auより発売された「W31CA」は、3メガピクセルのカメラ、PCドキュメントビューアーを搭載したカシオ製CDMA 1X WIN端末。同社初のWIN端末でありフラッグシップモデルとして登場した「W21CA」のコンセプトを踏襲し、PCサイトビューアーや2.6インチのワイド液晶、2軸ヒンジなども継承する。
W21CAの正常進化モデルとして登場したW31CAや、そのベースとなったW21CAは、同社として初めての取組みも多く盛り込まれた意欲作だ。カシオ日立モバイルコミュニケーションズ、カシオ計算機の開発担当者に話を伺った。
■ ダブルのPCビューアーで定額制サービスを存分に
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左から、山本氏、藤原氏、河本氏
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――まず、基本的なコンセプトを教えてもらえますか?
河本 恭一氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ リーダー)
W31CAはビジネスにもプライベートにも使えるフラッグシップ端末、というコンセプトで、W21CAの正常進化といえる端末です。特徴は3メガピクセルのカメラや2軸ヒンジ、2.6インチのワイド液晶を搭載したことに加え、我々は「ダブルPCビューアー」と呼んでいますが、PCサイトビューワーとPCドキュメントビューアーを搭載したことです。3メガピクセルのカメラやPCドキュメントビューアーについては、W21CAの企画当初から温めてきた企画で、今回のモデルでようやく実現できました。WINの定額制サービスを存分に使っていただける端末に仕上がっていると思います。
石田 伸二郎氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 戦略推進グループ 商品企画チーム)
一般的に配信されている大容量コンテンツの中には、ダウンロードしてからでないとお金を払う価値があるかどうかを判断できないものもあります。パソコンやメールの添付でやりとりしているファイルは内容が分かっているものですし、それを見るのにお金を払う価値があるかどうかもあらかじめ判断がつきます。いろいろなファイルが携帯電話で閲覧できることで、WINサービスを使ってみたいと思ってもらうきっかけにしたかった、という思いもあります。普段使っているファイルやWebサイトが見られるPCサイトビューアー、PCドキュメントビューアーが魅力的なWINサービスの導入として最適ではないかと思います。
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PCドキュメントビューアー
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――ピクセルのPCドキュメントビューアーを選んだのはなぜでしょうか?
河本氏
実はピクセル社とは前モデルの企画当初より話をさせていただいており、ドキュメントビューアーとしての機能は高く評価していましたので、W31CAへの搭載を決めたときには、もう藤原と二人でイギリスのピクセル本社にいたというぐらいスピーディーに決まりました。
――実装には苦労されたのでしょうか?
藤原 耕太郎氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ソフト設計グループ)
ピクセルのエンジニアが来日してくれたりしましたし、やりとりもスムーズに行なえたので、実装にあたってはそれほど苦労はしませんでした。ソフトをいちから開発していたら年単位の開発期間がかかりますが、ピクセルのソフトを採用することで開発期間は数カ月で済ませることができました。
河本氏
PCドキュメントビューアーの機能は今後も色々な機能に対応できるようにしていきたいですね。
――パソコンユーザーと相性が良い印象ですが、他に関連した機能はありますか?
河本氏
PCドキュメントビューアーは、画像などを含めた単一ファイルのmHTMLファイルにも対応していますから、画像付きのWebサイトをmHTML形式で保存して携帯に転送すればいつでも閲覧できます。
W21CAで実現していることですが、USBクレードルとMySyncによるデータの同期機能などがありますし、SD-Videoの再生にも対応しています。SD-Video形式のファイルを作成できる「MediaStage体験版」もパッケージに同梱します。
■ ますますデジカメに近づく3メガピクセルのカメラ
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320万画素のカメラを搭載
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――320万画素のカメラですが、新たに開発されたのでしょうか?
山本 真也氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 ハード設計グループ)
カメラモジュール以外はW21CAから大きく変更しない予定でしたが、実際開発が始まってみるとホワイトバランスやAE、AFなど主要なところはほとんど手を加えました。暗い場所でのファインダーの動きなど、細かい部分も改善しています。
300万画素クラスともなると比較対象はデジカメになるだろうと思い、デジカメに対してどれだけの画質を実現できるか、という部分で苦労しました。携帯のカメラは見栄えが重視される傾向にありますが、デジカメのような自然な写りになるように絵作りを行ないました。CCD部分には、コンパクトなデジカメで多く使われているものより大きい、1/1.8インチのCCDを使用しています。
2メガのカメラは携帯電話でもいくつかの搭載機種がありますが、3メガクラスでは携帯電話向けのカメラモジュールがあまり無い状況です。デジカメに使用してもいいようなCCDを携帯サイズのカメラモジュールに落とし込み、汎用的な携帯電話の画像処理エンジンでコントロールするために、さまざまなチューニングで苦労しました。
石田氏
W31CAではメールのファイル添付容量が500KBに拡大していますから、撮影した画像をそのままメールに添付して送信できたりします。そういう意味で利用シーンはますますデジカメに近いといえます。撮影した画像を携帯の画面で楽しむ、というのも大切ですが、プリントしても綺麗になるように調整しています。
――カメラ部分で、次に何かおもしろいことを考えていますか?
石田氏
QRコードなどがいい例ですが、携帯に付いているカメラならではの用途をいろいろ増やしていきたいですね。
■ 試作を繰り返したW21CA
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左から、杉岡氏、齋藤氏、窪田氏
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試作モデル(左からA、B、C、D、E)。右端の2台はW31CA
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Dモデルの異質さが目を引く。Eモデルは最終製品にかなり近い
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――デザインは、W21CAと比べてどのような位置づけでしょうか?
杉岡 忍氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室)
搭載する中身によりデザイン的な制約がある中で、大きくなってしまう端末の無駄をいかにそぎ落していくか、というのがW21CAのデザイン時に心がけていたことです。W31CAは、W21CAをよりシンプルな形状でバージョンアップ感を表現する、ということを意識しながらデザインしました。3メガのカメラ部分によりカメラ部の厚さはW21CAより1mmだけ厚くなっていますが、そこをいかに違和感なく見せるかといった部分や、W21CAよりさらに緻密さを上げて高級感を持たせることに注力しました。
井戸 透記氏(カシオ計算機 開発本部 デザインセンター 第四デザイン室 室長)
W21CAのデザインは、ワイド液晶を有効に使える端末のデザインを依頼されたところから始まりました。コンセプト段階で、いわゆる爪切りヒンジ構造のAモデルと、現在のW21CAとは若干異なる2軸ヒンジを想定したBモデルを作り、より現実的で社内でも評判の高かったBモデルをベースに、さらに開発の目標となるコンセプトモデル、Cモデルを製作しました。
ところがこの段階で、入れるべき機能を満たしてできあがってきた設計試作機は、ヒンジ構造やカメラレイアウトなどが全く異なるもので、サイズこそ合っているもののCモデルとは全く違うイメージのものになっていました。設計陣からは、Cモデルをベースにした実装が非常に難しいとの声もあり、設計陣の構造図を元にしたDモデルを新たにデザインしました。
しかしこのモデルは目指すスペックを全て満たすためパーツ類が肥大化したことにより、ケータイという枠からは外れた異質なものとなってしまいました。結果、パーツや内部構造を再検討することとなりました。
非常に細かく分割した端末の断面図を設計陣に要求し、とにかく無駄な補強パーツやスペースを削ってデザインと設計の落としどころを模索しました。最終製品に近いデザインのEモデルができあがると、一気にモチベーションが高まって設計陣も頑張ってくれました。1個の端末(W21CA)で5つも試作モデルを作るのは珍しいことですね。
――W31CAの2軸ヒンジはW21CAと同じものです。ヒンジも開発当初は苦労されたのでしょうか?
窪田 幸司氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 機構設計グループ)
2軸ヒンジの開発を始めたのは3年ほど前からですが、カメラ機能が特徴の端末をどう際だたせるかという部分を重視しました。特徴的な部分は、自分を撮るときに便利なよう画面を反転して開いた時に180度まで開くところです。開発段階ではいろいろな角度に開く試作機を作って、180度まで開くタイプの必要性を検証しました。通常では160度まで開き、反転させると180度まで開くという2つの仕組みを盛り込むのに苦労しました。ストッパーもヒンジの中に収めた構造になっていますし、ヒンジ専業のメーカーと共同作業で苦労を重ねながら開発を進めました。
ヒンジだけの開発ではなく、本体ケースに収めた時に不具合が出ないようにするのも重要で、設計をとりまとめる齋藤と試行錯誤を重ねました。
齋藤 恵一氏(カシオ日立モバイルコミュニケーションズ 開発設計本部 機構設計グループ リーダー)
W31CAの設計は、W21CAの設計の資産を使って行なっています。カメラ部分以外はほぼそのまま形を踏襲して、手に取った感じもほぼ同じものになっていると思います。カメラ部分はW21CAより少し膨らんでしまうので、これをうまく収めるのに苦労しました。
ヒンジと本体をセットにしたときに初めて出てくる問題も多く、どういう試験方法があるのかという段階から試行錯誤を繰り返して開発しました。従来のヒンジと違い、ヒンジのユニットと本体ケースは直接絡んでいないですから、ぐらぐらとガタついたりしないような剛性を出すのにも苦労しています。
――ヒンジの形はまだまだ変わっていくものでしょうか?
窪田氏
まだまだ変わっていくと思います。ただ、どうなっていくかは混沌としていると感じています。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
ニュースリリース(KDDI)
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2005/0728a/
ニュースリリース(カシオ)
http://www.casio.co.jp/release/2005/w31ca.html
製品情報
http://www.casio.co.jp/k-tai/w31ca/
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