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NTTが掲げる「IOWN(アイオン)」って何? 技術展示を見てきた
2022年11月22日 00:00
NTT(持株)は、11月16日~18日に技術展示イベント「NTT R&Dフォーラム 2022」をオンラインで開催した。イベントに先立ち、同社代表取締役社長 社長執行役員の島田明氏による、新たなネットワーク構想「IOWN」に関する基調講演などが実施された。
本稿では、「NTT武蔵野研究開発センタ」で報道陣向けに公開された展示内容の一部をお届けする。
IOWNと「光電融合」
NTTは、次世代のネットワーク構想として「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network、アイオン)」を提唱。2024年の仕様確定、2030年の実現を目指し、研究開発が進められている。
島田氏は基調講演で、「IOWNは、今後のデータドリブン社会におけるデータ量や消費電力の増加を解決する。また、低遅延化へのニーズにも応えられる」とアピール。2023年3月には、「IOWN」サービスの第一弾(IOWN1.0)として、「低遅延」「大容量化」を特徴としたAPNサービスの提供が始まる。
基調講演で、島田氏が「IOWNの最大の特徴」として挙げたのが「電力効率の向上」。そして、その鍵を握るのは「光電融合デバイス」になるという。
「光電融合」は、光回路と電気回路を融合させ、小型化や経済化に加え、高速化や低消費電力化などの性能向上を図るもの。2025年度にボード接続用のデバイスの商用化が計画され、2030年度以降にはIOWN4.0として“チップ内の光化”も図られる。
また、「光電融合デバイス」だけでなく、大きなデータを遠くまで低遅延で送れる「マルチコアファイバ」などの基礎技術を活用し、大容量かつ低遅延の光伝送の実現に向けた取り組みが進められている。
宇宙や水中でもネットワークを
NTTは、IOWN時代の“新たなインフラ”として「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の構築を目指す。人工衛星などを用いてネットワークを築く「宇宙RAN」や、地上のIoT端末の電波を低軌道衛星でとらえる「宇宙センシング」などの技術が活用される。
これまで高速な無線通信を行うのは困難とされていた海中でも、海水のにごりの影響を受けない超音波を用いる「海中音響通信技術」などを用いて、課題の解決を図る。無線での遠隔操作が可能になる「完全遠隔無線制御型水中ドローン」も開発され、静岡県静岡市で実証実験が実施される予定となっている。
高周波数帯を最大限に活用するために
6G/IOWN時代の無線通信における活用が見込まれるサブテラヘルツ帯(90GHz~300GHz)の電波は、直進性が高く、遮へい物などの影響を受けやすい。そこで、通信がつながらない“穴”が生じやすい点が課題とされている。
NTTでは、通信エリアの穴をすみやかに見つけられる方法として、「カラーイメージ法」を利用。従来の「レイトレーシング法」よりもシンプルな計算で済むだけでなく、通信エリアの推定の精度も同等もしくはそれ以上になるという。
通信エリアの穴を補完するための装置としては、「置くだけアンテナ」を開発。誘電体導波路上に同アンテナを置くことで、狙った方向に電波を届けることができ、柔軟なエリア構築が実現する。
また、高周波数帯の電波を高品質で伝送するための「テラヘルツ帯信号歪補償技術」や、分散アンテナを連携させることで電波を確実に届ける「高周波数帯分散MIMOシステム」などの技術も活用しながら、次世代の超高速・大容量通信の実現を目指していく。