17日に発売された中高年をターゲットにした“簡単ケータイ”ことauの「W32K」。その開発に当たった京セラ 移動体通信機器統括事業本部 マーケティング部 商品企画課の有田行男氏(企画担当)、同部 デザイン課の城ノ下 恭博氏(デザイン担当)、事業企画部の五十嵐 剛氏(マーケティング担当)にお話を伺った。
■ 「機能を大幅に削らず、これまでのケータイをより使いやすくした」
――まず企画が立ち上がった経緯をお聞かせください。
有田氏
W31Kなどでフレンドリーデザインというコンセプトを打ち出しましたが、あのときは「誰にでも使えるように」というのがその目的でした。特にターゲットを絞り込んでいるわけではない、と。今回のW32Kは、これまでの使いやすさをふまえながらも、具体的に年代を絞った製品を作ろう、というのが始まりでした。W32Kのターゲットについては、まず50代以上を、50~60代の方を指す「エルダー」と70代以上を指す「シニア」にカテゴライズし、「エルダー」にフォーカスをあて、そこに向けた端末を作ろう、ということですね。もう、携帯電話市場は飽和しつつありますから、ユーザーの裾野を広げていかなければ台数も伸びてきません。そうした経緯で企画されました。
――中高年向け端末というと、ベストセラーとなった富士通さんの「らくらくホン」シリーズのような製品があるわけですが、W32Kはどんなコンセプトを元に開発されたのでしょうか。
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「一目で“お年寄り向け”端末は嫌われる」と有田氏
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有田氏
50代以上の市場に求められる結果は「シンプルな端末」ということになると思いますが、そこに行き着くには、2つのやり方があると思っています。1つは、必要最低限な機能、というところからスタートする発想です。もう1つは、今まであるものをより使いやすくして結果、シンプルにするという発想です。今回のW32Kは、後者のやり方を選びました。
――具体的にどのあたりを「より使いやすく」されたのでしょうか。
有田氏
一番大きいのはメインディスプレイ下部に3つ並んだ「ワンタッチボタン」ですね。あらかじめ登録された人にボタン1つで発信できます。
五十嵐氏
長押しで音声発信、単押しだと相手の名前と電話番号が出ます。
■ 「エルダー層にもカメラやメールに対するニーズは高い」
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「おじいちゃん、おばあちゃんは意識しなかった」という城ノ下氏
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――ボタンの文字も工夫されていますよね。
城ノ下氏
通話ボタンと切るボタン、数字ボタンについては見やすさにこだわってますね。通話と切るボタンは、どうしても記号になってしまいがちなんですが、思い切って文字だけにしています。
有田氏
メニューなんかも、通常はグラフィカルなアイコンが並ぶのですが、普通に文字で表現したのも、わかりやすくするためですね。「わかりやすさ」という点もこだわっていますが、我々が目指したのは絞り込みすぎないわかりやすさです。ドコモさんのアプローチというのは、機能も絞り込まれていたと思うのです。しかし、W32KはWINにも対応していますし、楽しめる要素があるのも特徴だと思っています。
五十嵐氏
エルダーの方たちはシニアの方とはまた違って、通話だけでは満足できず、インターネットやカメラにもチャレンジしたいというニーズがあります。これに応えるために、カメラもメガピクセルクラスのものにしています。液晶も26万色ですし、楽しめる要素は十分に盛り込んでますね。
■ 「パッと見て“お年寄り向け”のケータイは嫌われる」
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「通話だけでなく、ぜひこの端末でメールやカメラ、EZwebを楽しんで欲しい」と五十嵐氏
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――そういう意味では、カメラの品質を最低限のものに落とす、というような発想ははじめからなかったのですか?
五十嵐氏
そうですね。30万画素というのではなく、クオリティも必要だろうと判断しました。
有田氏
現状のWIN端末の機能も、ほとんど残して使いやすくする、というのは守りたかったポイントですね。
五十嵐氏
実は50~60代でもかなり嗜好はさまざまで、まだ職に就かれている50代の方は使いやすいものが欲しいけれど、パッと見て「お年寄り向けのケータイ」と思われるようなものは避ける傾向にあります。ターゲットは絞っていると言っても、デザイン的には一般向け端末に近いものに仕上がっているのも、そのためです。
有田氏
特にコミュニケーションを重視される女性の方においては、特定の方に写真を送る、というニーズがあるとのことで、あらかじめ設定した相手に写真を撮ってすぐ送れる「撮速メール」という機能も用意してあります。
――ムービーメールも対応していますが、ここの使い勝手は工夫されているのですか?
有田氏
いえ、そこは通常の端末ですね。やはり、積極的に使っていただけるのは写真までだろうという判断をしました。エルダー層の方はまだ現役で働いている方もいらっしゃいますし、「自分が年寄りだ」という認識はありません。ただ、そういった方がすべての機能を使うというと、これもまた、そういうわけではないのです。機能を落とさず、ニーズのある機能については使いやすくする、ということですね。
――EZナビウォークや着Flash、着うたフルが省かれた理由はどんなところにあるのでしょうか。
有田氏
最新の機種を開発する、ということではなく、現行機種を使いやすく作り直す、ということにウェイトがあったからです。開発のタイミングで、ベースとしたモデルが今現在の最新サービスに対応しているものでなかった、ということですね。
――W32K専用のWebサイトをご用意されるようですね。
五十嵐氏
そうなんです。50~60代の方には、なかなかケータイのインターネットはとっつきにくい、というご意見もありますから、サイトメニューの文字も大きく使いやすくデザインしています。壁紙や氷川きよしさんの着メロを用意してありますから、ぜひインターネットの世界を「お試し」していただきたいですね。
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ターゲットに合わせ、文字が大きくわかりやすい専用サイトを開設
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氷川きよしの着信メロディも配信される
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■ 「はじめからおじいちゃん、おばあちゃんは意識しなかった」
――話は変わりますが、デザインのコンセプトを教えていただけますか。
城ノ下氏
「やさしさ」です。ただ、「やさしさ」といってもいろいろ種類がありますが、活発にメールやカメラを使うアクティブなエルダーにとっての「やさしさ」ですね。たとえばアウトラインだけ見ると一見、直線が多い。それは、オヤジっぽくなく、普通の端末に見せる、オトナの洗練さを出す工夫です。これもターゲットを見据えた「やさしさ」でしょうし、もちろん、一般的な「やさしさ」という意味も含んでいますから、部分的に曲線、丸みを取り入れています。結果として、四角いような丸いような、といった非常に微妙なカタチに仕上がっていると思います。
――そういった過程は、一般の端末をデザインするのと違う感覚なのでしょうか?
城ノ下氏
どの端末もそれぞれコンセプトがあって難しいですけれども、W32Kについては、auのラインナップにエルダー層をターゲットにしたものがない、つまり前例がありませんでしたから、どうやって特徴付けをするか、auブランドにふさわしいエルダー向け端末とはどういうものか、という点は非常に気を遣いましたね。そういった意味では「おじいちゃん、おばあちゃん」というのは意識せずに作っています。いかにシンプルで、いい意味で「フツー」で、使いやすくて、シャープで、そして丸くて……といった要素を足し算的にデザインした結果です。
有田氏
auさんは、若い方をターゲットにしてデザインも展開されていますよね。W32Kのターゲット層は別、とはいってもauブランドで出す以上、auさんが持っているイメージは大切にしなければなりません。一方で、エルダー層の方々は先鋭的なデザインを求めているかというと、そうではなく、保守的な傾向があります。その両者のバランスをうまく取ることに苦労した、ということですね。
――シルバー1色というカラー展開にはどのような経緯があるのでしょう?
城ノ下氏
イエローやホワイト、ピンクの試作もしましたが、派手なデザインのモデルで大々的にアピールするよりかは、一番受け入れられやすいカラーを提供することが重要でした。そうした結果がシルバー、ということです。
有田氏
ターゲットを考えると、やはりシルバーかホワイトだろうと。ホワイトだとあまりにも落ち着いているんじゃないかと考えました。先ほど申し上げましたとおり、一般の端末と明らかに違うテイストにはしたくない。シルバーは若い方が使う端末にも多く、距離感がないのでいいのではないかという結論に達しました。
■ 「限られたターゲットを的確に捉える商品をこれからも出したい」
――エルダー向け、フレンドリーデザイン、といった路線は、auのラインナップの中で今後も展開されるのでしょうか。
有田氏
そこはauさんのお考えもあるので、一概には言えないですが、ここまで市場が広がると、なかなか1つの製品ではカバーできませんし、弊社としてはメインストリームとともに、このような限られたターゲットを的確にとらえる商品を今後も出していきたいと思っています。
エルダー層向けでありながら、「お年寄り向け」でない雰囲気。かつ使いやすく、抵抗感のない、という、ほどよいさじ加減、バランス感覚に徹底的にこだわっています。WIN対応にしたのも、高年齢向けだからただ機能を切り捨てるのではなく、「カメラは使われるだろう、それなら通信は速いほうがいいだろう」という配慮なんですね。いろいろな機能が省かれずに残されていますから、ぜひ楽しんで欲しいですね。
五十嵐
ワンタッチボタンの使いやすさと、キーの見やすさ、そしてデザイン、こうしたところは自信をもっています。ぜひお試しいただきたいと思います。
――ありがとうございました。
■ URL
製品情報(au)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/w32k/
製品情報(京セラ)
http://www.kyocera.co.jp/prdct/telecom/consumer/w32k/top.html
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2005/06/20 12:53
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