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“スマホの中に光を連れていく”――NTT新会社がIOWN構想に向け取り組む「光電融合デバイス」とは

 テクノロジーの進化によって人々の生活がどんどん便利になる一方、膨大なデータ処理に伴う電力消費の増加など、解決すべき課題もある。そうした課題の解決につながるものとして期待されているのが、NTTイノベーティブデバイスが研究を進める「光電融合デバイス」。

 従来は電気が担っていた部分を光に置き換えることにより、APNやサーバーなどで消費電力の低減を実現する。今後の普及が期待される光電融合デバイスについて、同社の塚野英博代表取締役社長と富澤将人代表取締役副社長が、現状や今後の展望を紹介した。

塚野氏
富澤氏

新会社「NTTイノベーティブデバイス」とは

 NTTイノベーティブデバイスは、NTT研究所の光電融合部隊の一角を切り出すかたちで、6月12日にスピンオフの会社として設立。8月1日にNTTエレクトロニクスと統合され、現在に至る。塚野氏は「研究所で基礎技術を培ってきた光電融合を事業として仕立てていくにあたり、事業会社というかたちをとった」とコメントした。

 NTTイノベーティブデバイスでは、NTT(持株)が掲げる次世代ネットワーク構想「IOWN(アイオン)」の要となる光電融合デバイスについて、市場投入を見据えた研究開発を続けていく。

 グループ会社は国内に4社、海外に5社。大きく分けて販売、製造、技術といった3つの役割をそれぞれが担う。

 量産体制については「自社工場もあるが、外部のパートナーに委託しているケースもある。必ず自社だけでやるといった発想ではないが、そういったキャパシティは持つ必要がある」(塚野氏)。

光電融合のしくみ

 「光電融合」とは、その名の通り光回路と電気回路を融合させることで、小型化や経済化に加え、高速化や低消費電力化などの性能向上を図るものとなっている。

 「光電融合デバイスは半導体を部品として使っているが、それだけで成立するようなものではなく、複合部品と呼んでいる」と塚野氏。

 2028年の商用化が見込まれる第4世代以降の光電融合デバイスは、黄色い線の束のような光導波路を、塚野氏が「3種の神器」と呼ぶ3つの半導体系部品で挟んだような形状。これによって半導体パッケージ間やパッケージ内部をつなぎ、光のやり取りを可能にする。

 「3種の神器」とされるのは、ロジックIC、アナログIC、シリコンフォトニクス変調素子+薄膜レーザー素子の3つ。

 デジタルシグナルプロセッサー(DSP)の一種であるロジックICは、複雑な信号を処理し、アナログICに伝える機能を有する半導体。

 2つで1セットのアナログICは、ロジックICから出された信号を増幅したり変換したりして、シリコンフォトニクス変調素子+薄膜レーザー素子とデータを受け渡しする。

 半導体は光を出さないため、光を出すにはレーザー部品が必要になる。一例として、インジウムリン(InP)を用いた薄膜レーザー素子が挙げられる。

 光電融合デバイスについては、2025年に第3世代、2028年に第4世代、2032年に第5世代といったかたちでロードマップが用意されており、小型化や性能向上を図る開発が続いていく。

光電融合デバイスの実機
第1世代(COSA)、第2世代(CoPKG)
第3世代(光エンジン)

「Beyond Moore」のキーとなる光電融合

 塚野氏は、半導体の集積率が18カ月で2倍になるとされる「ムーアの法則」について、そのペースが鈍くなっているとコメント。これまでのやり方で性能を上げることが難しいという。

 そこで「Beyond Moore(ムーアの法則を超える)」を掲げ、新たな技術を追求。具体的には、現在の主流とされる5nmの半導体製造プロセスについて、3nm、2nmというように微細化を目指していく。パッケージングも、水平実装だけでなく2.5Dや3Dといった立体実装の発想で、高密度化を図る。

 また、先述の光電融合を取り入れ、現在は電気が担っているような部分を光に置き換える。

光電融合デバイスの普及で実現する世界とは

 塚野氏は光電融合デバイスの適用先として、「通信領域からコンピューティングへ拡大していく。ゆくゆくは自動車やパソコン、スマートフォンなどにも展開し、コンシューマー領域に光を導入したい」と意気込みを語る。

 NTTエレクトロニクスの2023年3月期の売上は379億円だが、「早期に4桁億円の売上を狙っていく」(塚野氏)。光電融合デバイスを普及させるべく低コスト化を図り、量産性も追求する。

 たとえばスマートフォンに光電融合を導入することによって、発熱を抑えて高性能化を実現したり、消費電力を減らしてバッテリーの長寿命化を図れたりするという。

 塚野氏は記録的な酷暑となった今夏の気候にも触れ、「テクノロジーで生活を便利にしようとすると、それを支えるデータセンターのようなインフラが大規模化する。発電所がほしいくらいの電力が消費され、熱が生まれる」とコメント。省電力を特長とする光電融合デバイスの普及により、カーボンニュートラルの実現にも貢献できるとした。