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NTT完全民営化やドコモの通信品質など、島田社長が決算会見で語ったこと

 NTT(持株)は9日、2023年度第1四半期の決算会見を開催した。会見後には、NTT完全民営化やドコモの通信品質などのさまざまな質問に対し、島田明代表取締役社長 社長執行役員が回答した。

 本稿では、質疑応答の内容を紹介する。

島田氏

NTT完全民営化やNTT法について

株式の売却

――政府が保有するNTT株の売却について、完全民営化も含めた議論が自民党で始まろうとしている。甘利明前幹事長が先日のテレビ番組で、「株価への影響を避けるために、長時間かけて徐々に売却していく」という考えを示していた。こうしたスキームへの受け止めは。

島田氏
 株主総会のときに申し上げていますが、政府によるNTT株式の売却に対して、我々はニュートラルです。売却でも、継続保有していただいてもいいと思っています。

 ただ、株主さまがいらっしゃいますので、一気に売却されると株価に影響を及ぼすこともあります。できるだけ株価に影響しないような(方法の)検討をお願いしたいということは、再三申し上げてきています。

 甘利議員の発言については、そのように考えていただいていることがありがたいです。そういう意味で、我々としては感謝を申し上げたいと思います。

――政府から引き受けるものとして2000億円の自社株取得が発表された。こうしたやり方については。

島田氏
 どういうやり方で売却されるかというのは、政府がお考えになることです。だいたい今まで私どもは、今回の2000億円まで含めて考えれば、24年間ぐらいの間に5兆5000億円ぐらいの株式を自社株買いしています。

 自社株買いするのかマーケットに出すのか、いろいろ議論はありますが、株主の皆さんからすると安心できるような売却の方法になってくるでしょうね。

NTT法を時代に合ったものに

――NTT法では、研究開発の開示が責務として定められている。今まさに、IOWNの研究開発が進められていると思うが、現状のNTT法のままだった場合、経済安全保障などを考慮したときのIOWNへの影響は。

島田氏
 株式の売却については、政府がお考えになることだと申し上げました。ですが、NTT法に関して申し上げると、今後のことを考えたときにやはり見直していったほうがいいと思っています。

 研究開発に関する開示義務などは、かつての電話の時代にまで来ている(さかのぼる)制度です。昨今の経済安全保障上の課題や、国際的に競争をしている時代であることを踏まえると、その部分は課題かと思っています。

 あわせて申し上げると、たとえば固定電話は前年度末で1350万のお客さまがいらっしゃいますが、毎年150万ずつ減っていて、ここ数年の間に1000万を切ってくることになります。

 当然、今でも赤字でして、事業経営上も負担は増えてくる。それから、いわゆる固定電話を将来どのようにしていくのかというのは、そろそろ議論を始めなければいけない時期になってきていると思います。

――NTT法を時代に合ったものにしていくべきということか。

島田氏
 法律が整備されてから時間が経っていますので、今の時代にマッチしていない部分も出ています。そこは議論を進めるべきだと思っていますし、そういう意味ではいい機会であると認識しています。

――NTTの完全民営化について自民党内で検討されている利点として、国際競争力の強化が挙げられている。NTT法によって競争力が阻害されている部分は。政府が株を持っているところで競争力の阻害もあるのか。

島田氏
 コンペティターについては、政府が株式を持っているという事業者さんはいません。ダイレクトな課題があるかどうかはわかりませんが、「政府絡みの会社なんだな」というふうに見られます。

 それで具体的な影響が出ているかと言うと、そのようなケースはあまりありませんが、同じような条件ではない会社として見られることはあると思います。

 もうひとつは、まさにその国際競争をしているなかで、経済安全保障的な要素も強く意識される時代です。(NTT法では)国内で、電話を中心とした技術開発の開示をしていく義務が定められていますが、本来は出さないほうがメリットがあるかもしれないのに、それをグローバルに開示していくこと自体に、国際競争力の課題があると認識しています。

――政府が株主であることよりも、法律のほうが課題が大きいと。

島田氏
 (政府が)株主でいらっしゃることが、ダイレクトに国際ビジネス上に影響してくるかというと、なかなかそれは申し上げにくいですが……そんな会社はあまりないんですよね。

 (NTTは)上場している会社なので国営会社ではありませんが、政府が保有義務を持っている会社は、情報通信の世界の中ではあまりないということです。

――研究開発の開示に関して、NTTグループではどのような開示をしていて、どのような足かせになるのか。

島田氏
 いろいろな事例はありますが、今の時代は単独ではなく共同で開発していくことが求められます。ですから、パートナーと一緒に作っていくこともありますが、そういったときに「NTTは開示義務がありますよね。一緒にやっていって大丈夫なんでしょうか?」ということで、パートナーシップに難色を示す方もいらっしゃるわけです。

 パートナーとしてやっていって、個々のIPを区分けできるようであれば我々は開示するわけですが、関係性はプロジェクトごとにいろいろあります。相対的に申し上げると、やはり開示義務はないほうが、我々自身の競争力強化にもなると思っています。

――特定の会社を法律で縛るということに関する見解は。

島田氏
 基本的には自由競争の中でビジネスを展開しているので、特定の会社を縛る法律はないほうがいいと思います。

 一方で、通信事業者や電力事業者など、国の経済のインフラを支えているような企業の経済安全保証はどうあるべきかは考えていかなければならないと思います。

 特に昨今は、国際環境の変化が激しいこともあります。そういう意味では、個別の会社に対しての法規制というよりも、インフラを支えるような会社に対してどういうルール作りをするのかが求められている時代ではないかと思います。

――NTT法が改正されるならという話になるが、グループの再編の可能性も広がると考えられる。今後、グループ主要会社のNTT東西やドコモといった会社などについて、現在の考えを教えてほしい。

島田氏
 基本的には東西の問題を指摘されていると思いますが、(NTT)東西は基本的にアクセスを持っている会社です。NTTグループだけではなくいろいろな通信事業者に利用いただいている事業の形態ですので、今回の議論でもって変更していくことはあまり想定はできないと思っています。

 東西の業務範囲についてはNTT法で規定されているので、そこは議論が進むと思いますが、事業のルールについて変わることを期待しているわけではありません。

――たとえばNTT東西がひとつになるということは。

島田氏
 そこは議論次第だと思います。東西がひとつになるほうが、市場全体としてコストが効率化されて公共の福祉にプラスになると認識されれば、そういうかたちになるでしょう。東西を分けて競争させたほうがコストが下がるということであれば、そうなります。

――NTT法見直しについて、持株会社に外国人取締役が就任できない外資規制の側面もある。これについては。

島田氏
 外国人が役員や取締役、監査役になれないというNTT法のルールですが、グローバルビジネスを考えれば、海外の方の知見も非常に重要になってきます。

 仮にNTT法の改正の議論が出てくるとすれば、日本国籍に限るという情報について、見直していただける方向で検討してもらいたいなと思います。

 外資の規制は、外為法の規制でやっていくことになると思いますが、NTTだけの問題ではありませんので、日本のインフラ事業を経済安全保障上の観点で見たときに、幅広く検討されるのがよろしいかと思います。

固定電話の見直しについて

――固定電話の見直しという話があったが、将来的な撤退も視野に入れているのか。

島田氏
 お客さまの数が1000万切ってくるとなって、毎年150万減っているので、トータルで考えれば10年ぐらい……もちろんそこでゼロになるわけではありませんが、あまり先の話ではありません。

 設備の保守などを考えていくと、どこかで代替手段を考えるとか、次のものに切り替える必要があります。たとえば光電話やワイヤレス固定電話、もしくはモバイルなどがあります。そういう議論を進めることによって、我々の電話局のような重たい設備を解消できるならば、町の再開発もできていくようになるかと思います。

――たとえば固定電話の巻取りも出てきたら大仕事になりそうだが。同時期にIOWNもあり、割とコストがかかるように思われる。

島田氏
 巻き取るとどれくらいコストがかかるかなど、実は全然試算をしていません。これはちょっと冗談ですが、銅線なんかも売れると思いますから……(笑)。

 都市部に関しては、新たに開発できる不動産とかも出てまいりますので、そういうものも含めてトータルでキャッシュをどうやって賄うのかは考えていきたいです。できれば、巻取りなどを通じたビジネス創造ができればありがたいなと思っています。

ドコモの通信プランや品質、事業について

――7月からドコモで新料金プラン「irumo」「eximo」が始まった。

島田氏
 7月から始めたわけですので、まだまだもう少し様子を見ないといけないと思います。ドコモから聞いている話では、ポートアウトの逆にプラスに効いていると聞いています。

 コンペティター(競合)のセカンドブランドを意識して導入していますので、そこに対してどう効果が出てくるかということは非常に注目しています。7~8月に様子を見て、次のチャンスにお答えできればと思っています。

――「irumo」はセカンドブランド対抗だと思うが、ARPU(利用者1人あたりの平均収入)を引き下げて減収などにつながってしまうおそれは。

島田氏
 そこはちょっとよく見ていかないといけないと思っています。ただ、映像をご覧になるお客さまが本当に増えています。ですから、小容量で十分という方にとっては「irumo」はいいと思いますが、「eximo」「ahamo大盛り」を選択されるお客さまも増えてくると思います。

 大容量プランに移っていく方が多いだろうと思いますから、ARPU自体は下がると思っていません。この第1四半期で4000円を切りましたが、今年は4000円超えるところぐらいになるのではと思っており、あまり心配していません。

――ドコモの決算のセグメント別で、スマートライフ事業が今回はマイナスになっていた。このあたりの要因は。

島田氏
 スマートライフ事業について、年間計画では増収増益を目指しています。第1四半期に関して申し上げると、基本的にはdカードに関するシステム負担ですとか、NTTコノキューに先行投資している部分などが出ています。第2四半期以降で十分回復していると思っており、もともとの計画通りの進捗です。

――NTT法を議論するうえで、ドコモはどういった位置づけになっていくのか。

島田氏
 ドコモにとって、コンペティターの方がそう変わらない環境になってきています。

 ここのところ、メインブランドには結構その……いい勝負っていうか勝ってる、勝ってると言うと怒られますが、セカンドブランドには負けているんですよね。

 やっぱりこれは競争で、ドコモには長いことシェアを落としてきた歴史があります。「ahamo」で反転攻勢を始めていて、そういう意味で「irumo」は反転攻勢第2弾。シェアを回復していってもらわないと困るので、持株会社としてドコモをサポートしていきたいと思います。

――携帯の基地局を支える固定回線に、NTT東西の回線が使われているところがあると思う。こういった市場の割合は、NTT法の議論に影響すると考えているのか。

島田氏
 それはあまり影響すると思っていません。我々ドコモに対しての提供も、それからコンペティターに対しての提供も、みんな同等の条件で東西が提供しています。

 今回どういう議論になっていくかわかりませんが、そこは基本的にあまり変わらないという認識です。それを変えてはいけないとも思っていますから、同じ環境を整備していって、日本国内のモバイル事業を成長させていく方向で、高いレベルのサービスを提供する義務があると思っています。

――ドコモの通信品質に関する問題があるが、利用者への影響や業績への影響は。

島田氏
 通信品質に関しては、本当にいろいろなところで話題となっており、ご迷惑をおかけしていることを申し訳なく思っています。

 今回の品質の問題というのは、映像のトラフィックがものすごくあったこと。コロナ禍明けのタイミングで、人のボリュームは同じくらいに戻ってきたわけですが、戻ってきたときの使い方が全然違うものになっていて、それに対する予測が少し甘かったということもあろうかと思います。

 今は全国でモニタリングをするなどしていまして、ドコモの最大の売りである高い品質をキープできるような対応を継続していきたいと思います。特に今年度はいろいろお騒がせしましたので、来年度への投資もしっかり打っていきたいです。

 業績への影響はほとんどないのではと思っています。

今後の投資は?

――コノキューに関連して、メタバースやWeb3に積極的に投資するとしていた。その後、生成AIが盛り上がっている。メタバースやWeb3への投資は継続するのか。

島田氏
 メタバースとWeb3に関しては投資を継続します。AIもやっていかないといけないので、そっちもやります。

 特にメタバースに関しては、(大阪)万博のところでバーチャルの部分をコノキューがやることになりますので、しっかり強化していきたいと思います。

 Web3に関しては今年度から来年度にかけて順次、プラットフォームなどを整備していきます。

 AIに関しては、海外の話になりますが、マイクロソフトのAIのベース上で、製薬会社さんや風力発電会社さんなどに提供しています。

 国内でもこれから拡張しようとしていて、できれば10月末から11月の頭ぐらいに、NTT独自で作ってきているLLM(大規模言語モデル)を発表させていただければと思っています。どちらかといえば法人向けのサービスで、音声認識や画像処理などのAIにLLMの機能を加えて強化したものを出していきたいと思います。ぜひ期待してください。