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SH902i
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10月19日、「プッシュトーク」など新サービスに対応したFOMA端末「902i」シリーズが発表された。シャープでは、「DOLCE」と同様に、視野角が切り替えられる「VeilViewモバイルASV液晶」を搭載した「SH902i」をドコモに供給、12月9日より発売される予定となっている。
同端末は、新たなプラットフォームにSymbian OSを採用し、AF対応の3メガカメラやフルブラウザを搭載、SD-Audioもサポートするなど盛りだくさんの内容だ。今回、SH902iについて、シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 部長の河内巌氏と副参事の木戸貴之氏に話を聞いた。
■ VeilViewモバイルASV液晶の本命は90Xiシリーズ
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シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 商品企画部 部長の河内巌氏(左)と副参事の木戸貴之氏(右)
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――SH902iのポイントを教えてください。
木戸氏
SH902iは、ご覧いただければわかる通り、SH901iSからずいぶんシェイプアップしました。重さも20g以上ダウン(129g、SH901iSは150g)し、端末のサイズもひとまわり小さくなりました。また、従来のSHシリーズの端末同様、機能的には盛りだくさんですが、今回はデザインやユーザーインターフェイスに注力しました。
とはいっても、一番の売りはやはり液晶ディスプレイです。液晶画面の大きさに変更はありませんが、今回はDOLCEで搭載した「VeilViewモバイルASV液晶」を装備しました。
河内氏
「VeilViewモバイルASV液晶」の視野角が切替えられる機能は、DOLCEよりもむしろ90Xiシリーズが本命です。基本的にはDOLCEと同じ液晶ですが、視野角切替パターンに新たに薄い色の幾何学模様を加えました。
木戸氏
それと、SHの端末は電池のもちが良くないという印象もあるようなので、調光センサーを搭載しました。明るさに応じてディスプレイを調整可能で、液晶のきれいさだけではなく、液晶を賢くした感じでしょうか。
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ディスプレイはVeilViewモバイルASV液晶を搭載
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ディスプレイの下中央に、新たに調光センサーが搭載された
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■ フルブラウザにもひと工夫
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フルブラウザにもシャープのこだわり
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――今回はフルブラウザも搭載していますね。
木戸氏
そうですね。NetFrontと従来のドキュメントビューアを連携させました。例えば、Webメール宛に送られてきた500KBまでのWordやExcelファイルを、フルブラウザで受けて、ドキュメントビューアで閲覧できます。これまでのようにパソコンを使わなくても、ケータイだけでちょっとした仕事なら完結するようなものになっています。
――フルブラウザは他社に続いてという印象ですが、シャープのこだわりはどこでしょう?
河内氏
それはやはりインターフェイスです。マルチタスクの機能は、通常サブウィンドウを立ち上げるようになっており、これは他のメーカーもやっています。SH902iのマルチタスクは2画面あって、「メールを読む」「スケジュールを見る」といったユーザーが使いそうな目的が表示されます。
実はここに「インターネットで検索」といった項目が追加されており、普段お使いのYahoo!やGoogleなど検索サイトを登録しておくことが可能です。操作しているときに、インターネットで調べたくなる場合があると思いますが、こうした場合に、マルチタスクですぐに検索できるようになっています。メールを作成中に、フルブラウザで調べものをして、またメール作成に戻るといった利用方法が可能です。
今回、ドキュメントビューアのみならず、ドコモ初のiアプリのAV出力も可能となっています。プリセットされる“みんゴル”(みんなのGOLF モバイル2 for SH)を大画面で楽しんでいただけます。また、フルブラウザでは、GIFやJPEGの画像を80KBまでアップロードが可能です。Webに画像をアップロードできるので、ブログなどを利用されている方は重宝するのではないでしょうか。
■ neroやiTunes対応の音楽機能
――音楽機能はいかがですか?
木戸氏
今回SD-Audioへ対応しました。SD-Jukebox(SD-Jukebox Ver.5.0 LE)を同梱し、USB接続時のマスストレージもサポートしているので、USBケーブルでSD-Jukeboxを直接お使いいただけるようになりました。マルチタスクにも対応しているため、音楽を聴きながら、メールやWebがご利用いただけます。もちろん閉じた状態で、サイドのボタンで音楽ファイルを呼び出すことも可能です。
おまけ機能としては、ノンセキュアのAAC+もサポートしています。このためnero(CDなどのライティングソフト)で書き出した音楽ファイルもご利用可能で、iTunesのM4A形式でも再生可能となっています。
河内氏
細かいようですが、音楽ファイルの日本語名などもそのままSH902iで表示できますよ。
■ コンティニアスAF機能や顔認証機能を搭載したカメラ
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顔認証について語る河内氏
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――カメラ機能に変更はありますか?
木戸氏
カメラは使い勝手を上げることに注力しました。動画の手ぶれ補正は901iSで対応しましたが、動画のコンティニアスAF撮影をサポートしています。これまでの動画撮影は、撮影時にまずフォーカスを合わせてから撮影する形でしたが、今回は、絶えずフォーカスを合わせていく普通のビデオカメラのようにしました。近いところから遠いところを撮影してもフォーカスが追従するようになっています。
また、撮影モードの設定も一画面で行なえるようになりました。カメラのデバイスはSH901iSと同等ですが、ソフトウェアに変更を加え、901iSよりもきれいに撮影できます。メモリカードは、メーカーにもよりますが、1GBまでのminiSDカードに対応しています。
――おサイフケータイ関連で、カメラを使った顔認証技術を導入されましたね。
木戸氏
FeliCa搭載以来、セキュリティ関連が注目されていますが、今回フォルダロック機能を搭載しました。このほかに、顔認証機能を搭載しています。パスワードを入力するよりは、早く認証いただけるのではないでしょうか。
――ほかにも検討された認証方法はありますか?
河内氏
一通りやってみましたが、ユーザーは、セキュリティにあまりお金をかけたくないという前提があります。指紋認証のデバイスを搭載すれば、当然その分が端末コストに上乗せされるわけで、お金をかけずに、新しい認証を導入しようと思えば、元々搭載しているカメラを利用して、ソフトウェアで対応した方が親和性が高いと考えました。
木戸氏
顔認証では心配な方は、8桁の暗証番号をご利用いただけばいいので、今回は認証方法の選択肢を増やしたといったところでしょうか。結局、セキュリティ認証で手間だと感じるのはロックの解除です。解除と手間は矛盾した関係にあるので、やはりどこまで厳密にやるかは割り切るしかないと思います。
■ 各機能で使い勝手を向上
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「SH902iは、使い勝手を考えた機能盛りだくさんな端末」と、木戸氏
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――ほかに何か便利な機能はありますか?
木戸氏
着信履歴などと同じように、iモードやアプリ、フルブラウザなど最近使った5件を表示する「アクティブマーカー」という機能も搭載しています。
待受画面でメールや着信などがあったことを通知する機能がありますが、この使い勝手を考えて、「ストックアイコン」という機能も用意しました。これまでの通知機能は、トップ画面を操作する場合に、この通知アイコンをクリックする必要がありました。しかし後から通知のあったメールに返信しようとしても、通知アイコンはクリックすると消えるので、忘れてしまうこともあったかと思います。ストックアイコンでは、こうした通知をストックし、後から連絡しやすくしました。
また今回から、QuickTime ProのH.264動画も再生可能です。マニアの方にも満足いただけると思います。
ほかにも、文字入力がケータイShoin3から、ケータイShoin4になりました。使い勝手の面で大きく変更されたのは、「ワンタッチペースト」機能でしょうか。従来、顔文字などをコピー&ペーストしようとすると、サブメニューから呼び出さなければなりませんでしたが、ペースト機能を*ボタンに割当て、すぐに使えるようになっています。
辞書の優先度を選択できる「優先候補表示」も用意しており、英語や名前、地名などの候補表示が細かく設定できます。顔文字などを使われる方は、顔文字優先なども可能です。非常に単純で地味な機能ですが、結構便利に使っていただけると思いますよ。
■ 新OSの採用、プッシュトークへの対応など
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プッシュトークボタンは、押し続けることに配慮した
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――902iシリーズからはプッシュトークが登場しましたが、これはドコモの仕様に従ったものですか?
木戸氏
ソフトウェア的にはそうなります。ハードウェアの部分では、プッシュトークのボタンをヒンジ付近に配置しました。細かい話ですが、プッシュトークのボタンにこだわり、押しっぱなしにした時のことを考慮してゴムのボタンを採用しました。通常のボタンだと、押圧が強すぎて疲れてしまう可能性があるため、押し続けても平気な耐久性と、押したときの柔らかさをまじめに考えました。たった30秒(プッシュトークは1回あたり最大30秒間話せる)といっても、指が疲れてくると勝手にに離れてしまう場合もあるようです。
――SH902iでは、マルチタスクへ本格的に対応したとのことですが、これは新しいOSと関係があるのでしょうか?
木戸氏
そうですね。SH902iではSymbian OSを採用しており、新たなプラットフォームの導入は、商品企画の立場からすればインターフェイスの使い勝手を大きく向上させるチャンスでもあったわけです。もちろん、使い勝手自体はこれまで培ってきたものを踏襲していますが、見直すべきところは改善しました。新OSということで、開発側は大変苦労したと聞いています。
河内氏
ユーザーは、Symbian OS採用によるレスポンスを気にされるかと思いますが、最初の頃のSymbian OS搭載機のような、反応速度の鈍さはなくなったと思います。特に、よく使われるメール作成時のレスポンスは901iSと比較しても遜色ないはずです。レスポンスの良さでSHのケータイをお使いいただいている方もいるかと思いますが、そういう方がSH902iを購入してもがっかりすることはないと思います。
木戸氏
厳密なことを言えば、高機能なOSを搭載したので反応が鈍くなる面もあるのですが、ただ、端末側のクロック自体が上がっているため、文字入力など、よく使われる部分はむしろ反応が良くなっているように感じるのではないでしょうか。我々としては、あまり心配していません。
■ 機能満載だが、デザインはソフトな印象に
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カーボンレッド(左)/レザーブラック(右)
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シェルブルー(左)/グラスホワイト(右)
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ノートパソコンのタッチパッドをイメージした方向キー
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――待受画面の左右にアイコンを表示させていますが、これはどういう機能ですか?
木戸氏
イメージとしては、パソコン画面のようにデスクトップにアイコンが並んでいるような感じです。実は方向キー周辺のデザインは、ノートパソコンのタッチパッドをイメージしています。今回はフルブラウザを搭載しているので、こうしたデザインにしましたが、方向キーはタッチパッドではなく、従来通り上下左右に操作するものです。これは、携帯電話の場合に絶対に方向キーの方が使い易いためです。
河内氏
調査してみると、方向キー中央の決定キーを使ってメニュー画面を呼び出す方は、あまり多くないようです。実際の使い方は、メールを書くときはメールボタン、iモードを利用するボタンはiモードボタンを押す場合がほとんどで、メニュー画面へのアクセスは設定時ぐらいのようです。アクティブマーカーのように、一度使った機能やコンテンツにアクセスできる、省エネインターフェイスの方が利用価値が高いのではないかと考えました。インターフェイスはできるだけ早く目的の場所にたどり着くことを意識しました。そうした意味では、顔認証の機能も暗証番号入力の手間を省く省エネ操作と言えるのではないでしょうか。
――では、最後に端末デザインについて聞かせて下さい。
木戸氏
SH902iは、これまでのSHの特長でもあったAV系の印象から、かなりソフトな印象にしました。端末自体の素材感にもこだわり、SH901iSで無かった赤い端末をラインナップに復活させました。4タイプの端末のパネル部分は、それぞれ素材感も変更されており、全体のトーンとして、今回は少し女性よりのデザインを意識しました。
――本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
■ URL
製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/902i/sh902i/
製品情報(DoCoMo Web Exhibition)
http://sh902i.jp/
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(編集部)
2005/12/06 11:37
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