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iモード FeliCa関係者インタビュー
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“縁の下の力持ち”を演じるフェリカネットワークス
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NTTドコモのiモード FeliCa対応機種。左から「F900iC」、「P506iC」、「SH506iC」、「SO506iC」
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7月上旬に開始されるNTTドコモの新サービス「iモード FeliCa」。携帯電話に非接触ICチップを搭載することで、電子マネーやクレジットカード、店舗の会員証などが携帯電話だけで利用できるようになる。
搭載される非接触ICチップは、ソニーが開発した「FeliCa」という規格だ。FeliCaは、定期券やプリペイドカードとして使えるJR東日本の「Suica」やビットワレットの電子マネー「Edy」で利用されているほか、アジアを中心に海外でも広く利用されている。
携帯電話におけるFeliCaの普及を目指して、NTTドコモとソニーでは、昨年10月に合弁会社である「フェリカネットワークス」の設立を発表した。その後JR東日本も資本参加した同社は、携帯電話とFeliCaをつなぐ架け橋とも言える存在だが、実際はどのような役割を果たしているのか。FeliCaの特性といった点とともにフェリカネットワークス企画部 広報課 統括課長の滝沢 冨美夫氏に話を聞いた。
■ FeliCaのライセンスホルダーはソニー
-フェリカネットワークスは、FeliCaのライセンス管理や新技術の開発を行なっているのでしょうか?
滝沢氏
「社名からよく誤解されるのですが、FeliCaという規格はソニーが保有しています。フェリカネットワークスは、携帯電話向けチップの開発を行なっており、主に関連する技術のライセンスとプラットフォームの運営を事業としています。現在は国内向けに活動していますが、FeliCaを搭載した携帯電話が普及してくれば、いずれは海外でも展開するかもしれません」
iモード FeliCaにおいて、フェリカネットワークスが提供するサービスは何なのか。NTTドコモがiモード FeliCaを発表した6月16日に、同社では「“on FeliCa”リモート発行サービス」を開始するとアナウンスしている。
滝沢氏
「このサービスは、FeliCa搭載携帯向けサービスを提供する事業者に対して、そのサービスに必要な初期データをiモード経由でFeliCaチップへ書き込むというものです。一般ユーザーにとっては、知らぬ間に行なわれるサービスで、実際にフェリカネットワークスの存在を感じることはないでしょう」
■ カード型と携帯向けの違いは?
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フェリカネットワークス企画部 広報課 統括課長の滝沢 冨美夫氏
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-現在SuicaやEdyなどはFeliCa搭載のカードを利用していますが、カード搭載のチップと携帯電話に搭載されるチップで異なる点はどこでしょう?
滝沢氏
「カード型は対応するサービス、つまり搭載するアプリケーションが最初から書き込まれていますが、携帯電話では最初は何も入っていません。ユーザーの手によって利用するアプリケーションを書き込む形になります。これが最も大きな違いです」
-これまでのFeliCaと、携帯電話に搭載されるFeliCaでは、ユーザーから見れば近い形かもしれませんが、実際は大きく違うんですね。
滝沢氏
「その通りです。ちなみに昨年ドコモからiモード FeliCaプレビューサービスのアナウンスがあった時点で、携帯電話向けFeliCaの仕様は固まっていました。ただしそれをどうやって携帯電話に実装するのかという点は、アンテナの配置などでメーカーさんがそれぞれ工夫されたと思います」
-iモード FeliCaでは、FeliCaチップのメモリ領域が「共通領域」と「フリー領域」に分かれていますね。
滝沢氏
「事業者様のサービス用途に応じて、鍵をかけられる“共通領域”と、鍵のないサービスができる“フリー領域”に分かれます」
-FeliCaチップのメモリ領域は5KBということですが、搭載できるアプリケーションはその範囲内になるわけですね。
滝沢氏
「そうです」
■ FeliCaは「信頼性は高い、スジが良い技術だ」
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携帯電話向けFeliCaチップ
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iモード FeliCaに対しては、非常に注目度が高い一方で、漠然とした不安感を持つ人は少なくないだろう。滝沢氏は「不安だ、怖いとよく言われるが、何が不安なのかはっきりしておらず困っている」と苦笑する。
滝沢氏
「そもそもFeliCaで使われているOSは、1988年から開発して運用してきたものです。これまでの16年間、一度も破られたことはありません。現在までにアジアなど海外を含めて5,000万枚以上のFeliCaカードを出荷していますが、複製やスキミングといった事例は一切ないのです。こういった実績から、JR東日本などに採用されたと考えていますし、今回のiモード FeliCaに繋がったのでしょう。たとえ携帯電話が盗まれたとしても、現時点では携帯電話内のFeliCaの情報が、サービスを提供する事業者以外の第3者にスキミングされるということは考えにくいと思います」
-FeliCaで何らかのサービスを利用した瞬間に、メールや通話の着信があった場合はどうなるのでしょう?
滝沢氏
「問題ありません」
-自分のFeliCaに入っている情報が他人に読み取られて、他人が成りすます“クローンFeliCa”が登場するという不安はありませんか?
滝沢氏
「先に言ったようにFeliCaは香港やインド、シンガポールなどで広く利用され、不正に利用された事例がありません。こういった実績があるわけです。
セキュリティの要はFeliCa OSになります。ソニーの技術者たちはよく“スジが良い、悪い”といった言い方をするんですが、これだけ利用されているFeliCaは、“スジが良い技術”ということになるんでしょう」
ソニーのWebサイト内で案内しているFeliCaの概要によれば、一度リーダーライターとデータのやり取りを行なうたびに、通信データの暗号鍵は新たに生成されるという。FeliCaでは、こういった技術によって成りすましなどの不正利用を防いでいる。
■ 内蔵バッテリーにしたのは前向きな理由
-カード型ではリーダーライターに近づけた瞬間に電力を得ていますが、iモード FeliCaでは携帯電話の内蔵バッテリーを使います。FeliCaを利用すれば、どの程度携帯電話のバッテリーに影響があるのでしょう?
滝沢氏
「携帯電話の場合、カード型に比べるとどうしてもアンテナは狭くなってしまいます。携帯電話の内蔵バッテリーを利用することで、アンテナが小さくても、出力などカードと同じスペックに変更できます。これにより、既にカード型のFeliCaを利用しているリーダーライターにも適用できます。また携帯電話のバッテリーを使うことで利便性向上も見込めます」
なお、NTTドコモによれば、iモード FeliCa対応のFOMA端末を2台所有しており、一方の端末でEdyなどのアプリケーションを利用し、もう一方の端末にFOMAカードを差し替えたとしてもFeliCa内のアプリケーションは移動しない。また機種変更の際には、利用するサービス、アプリケーションごとにユーザーが個別に移行手続を取ることになるという。
iモード FeliCaは携帯電話と非接触IC技術を融合した全く新しいサービスだ。それだけに、どのような形で発展していくのか、なかなか予想するのは難しい。本誌では、関係各社への取材を通して、その全貌を明らかにしていく。
■ URL
フェリカネットワークス
http://www.felicanetworks.co.jp/
ソニー FeliCa案内ページ
http://www.sony.co.jp/Products/felica/
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(関口 聖)
2004/06/29 20:04
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