法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)
2025年の通信業界はどうなる? 通信キャリア、メーカーの展望を予測【新連載】
2025年2月7日 00:00
「法林岳之・石川温・石野純也・佐藤文彦のスマホ会議(仮)」は、幅広くモバイル分野を取材・執筆する法林岳之氏、石川温氏、石野純也氏、佐藤文彦氏の4人がモバイル・スマホ界隈の最新動向などを語り合うコーナーです。現場にはケータイ Watch編集長の関口聖も同席。執筆は佐藤文彦氏が担います。
タイトル末尾の『(仮)』は各々の見解をぶつけあい、新たな視点を生み出すことを目指し、4人が何かにとらわれることなく語り合う場……といった意味から付いたとか付かなかったとか。読者の皆様とともに4人の話を楽しんでまいります。
通信業界を中心に活躍するライター4人による「スマホ会議(仮)」。今回は2025年の通信業界の展望や、注目しているポイントについて会議していきます。
2025年通信キャリアの注目ポイントは「通信品質」と「金融サービス」
佐藤
通信業界の2025年の展望ということで、まずはキャリアについては、どのようにお考えですか?
石川氏
今年の展望という意味では、ドコモが銀行をおさめられるのか、あとは、オープンシグナルで1位を獲れるのか。
石野氏
Sub6基地局数を1.3倍、4G転用の5G基地局数を1.4倍に増やす計画が、2025年3月まで。果たして間に合うのか。
法林氏
ドコモが通信品質に手を入れているのはわかるけど、ソフトバンクがAgoop、KDDIがWi-Fiアプリなどに、通信品質の調査機能を仕込んでいたところ、ドコモは当初、d払いでやると言っていた。それなのに、d払いが圏外での決済に対応して、びっくりしたね。
石野氏
圏外の情報も蓄積されるんじゃないですかね。PayPayもシビアで、圏外じゃなく、ちょっとしたパケ詰まりでも、オフラインモードに切り替わります。意外と、そういうデータを蓄積できるのかもしれません。
石川氏
若干、自虐にも見えるけどね。
法林氏
頑張っているのはわかるけど、もう少しマメにというか、3カ月に一回くらいは、進捗状況を説明してくれないと、改善したイメージが付かない。あと、エリアが狭いとかではなく、データが流れないという話なので、なかなか理解してもらいにくい話になってしまっているのが残念。
石野氏
難しいのは、一過性のものではないというところ。改善はされてきているのかもしれないけれど、根本的に、TD-LTEの2.5GHzくらいの基地局がないのと、3.5GHzもアドオンにしかなっていないので、アンカーバンドを掴むときに、通信が詰まったりする。
KDDIとソフトバンクは、UQだったり、WCPでまず掴んでから5Gという誘導ができるのでやりやすい。構造的な問題と、持っている周波数帯の問題という、根本的な差があるので、頑張っても難しい。
通信システムが複雑化しているので、昔のように、すぐにキャッチアップもできないし、失敗した時のリカバリーも難しくなっています。
佐藤
楽天モバイルはいかがでしょう。
石川氏
楽天モバイルは、堅調にユーザーを増やしてはいるけど、その分、ネットワークの心配もある。どうバランスをとるのかに注目です。一般紙は黒字化するだろうと構えているけど、ネットワークは、ユーザーが増えるほど追加の設備投資が必要。なかなか黒字化は難しいと思っています。今年は社債の償還は乗り切れるけど、来年以降はそうではないので、どうなるのか。
石野氏
大変なことに変わりはないけど、ユーザーは増えている。石川さんがおっしゃった通り、ユーザーが増えたことで、ネットワーク品質が落ちている気もします。
特に地下鉄が繋がらなくて、この前試したら、地下鉄から降りるまで、my 楽天モバイルにもアクセスできないくらい、一切繋がりませんでした。5MHz幅しかないので、仕方ないと言えば仕方ないけど。
法林氏
トンネル協会(※移動通信基盤整備協会)と連携して、基地局を増やすって話だよね。
石野氏
そうなんですけど、増やす計画が来年の3月までなんですよ。あと1年以上かかると考えると、都市部のユーザーが我慢できるのか疑問です。
法林氏
昨年、料金プランに年齢別のオプションを足したのはいいし、ライトユーザーを獲得できていると思うけど、法人でも使わせつつ、ライトユーザーも増えてくると、地下鉄や屋内で繋がらないといった問題が起こってくる。この辺りにどう対処するのかが、今年の楽天モバイルのカギになるよね。ユーザーが増えて、ネットワークが耐えられるのか。
関口
昨年の楽天モバイルの説明では、5Gエリアが広がって、ハイブリッドに繋がるユーザーが増えて、トラフィックがそっちにさばけるようになったとのことです。
法林氏
それって地上の話なんだよね。問題は屋内への引き込み。
石野氏
どこか建物に入ると繋がらない、地下鉄でも繋がらない。確かに楽天が弱い所ですけど、滞在時間を考えると、そこで繋がらないのは厳しい。外で5Gに繋がっても、そんなにうれしくないですからね。
石川氏
とりあえず、面展開はどうにかなったけど、次は深さ。これからも設備投資は必要になります。
法林氏
KDDIのローミングは、来年が最後だもんね。本当に今年が勝負の年になる。
石川氏
あと、お試し割もなかなかやりませんね。
石野氏
ちょっとひどいですよね。言い出しっぺで、あれだけやれって言っていたのに。
石川氏
やったらやったで、ユーザーが4カ月に1回逃げてしまいそうな気もするけど。
関口
プロユーザーというか、乗り換えたい人の餌食になってしまいそうでもありますよね。
石野氏
ある意味、それが容易な環境になっている。eSIMがあって、2回線目のオンライン専用プランなら、そんなにサービスを紐づける必要もない。1回線目にサービスを紐づけて、2回線目をガンガン乗り換えるといった使い方ができてしまいます。面白いことができそうな一方、めちゃくちゃになりそうな気もします。
関口
KDDIの注目は、ローソンとの取り組みですかね。
石川氏
新社屋ができて、未来のコンビニ1号店ができますね。
法林氏
多分今度の決算会見でも出ると思うけど、銀行を取って証券を手放したことを、どう受け取るか。KDDIの意図なのか、先方の意図なのかはわからないけど、説明が足りない部分ではある。
石野氏
ちょっと不可解ですよね。
法林氏
そうだよね。KDDIは、通信事業者として、銀行をちゃんとやりたいという意向は見えるし、これまでもauじぶん銀行は面白いことをやってきたけど、メインバンクになれるのか。
関口
ドコモもそうですが、通信事業者にとって、本当に銀行は必要なんでしょうか。
石川氏
いろんな考え方があって、auじぶん銀行みたいに、住宅ローンで35年、50年と囲い込む狙いもある。ドコモの前田社長(株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 前田義晃氏)が以前おっしゃっていたのは、自前で銀行を持ち、d払いのお店の銀行になると、ユーザーが支払った決済のお金を、すぐにお店に渡せる。別の銀行を挟むと、手数料も発生するし、時間もかかる。お金回りがよくならないので、d払いに紐づくドコモ銀行が欲しいという視点もある。楽天銀行とか、PayPay銀行は、法人口座に強い。
法林氏
僕がよく行くお店の人に聞いたら、d払い、au PAY、PayPay、楽天ペイで、お金が入ってくるタイミングが全然違うらしい。決済はその場で終わるけど、最終的にお金がいつ入ってくるのかは、サービスによって全然違う。
石野氏
PayPayとPayPay銀行を使うと、めちゃくちゃ早いんですよね。
法林氏
ただ、PayPay銀行とか楽天銀行が厄介なのは、そこからお金を引き出す時にどうするのかというところ。
石野氏
まあ、コンビニATMがありますから、そこはなんとか。
石川氏
去年始まったデジタル給与は、最初こそだれも使わないと思っていたけど、タイミーのようなスポットワークと連携すると効いてくる。お店からすると、PayPayで支払われた売り上げを、スポットワークの人にPayPayで渡せれば、現金を使うことなく、しっかりとお金が回る。個人もあるけど、法人向けと考えると、銀行の有り無しは、結構大きい。
法林氏
世の中の決済サービスがクレジットカードからコード決済に移行しはじめて、ポイントが付くようになったのは、手数料分がポイントになっているという見方ができる。銀行も実は同じことで、振込手数料をどうするのかを考えたときに、自社で回したほうが手間は減るし、安心感もある。
石野氏
各社が、クレジットカード割引をつけているのも、自分たちのクレジットカードで決済してくれれば、手数料が持っていかれないから、その分値下げするという発想ですからね。
法林氏
決済はまだまだ今年も注目だね。KDDIはこの先、銀行をどう運用するのかが見えていないし、PayPayはPayPay銀行を子会社化している。
石川氏
KDDIの動きを見ると、銀行は重要だけど、証券はちょっと遠いのかなとも思いますね。
法林氏
KDDIがauカブコム証券を三菱UFJに渡したのは、NISAもやって、携帯電話会社としていろいろ紐づけてみたけど、増える数はたかが知れているので、見切りをつけた部分もあると思う。もう一方で、三菱UFJ側としても、もう少しやりようがあるのかもしれない。
身近な例で言うと、今はマネックスdカード積立があって、auカブコムもau PAYカード積立をやっているけど、そのカードでしか積立ができない。これを打破するためには、証券会社がいろいろな銀行とやり取りして、複数の会社でできるようになると、クレジットカード会社としてはおいしいよね。
関口
短絡的かもしれませんが、コード決済は、クレジットカードや既存の金融の仕組みをパスして、ダイレクトにキャリアと顧客、お店を自分たちのネットワークで繋げている。銀行もその枠に入ってきて、既存の金融機関をバイパスしようとしているところがあるということですか。
石野氏
そうですね。カードもそうです。
石川氏
それで言うと、先頭を走っているのはauじぶん銀行だし、次にPayPay銀行になる。ドコモは銀行がまだないし、楽天はもともとトップだったけど、最近はみずほ銀行に持っていかれている感じがある。
法林氏
一方で、証券は楽天とSBIが圧倒的に強い。
石川氏
そうなんですよ。証券で2社に歯向かうのは無理というのが、KDDIの判断なのかな。手数料勝負になっていますし。
法林氏
この2社は『取引手数料ゼロ円』をはじめたので、他社が対抗するにはかなり体力が必要。口座数が1000万を超えてるから、IPO(株式公開)で新規公開株の取り扱いをどこにするかと考えると、当然大きい会社のほうが選ばれる。
決済ネタだと、最近各社が金融を絡めたプランを出しているので、コード決済をちょこちょこ使うようにしたけど、eximo ポイ活と、dカード PLATINUMのポイント還元は強烈だね。すごい勢いでdポイントが返ってくる。
意識して使うようにはしたし、3社均等に使えているわけではないけど、一番勢いがある。逆に、auマネ活はあんまり……。
石野氏
そうなんですよ。ペイトクもガンガン返ってくるんですけど、KDDIは全体的に渋い。
石川氏
条件が多すぎ。
石野氏
あと、還元が複雑。KDDIの料金プランって、昔からやたら複雑なんですよね。料金プランを考えている人が賢すぎるというか、偏差値が高すぎる。
法林氏
使い方はそれぞれなので、どれがお得とは一概に言えないけど、PayPayは光熱費の支払いにPayPayカード ゴールドを使うと、1.5%のポイントが還元される。これは大きいなと思います。あと、PayPayはETCのポイント還元も頑張っていますよね。
石野氏
ただ、LINEヤフーグループ全体として、ポイントを絞る方向ですよね。
石川氏
PayPayは上場を控えているから、おとなしくしているというか、優等生になろうとしていますよね。
石野氏
ヤフーショッピングも、期間用途限定のPayPayポイントが2月からできて、ヤフーショッピングなどでしか使えない。あれは、正直使いにくいですよね。
法林氏
クレジットカードは4社とも頑張っているけど、キャンペーン競争が落ち着いてきた。料金プランとの連動は便利だけど、乗り換えにくくはなってきた。
石川氏
そうなんですよね。マネ活をやめるか考えたけど、結局あんまり変わらない。
法林氏
しかも、端末を買う時には、マネ活に入らないと安くならない。
石野氏
KDDIはそのあたりが渋いですよね。
法林氏
変更した料金プランを、いつまで契約しなければならないのかを明示していないのもちょっといやらしい。
石川氏
ALL STARパックなら、いろいろとサブスクの契約をすると考えると、お得感がありますけどね。
関口
サービス面で見ると、ドコモの爆上げセレクションに、Nitendo Switch Onlineが追加されたのも話題です。
法林氏
こういうのはもっとやったほうがいい。お金の流れを明示できるように、キャリア側も決済サービスを作らないといけないけど、キャリアにお金を払えば、各サービスが使えるという状態にしてくれると、あちこちでアカウントを作って、支払い方法を紐づけてといった作業がいらなくなる。
石川氏
日経トレンディのヒット予測に、サブスクスーパーバンドリングっていう言葉があります。要はサブスクを1カ所で管理しようというものですけど、まさにキャリアがやっていることですよね。
法林氏
サービス提供会社としては、多少、お金がかかるかもしれないけど、アカウントをハックされました、個人情報が漏洩しましたといったリスクを考えると、お金の取りっぱぐれもないし、楽なんじゃないかな。
石川氏
サービスの解約も少なくなりますしね。爆上げセレクションはすぐに解約できるけど、敷居が低くて入りやすい。
法林氏
単品でサッと入れるよさもあるよね。
関口
最近、映画館で映画を観て、初めてリピートしたい気持ちになったんですけど、ここでPontaパスの魅力がぐっときましたね。
石野氏
ただ、言わせてもらうと、Pontaパスも結構渋い。月曜日に映画は見に行きにくいとか、ローソンユナイテッドシネマが近くにないとか。
法林氏
映画はシアターが場所によって、偏っているので、結構難しいよね。
石野氏
そうなんです。自分の場合、最寄りがお台場なんですよ。そこまで行くと、電車代がPontaパスの割引額を上回ってしまいます(笑)
法林氏
まあ、映画館に行きやすいネタを作ってくれているのはいいよね。
石野氏
お得ではありますから、ハマればいいですよね。Pontaパスも、ローソンあげすぎチャレンジも、もう少し踏み込んでほしい。
法林氏
あとさ、クーポンの使い方がわかりにくいよね。
石川氏
使いにくいですね。どこを見たらいいのかよくわからない。
石野氏
しかも、割引額もそこまでではない。最初はよかったんですけど、だんだんしょぼくなってきました。
法林氏
決済してみたら、この1品は実質タダで買えたというくらいまで引いてくれるといいんだけどね。ちょっと脱線するけど、シャオミのオンラインストアのクーポンはよくできている。
購入金額に応じて、適用できるクーポンが変わるんだけど、わざわざ事前に受け取ったりはしなくていい。決済のページに行くと、勝手に選択される仕組みになっている。
関口
キャンペーンは全部こうなってほしいですね。
法林氏
申請してとか、事前にエントリーしてとか、面倒すぎる。
石川氏
ただ、事前エントリーは、ユーザーにキャンペーンを認識してもらうプロセスでもある。勝手に割り引かれると、ユーザーが気付かなかったりします。
法林氏
事前エントリーはまだしも、エントリーをしたら、自動的に適用されるようにしてほしいね。
石野氏
dポイントクラブのキャンペーンに関しては、多すぎて認識以前の問題ですよ。終了した後に見つけるとむかつきますよね。
石川氏
こういうのを、AIスマートフォンが教えてくれるようになるといいよね。
法林氏
本当だよね。店舗に行ったら、自動的にクーポンを探して表示してくれたりすると便利。
石野氏
AIエージェントみたいなものは出てきているので、いずれ出来そうな期待感もありますよね。
法林氏
最新のAIスマートフォンを使っているから、自動でクーポンが適用されてお得みたいな世界はあるかもね。
ソフトバンクでも採用されたGalaxy S25シリーズ
関口
AIスマートフォンと言えば、Galaxy Sシリーズの最新モデルが発表されています。注目はやはり、ソフトバンクでも取り扱われる点ですね。
石川氏
Galaxyのイベントで、ソフトバンクの寺尾さんに、なぜGalaxyを取り扱うのかと聞いたところ、リセールバリューが大事だと。
端末販売のガイドラインが変わって、端末を安く売るためには、リセールバリューが重要。要は、グローバルで流通している端末じゃないと、高く付けられない。iPhone、Pixelの次は、Galaxyだということみたいです。
そう考えると、アップル、グーグル、サムスンの3社は、ハイエンドモデルを、高いリセールバリューでキャリアに売っていけるので、生き残れる。対抗できるのは中国メーカーで、大量に端末を作って、安くキャリアに納入できる。中途半端なところにいるのが、日本メーカーです。
ただ、シャープはフォックスコン、FCNTはレノボに入ったことで、安く作って、数で稼ぐプロセスができ、なんとか生き残る道が見えている。じゃあ、他の日本メーカーは、どう舵を切るべきかの悩みどころ。
石野氏
この前、Xperiaのリセールバリューを調べたんですけど、結構安いんですよね。
法林氏
昔ほどじゃないけどね。
石野氏
そうなんですけど、割合にすると、Galaxyと結構差がついているんですよ。
法林氏
リセールバリューは、売買の方法論の話。一方で、数年前に業界の人から話を聞いたところ、ソニーは、悪いという意味ではなく、安く作るのに力を入れないと厳しいのではという指摘があった。
シャオミとか、モトローラといったメーカーと、ソニーのモノの作り方が、根本から違ったのかなとも思う。ここはソニーが考えていかないといけない部分でしょう。
石野氏
ただ、ソニーは昨年、Xperia 5シリーズの新モデルを出さなかったことで、Xperia 1シリーズが売れているという話もありますよね。
法林氏
それは、Xperia 1シリーズのユーザーとXperia 5シリーズのユーザーが一緒になっただけじゃない?
石野氏
まあまあ。あと、21:9ディスプレイをやめて、一般的な比率にしたことで、伸びているという話もありましたね。
石川氏
それで言うと、CES 2025で、アメフトのコーチが使うヘッドセットを、ソニーがやるというものを見ました。ベライゾンのネットワークを使って、5Gでやると。ソニーは、こういったソリューションに舵を切りつつあるのかも。コンシューマーもやっていくだろうけど、法人で5Gの技術を使っていくという、両輪での生き残りかたになってくるのかもしれません。
法林氏
ちょっとモトローラっぽいよね。
関口
エンタメ業界に強いのが、いかにもソニーらしいですね。
石野氏
エンタメに強い京セラって感じもする。
石川氏
スポーツエンタメだね。
石野氏
あと、もともとソニー・エリクソンだったこともあって、今でもエリクソンと研究開発などもやっています。あまりフィーチャーされないけど、通信関連テクノロジーの特許なども持っていたりするのも強み。それを最終的に、コンシューマー向けの製品にきれいに落とし込めていないという感じですかね。
法林氏
端末そのもので見ると、ハイエンドモデルは20数万円になっているけど、そうじゃないところのゾーンが欲しい。
石野氏
そうですね。ソフトバンクが月額3円で売れる価格帯の端末が、ソニーにはない。もともとはXperia 5シリーズがそこだったんですけどね。
法林氏
ほかのメーカーを見ると、サムスンがFEシリーズを出したり、シャープはAQUOS senseの上になるAQUOS R9を出したり、10万円前後のラインナップを拡充している。
石野氏
10万円プラスマイナス2万円程度の価格帯ですね。上を見るとGalaxy S25があって、下を見るとGalaxy S24 FEがいるあたりの層。
法林氏
ここの価格帯なら、リセールバリューがそこまで高くなくても、買いやすいよね。
石野氏
10万円より上の端末はリセールバリュー重視、10万円より下の端末は、買ってそのまま持っておくといった形ですよね。
佐藤
端末購入のガイドライン改正についても、もう少しうかがえますか?
石野氏
これも寺尾さんと完全に意見が一致したんですけど、誰も幸せにならないですよね。キャリアは計算が大変だし、ユーザーは端末価格が高くなって大変だし、リユースモバイル・ジャパンに聞いたら、集計がとにかく大変だと。
石川氏
袋小路に入っているというか、何としても割引をさせないという意思で、ガチガチにルールを作りすぎて、誰も理解できなくなっている状況。今更、ミリ波の割引を増やしても、意味ないですよね。
石野氏
その中で、ソフトバンクがすごいなと思ったのは、Galaxy S25 Ultraに、ちゃっかりミリ波割引を適用しているんですよね。Pixel 9 Pro Foldもです。抜け目ないですよね。
法林氏
ミリ波割引も含めて、石川君が言った通り、端末販売の割引のコントロールの仕方にも問題はあるし、民間企業が集まった業界団体のデータを元に買取価格を算出していいのかという問題もある。集計の問題もあるし、どうするのか。
石川氏
今回、ソフトバンクがGalaxyの取り扱いで頑張っているので、ソフトバンクから買おうかと思ったら、Google Fiが半額で販売していて、それならアメリカから買おうかなと思ってしまいました。それくらいやれば、ユーザーはAIスマホやミリ波対応端末に乗り換える。思い切らないと、日本は停滞していく一方だなと感じてしまいます。
昨年末に改正があって、月額1円端末がなくなるかと思えば、ワイモバイルが新しく始めた。店頭に行くと、ドコモもiPhone 14を1円で売っていたりする。ただ、1円のために、2年前の機種を買うことが、本当に幸せなのかとも思う。
石野氏
iPhone 14はいい機種ですけどね。
法林氏
端末の良し悪しは別だけど、この春からApple Intelligenceが日本語対応といっている中で、それが使えない機種を売ってどうするのかと。
石川氏
端子はLightningですしね。
石野氏
僕らが買うならそうですけど、AQUOS senseシリーズあたりを求めているユーザーからすると、iPhone 14はゲームもバリバリ動くし、いいと思います。子供にもいいですしね。
関口
ただ、夢がないですね。
石川氏
そうですね。それって結局、少し前の海外と一緒。以前は、日本ではハイエンドが売れていたけど、海外では型落ち機種が売れる。日本で2年くらい使った端末が海外に流通する感じ。このままだと、日本市場も寂しい業界になってしまうなと。
石野氏
ただ、ガイドラインも、あまりにも面倒だと、また改正されるでしょう。ガチガチに縛りすぎて、本来の目的を見失っているような気もしますし。
法林氏
そもそもやるべきことは、料金を下げることと、電波を有効活用させること。今は規制のための政策になっていて、業界の舵取りをする政策になっていない。
石川氏
本末転倒というか、1円スマートフォンを塞ぐためのルールが、新しい1円スマートフォンを生み出している。
石野氏
というか塞げないですよね。端末購入プログラムまで加味すると、売ったものは割引ではないと言えばその通りなので、実質1円と言われたらどうしようもないし、それでいい気もする。残価をちょっと盛るくらいはいいでしょうとも思いますし、以前のように20万円、30万円のキャッシュバックがあるわけでもない。そんなに目くじらを立てるべきではないと思います。
石川氏
結果として、Androidスマートフォンが高く見えちゃっているよね。
法林氏
政府としては、iPhoneが市場シェアの半分を持っているのをあまり快く思っていない。だからこその政策なのに、結果的にどちらが売れているのか。
石野氏
一番の被害者はPixelですよ。
法林氏
まあ、他メーカーに言わせれば、Pixelの豪快すぎる割引もひどいけどね。
石野氏
個人的にやっちゃったなと思っているのが、ガイドラインの改正後に、Xiaomi 14T Proを買っちゃったんですよね。月額3円だったのに、こんなに高くなるのかと、後悔しています。
最近、ようやくシャオミが日本でも盛り上がってきている中でのガイドライン改正は、ちょっとかわいそうですよね。そもそも、市場参入したばかりのメーカーに、リセールバリューが付くわけがない。このままいくと、二度とBALMUDA Phoneのような端末は出て来なくなってしまいます。ここから新規参入するメーカーが果たしてあるのかという話ではありますけど、そういう目配せも足りていません。
石川氏
市場が硬直するだけだよね。何が目的なのかと。
関口
割引の話で言うと、MVNOの立場はどうなのでしょうか。
石川氏
IIJはしたたかというか、結構攻めていますよね。法人事業の調子がいいから、攻められる。
法林氏
中古業者も、親会社が変わって、法人営業ができるようになったから、端末を高く買えるようになったという話もある。法人営業を持っているかどうかで、同じ端末でも買取価格が結構、違うようです。
そう考えると、リユースモバイルジャパンのリテールの買取価格が基準なのに、例えばAQUOS senseが、こっちだと2万円、別のところだと3万円と、会社によって状況が変わってしまう。計算のベースになる金額に、そんなに差が出てもいいのかという疑問もある。
石野氏
そこは、加重平均をかけて、ある店舗では何台買い取ったといった台数のばらつきと値段を見て、掛け算して、平均でならしてっていう作業をしているみたいです。
石川氏
そこまで複雑なことをする意味があるのか。
法林氏
そんなことやらなければいいのに。MVNOの話に戻すと、端末を絡めて販売できるのは、もうIIJくらいかな。
石野氏
あと、KDDI傘下ではありますけど、J:COMは新品のPixelを導入したりもしていますね。
石川氏
ユーザーとしては、通信会社を変えるタイミングで、端末を変える人が多いはず。
石野氏
僕は2つあると思っています。iPhoneとかを使っていて、そのまま乗り換えられるのであればと、回線をスイッチするパターンと、石川さんがおっしゃった通り、契約回線と一緒に端末を変えるパターン。
法林氏
どちらにせよ、端末は用意しておいてほしいよね。