ボーダフォンから発売された東芝製の「V603T」は、テレビにフォーカスした機能を数多く搭載する端末だ。「V401T」以来となる同社のテレビ機能付き携帯電話で、テレビ機能のために360度回転するヒンジを採用し、イヤホンアンテナもリール式にして携帯しやすくするなど、テレビ機能のために細かい配慮が行なわれている。
東芝 モバイル国内営業第二部 営業第二担当の伊藤 浩二氏と、同 デザインセンター 情報機器デザイン担当 主務の中野 展子氏に、V603Tについて話を伺った。
■ テレビに特化して開発
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モバイル国内営業第二部 営業第二担当の伊藤 浩二氏
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置き台にもなる卓上ホルダ
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リール式イヤホンアンテナ
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――まず、V603Tの特徴を教えていただけますか?
伊藤氏
今回、2.5Gの端末ですが、大きく分けて2つあります。1つはテレビ機能で、ただ単にテレビが付いているだけではない、新しいスタイル、新しい操作性のテレビ機能です。360度回転させるとテレビが自動起動すること、持ち運びに便利なリール式イヤホンアンテナ、見やすい角度がついた卓上ホルダなどテレビをいつでもどこでも楽しんでいただけることを含めて「TVビュースタイル」という新提案をさせていただいています。これまでもテレビ機能付きの携帯電話が出ていますが、ほかの機能が不十分だったり、少し古い機種をベースにした端末だったりしました。V603Tはこのあたりをカバーできている端末だと思います。
デザインでも今回全く新しいデザインを採用しています。通常の閉じた状態から、サイドボタンを押しながら360度回転させるだけでテレビが起動するテレビ機能と組み合わせたデザインです。
また横画面でテレビを見られるだけでなく、置いたときに見やすい角度の付いた置き台にもなる卓上ホルダを付属します。今までなら、例えば会社のオフィスで見るときなら手で持ったり、立てかけたりしていたと思いますが、置き台なら楽に見ることができます。
リール式のイヤホンアンテナもパッケージに付属します。これまでもテレビ機能付き携帯電話にはイヤホンアンテナが付属したかと思いますが、カバンの中で絡まってしまい、使うときにほどいたりと面倒で、結局持ち歩かれていないのではないかと思います。イヤホンが無ければ音を出さずにテレビを見たりするわけで、どこでもテレビを見られるというメリットがイヤホンの不便さでマイナスになっていたと思います。今回のリール式のイヤホンアンテナならカバンの中に気軽に入れておけますし、使いたいときにコードを伸ばすだけです。
横画面でテレビを見ているときの使い易さにもこだわっています。テレビ視聴中のチャンネル変更はサイドキーで行なえますし、家庭のテレビと同様、チャンネルが変わる度に隅に変更されたチャンネルが表示されます。音量も同様にサイドキーの長押しで変更でき、画面には音量が表示されます。テレビの基本であるこれらの操作のほかに、さらに込み入った操作もサイドキーの「テレビボタン」で「テレビメニュー」が操作できます。
――置き台に横に置いた状態で、そのまま充電はできないのでしょうか?
中野氏
縦でも横でも充電できるような卓上ホルダを考えましたが、端末を覆うような大げさな物になってしまったのと、人間工学に基づいた傾きの角度を最初に決めて作っていましたので、今回、卓上ホルダで充電できるのは一般的な縦の状態のみです。もちろん、充電ケーブルを直接端末に接続すれば、置き台に横に置いてテレビを試聴しながらでも充電はできます。
■ 独特のヒンジもテレビ向けに採用
――ヒンジが360度回る仕組みは、最近増えてきた回転2軸のヒンジと比べてもおもしろい発想ですね。この仕組みを採用するにあたって、社内で議論はあったのでしょうか?
伊藤氏
通常の折りたたみから次の変化を加えるとき、何故のその変化の必要性があるのか、となります。今回は、テレビを素早く起動する、見やすいポジションになる、といったことを踏まえ、テレビのためにこの形を搭載しました。画面が横になるので、テレビ機能のメニューを横にする点もこだわった部分です。
――テレビを自動起動させるにはヒンジのロック解除ボタンを押しますが、このあたりの機構は苦労されたのではないでしょうか?
伊藤氏
相当苦労しています。多少ゆとりがなければいけませんし、無理やり倒したときにはロックが外れる仕組みも搭載しています。そのあたりは調整は重ねました。また、「TVビュースタイル」を押し出すからには、その状態でのアンテナ感度といった携帯電話の基本性能も欠かすことができません。通常の閉じたときや開いたときと同等のアンテナ性能を保つことも、技術陣が苦労した部分です。
――テレビ機能では、東芝のHDDレコーダーシリーズなどとの連携機能はもっとあっていいと思いますが。
伊藤氏
現状では、液晶テレビの「FACE」がSDカードスロットを搭載していますので、FACEでminiSDカードに録画した番組をV603Tで見ることができます。今後は他の製品とも連携できるよう、垣根を外していかなければいけないですね。
――そもそも、テレビ機能に対するユーザーのニーズはどの程度のものなのでしょうか?
伊藤氏
常々市場調査なども行なっていますが、テレビ機能へのニーズは依然として非常に高いです。また、テレビ機能へのニーズが高い層は、他の機能へのニーズも高いですね。「V401T」ではテレビ機能を搭載しましたが、パケット非対応機でした。また、V601Tは高機能な端末ですがテレビ機能は搭載していません。これまで、テレビ機能が欲しくてもV401Tの購入を見送ったユーザーが潜在的に残っていると思います。V603Tはテレビと他の機能の両方が欲しいユーザーのニーズを捉えることができる製品だと思います。
■ V601Tの機能を継承、作り込まれた東芝らしさを
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デザインセンター 情報機器デザイン担当 主務の中野 展子氏
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――テレビ機能以外で追加されたは機能は、どういうものがありますか?
伊藤氏
基本的にはV601T、V602Tの流れを汲む端末ですので、大きな変更点はありません。細かい点では、例えば迷惑メールの自動フォルダ振り分け機能や、閉じると端末をロックする機能、サブディスプレイの、着信時の個別非表示機能などを搭載し、プライバシーやセキュリティに配慮しています。
――デザイン面ですが、ボディカラーは今までになかったタイプの色ですね。
中野氏
最近はシルバー系、ピンク系、ブラック系というような3色展開と、オレンジ、赤といった彩度の高い、目を引くカラーが各社から出されています。V603Tはディスプレイがひっくり返った状態もあるので、いままでの折りたたみのように丸くデザインすることはできませんし、テレビを見る状態でもキー側が表の顔になるよう、平面を活かした、コントラストで魅せるデザインにしています。キーまわりは額縁、フレームをイメージした枠で囲んだデザインですね。
――ユーザーとしては、3G端末の開発にも期待しているのですが。
伊藤氏
3Gはサービスとしてもちろん魅力的だと思います、今回のテレビ機能では、とくに高校生などの層からニーズが高く、そういった意味で2.5Gの存在意義も、テレビ機能とは相性がいいのかなと思います。
ボーダフォン向け端末におけるTシリーズの位置づけとして、デバイス先行型ではなく、乗せた機能を使い切り、使いやすさや作り込みをしっかりとしていきたいというのがあります。今までも、サブディスプレイなら、メールが読めるようにしたり、占いができるといった細かい遊び機能を搭載していますし、メガピクセルカメラを搭載したときには、撮影した画像を自由自在に拡大表示ができる静止画ビューア機能で、「写真をメモがわりに使う」という提案もしてきました。
1つのデバイスを搭載するからには細かいケアもしていきたいと思っています。ですので、音楽ケータイのようなものを出すときにも、中途半端なものではなく、なるほどと思えるようなものを出したいと考えています。
――本日はどうもありがとうございました。
■ URL
ニュースリリース(ボーダフォン:PDF形式)
http://www.vodafone.jp/japanese/release/2005/050131.pdf
ニュースリリース(東芝)
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2005_01/pr_j3102.htm
製品情報(ボーダフォン)
http://www.vodafone.jp/japanese/products/kisyu/v603t/
製品情報(東芝)
http://www.toshiba.co.jp/product/etsg/cmt/vodafone/v603t/v603t_menu.htm
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(太田 亮三)
2005/02/28 11:24
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