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P902i開発者インタビュー
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新機能を織り交ぜながら、使い勝手の向上を図る
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P902i
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薄さ18.3mm、902iシリーズで最薄というコンパクトボディの「P902i」は、Bluetoothをサポートし、Flashメニュー、外部メモリカードへのコンテンツ移行といった新機能を搭載する一方で、メニュー操作のレスポンスや、ムーバのPシリーズに似た文字入力など、従来機能の改善も図られている。
開発を担当したパナソニック モバイルコミュニケーションズの第一モバイルターミナルディビジョン プロジェクトマネージャーの加宅田 忠氏、商品企画担当の佐藤 恭子氏、松下電器産業 パナソニックデザイン社主任意匠技師の石田 顕之氏に話を聞いた。
■ 光を活かすカスタムジャケット
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商品企画担当の佐藤氏(左)と、プロジェクトマネージャーの加宅田氏(右)
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――P902iのコンセプト、メインターゲット層を教えてください。
佐藤氏
メインとするターゲットユーザーは、従来の90Xiシリーズと同じく、新機能や新機種への関心が高く、基本性能を重視するユーザー層です。携帯電話に対して積極的な人へ向けて、902iシリーズの標準機能に加えて、当社オリジナルの機能を搭載することで訴求していこう、という形に仕上げています。ポイントは、カスタムジャケットとイルミネーションの組み合わせ方、そしてBluetoothでしょうか。薄型化の追求もポイントの1つになりますね。社内では、これらを総称して「スリム&スマート」と呼んでいました。
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デザイン担当の石田氏
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石田氏
デザイナーとしては、P902iでは「マテリアル」というキーワードを掲げています。ディスプレイ側ボディにはアルミパネルを採用しており、表面にヘアライン加工することにより、ノンジャケスタイルで、よりリアルな質感を追求しました。3つのカラーバリエーションのうち、ブラックに付属するカスタムジャケット「ラバーブラック」は、ラバーのような手触りを求めたもので、シルバーに付属する「クールグラス」は、ガラス風の質感を目指しています。どちらもLEDが発光した際の見え方が異なります。
カメラ部近くにLEDを2つ内蔵していますが、水平方向に光が出るように工夫しています。「クールグラス」ではパネル全体面が光りますが、「ラバーブラック」は、縁の部分だけが光るようにしました。
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面で光る「クールグラス」
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縁が光る「ラバーブラック」
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ジャケットによって、光の見え方、印象が異なる
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オプションのカスタムジャケットも、見え方が異なるよう工夫されている
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――ジャケットを着せ替えるだけで、LEDが光ったときの印象が大きく異なりますね。
石田氏
通常の塗料では光が漏れすぎたりするなど「どうすればジャケットと、微妙な光のニュアンスを組み合わせられるのか」と試行錯誤を重ねました。夜を徹して早朝まで作業して、充分なクオリティを実現できた瞬間、10mほど離れて見ていると、あまりに美しく感じられ、「これを発売するのか、しても良いのか」というくらい不思議な気持ちになりましたね。ここまでのレベルになるとは思っていませんでした。
カスタムジャケットで、デザイン側がこだわった点は「コミュニケーションの中での光の役割」です。ただ光れば良いのではなく、柔らかな光り方だったり、エッジが効いた光になるようにしたり、光そのものを専門家と協力してデザインしました。2つのLEDが、電話やメールの着信時でさまざまな動きを見せますが、機構設計面でもかなり検討を重ねました。光もまた素材としてデザインされているのです。
また、ホワイトのカスタムジャケット「ブーケグラス」は、一見すると大人しく感じられるかもしれませんが、実は大胆なラインナップと考えています。
佐藤氏
柄物をデフォルトにしたこと、そして明確に女性向けのデザインとしたことは、開発時に話し合った点でもあります。「ホワイトが欲しい男性はどうするのか」といった点ですね。しかし今回は、男性向けがブラック、中間層がシルバー、女性向けがホワイトと、それぞれ異なるターゲットを想定しています。
店頭では、昼間など明るい空間での販売になりますから、カスタムジャケットとLEDの魅力は伝わりにくいかもしれません。ポスターなどで、うまくお客様にアピールしていきたいですね。
■ よりわかりやすく、レスポンスも改善
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Flashを利用したメニュー体系に
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――新たにFlashメニューが採用されていますが、ユーザーインターフェイス関連での特徴を教えてください。
石田氏
携帯電話が高機能化・多機能化が進んできたことで、メニュー体系が複雑になり、わかりにくいのではないか、という懸念がありました。それを改善しようと考えた結果、Flashメニューを利用したメニューシステムを開発し、第2階層の画面もグラフィカルな表示にしました。従来の画一的なデザインを進化させていこうということです。
佐藤氏
どの機能、メニューを選んでも、今までは同じようなメニューレイアウトの為、一目でわからないという声がありましたので、P902iからは選んだメニューがわかるように表現することにしました。
石田氏
メニュー関連を変更した目的は、ただグラフィカルにしたかったのではありません。ユーザーインターフェイスを進化させたかったというのが一番大きな理由です。我々なりに、今後の進化を含め、1つ1つをロジカルに考えて作っています。しかし、それは言葉で説明するものではなく、実際に使っていただいて、感じとっていただきたいと思います。細かな例を挙げると、項目が多いメニューで、次の画面にもメニューが存在することを示す「1/2」といった表示をなくし、次のページとの繋がりをグラフィックで表現したり、メールメニューで従来は9項目ほどあったものを6項目にしているといった点ですが、ぜひご自身で使って体感して欲しいですね。
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トップメニューは、Flashによるものが5種類。従来と同じやり方でのカスタマイズも可能だ
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これは横方向キーを押して選ぶトップメニュー
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部屋の風景を模したメニュー。時間帯や季節によって変化があるという
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縦方向キーを押して選ぶメニュー。ちょっとしたアニメーションも
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ベーシックな形のメニュー
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第2階層もグラフィカルに
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キー配列。カメラキーが新設されている
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――クリアボタンの位置が変わり、カメラキーが設けられました。また文字入力機能なども含めて、これまでのFOMAのPシリーズとは異なる点があります。
佐藤氏
「カメラはすぐ起動したい」という声に応えてカメラキーを新設しました。一回押す(単押し)と静止画撮影モード、長押しすれば動画撮影モードで起動します。カメラキーの登場によって、クリアボタンは、スタンダードとされる、方向決定キーの真下に移動させました。
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メールメニュー
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開発中は、メニュー画面のほか、文字入力やキーレスポンスにも注力しました。文字入力では、Advanced Wnnを導入しました。これにより、予測変換機能では、従来は一度入力したものだけが候補に表示されていましたが、今回は最初からある程度候補が出てきます。また方向決定キーの下ボタンを長押しして予測候補を選ぶ形でしたが、P902iでは単押しだけで変換候補を選べます。メール入力中では、アスタリスクキーを押すと、すぐ絵文字一覧が表示されますし、カメラキーには改行や逆トグル(文字入力時に前の文字に戻れる機能)といった機能が割り当てられています。
加宅田氏
FOMAのPシリーズでは、カスタムジャケットが高い評価を得た一方、操作面での改善を求める声もありました。P902iでは、文字入力でAdvanced Wnnを採用するなど、ムーバ時代の良いところを取り入れて進化させています。
佐藤氏
新機能だけではなく、こういった面でも地道に進化させたいと考えていました。開発でも大きなウェイトを占めています。
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文字入力ソフトとしてAdvanced Wnnを搭載
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アスタリスクを押すと、絵文字入力が可能に
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デコレーション用のメニューもすぐ呼び出せる
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――P902iの操作感は旧機種よりも快適に感じられます。実際はどの程度スペックが向上し、どういった要因で実現されているのでしょうか?
加宅田氏
体感速度としては約30%増と見ています。ただ、絵文字入力が手軽になるなど、実際の利用シーンでは従来の2倍ほど早く操作できる場面があるかもしれません。レスポンスが向上した要因としては、今回より、テキサスインスツルメンツ製のOMAP2420というCPUが搭載されたことが大きいですね。CPUアーキテクチャが従来のARM9から、新たにARM11となったほか、メモリスピードなども向上しています。
Flashメニューを採用したことで、従来のメニューと比べれば高い処理能力が求められますが、CPU変更というハードウェア面でのスペックアップとあわせて、ソフトウェア面でも高速化を追求しています。
■ P902iの新たな魅力
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厚みは18.3mm
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シルバーは、ヘアライン加工されている
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――ディスプレイ側ボディは、P900iと同じ2.4インチ液晶、LEDが2つ、スピーカーを備えていますが、薄く仕上げられていますね。
加宅田氏
設計において、薄さは非常にこだわった部分です。液晶や基盤など全てを見直し、コンマ1mm単位で薄く小さく、ということを積み重ねました。新たにBluetooth機能も搭載していますし、高密度の実装となっています。
その一方で、強度の確保は、非常に苦労したところです。実際に剛性を上げるために、「prosolid II」と基本的な考え方が同じ技術、構造を用いています。マグネシウムシャーシの採用、アッパー側のバスタブ構造を採用するといったことで補強しているのです。
佐藤氏
携帯としてのアンテナに加えて、BluetoothやFeliCaのアンテナも内蔵していますし、小型・軽量を実現するために、さまざまな機能を搭載しながら、それでも大きくしないように工夫して実装した、という感じでしょうか。
加宅田氏
携帯としての感度の確保、という面では、当社独自の技術としてボディ全体を活用した「筐体ダイポールアンテナ」も採用しています。さらに複数のアンテナを搭載することで、ユーザーによって端末の持ち方は異なっていても、それぞれのスタイルで感度を確保できるよう工夫しています。
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佐藤氏と加宅田氏。P902iの高密度な実装には苦労したようだ
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――新たにBluetoothがサポートされましたが、なぜ搭載されることになったのでしょうか?
佐藤氏
オーディオプレイヤー市場が拡大する中、P901iSからSD-Audioをサポートしてきました。P902iでは、音楽を楽しむ際にイヤホンケーブルの煩わしさを解消し、ワイヤレスで楽しめるようにオーディオ関連のプロファイルもサポートすることにしました。
――AV出力機能が搭載されていますが、マルチメディア機能はいかがでしょうか?
佐藤氏
携帯電話は、自分が楽しむだけではなく、みんなで写真や動画を見せ合って楽しむというシーンもあります。AV出力機能は、「携帯をみんなで楽しむ」というシーンに向けたものです。
動画再生機能ではQVGAサイズ、30fpsのデータに対応しています。再生時には端末を横にして、フル画面で表示できます。画質を向上させたいという考えはありましたので、スペックとしてサポートできることが判明した段階で搭載を決めました。AV出力、高画質の動画再生といったマルチメディア機能は、P900iVでも採用されており、P902iでも「今までやってきた部分を取り込もう」ということで搭載したのです。
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使いかたナビも進化しているという
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「使いかたナビ」ではグラフィックで説明する場面も
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――外部メモリカードへのコンテンツ移行という機能も新たな部分ですが、まずは内蔵メモリの拡張という位置付けになるのでしょうか?
加宅田氏
コンテンツの大容量化が進み、端末内部のメモリだけでは、十分とは言えなくなっています。P902iでは内蔵メモリの拡張という位置付けで、iモーション(着うた)やiアプリのスクラッチパッドといった、著作権保護が必要なコンテンツをminiSDカードに移行できるようにしました。次の対応機種でもコンテンツを使えるようにするかどうか、技術的には可能ですが、これはコンテンツプロバイダさん次第になります。
iアプリのスクラッチパッドをminiSDカードに保存できるコンテンツの実例としては、プリセットされるゴルフゲームが挙げられます。同アプリは、最初9ホールだけで、プレイできるキャラクターも1人だけですが、miniSDカードを装着していれば、プレイできるコースやキャラクターをダウンロードして追加できます。このゲームは、3Dで描画されており、データ量もそれなりに大きなものですので、miniSDカードがあれば、より一層楽しめるというわけです。ちなみにP902iでは、1GBまでのminiSDカードが利用可能です。
佐藤氏
このほかでは、時計も常に画面右上に表示し、「使いかたナビ」も従来よりわかりやすくしています。全体として、新しい機能に加えて、これまでユーザーから改善が求められていた部分の解消も図っています。ぜひ使っていただきたいですね。
――ありがとうございました。
■ URL
P902i 製品情報(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)
http://panasonic.jp/mobile/p902i/
P902i 製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/902i/p902i/
■ 関連記事
・ BluetoothやSD-Audio対応で光るカスタムジャケットの「P902i」
(関口 聖)
2005/12/01 15:14
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