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NTT島田社長、いよいよ始まる「IOWNサービス」について語ったこと
第一弾は2023年3月、100Gbpsの専用線
2022年11月15日 06:00
NTT(持株)は、11月16日~18日にオンラインで開催される技術展示イベント「NTT R&Dフォーラム 2022」に先立ち、報道関係者向けのプレスツアーを実施した。基調講演には、同社代表取締役社長 社長執行役員の島田明氏が登壇。新たなネットワーク構想「IOWN」のサービス開始などについて語った。
今後の「データドリブン社会」に向けて
島田氏は冒頭で、膨大なデータ量が扱われる今後の「データドリブン社会」について言及。動画の高精細化などによりデータ量は増え、消費電力も増えていく。たとえばデータセンターの場合、グローバルでの2030年の消費電力は、2018年の約13倍に達すると見積もられている。
データ量や消費電力の増加、さまざまなサービスの登場に伴う低遅延化への要求……こうした課題を解決すべく、NTTが提案したネットワーク構想が「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network、アイオン)」だ。2024年の仕様確定、2030年の実現を目指し、研究開発が進められている。
「IOWN」サービスの第一弾が2023年3月にスタート
島田氏は、2023年3月に「IOWN」サービスの第一弾(IOWN1.0)として提供が始まるAPNサービスを紹介。100Gbps専用線のサービスで、ユーザーがエンドエンドで光波長を専有できるものになるという。
IOWN1.0のサービスの特徴として島田氏が挙げたのが、「低遅延」「大容量化」の2つ。既存のサービスに比べて遅延は1/200になり、遅延の“ゆらぎ”もなくなる。また、光ファイバー1本あたりの通信容量もアップする。
具体的なユースケースとして、遠隔医療やスマートファクトリー、eスポーツなどでの活用が想定されている。たとえばeスポーツでは、勝敗に影響するような遅延などを防げるようになる。
低消費電力を実現する「光電融合デバイス」
続いて島田氏は、「光電融合デバイス」の開発状況を紹介。島田氏は「先ほどのAPNサービスは『低遅延』に着目したサービスだが、IOWNの最大の特徴は電力効率の向上だと考えている。その鍵を握るのが光電融合デバイス」とコメントした。
「光電融合」は、光回路と電気回路を融合させ、小型化や経済化に加え、高速化や低消費電力化などの性能向上を図るもの。「(光電融合を)ネットワークだけでなく、コンピューティングの世界にまで提供することで、大幅な電力削減を図ろうとしている」と島田氏は語る。
ロードマップとしては、2023年度にネットワーク向けのデバイス、2025年度にボード接続用のデバイスの商用化が計画されている。その後、2029年度を目標に、ボード内におけるチップ間向けのデバイスが開発され、2030年度以降にはIOWN4.0として“チップ内の光化”も図られる。
「光電融合デバイス」に加え、波長技術や光ファイバー技術の向上なども踏まえると、IOWN4.0での電力効率は従来の100倍、大容量化は従来の125倍を達成するとされている。
デジタルツインコンピューティングによる街づくり
島田氏は基調講演の最後に、「デジタルツインコンピューティング」を紹介した。「デジタルツインコンピューティング」とは、実世界とデジタルの世界をかけ合わせ、未来予測や最適化を実現するもの。
たとえばアーバンネット名古屋ネクスタビルでの実証実験では、複数のソリューションが活用され、フードロスを減らしたり空調を制御したりする取り組みが実施されている。
島田氏は、2025年の大阪・関西万博における、IOWN2.0サービスの商用化の発表について触れ、「ぜひ期待してほしい」とコメントした。
質疑応答
――IOWN1.0のAPNサービスの料金はどのようなものになるのか。
島田氏
料金はお客さまのシステムによるので、一概にいくらっていうのは申し上げるのが難しいです。ただ、今のシステムより遅延が圧倒的に少なくなりますので、現状のサービスよりは少しお値段をいただかなくちゃいけないかなと思っています。
また、あくまで(100Gbps)専用線のサービスで、全体のシステムにおける構成の一部です。状況などに応じて料金を検討していきます。
――APNサービスはどこが提供するのか。
島田氏
2023年3月の時点ではNTT東西(NTT東日本・西日本)です。システムのなかに組み込む場合は、(NTT)データがフロントになることもありえますが、実際のサービスは東西(NTT東日本・西日本)が提供することになります。
もう少し先になると、たぶん(NTT)ドコモグループが来ることになるかなと思います。
――先日はRapidusへの出資も発表されたが、IOWN4.0とどう重なるのか。
島田氏
Rapidusは、2027年に電子回路で2nm(プロセス)をつくるのが目的です。そういう意味では、IOWN4.0は直接つながることはないかなと。ただ、チップというかラインを接続するのにうまく間に合えば、光電融合デバイスを使ってもらうこともありえます。
我々がRapidusに出資した目的としては、スマートフォンの次になるようなXRデバイスなどを見据えています。それらに向けた高速チップを作っていくためには、国内にベンダーがあったほうがありがたい。
今、半導体の世界というのは、大規模な製造でないと、エーシック(特定用途に向けた集積回路)みたいなものは受け入れてもらえません。そういった意味では、Rapidusには期待しています。
――Rapidusについてもう少し詳しく教えてほしい。参画のリターンとしてどういったものを考えているのか。
島田氏
我々がこれから考えるデバイスに適用するチップを製造してもらえるところを作りたい、というのが最大のリターンです。
ちょっと言い過ぎになってしまうかもしれませんが、日本で我々が携帯電話ビジネスをするなかで、かつては日本の携帯電話のベンダーさんはもっとたくさんありました。なんで減っていってしまったかというと、やはり半導体の発注量が理由だと思います。
iPhoneのようなものとかサムスンさんみたいに、グローバルで販売できるものは、(半導体を)作ってもらえるわけですが、ある程度の量をさばけなくなると、製造のコミットメントが得られなくなってしまいます。
今後日本では、多品種なデバイスが求められると思いますので、そういったものに対応できる半導体の製造も必要になります。
我々がスマートフォンのあとに考えられるようなデバイスを作っていくうえで、いきなりグローバルで売れるようなものを作れるとは思いません。ですので、少量多品種の半導体を製造できるようなメーカーさんができる、というのは非常に大きいと思います。
――資金面や人材面で(Rapidusを)どう支えていくのか。
島田氏
人材は供給していきたいと思っていますが、資金については、我々もそんな(多くの)資金を供給できるわけではありません。
今、米国ではチップ法のようなかたちで、政府が相当力を入れています。日本が今後、半導体の製造をしていくのであれば、政府がそれ相応の支援をしなければ難しいと思います。
――IOWNの構想にはインテル(Intel)などの海外企業も入っていたと思うが、このあたりとの協業の状況を教えてほしい。
島田氏
インテルさんやソニーさんがベースのところで、今の段階で110組織の方々が参加しています。インテルさんは非常に大きな半導体メーカーでありますので、その技術力には期待しているところです。
――IOWNの海外展開について、どのようなイメージを持っているのか。
島田氏
半導体メーカーさんなどは、大きな問題として電力消費の問題を抱えています。これから電力消費をどれだけ抑えられるかというのは、カーボンニュートラルの大きな流れにつながります。そういったメーカーさんにIOWNの光電融合デバイスを採用していただくのが重要になるので、光電融合デバイスの能力などをしっかり示していくことが我々のミッションだと思っています。