商品に対しても、後からキャンペーンなどを展開できますね。クーポンなどに向いているのではないでしょうか。
――ありがとうございました。
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■ URL
N902iS製品情報(NEC)
http://www.n-keitai.com/n902is/opn.html
(関口 聖)
2006/06/14 13:27
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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