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話を伺ったシャープ 信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 係長の井脇 和則氏(右)と、商品企画部の奥田 計氏(左)
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ボーダフォンから発売されたばかりのシャープ製のV603SH。同端末は、地磁気センサーと加速度センサーをワンチップで実現したモーションコントロールセンサーや、テレビ機能など多くの機能が搭載されている。
発表会では、3Gの90Xシリーズと双璧をなすPDCのハイエンド端末と紹介されており、世界共通の設計や384kbpsの通信速度、パケット定額制などの3G端末に対し、PDCでは端末で楽しめるエンターテイメント系の機能が充実している。
今回、シャープでボーダフォン向けの商品企画を担当する通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 係長の井脇 和則氏と、同じく商品企画部の奥田 計氏の2人に、V603SHの機能や、3GとPDCの今後の同社の展開について話を伺った。
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V603SH
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ボディカラーは、ブリーズィゴールド、ピュアシルバー、ヒーリングブルーの3色
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■ モーションコントロールセンサーで楽しい端末操作を
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「V603SHは、V602SHとV402SHを足して、さらにプラスαとしてモーションコントロールセンサー搭載しました」(井脇氏)
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――まず、V603SHの特長を教えてください。
井脇氏
やはり、まずは日本初となるモーションコントロールセンサーでしょう。このセンサーは、ボーダフォンさんとトヨタグループの愛知製鋼さんの共同開発によるものです。これまで、磁気センサーと加速度センサーというものが個別にありました。これを地磁気のXYZ、加速のXYを合わせて5軸のワンチップで計測が可能になりました。
――新しいセンサーを搭載しても、従来のV602SHとほぼ同サイズを実現されていますが、小さな筐体に実装するのは難しかったですか?
井脇氏
今回の端末の場合、V602SHと大きく違うのはテレビチューナーを搭載した点です。モーションコントロールセンサーよりむしろ、テレビを搭載しながらV602SHとほぼ同じ大きさに収めたことの方が技術的なハードルは高かったです。
逆に、モーションコントロールセンサーは、センサー自体は小さな部品なのですが、搭載する場所に苦労しました。このセンサーは、周りに磁力があるとどうしても誤動作してしまいます。携帯電話というものは、スピーカー、アンテナ、バイブのモーターなど磁力を発生するものばかりが搭載されています。そのため、これらの影響の無い場所を探した訳ですが、スィーベルスタイルのために液晶を反転してビューアポジションにすると磁場も変化します。検討を重ね、結果的に搭載できる場所はワンポイントに絞られました。センサーは、液晶ディスプレイ側の中程あたりに搭載することになりました。
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モーションコントロールセンサーでビューアポジションに新たなUIを提供
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――メニュー系の操作も行なえますが、この機能はどういった意図で搭載することになったのでしょうか?
井脇氏
最初は実用的なところを目指そうとしていたのですが、結果的にはプラスαの機能といった形になりました。基本はキー操作を行なっていただくことを想定しており、新しいUIも用意しました。ちょっとお遊び的な部分もあるかと思います。
端末をビューアポジションで利用した際に、これまでカーソルの移動は側面のアップダウンキーしかありませんでした。今回は、メニュー画面などのカーソルの移動にモーションコントロールセンサーが利用可能で、タテヨコの移動も可能となり、ビューアポジションでの機能アップといった面もありますね。
また、ショートカットも設定可能で、これまでメニューから呼び出したり番号の長押しなどで対応していましたが、これに加えて、モーションコントロールセンサーでも呼び出し可能にしました。手間から考えると、数字キーを長押しした方が早いとは思いますが、使い慣れてくると操作自体が楽しくなってくるのではないでしょうか。
実は端末を大きく振る人や強く振る人もいるのですが、それほど大きな動作は必要ありません。あまり振りすぎて、端末が飛んでしまってガラスを割っても困りますので(笑)。
このほかモーションコントロールを使ったところでは、「シェイクカウンター」と「シェイクサウンダー」という機能も搭載しています。シャイクカウンターというのは、振った回数をカウントしてくれたり、設定した回数をカウントダウンしてくれるというものです。これは人数などを数えるときにカウンター替わりになるのではないでしょうか。カウントする人や用途によって振り方が異なると思うので、5段階の調整を可能にしました。
一方のシェイクサウンダーというのは、振った時に音が鳴るといったものです。これはV-karaがプリセットされているため、盛り上げる機能としてどうかなと思って搭載しました。
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モーションコントロールセンサーの各機能
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発表会では「振るスイング!ゴルフ」のデモが行なわれた
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――今回、モーションコントロールセンサーを使った体験版アプリを2つプリセットされていますね。
井脇氏
そうですね。今までのケータイのゲームとは全く違った感覚で楽しめると思います。ガンシューティングゲームの「The House Of The Dead MOBILE」は、従来の携帯ゲームのようにキー操作のみでも操作可能ですが、センサーを利用した場合は座ったままでは楽しめず、端末自体を動かさなければいけません。もう1つのゴルフゲーム「振るスイング!ゴルフ」では、ゴルフのようにスイングして楽しめます。ゴルフゲームはテレビ出力が可能なため、大きな画面でよりリアルに楽しめるのではないでしょうか。実は、私はガンシューティングの方にはまっていて、会社のいすに座ってくるくる回りながらプレイしています(笑)。
――言葉ではなかなか伝わりにくい部分もあるので、モーションコントロールセンサーは店頭で体験して欲しいところですね。
井脇氏
そうですね。これまでの端末もボーダフォンさんの方でショップに実機を配備していただいており、また我々も体験用モックアップを量販店に設置してきました。V603SHについても同様にやっていこうと考えています。やはり、触っていただかないとわからない機能なので。
■ 録画も可能になったテレビ機能
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「エンターテイメント系に注力した」と語る井脇氏
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――V402SHよりもテレビの映りがきれいになったように感じたのですが、何か変更されましたか?
井脇氏
チューナーユニットについては、ほんの少しですが感度が上がっています。しかし、それ以上に液晶が影響していると思います。今回、モバイルASV液晶を搭載しているため、よりきれいに見えるといった部分もあるのではないでしょうか。また、テレビ機能を搭載する上で、フロントスピーカーはゆずれないと考え、V402SHと同様に今回もヒンジ部にスピーカーを搭載しました。このため、V602SHよりもほんの少しヒンジ部分が大きくなっています。
それと、ホイップ式のアンテナはテレビFMチューナー用のものです。PDCのアンテナについては端末に内蔵しています。
――V602SHとV402SHを足してプラスαの機能を提供されるということですが、待受時間などに変更はありますか?
井脇氏
テレビを搭載したこともあって、やはりその面では少し厳しいと思います。ただし、バッテリーの容量はほんの少しですが大きくなっています。V602SHでは720mAだったものが、今回750mAとなりました。
――録画した映像は録画した端末以外でも見られますか?
井脇氏
録画した端末のみで楽しんでいただくことになります。やはり著作権、肖像権の問題があるためです。実は、この機能自体も当初は搭載が危ぶまれていました。携帯事業者さんと放送事業者さんは、今後地上デジタル放送でどんどん繋がっていくので、きちんとした保護をやっていかなければなりません。我々としてもやるべきことはやる必要があると思います。
これは音楽再生にしてもそうで、市場ではセキュアではないものが出ている中で、我々はセキュアMP3というものにこだわってやっています。
――今SDカードもどんどん安くなっていますが、V603SHでは何MBタイプまで対応していますか?
井脇氏
対応は512MBとなります。
――今回の機能はかなりエンターテインメントに寄っていますね。
井脇氏
そうですね。これまでシャープの端末はどちらかというと、エンターテイメントと言いながら、お堅いところがありました。今回モーションコントロールセンサーを搭載したことで、これまでにないVアプリを搭載しました。開発当初は究極の何でも入り端末を作ろうと始めたのですが、とは言いながら、新しい機能といってもあまりないという状況で、我々の弱かったエンターテインメント系の機能に力を注ぎました。テレビやモーションコントロールセンサーのほか、画面のカスタマイズ機能などにも遊びの要素が取り入れられています。
――ほかに特徴的な機能はありますか?
井脇氏
カメラに関してはV602SHと同じデバイスを搭載しています。カラオケ機能の「V-kara」もバージョンアップされ、対応したデータでは採点機能も利用できるようになりました。なお、V-karaのプリセット曲は、コブクロの「永遠にともに」です。この曲は、結婚式の定番ソングになりつつあるということで、V603SHで練習していただければと思います(笑)。
また、ボーダフォンさんの共通機能で、アドレス帳に登録していないメールが届いた場合に特定のフォルダにメールを振り分ける「迷惑メール拒否機能」も用意されています。この機能では、登録されていないアドレスからメールが届いたとしても、メールの着信表示や音を出さないことが可能です。全部不必要なメールであれば、そのフォルダ内のメールを一括削除できます。ただし、「メールアドレスが変わりました」といったお知らせの場合もそのフォルダに振り分けられてしまうため、この特定フォルダはあくまでゴミ箱ではなく、1つの自動振り分けフォルダと考えられています。
ほかには、会議中や運転中など、メールにすぐに返信できない場合に、あらかじめ指定しておいたユーザーのメールに対して自動応答する「自動応答メール」という機能も用意されています。メールというのは元々、相手の都合を考えて時間のあるときにメールを返せばいいというものでしたが、どうも携帯メールについては、届いたらすぐに返さないといけないというのが若い人の間では普通になってきているようです。そうしたことにも自動応答メールは使えるのではないでしょうか。
――今回の端末のテーマカラーは?
井脇氏
ゴールドです。同時期に出てくるゴールドの端末は他にないということで、カタログ等ではゴールドをメインに打ち出すことになりました。
――ターゲットにしているのは?
井脇氏
若い層ですね。20~30代です。ボーダフォンさんでは、どちらかというと男性をターゲットにしたモデルとしていますが、我々としては両方をターゲットとしています。端末を3色並べて、男性なら何を買うか、女性なら何を買うかとアンケート調査してみると、若い女性にゴールドが多く選ばれているようです。
■ 3G端末もメーカーが先頭に立って展開
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「3Gついてもメーカーが先頭に立ってどんどん提案していく」と奥田氏
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――かなりてんこ盛りな端末ですが、60XシリーズということでPDCの端末ですが、一方でボーダフォンは3Gへの移行を目指しています。どのような展開をお考えですか。
奥田氏
ボーダフォンさんの発表でもエンターテイメント向けのPDCとされていますが、当然、3Gでも今回のモーションコントロールセンサーのように端末の独自機能という形でシャープからどんどん提案していきたいと考えています。今回の3G端末は、国内と海外のUIを共通で設計することで世界同時展開を可能にしました。今後、日本独自の機能やそれぞれの国に応じた使い勝手を追及していく、次のステップに対応したいと考えております。コンバージョンモデルといっても日本が先行してやっていく必要があると思います。
――発表会でボーダフォンの担当者がPDCのハイエンド端末は縮小傾向と話されていましたが、シャープさんとしてはどうお考えですか。
井脇氏
ボーダフォンさんが「お客さん次第」というように、我々としてはマーケットの期待に沿った商品を考えて行きます。V603SHが好調でやはりPDCをやっていきたいという話になるかもしれませんし、現段階ではなんとも言えないというところですね。
――お忙しい中ありがとうございました。
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コンバージェンスモデルとなった902SHは、ボーダフォングループの各事業者から発売された
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キャリアによっては、ボーダフォンのスピーチマークが描かれていない
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Bluetooth機能でハンズフリー通話も可能
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■ URL
シャープ
http://www.sharp.co.jp/
ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/050131-a.html
製品情報(ボーダフォン)
http://www.vodafone.jp/japanese/products/kisyu/v603sh/
製品情報(シャープ)
http://www.sharp.co.jp/products/v603sh/
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2005/02/21 13:25
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