ビットワレットの運営する電子マネー「Edy」は、NTTドコモの「おサイフケータイ」に採用されてから、2005年3月末時点での取扱件数が前年より倍増して約710万件に達するなど、利用者数を順調に伸ばしている。
ビットワレットと三井住友銀行は、おサイフケータイの特性を活かし、iアプリを使った利用者にやさしい操作性で、自分の銀行口座からチャージ(残高追加)できるサービスを共同検討してきた。
三井住友銀行は、インターネットバンキングサービス「One'sダイレクト」のユーザーを対象に、同行の口座からNTTドコモのおサイフケータイにチャージできる新サービスを4月18日にスタートする。三井住友銀行、ならびにビットワレットの担当者へのインタビューとともに、同サービスを紹介しよう。
■ 専用iアプリで口座からチャージ
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三井住友銀行が提供するiアプリのメニュー画面
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今回スタートする新サービスは、おサイフケータイに専用iアプリを利用したもので、「One'sダイレクト」ユーザー向けに提供される。携帯電話にあるEdyの残高や使用履歴をチェックできることに加えて、三井住友銀行の口座から直接Edyをチャージ(残高追加)できるのが大きな特徴だ。
専用iアプリは「Edy残高照会」「Edyチャージ」「Edy受取」「各種設定」と大きく4つのメニューで構成される。「Edy残高照会」では、その名の通り、端末内のEdy残高をチェックできる。また使用履歴の確認も可能だ。このメニューからチャージメニューへの遷移もできるようになっている。
「Edyチャージ」は、本アプリの特徴である三井住友銀行の口座からおサイフケータイの「Edy」へ直接チャージするための機能となる。
チャージする際には、「One'sダイレクト」ユーザーにあらかじめ与えられた「第一暗証」「第二暗証」の2種類のパスワードが必要だ。このうち「第二暗証」については、初回のみ入力すれば、次回以降は省略できるようになっている。各パスワードは、チャージの手続き時に入力する形となり、認証を経て1,000円単位で最大25,000円まで一度にチャージできる。
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チャージ時には「第二暗証」の入力が求められる
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チャージ申請の内容を確認した段階
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「Edy受取」の画面。この部分はビットワレットのサービス内容となるため、右上のロゴマークがチャージ申請時と異なる
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金額を決め、確認画面を見終えた段階では、まだ端末内の「Edy」はチャージされていない。ここまでは「チャージする」と申請した状態となっており、チャージを完了させるためには、「受取」という手続きを行なう必要がある。
チャージ金額の選択後、画面を進めると「Edy受取」という画面になる。ここでは先に申請した内容が一覧で表示されており、選択すればチャージが完了することになる。
同行口座からのチャージでは、基本的に手数料105円が必要だ。ただし、一度に20,000円以上チャージする場合、105円分のEdyが還元されるため、実質的に手数料はかからない。
このほか、機種変更時には、基本的に新たに入手した端末に本アプリをダウンロードしなおすだけで良い。ただし、端末内にチャージしていたEdyは、あらかじめビットワレットの提供する「お預けサービス」を利用することになる。また、申請だけ行ない、受取手続きをしていない場合、その申請を新端末に移行させるにはビットワレットのサポートセンターへ申し込む必要がある。
これまで、おサイフケータイの「Edy」に対しては、現金のほかにクレジットカードや、イーバンク口座からのチャージが可能だった。今回、三井住友銀行では、都市銀行として初めてiアプリを活用したチャージサービスを提供することになり、ユーザーの利便性向上が図られている。
■ わかりやすく「いつでもどこでもチャージ」できるように
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三井住友銀行の情報システム企画部 部長代理の阪 章伸氏(左)とマスリテール事業部 IT推進グループの舟木 隆司氏(中央)、ビットワレット 事業戦略部の藤田 憲彦氏(右)
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今回のサービスはどのような考えに基づいて提供されることになったのだろうか。三井住友銀行の情報システム企画部 部長代理の阪 章伸氏とマスリテール事業部 IT推進グループの舟木 隆司氏、ビットワレット 事業戦略部の藤田 憲彦氏に話を聞いた。
――本サービスでは、iアプリを使って、銀行口座から直接チャージできるようになりますね。
阪氏
当初、さまざまなものを検討しましたが、お客様にとって一番良いのは「操作していたら簡単にできた。いつの間にか、やりたいことを全部できてしまった」ということだろうと考え、シンプルなインターフェイスのiアプリでサービスを提供することになりました。ただ、セキュリティと利便性の兼ね合いで、利用時には必ずパスワードを入力する形としました。
実は、本サービスは、当行としても初めてのiアプリで、なおかつ「Edyのチャージ機能を備えたiアプリ」としても日本で初めてのものです。
藤田氏
ビットワレットとしてはチャレンジな試みでもあります。仕組みとしては、企業などからユーザーにプレゼントされるEdyを受け取れるプラットフォーム「Edyギフト」を利用しています。今回は、「Edyギフト」をモジュール化して、三井住友銀行のiアプリにバンドルできるよう、開発を行ないました。
舟木氏
「Edyチャージ」は、仕組み上、「振込」と「Edy受取」という2つのアクションになりますが、お客様にとってシンプルになるように、画面遷移としては一連の流れになっています。申請が終わった後にトップ画面に戻ると、確かに2段階になるでしょうが、手続き自体は一回の操作で最後までできるようになっていますので、ユーザーにも理解してもらえるのではないかと考えています。
阪氏
画面誘導がきちんとしていて見た目もわかりやすいというのが一番重要ではないでしょうか。逆に、操作方法がわかりづらいという理由で、お客様の支持を得られないことは、最も避けたいことです。こういったことから、関係者一同は、ユーザーインターフェイスをより良くするために工夫しました。
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シンプルなインターフェイスにこだわったという阪氏
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「アプリ操作は理解してもらえるのではないか」と語った舟木氏
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――チャージ時には105円という手数料が必要ですが、20,000円以上のチャージであれば実質不要になります。この「20,000円」というラインはどのような理由で決められたのでしょうか。
藤田氏
はたして105円払って本当に利用するのか、という点は確かに問われるところでしょう。これまでの「Edy」の利用動向を見ると、ネットワーク経由でのチャージ額は、10,000円前後ですが、現金チャージに比べると高いレベルです。
我々としては、Edyの利用シーンを拡大したいと考えていますので、チャージ平均額が上昇するのは嬉しいところです。しかし、プレミアムを付加する上で、10,000円を基準とすれば、予想以上に多数のユーザーが対象になる可能性があり、プレゼントとするには大規模すぎる可能性があります。一方、30,000円とすれば負担が大きいでしょう。20,000円というのはちょうど良いレベルではないかと考えたのです。
舟木氏
ちなみに当行の「One's plus」というサービスを契約いただくと、外貨預金の預け入れや投資信託の購入などでポイントが貯まります。このポイントは、チャージ時の手数料の割引にも利用できます。
藤田氏
ユーザーの裾野を広げることを考えれば、クレジットカードなどだけではなく、口座からのチャージは確実にニーズがあるだろうと考えていました。都市銀行として初めて三井住友銀行がスタートされるわけですが、おサイフケータイのEdyユーザーはコアユーザーから浸透しています。今回の新サービスも同じような流れになるのではないでしょうか。
クレジットカードでもポイントサービスが用意されていますが、口座からのチャージであればEdyに直接還元されます。ユーザーがどちらを選ぶか、今後の利用動向が楽しみなところです。
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藤田氏は、さまざまな銀行口座からのEdyチャージが可能になって欲しいと述べた
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――ビットワレットと三井住友銀行にとってはどのような利点があるのでしょうか?
阪氏
おサイフケータイの良いところは、どこでも残高がわかることですよね。エンドユーザーの視点からすれば、残高確認した時に、すぐその場でチャージできるのは利便性が高いのではないでしょうか。
一番最初に導入したという点もメリットと言えるのでしょうが、おサイフケータイは100万台を突破し、今後も増加していくでしょうし、Edyのユーザーも拡大することになる可能性があります。
当行ではさまざまなサービスを提供していますが、便利でなければ利用されません。今回のサービスは、差別化と利便性の拡充ですね。「One'sダイレクト」のお客様は、おサイフケータイをスムーズに使えます。当行をどんどん利用していただきたいと考えています。
藤田氏
「Edy」は、プリペイド型電子マネーですので、入金してもらわなければビジネスが始まりません。そういった意味で、チャージ手段の拡充は、非常に重要で急務となっています。今回の三井住友銀行さんの取り組みを契機として、さまざまな銀行口座からのEdyチャージが可能になってくれればと願っています。
――ありがとうございました。
■ URL
三井住友銀行 サービス概要
http://www.smbc.co.jp/kojin/direct/e-money/
三井住友銀行 ニュースリリース
http://www.smbc.co.jp/news/news_back/2004/j100223_01.html
ビットワレット プレスリリース(PDF形式)
http://www.edy.jp/press/pdf/20041217.pdf
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(関口 聖)
2005/04/15 11:23
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