auが昨年11月末より「EZフラット」の名で提供してきたパケット定額制サービスの名称が、今年8月に「ダブル定額」に変更された。月額2,100円から利用できるようになったというのは最も大きな魅力だが、あわせて発売された対応端末3機種は、同社の定額制対応端末として初めてBREWに対応したことになる。
今回は、KDDI コンテンツ・メディア本部 コンテンツ推進部長の竹之内剛氏と、クアルコムジャパン 専務執行役員の山田純氏に、それぞれ定額制をまとったBREWの魅力と今後の展望についてお話を伺った。
■ 機種変更しても、そのままBREWアプリを使えるように
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KDDI
コンテンツ・メディア本部
コンテンツ推進部長
竹之内剛氏
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――夏の新機種3端末のBREWは、従来のものとの違うのでしょうか?
竹之内氏
技術的にはVer.2.1のままで、特に変更されたところはありません。これまでもビジネスソリューションで大容量のアプリを作っていたのですが、コンシューマ向けにはパケット料金と端末メモリの兼ね合いで提供を制限していました。今回は、定額制が前提となっていますから、パケット料金をそれほど気にする必要がなくなりました。開発者向けのガイドラインを甘くし、600KBまでとすることで、より開発の自由度が高まったというのが正確なところです。
――BREW対応端末の場合、発売された直後に利用できるアプリの数が極端に少ないという話がユーザーからの不満の声として聞こえてきます。BREWの場合、端末毎に検証テストを通す必要があり、ユーザーにアプリを提供できるようになるまでに、どうしても時間がかかってしまうという問題もあると思うのですが、この点について何か対策は検討されているのでしょうか?
竹之内氏
実は今回、検証のラインを増やしています。また、検証の業務フローを見直すことで、従来よりも早くアプリの検証を済ませられるようにします。アプリの検証自体も、BREWアプリの開発経験があり、検証合格を続けているコンテンツプロバイダー(CP)さんであれば、優良CPと認定して、検証を簡略化するなどの方向に動いています。KDDIとしても検証にかかる時間の短縮に力を入れていますので、あとはCPさんに経験を積んでいただければ、そうした問題も解消されていくと思います。
――コンテンツの内容がリッチになり、大容量化するとなると、端末内には収まり切らなくなってしまうという懸念もありますが。
竹之内氏
今回も着うたなどではそうしていますが、BREWアプリをメモリカード上にバックアップし、機種変更した後もそのままアプリを使えるようにすることを検討しています。
パソコンの世界を見ていただくと分かりやすいのですが、同じOSなのに違うパソコンに持って行ったら動かないというのでは困ります。BREWもパソコンの場合と同じように、違う端末でも同じように動作させられるよう、共通化を進めて行こうとしています。逆に、そうしなければBREWを採用している意味がありません。
そうなれば、新端末が出ても同じアプリを引き続き利用できるという環境も用意できますから、先ほどの問題も同時に解消できるでしょう。
――最初のうちは大変重宝していた「EZアプリカタログ」ですが、アプリの数が増えるとともに利便性が失われてきているようにも思えます。
竹之内氏
現在、EZアプリカタログは、カテゴリ毎にBREWアプリを並べているのですが、カテゴリ毎に別の入り口も用意できないかと検討を進めているところです。FMケータイの「NOW ON AIR」からの着うた購入などがヒントになると思いますが、コンテンツを購入する方法は、単にディレクトリから選んでいくということから変わってきています。日本人特有なのかもしれませんが、レコメンドされるものを買っていくという傾向が非常に高いのです。ここに訴えかけられるサービスを提供できればと考えています。
■ コアアプリケーションもBREWで
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クアルコムジャパン
専務執行役員
山田純氏
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――我々としては、ようやく普通に使えるWIN端末が出た、という感想を持っているのですが、クアルコムとして現状をどう捉えていますか?
山田氏
auの場合、第3世代の携帯電話というとWINという形でほぼ完成しつつあり、ドコモの場合も、現在FOMAというサービスを提供しており、今後HSDPAという技術を用いてWINのようなサービスをやってくるでしょう。そういう流れの中で、我々が業界に貢献しなくてはいけないというところは、サイズを小さく、コストを安くし、ユーザーにとって使いやすく、求めやすい端末を提供できるようにするということです。来年に向けて、我々クアルコムとしては、BREWとチップセットをうまく活用して、もっとコストダウンをしてもらえるような取り組みをしていきたいと考えています。
――とはいえ、今回のWIN端末は新規契約の場合は2万円で端末を購入できますが、半年経たずに機種変更しようとした場合は6万円もかかりますね。
山田氏
携帯電話は我々が提供するチップセットだけでできているわけではなく、メーカーさんがそれぞれに付加価値を付けようと、いろいろな部品を追加しています。その部分に非常にコストがかかっているということではないでしょうか。
ただ、その2万円と6万円の差が、キャリアさんが販売店に支払っているインセンティブ(販売奨励金)の金額、ということはだいたいお察しがつくと思います。しかし、携帯電話市場全体を見ると、新規ユーザーがこれまでのように急激に増えるというようなことは期待できません。今後はリプレイスメント市場ということになるでしょう。そうなると、キャリアさんが今のようなインセンティブを今後も支払っていくということは難しくなるでしょう。
やはり、今後もこの携帯電話市場が成り立っていくようにするには、端末の値段を下げなくてはいけないという結論に達します。BREWはその面でも大きく寄与する仕組みだと考えています。
――具体的にはBREWを使って何をしようとしているのでしょうか?
山田氏
今までのBREWの場合、Javaのようにゲームなどの特定のアプリケーションを利用するためだけに利用されていましたが、それだけでは端末のコストを下げるようなことにはなりません。BREWを携帯電話の基本的なプラットフォームとして活用すれば、その上でメーカーさんが現状、個別に開発しているUI(ユーザー・インターフェイス)などの部分の流用性が高まり、新機種を開発していく上でもそのまま利用できるというメリットが出てきます。メーカーさんは、この部分の開発にかなりのコストをかけていますので、ここを早急に何とかしなければいけないだろうと考えています。
我々はここ半年ぐらいかけてBREWのバージョン3.1というものをローンチさせようとしていますが、これは携帯電話のかなりコアなアプリケーションもBREW上でやってしまおうというもので、メーカーさん、キャリアさんともに非常に高く評価していただいている部分でもあります。
複数のアプリケーションを切り替えながら動かそうとするとき、各々のアプリケーションをメモリ上に展開しておけばいいという話もありますが、携帯電話の場合はメモリが最も高い部品になっていますので、パソコンのようなわけには行きません。BREWでは、履歴情報をうまく活用し、起動と停止を繰り返し、パソコンのような使い勝手を実現しようと考えました。メモリの消費を抑えながら、いかに使いやすくできるかということです。この部分は高く評価していただいている点です。
ただ、パソコン上ではExcelで作成したデータをWordに貼り付けるということが当たり前のようにやられていますが、現在のBREWではクリップボードがある程度で、それはできません。この機能をバージョン3.1のエクステンションとして提供しようと考えています。
――BREWの場合、いわゆる“勝手アプリ”が配信できないわけですが、この状況を変えようという話は無いのでしょうか?
山田氏
基本的にBREWに組み込まれているセキュリティの機能を弱めるようなことはやりたくありません。電子署名をはじめ、こうしたセキュリティモデルを構築したおかげで、少なくとも近い将来、BREWでウイルスが登場するようなことはあり得ないと考えています。現にSymbianでウイルスが出てきていることなどが報道されていますが、我々からすれば、「ほら、出てきたでしょう」という感じです。
しかし、そのガチガチのセキュリティモデルの中で、幅広いユーザーのニーズが満たせるのかというと、そうではありません。そこで、私などはキャリアさんなどに対して、いよいよBREW上でのJava VMの提供を提案していこうと考えています。
Javaは元々携帯電話の根幹部分に触れずにそこそこのことができるいいプラットフォームだと思います。一般ユーザーに勝手にやらせてもいい部分については、Javaを使ってもいいのではないか、という風に考えています。
■ URL
KDDI
http://www.kddi.com/
クアルコムジャパン
http://www.qualcomm.co.jp/
BREW関連情報(クアルコム)
http://www.qualcomm.co.jp/brew/brew.html
(湯野 康隆)
2004/08/31 17:08
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