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夏の1X WIN 新機種開発陣に聞く
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「W21S」の開発は全力投球
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W21S(エナジーレッド)
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auのCDMA 1X WIN向け新端末として登場した「W21S」は、すっきりしたボディに130万画素CCDカメラやステレオスピーカーを搭載し、「クロスメニュー」というユニークな操作メニューを採用している。
いわば“第2世代”のWIN端末となる「W21S」に込められた開発者の思いは、いったいどのようなものなのか。ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの開発者にインタビューを行なった。
■ 基本コンセプトは「より多くのユーザーをWINに」
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左が商品企画担当の大澤 雄人氏、右がソフトウェア開発担当の石田 明寛氏
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――「W21S」はどのような視点で開発されたのでしょうか?
商品企画担当の大澤 雄人氏(以下、大澤氏)
「WINがスタートして半年以上を経て、より多くのユーザーがWINに移行できるきっかけになるような端末を目指しました。機能面では欠けるところなく、WINによって向上した表現力などにこだわりました。当社として初めてのWIN端末ですから、ソニー・エリクソンらしいテイストで、インパクトあるものにしたいと考えました」
――ボディデザインはどのような考えで作り上げられたのでしょう?
大澤氏
「より多くのユーザーをターゲットとしましたので、筐体はこなれたイメージがあって手に取りやすい2つ折りタイプとしました。これはWINというサービスが、CDMA 1Xの延長上ですから、ユーザーが“WIN端末”ということを意識せずに使えることを狙いました。
ダイバーシティアンテナをキー側ボディの先端とヒンジ部近くに内蔵していますが、これは、デザインの向上に繋がったと思います。
ボディカラーは、従来高機能な端末で多く採用されていた“黒と銀”といったものだけではなく、たとえばエナジーレッドというカラーによって華やかさを演出しました。
カメラの位置に関しては、従来の当社製端末を踏まえたことや使いやすさを考慮しました。ディスプレイやカメラのモジュールなどが1つのボディに入るわけですから、それなりに苦労しました」
ハードウェア開発担当の勝田 賢介氏(以下、勝田氏)
「アンテナ内蔵は、実際に形にしなければ電気的なパターンがどうなるのかわかりませんので、試行錯誤を重ね、調整に注力しました。カメラやディスプレイといったモジュールの配置は、基本的にA5404Sと同じです。コンパクトな印象を与えるために面取りしていますが、削れるところを見つけ出して、筐体の中に収めました」
――従来のソニー・エリクソン製端末ではジョグダイヤル周辺に2つのソフトキーが配されていましたが、「W21S」では4つになりました。
大澤氏
「端末の位置付けとも関連することなのですが、高機能な端末ですので、従来のソフトキーだけではカバーしきれないことがあると考えました。これにあわせて、ディスプレイには4つのキーにあわせた案内が表示されるようにしました」
■ 3つのポイント
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ハードウェア開発担当の勝田 賢介氏
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――「W21S」のポイントを教えてください。
大澤氏
「ポイントは、“音と画と使いやすさ”の3点です。まず“音”ですが、直径16mmのスピーカーユニットを2つ搭載しています。ステレオを際だたせる仕組みとして充電台にサウンドリフレクターを装備しています。EZチャンネルのコンテンツにも、ステレオをアピールするものがあるようですし、こういう端末が出てくることで、盛り上がってくれればと思います」
勝田氏
「このスピーカーは、1年半ほど前からあるメーカーにお願いしていたものですが、なんとか「W21S」の登場に間に合ったという形です。より良い音を出せるように、コンテンツプロバイダさんとも協力して、音源もチューニングを施しました。イヤホンとスピーカーでは異なった聞こえ方になりますので、そういった面にも配慮しています」
大澤氏
「私は、以前オーディオ機器の開発に携わっていましたので、音が良いスピーカーがあると聞いたときはなんとか形にしたいと考えました」
――“画”というのはどういう点を指しているのでしょうか?
大澤氏
「それはディスプレイです。当社にとって2.4インチのディスプレイは初採用となるものです。これはソニーグループ内で開発されたデバイスで、輝度や色合い、コントラストなどのイメージを具体的に伝えました。
全透過型のディスプレイなのですが、一般的に“全透過”と聞けば屋外では見にくいというイメージがあるでしょう。しかし、W21SのディスプレイはEZナビウォークといったアプリケーションもありますので、パネルの開口率やバックライトの効率を向上させ、屋外でも問題ないレベルになりました。
最後の“使いやすさ”という点は、クロスメニューの採用です。WINにはさまざまなサービスがありますので、それらを簡単に手軽に利用してもらえることを目指しました。ジョグダイヤルでも操作しやすいなどのメリットもあるでしょう」
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ソフトウェア開発担当の渡邉 敦央氏
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ソフトウェア開発担当の渡邉 敦央氏(以下、渡邉氏)
「クロスメニューは、“読んで理解する”というよりも視覚的に、直感的に分かりやすくするということを心がけました。選択したことがわかるように縦一列はカラー表示で、横は白黒という形にしています。また細かな点ですが、メニュー選択時にアイコンが少し動くようにしています。
これが完成されたものかと言えば、いつも改善する部分はあると考えています。ユーザーインターフェイスの改善は常にチャレンジですね。変更すれば必ず何らかの声が上がりますが、“変えない”ということを選べば永遠に変更することはできません」
ソフトウェア開発担当の石田 明寛氏(以下、石田氏)
「クロスメニューの採用に関しては、いろいろと議論を重ねました。ただし、WINの多機能さを考えると、今までの通りのものというのは厳しいと判断したのです」
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直径16mmのスピーカーユニットを2つ搭載
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ジョグダイヤル周辺のキーは4つに増えている
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独特の操作感を味わえる「クロスメニュー」
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――クロスメニューは、画面の表示領域に限定されることなく、横に広がりを持たせていますね。たとえばカメラ関連のメニューを追加できるのではないでしょうか。
大澤氏
「カメラ関連メニューをどうするか、という点は議論しました。ハードウェア面ではソフトキーが4つになりましたので、サイドキーを含め、どの機能を割り当てるかということですが、従来通りサイドキーから手軽に起動するという形にしました」
石田氏
「ソフトウェア面では、トップメニューから『マイセレクト』というメニューでカメラを起動できるようにしています。クロスメニューはジョグダイヤルで行き来することを踏まえていますので、あまりにも多すぎれば元に戻れなくなります。現状が適度なレベルではないでしょうか」
――今回、auではFlashや大容量のBREWアプリといった新サービスをスタートしました。「W21S」はソニー・エリクソンにとって初めてのWIN端末ですが、さらに新しい機能に対応させなければいけないということで、いろいろ苦労されたと思うのですが。
石田氏
「いろいろと絡み合ってる部分があり、たとえばEZチャンネルから別の機能を起動するといった使い方になりますから、全てに配慮しなければなりませんでした」
渡邉氏
「苦労した点、と言えば『全てに苦労した』という答えになります。端末によっては何か1つを優先することがあるかもしれませんが、今回は全てのポイントに対して全力投球でした」
■ 文字入力やスケジューラに一工夫
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英数字の場合は毎回半角文字を入力する場合、あらかじめ半角入力を設定できるなど、文字入力関連は細かく設定できる
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――ソフトウェア面で工夫を凝らしたポイントはありますか?
渡邉氏
「文字入力機能において、ユーザーインターフェイスの改善は注力した点の1つです。文字種を選択する際にサブメニューを表示して選択するという形は避けたいと考え、全角半角をすぐ設定できるなどボタン1つで選択できるようにしました。
日本語変換エンジンは、Advanced WnnとPOBoxですが、辞書の変換候補はかなりの数を用意しました。これは反応スピードが遅くなる要因なのですが、なんとか改善してスピードアップさせました。予測機能などは変換エンジンが同じであればメーカーごとの差異はなくなりがちです。しかし、それをどう引き出すかによって他社にアドバンテージをつけられるポイントにもなります。
また改良ポイントの例として、“待ち合わせの時間を伝える”というシーンで使い勝手を良くするために、『あ』『か』と入力されれば、数字が変換候補の最後に必ず表示され、数字が選ばれれば『:』といった記号が先に表示されるようにしています。
メールなどで文字入力する際に、少しでも遅い反応であれば発生するストレスが高いものですので、細かな点ですがかなり手を入れました。見た目は従来に近いものですが、この部分のために内部構造を大きく変更しています」
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「あ」「か」と入力すれば、変換候補の最後に数字が表示される
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数字を選択すれば記号などが優先的に表示される
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アルファベットや数字の入力時は、半角・全角を左上のソフトキーで切り替えられる
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大澤氏
「スケジューラも注力したポイントです。3カ月分のカレンダーが表示され、ソフトキーを一度押せば当日から1週間分が表示されます。また祝日表示についても、もし“子供の日が仕事”ということであれば、その日だけ平日と同じように表示できます」
渡邉氏
「スケジューラを使わない方もいらっしゃるでしょうが、カレンダーとして利便性を高めることで、利用頻度が高まるかもしれません。こういった基本的な機能の向上に努めました」
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3カ月分のカレンダーを表示できるスケジューラ
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ボタン1つで1週間分のスケジュール表示に変更できる
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――以前からモバイルムービーなど動画関連には注力されていますが、「W21S」ではどのような機能が用意されているのでしょうか?
大澤氏
「モバイルムービーは、3種類のサイズを再生できるようにしています。WEGAなどで録画できるモードは全て再生できます」
石田氏
「全画面表示へ“0”キーでスムーズに切り替えられるようにしました。小さいサイズの動画も拡大表示していますし、アイコンを表示しないよう設定できます」
――今回のWIN端末では、著作権のあるコンテンツをメモリカードに保存できるようになりました。
大澤氏
「この部分は、我々だけで対応できる点ではありません。コンテンツそのものが外部に出せるように設定されていなければなりません。
我々としては今後、コンテンツの移動は重要になってくると考えています。購入したものを引き続き使いたいというニーズはあるでしょうから、KDDIさんやコンテンツプロバイダと協力して、何らかの解決法を提案していかなければならないでしょう」
――ありがとうございました。
■ URL
ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ
http://www.sonyericsson.co.jp/
製品情報(ソニー・エリクソン)
http://www.sonyericsson.co.jp/product/au/w21s/
製品情報(au)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/w21s/
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(関口 聖)
2004/08/05 13:06
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