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2002年
SO902i開発者インタビュー
「FOMA STICK」に込められた思いとは

SO902i
 ソニー・エリクソン初のFOMA端末「SO902i」が21日に発売される。発表から5カ月余りが過ぎ、待ち望んでいた人も少なくない端末だが、開発陣はどのような思いでSO902iを作り上げたのか。

 商品企画担当の松浦 可奈氏、機構設計担当の早崎 陽介氏、ユーザーインターフェイス担当の津田 崇基氏、マーケティング担当の山田 浩史氏に話を聞いた。


preminiのDNAを継承

商品企画担当の松浦氏

左からpremini、premini-II、premini-IIS、SO902i
――SO902iではコンパクトなボディ形状が採用されていますね。

松浦氏
 当社では、PDC端末としてpreminiシリーズを提供してきましたが、これは小型化と質感の両立を追求したモデル群です。初代preminiはiモード端末の中で最小、premini-IIはメガピクセルカメラ搭載端末として最小といったように、機能性と質感を併せ持ちながら、コンパクトさを追求してきました。

 今回、「最小」という価値をFOMAへシフトアップしました。多機能なFOMAという点を上質さ、コンパクトさを持ったボディで包むという、preminiのDNAを引き継いだFOMA端末が「SO902i」になります。ボディサイズはpremini-IIとほぼ同等で、300万画素カメラ、400カンデラの液晶ディスプレイ、おサイフケータイなど多機能ながらコンパクトを追求したモデルですね。

――preminiがあったからこそ、SO902iはコンパクトボディになったと?

松浦氏
 当社がFOMA端末の開発に取り組む際、シナリオを考えてきましたが、preminiシリーズはいわば「SO902iへの道」と言えます。着々と種を育ててきたわけです。最初の企画段階から、「preminiのFOMA版」というイメージでした。

 preminiシリーズでは、シンプルなコンパクトさを追求したり、多機能モデルだったりしましたが、今回のSO902iでは、情報感度が高い一方で機能一辺倒ではなく、デザインへの関心度が高い方をメインユーザーとして捉えています。ビジネス層、トレンドに敏感な女性層といったところでしょうか。これまでpreminiシリーズを利用していただいた方はもちろん、コンパクトで高いデザイン性を求める方にはぴったりでしょう。

――ソニー・エリクソン初のFOMAが90Xiシリーズ、というのは当然のことのように思えますが、あらためてその理由を教えてください。

松浦氏
 やはりソニー・エリクソンのFOMA1号機として戦略を練った結果、フラッグシップモデルでいこうと思いました。フラッグシップモデルはユーザーさんの期待に繋がるところですし、上位モデルから入っていくことで、きちんと高みを目指して、ノウハウを構築していくということになります。


裏がないデザイン、操作性も重視

SO902iではウェーブデザインキーを採用
――SO902iのデザインコンセプトを教えてください。

松浦氏
 SO902iは、ディスプレイがある面が携帯電話、反対側はカメラ風のデザインに仕上げています。裏がないデザインで、両方とも製品の顔になっていると言えるでしょう。小型軽量ボディですので、首から下げて持ち歩くことができますし、その場合、どちらの面が見えても顔になっているというわけです。これまでのスティック型端末でも同じような考え方ですが、SO902iでは、携帯電話とカメラ、という二面性、デザイン性を重視しました。

 コンパクトなボディながら、操作性も重要ですので、今回はウェーブデザインキーを採用しました。小型化を目指すと、液晶ディスプレイのサイズは一定のところを保ちながら……という形でキー部分にしわ寄せが来てしまいがちですが、操作性は犠牲にできないため、キー部分はモデルごとに毎回工夫しているところです。

 たとえば、初代preminiではキー部分が山なり形状のスロープキーを採用しましたし、premini-IIでは棒状のキー形状で指の頂点を当てて操作するスレンダーキーを採用しました。premini-IISではキー面積を確保しつつ、指の頂点を当てて操作する形状でした。これらのpreminiシリーズでは、実際は操作しやすいのですが、キー面積が少ないことから「押しにくい」という印象で捉えられることもありました。そこで面積を広げて安心感を持たせながら、調整を行ない、見た目も操作感も安心していただけるデザインを求めました。SO902iで採用した、波打った形状のウェーブデザインは、preminiシリーズから更に進化したものになります。

早崎氏
 ウェーブデザインキーのデザインは、キー面積をできる限り大きくして、「操作しやすいボタン」という印象を与えられる、つまり見た目の安心感を確保して、使いやすさも追求することが狙いでした。また、SO902iとpremini-IIは同じキーピッチ(間隔)で並んでいます。このキーピッチより縮めてしまうと、初代preminiのようなキー形状にしなければコンパクトボディを実現できませんでしたし、キートップへの印字などの制限もあって、かなり悩んだ部分でもあります。

 数字キー横のボディ部分もキーと同じように波を打った形にしています。もし、真っ直ぐにしたままであれば、設計上ははるかに楽なんですが、ボタンキーだけが強調され、一体感のないデザインになってしまいますし、premini-IISからの変化に乏しくため、避けたいところでした。

松浦氏
 キーのみならず、キー横の部分までウェーブしていることによって、見た目の安心感に繋がるところもありますし、指をきちんとキーに導いてくれるという効果もありますね。

早崎氏
 preminiシリーズと比べた場合、これまで発話・終話キーはボディの側面に寄った形でしたが、SO902iでは発話・終話キーとクリアキーが数字キーの上に来ており、縦4列から縦5列へと、もう1列増えた格好になっています。

津田氏
 発話・終話ボタンの位置変更は、外観デザインという側面もありますが、ユーザーインターフェイスからすると、画面上にソフトキーが4つ案内されますので、よりわかりやすいボタン配置にする必要があったからですね。


3色のラインナップ
――SO902iでは3色のカラー展開となりました。

松浦氏
 デザインとしては、側面はV字をイメージした形にカットして、すっきりしたシルエットに仕上げました。カラーは「ダークブルー×ブラウン」「レッド×レッド」「ホワイト×ホワイト」という名称が示す通り、ツートーンとなっています。「ダークブルー×ブラウン」は、メリハリが効いたカラーです。ダークブルーは、一見したところブラックに近い色合いですが、実は非常に深い濃紺で、ブラウンも一見シルバーに見えますが、ニュアンスのある色味です。ブラック×シルバーという組み合わせよりも表情やニュアンスが出て、エレガントさをイメージしました。

 ホワイトとレッドは、微妙な色合いでのツートーンとなっています。ホワイトは一方にガラスフレークを入れて、少しきらきらさせて、立体感を演出しています。またレッドは、一方の色が朱色に近いテイストになっています。


コンパクトながら高機能を

――SO902iの形状を実現するにあたって、工夫したポイントというと?

早崎氏
 PDC端末では、既にpremini-IIがあって、小型化と機能のバランスが実現されていましたから、SO902iの機構設計は結構なプレッシャーがありましたね。より小さく、より軽くという点をモットーにしてきましたが、たとえばアンテナなどを担当するチームとは作戦会議の毎日、といった感じでした。

 premini-IIでは端末上部、頭の部分にアンテナを配置していますが、SO902iでは多機能化を実現することになりますので、さまざまなデバイスが入ってきます。そうするとなかなか全長が短くなりません。そこでSO902iのアンテナは、ちょっとだけ面積を広くして、後ろにセットバックし、基板で覆うような形にしました。基板の反対側には液晶やカメラ、無線部といったデバイスを入れていますので、基板を挟んでアンテナと各種デバイスがあるというイメージですね。


premini-IIでは背面にあったスピーカーだが、SO902iでの背面はすっきりとしている

機構設計担当の早崎氏
 その結果産み出された点の1つがスピーカーをトップに持ってくることでした。たとえばpremini-IIではカメラがある背面にスピーカーを配置しましたが、やはりデザインからすれば目立ってしまいます。SO902iでは、レイアウト設計においてスピーカーを上部に持ってくることで、コンパクトさを実現しながら、音の聞こえやすさも両立できるよう処理しています。

 また赤外線通信ポートも大変だった部分の1つです。通常はフラットな形になると思いますが、SO902iでは立体的なパーツを採用しました。もちろん光学的な解析と検証は行なっていますので、赤外線はフルに機能します。これらの工夫は、やはりpreminiシリーズのサイズ感に負けたくなかったという一心によるものです。あのインパクトをFOMAで与えたいと考え、最適なレイアウトを考え続けた結果でした。

――コンパクトを追求する、という点では、300万画素カメラをあきらめるという考え方もあると思うのですが。

松浦氏
 さまざまな調査結果から、高画素というニーズは非常に高いと捉えています。実際にはカメラ機能を重視していなくても、店頭で200万画素カメラ搭載モデルと、300万画素搭載モデルが並んでいて、価格差がないのであれば、やはり高画素モデルが選ばれるという心理があるようですね。

 SO902iでの300万画素カメラ(有効画素数318万画素、記録画素数315万画素)は、90Xiシリーズとしての高機能を象徴するものです。画質も拘ったところで、肌色と青色は、被写体としてよく撮られる色ですので、デジタルカメラに近いレベルにあると自負しています。

早崎氏
 CMOSセンサーもそれなりのサイズのものを搭載しています。スペックが300万画素と聞いたときは、ボディ全体の小型化に対して影響があると考えましたが、外観デザインとしてカメラの顔を持つ以上、中途半端なスペックでは面白くありません。しかし機構部品のレイアウトでは非常に苦労しました。


多機能だからこそシンプルなUI

ユーザーインターフェイス担当の津田氏
――カメラ機能のユーザーインターフェイス(UI)はずいぶんデジタルカメラに近い印象です。

津田氏
 ユーザーインターフェイスの構築にあたっては、「優れたカメラ」、「美しい液晶」という2点に加えて、端末に備わっているさまざまな機能を「スマートに使える」ということを考慮してきました。まずカメラについてはデジカメ風の操作スタイルを徹底的に追求しました。たとえば、カメラ起動時にメールキーを押すとサブメニューが表示されますが、画面上ではメニューを表示すると同時にカメラが捉えている映像を映し出しており、EV値やホワイトバランスの設定を選びながら、同時にカメラの映像をプレビューできるようになっています。つまり、撮影前にどのような画像になるか、わかるようにしているのです。メニューの後ろを透過表示させるというのは、開発時に社内でも議論した点ですが、どうしても実現させたかった点ですね。

 また、多機能だからといって操作性を犠牲にできませんから、タブ表示でのメニュー体系を採用しました。どういった機能が存在するのか、この機能では何ができるのか、現在の設定値はどのようになっているのか、一覧性を確保したタブ表示メニューを実現しています。

 デジタルカメラと携帯電話のユーザーインターフェイスは多くの部分で異なっていますが、より良いところがあれば取り入れるという考え方をとっています。今回、携帯電話のカメラ機能としては、かなりオリジナルなものを目指してきました。


SO902iのカメラ画面 EV値やホワイトバランスを変更すると、その場で確認できる

メインメニューは拡大表示・縮小表示が可能だ
――では携帯としてのユーザーインターフェイスはいかがでしょう?

津田氏
 基本的に当社のムーバ端末のインターフェイスを踏襲しながら、さらに高いクオリティを目指しました。これは、先に挙げた「美しい液晶」という点を踏まえた部分と言えるものです。たとえば、非常に細かな点ですが、各画面のタイトルを表示する部分の背景色はグラデーションをかけています。グラデーションにすることは、機能性そのものには関わりがないところでありますが、これまでは均一で少しベタっとした印象だったムーバ端末のユーザーインターフェイスと比べると、その違い、良さが伝わるでしょう。

山田氏
 ユーザーインターフェイスは、使っていくほど味がわかるという面もあります。機能に直接の関わりがなくとも、当社製品のユーザーインターフェイスのほうが使いやすい、心地よいという印象を持っていただければ、いわゆるマインドシェアが高められます。

松浦氏
 SO902iはpreminiのDNAを継承する、というコンセプトですが、preminiという名称にはコンパクトさと同時にプレミアム感を意味があります。そのため、高いクオリティを無意識に感じていただけるような工夫が必要なのです。


メインメニュー。上部に起動中の各メニューアイコン。画面下部の背後には、直前まで使っていた文字入力の変換候補が透けて見える

メール作成中でもキーロックできる
津田氏
 メインメニューにはいくつか要素があるのですが、基本は「多機能でも、どこに何があるか、わかりにくいのはダメだ」ということです。FOMAではマルチタスクをサポートするため、その操作性が重要なのですが、SO902iでは、マルチタスク利用時に「専用ボタンで専用メニューの表示」を行なわない道を選びました。つまり、メニューボタン1つでマルチタスクを無意識に利用できるようにして、同じメニューへ同じ入口からアクセスできるほうが良いと考えたのです。

 もしメインメニューのキーと、マルチタスク用のキーが2つあると、ユーザーさんは「○○しよう」、あるいは「さっきまで使っていた○○機能に戻ろう」と考えてからボタンを押すことになります。SO902iでは、そうではなく、「とりあえずメニューボタンを押してから○○する」という形ですね。操作の前に思考するのではなく、操作してから考えるインターフェイスをしたのです。

 また、メールを作成していて、その途中でスケジュールを確認するという使い方でも、直前まで何をしてきたか、気にせず使ってもらえることを目指しました。そこで一番拘ったのは、背景を透過させて、直前に表示していた画面を後ろに表示させるという部分です。メールを作成していて別の機能を呼び出すと、その背景にうっすらとメール作成中の画面が表示されます。透過させることで、「メニューを立ち上げたけど、さっきのメールは消えたかな?」という不安がなくなると思います。

松浦氏
 まず、タスクとメニューを切り替える手間をユーザーさんにかけたくありませんでした。背景を透過させることは、それまでの操作が消えていないということを示すと同時に、メインメニューが全アプリケーションの中でも、一番上のレイヤーにあることを示しています。どんな機能を使っていても、メニューがすっと上にかぶるイメージですね。

津田氏
 SO902iでは、どんな機能を使うにせよ、まずはメインメニューからはじめようという形です。これはFOMAのマルチタスクの1つの解になるかと考えています。2つのメニュー、2つのキーを用意するのではなく、1つのキーで全て操作できる。これで、どんな状況で押しても後悔しないという絶対的な安心感を提供できるのです。

 また、キーロックについても、工夫したユーザーインターフェイスの1つに挙げたいところです。従来のストレート端末であれば、待受画面に戻らなければキーロックできませんでしたが、SO902iでは、どんな状態でもほとんどの場面でキーロックができます。

松浦氏
 たとえば地図を見ながら、一度キーロックしてカバンに入れて、目的地周辺で再び取り出して地図情報を確認したり、ロックを外して操作したりするという使い方ができるでしょう。これまでのキーロックは、誤動作防止という観点でしたが、SO902iのキーロックは積極的に携帯電話を使うための機能と捉えています。


デコメールは斬新なUI

デコメール作成時に利用できる「クロスデコパレット」
――このほか工夫した点と言えば?

津田氏
 デコメールの入力方式は、オリジナルの「クロスデコパレット」を用意しました。メール作成画面のサブメニューで「指定範囲デコレーション」というメニューからアクセスできる機能ですが、“クロス”という名称が示す通り、縦方向で文字サイズを、横方向で文字色が選択できます。その2つを決定すると、次は右寄せや左寄せといったテキストの配置を選択できます。

松浦氏
 デコメールは送信されてくると嬉しいものですが、自分がデコメールを作る場合は、文字の色を変えて、大きさを変えるといった複数の操作を行なわなければいけません。クロスデコパレットは一度の操作で設定できますので、作るのが楽しくなって、楽しくなれば送りたくなる、という流れになると思っています。

津田氏
 クロスデコパレットは、ウィザードのような流れになっていますが、従来のデコメールと同様の操作方法ももちろん可能となっています。


メジャーデビューだから「FOMA STICK」

マーケティング担当の山田氏
――開発にあたってはpreminiが強く意識されている一方、SO902iは「FOMA STICK」と銘打たれています。preminiという名称を使わなかった理由は?

山田氏
 SO902iは、当社設計陣の技術を結集し、ソニー・エリクソン初のFOMAとして作り上げられたものでえすから、単に「902iシリーズのラインナップの1つ」という考えではなく、「FOMAへのメジャーデビュー」と演出しなければならないと考えたのです。

 もちろんpreminiのFOMA版と表現することも考えましたが、SO902iは、単にpreminiが進化しただけではなく、ソニー・エリクソンやソニーグループのDNAを内包した機種なので、それを表わすには「FOMA STICK」という言葉がわかりやすいと思いました。ユーザーさんに買っていただくときに「FOMA STICKをください」と言っていただければ嬉しいですね。ドコモさんにも理解、応援していただいています。

 発売が遅くなり、ユーザーさんには非常に待っていただく結果になりましたが、その中で皆さんに「ついに登場する」「触ってみたい」と思っていただけるような仕掛けを行なっています。メインターゲット層が情報感度の高い方々ですので、これまで専用Webサイトを立ち上げ、藤原ヒロシさんなどSO902iを応援してくださる方からのメッセージを掲載したりするなど、いろいろな準備をしていました。


SO902iのために作られた「MISSING PIECE」
――SO902iのための書籍も登場しました。

山田氏
 当社のデザインには、「携帯電話だけでは未完成、人が手にすることで初めてデザインが完成する」という思想があります。2月に原宿で開催したイベントはそれを表わすもので、書籍は“デザインBook”として「MISSING PIECE」という名称で、SO902iと一緒に楽しんでいただけるものです。

 書籍の制作にあたっては、たくさんのクリエイターの方々に協力していただきましたが、表現方法として、書籍を選択することはスムーズに決まり、アーティストの皆さんがSO902iに触発されて作られたオリジナルの写真やデザインで構成されています。

松浦氏
 SO902i関連として、お待ちかねのHEAD PORTER製のケースも登場します。収納するだけではなく、ある程度、上から操作できるようなケースも用意されています。HEAD PORTERさんには当社のコンセプトに共感してもらって、さまざまなアイデアをいただいたりすることもありました。

 SO902i関連では、今後も検討しているものがありますので、期待していただきたいですね。

――ありがとうございました。


HEAD PORTER製のケース 収納しながら、ある程度操作できるケースも

 発表から発売まで5カ月あまり。他の902iシリーズと比べ、後発となったSO902iだが、なぜここまで時間がかかったのだろうか。ソニー・エリクソンにあらためて尋ねてみたところ、以下のような回答が得られた。

 「SO902iをこれまで長くお待ちいただき、お客様には本当にご不便をおかけしました。お詫びとともに、ここまで待っていただいたことに対して、本当に感謝の気持ちでおります。SO902iは、当社のFOMA1号機として、入念に開発を行ってきましたが、プラットフォームが変わることによる新規開発部分も多く、調整や検証などに予想を超えて時間がかかりました。21日発売となりましたので、ぜひSO902iを店頭でご覧いただければと思います。」



URL
  ソニー・エリクソン 製品情報
  http://www.sonyericsson.co.jp/product/docomo/so902i/index.html

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(関口 聖)
2006/03/17 11:20

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