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「W32S」開発者インタビュー
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FeliCaの使いやすさ、操作性に工夫を凝らした
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近日発売予定のW32S
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auが9月に開始する新サービス「EZ FeliCa」では、対応機種として2機種が登場する。このうち、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「W32S」は、小振りなボディに多彩な機能を備えている。
「W32S」の商品企画を担当した大澤氏と、メニュー開発を担当した村松氏に話を聞いた。
■ 意識したメインユーザー層
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商品企画を担当した大澤氏
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女性を意識したバリエーションが用意されたStyle-Upパネル
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――「Precious Compact」というコンセプトが掲げられていますが、「W32S」ではどういったユーザー層をメインターゲットにしているのでしょうか?
大澤氏
EZ FeliCaに対応した「W32S」ですが、EZ FeliCaはインフラサービスですので、より多くの人々に使っていただくことを目指してきました。
ボディの小型化は、多くの方々に喜んでもらえるポイントということで追求しました。ディスプレイサイズやカメラは、現在市場にある端末で最高のスペックではありませんが、使い勝手の向上を意識し、さまざまな工夫を凝らしました。たとえばゲームもプレイしやすく押しやすい「クロスコントローラー」を採用していますし、約45.5MBという大容量「フレキシブルデータフォルダ」は、データ専用・BREW専用といった区別をなくして、それぞれ着うたフルやゲームなどのアプリを存分に保存し、楽しんでいただけるようにしています。
また、10代~20代の女性を意識して、ボディカラーのラインナップにピンクを用意しましたし、着せかえを楽しめるStyle-Upパネルでもピンクを基調にしたものや、ラインストーンを配したものなどを用意しています。
Style-Upパネルは、1X向け端末で手掛けてきましたが、1X WIN向けとしては初めてのものです。印刷ではなく、素材感や質感を訴求できるラインナップにしています。キラキラした「グリッター」や「スパークル」は、名古屋でスタッフ向けに説明会を開催したとき、女性の受けが非常に良かったですね。Style-Upパネルは、FeliCaアンテナの上にかぶせる形になりますが、もちろんFeliCaの通信には影響ありません。
――データフォルダをフレキシブルにした理由は何でしょうか?
大澤氏
1X WIN向けにはゲームや着うたフルといったコンテンツが数多く提供されています。「WINならでは」という使い勝手を考えたとき、大容量フォルダで、着うたフルもBREWアプリも、使い方に応じて存分に利用していただけるようにしたかったのです。
大容量になり、フレキシブルに使えるようにしたことで、「W32S」では、EZナビウォークなどのサービス用アプリや、EZ FeliCa対応ということで電子マネー「Edy」に関連したアプリ、レースゲームでW32Sオリジナルバージョンの「リッジレーサーSE」など計14本のアプリがプリセットされています。それぞれ購入していただいた後、すぐに楽しんでいただけるものばかりです。
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ブレームオレンジの数字キーは他のカラーと異なる
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ディスプレイ下部にある「W32S」のフォントは、ラグジュアリーピンクだけ異なる
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■ FeliCa搭載でのポイント
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FeliCaでの通信が可能な範囲になると、リングアンテナの内側が光る「FeliCaサイン」
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――EZ FeliCa対応の第1弾として登場する「W32S」ですが、FeliCa専用の機能がいくつか搭載されていますね。
大澤氏
FeliCaを使った「おサイフケータイ」というサービスそのものは、既に存在するものであり、差違化要因にはなりません。利便性を向上するために用意した機能の1つは、「FeliCaサイン」です。これは、「W32S」をリーダーライターの上にかざしたとき、リングアンテナの内側が光るというもので、FeliCaの通信圏内に入ったことを知らせます。
ただかざしただけでは、FeliCaを使って決済したり、データをやり取りしたりすることがわからない可能性もあります。また、電子マネー「Edy」では特有の音が鳴りますが、「サービスによって異なる音」というように反応が変わることもあり得ます。FeliCaサインは、「通信している」ということを通知するものではなく、あくまで通信できる状態であることを示したものですが、FeliCaを使っていることを感覚的に理解してもらうための要素と言えます。
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「ぜひぜひ一度手にとって使って」と語っていた大澤氏
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FeliCa用のアンテナはディスプレイ側背面、つまりサブ液晶がある面に配されています。普段、携帯電話を持つときは、キー側ボディを持って操作することになりますので、携帯電話の持ち方を考えると自然な位置と判断しました。サブ液晶側にアンテナがあれば、端末を開いた状態でもスムーズにリーダーライターにかざせますし、閉じたまま持っていても手のひらに面しているのはキー側ボディであり、サブ液晶側をそのままかざせるというわけです。
プリセットアプリには、Edyの残高をすぐ確認できる「クイック確認 For『Edy』」を用意しました。これは独自開発したもので、端末を閉じたままサブ液晶で残高確認できます。購入時では端末右側面にあるFeliCaキーの長押しですぐ起動するよう設定されています。
このほか、「おこづかい日記」というアプリも用意しました。通常、Edyの利用履歴はバリューの増減だけが記録されており、何に使ったかまではわかりません。本アプリでは、Edyの利用履歴を読み込む機能が備わっており、それぞれの履歴に対して「このときは○○を買った」とわかるように写真やテキストも貼れるので、日記のように使っていただけます。また、現金で支払ったものも手動入力できますので、Edyと現金の支出を一元管理できますし、それらを集計してグラフ表示させることも可能です。入力したデータは、端末内に保存しておくだけではなく、CSV出力することもできますので、「かわいい顔をしていても本格的なアプリ」に仕上がっています。
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プリセットされるEZアプリ(BREW)は14種類。FeliCa関連アプリも
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残高をすぐ確認できるアプリ「クイック確認 For『Edy』
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■ 3種類のメニュー
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メニュー開発を担当した村松氏
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左からドラマメニュー、クロスメニュー、マトリクスメニュー
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――「W32S」では、クロスメニューに加えて、マトリクスメニュー、ドラマメニューと3種類のメニュー画面が用意されているそうですが、どういった狙いや意味があるのでしょうか?
村松氏
最初にこのモデルでは、着せかえを進化させるコンセプトが上がりました。まず、着せかえの対象を、従来の「メインメニュー+一般画面」に加えて、EZメニューやEZアプリメニューに広げて、一貫した世界観を提供するように考えました。従来、メニューデザインの変更と言えば、背景色やアイコンデザインを変えるといったものですが、せっかく着せかえられるのであれば、進化のためには、動きや構造も別にして、ユーザーの多様なニーズに応えようと考えました。Flashの採用がそれを可能にしたのです。
クロスメニューは、「W21S」で初めて搭載されたものですが、その快適な操作感を気に入ってくださっている方に向けたものです。画面を15分割してアイコン表示する「マトリクスメニュー」は、他社製端末を利用している方やオーソドックスさを求める方がすんなりと利用していただけるようなメニューになっています。単にアイコンを羅列しただけではなく、フォルダが描かれたアイコンを選んで下の階層が開く時のアニメーションや、「ガイドキー」でガイド表示を切り替えるほかに、配色も変えられるといった工夫もしています。
新たに採用したドラマメニューですが、悩んだ末に誕生したものです。「そもそもメニューとは何だろう?」と考えたとき、いくつもある機能へスムーズにたどり着くという機能性が求められる一方で、着せかえられることによってコンテンツという側面も備わってきました。コンテンツならば、エンターテイメント性を持ったメニューがあっても良いのではないか、ということでドラマメニューが産まれたのです。
開くたびに登場人物が異なっていたり、時間帯によって日が暮れていたり天気が変わっていたりするなど、さまざまな動きがあります。使えば使うほど偶然の出会いがあり、次への期待が出てくるという、長く使ってもらうための工夫とも言えるでしょうか。
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新たに採用されたドラマメニュー
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ドラマメニューで第2階層を選んだところ。「着うたフル」のメニューということで、小鳥がさえずっているイメージ
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ドラマメニューは、「W32S」のデフォルトメニューになっています。これについては、「購入時の設定にはちょっと合わないのではないか」という人と「これをやらないでどうする」という人に分かれ、社内で議論が起こりましたが、社内で開発中のドラマメニューを見せると、誰もが目を見張り、興味を示しました。それほど人を惹きつける力があるのならば、魅力的なものになることを目指してチューンナップし、最終的には、購入時の設定になったのです。
ドラマメニューのテイストにあわせた待受Flashも用意しています。電界強度や電池残量によって、画面内の小鳥の数が変わったり、充電中の動きが異なったりするなど細かなところで工夫を凝らしています。ちなみに、この待受Flashはデフォルト設定ではなく、ユーザーさん自身の手で設定していただくものです。もし最初から待受画面がこのFlashであれば、ドラマメニューを開いたとき、待受画面かメニュー画面か混乱してしまう可能性がありますので、ドラマメニューの世界に浸りたい方に設定してただくよう考えています。
――ドラマメニュー用の素材をユーザー自身が自作して、追加するということは可能なのでしょうか?
大澤氏
ユーザーさんがメニューを作ることはできませんが、Style-Upパネルのテイストにあわせたメニューを、当社のメーカーサイト「SonyEricson@ez」で配信しますので、さまざまなバリエーションを楽しんでいただけると思います。新しいアイデアもありますので、期待していただきたいですね。
――クロスメニューやドラマメニューは、アニメーションが多彩ですが、バックグラウンドは複雑な構造になっているのではないでしょうか?
村松氏
メニューは、デザイナーと共同で作成しましたが、Webサイトのアニメーションと違って、メニューとしての厳しい条件をクリアしつつ、さまざまなアイデアを盛り込むことに苦労しました。
■ ジョグダイヤル非採用の理由
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ジョグダイヤルではなく、クロスコントローラーを採用
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――ソニー・エリクソンと言えば、ジョグダイヤルをイメージする方は少なくありませんが、「W32S」ではクロスコントローラーが採用されました。
大澤氏
1X WINユーザーでは、ゲームの利用が大きくなっていると実感しています。また、地図アプリなど、方向決定キーと相性が良いアプリの利用が増えてきていることを考慮して、クロスコントローラーを選んだわけです。
村松氏
ジョグダイヤルでは、思い通りの高速な移動が好評を得ていたと思いますので、同じような操作性が実現できることを目指しました。「W31S」でもチューニングしていましたが、「W32S」ではかなりスピーディになるよう、相当思い切ったチューニングを施しています。具体的には、上下キーを押しっぱなしにした場合の処理ですね。メール作成時では、POBoxで予測変換の候補が多いと、キーを連打するのが面倒で押しっぱなしにして入力したい単語を選びますが、目的のものまで進むときの操作はかなりスムーズになっていると思います。「速すぎて困る」という人が出ないレベルまでチューニングしていますので、ジョグダイヤルと操作方法は異なりますが、快適さは近づけたのではないでしょうか。
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村松氏は、快適に操作できるよう、思い切ったチューニングを施したと語った
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――レスポンスを高速化するためには、ハードウェアで解決するという方法を採られたのでしょうか?
大澤氏
チップセットは、クアルコムのMSM6550を採用していますが、操作性のレスポンスという面は、ソフトウェアでの工夫に拠るところも大きいです。
村松氏
キーを押しっぱなしにしたとき、連打した時と同じような“繰り返し入力状態”になるようチューニングしました。繰り返しの開始タイミングを早め、1秒あたりの繰り返しの回数を上げていきながら、どこが快適な状態かを探りました。
またEZwebサイトのブラウジング時は、縦長画面が多いため、メールなどのメニュー操作よりもさらに高速化されています。
大澤氏
ジョグダイヤルではなく、クロスコントローラーを採用したことについては、賛否両論あるかと思います。しかし、ジョグダイヤルに慣れ親しんだ方にとって、ストレスが溜まらないようにしていますので、ぜひ一度手にとって使っていただきたいと思います。
――ありがとうございました。
■ URL
ソニー・エリクソン
http://www.sonyericsson.co.jp/
製品情報
http://www.sonyericsson.co.jp/product/au/w32s/
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(関口 聖)
2005/09/01 11:30
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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