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KDDI総研ら、世界初40Tbpsを超える大容量光通信の伝送実験に成功――Beyond 5G/6G時代へ大容量省電力化

 KDDI総合研究所と古河電気工業のグループ会社であるOFS Laboratoriesは、光通信で40Tbpsを超える大容量なコヒーレント高密度波長多重(DWDM)信号の伝送実験に世界ではじめて成功したと発表した。

 KDDIは、NTTが提唱する「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network、アイオン)」の国際団体「IOWN Global Forum」へ加盟しており、長年培ってきた光通信技術を活用し、低消費電力で大容量化を実現できる「オールフォトニックネットワーク」の構築を進めている。

 フィジカル空間とサイバー空間をこのオールフォトニックネットワークでつなぐことで、よりよい社会の実現を目指す旨は、KDDIの髙橋 誠社長も都度説明している。

 KDDIは、前身企業を含め長年国際通信に携わっており、光海底ケーブルの研究も積極的に進められている。KDDI 技術統括本部 技術戦略本部長の大谷 朋広氏によると、この30年間に光海底ケーブルシステムの伝送容量は約100万倍に進化したが、Beyond 5Gや6Gの時代においてはこの伝送速度以上の速度が求められるという。

KDDI 技術統括本部 技術戦略本部長の大谷 朋広氏

 KDDIでは、光通信の大容量化を図るべく、ケーブル内のファイバー数を増やす「多心化」、1本の光ファイバーに複数の異なる波長の光信号をのせる「WDM技術(波長多重技術)」、1つの波長あたりの信号速度を上げる「デジタルコヒーレント技術」の3つの技術を中心に研究を進めている。

 一方で、隣接するファイバー同士でのいわゆる混線であったり、波長を複数重ね合わせる(WDM技術)ことによる波長分散(異なる波長では到着時間がずれてしまう)であったり、大容量化や長距離化に関して課題が多い。

 KDDIでは、これらの課題に損失が少ない新しい部材の開発や信号処理の高速化などで課題解消に取り組んできたが、今回の取り組みでは、これらに加え、新たな周波数帯「O帯」(220~238THz)の活用で、40Tbpsを超える大容量データ伝送を実現したという。

 光通信では、さまざまな周波数帯が使われており、現在は主にC帯(191.5~196THz)やL帯(184.5~191.5THz)が使用されている。使用当初は十分な帯域だったが、近年は通信の大容量化でより多くの伝送容量を確保できる周波数帯を使用すべく、研究開発が進められた。

 今回使用した「O帯」では、帯域が既存のC帯やL帯よりも大きく、波長分散の影響も小さいという。また、増幅器や信号処理に関わる装置も少なく済むことから、従来よりも低消費電力となる。

 KDDI総研 先端技術研究所 光部門長の釣谷 剛宏氏によると、既存のC帯やL帯に加えて、O帯をミックスさせて活用させることで、ネットワーク全体で大容量化と省電力化が実現できるという。

KDDI総研 先端技術研究所 光部門長の釣谷 剛宏氏

 KDDIとKDDI総研では、通信の大容量化以外にも長距離化や高信頼化に向けての研究が進められている。たとえば、マルチベンダー対応の光ネットワーク監視・管理制御技術では、ベンダーがまたがるネットワーク構成であっても、自動で障害復旧させられる。これにより、運用コストを抑えながらも高信頼な光ネットワークが構築できるようになる。

 また、オールフォトニックネットワーク推進のため、先述の「IOWN Global Forum」以外にも多くの関連団体に加盟し、パートナーリングを強化している。今後は、グローバル標準獲得を目指し、さらに取り組みを進めていくとしている。

【お詫びと訂正】
本稿初出時、「コピーレント」としているところがありましたが、正しくは「コヒーレント」です。お詫びして修正します。